ガチレズ少女は百合ハーレムイレブンを作りたい! 作:イナイレスカウトキャラ振興委員会
ちょっと遅くなりました
「──ガールズフットボールフロンティア、ですか」
次の週末、私たちは再び例の個サルに来ていた。
既に各試合は終わり、みんなそれぞれ帰る支度を始めているところだ。
ちなみに、今回も私たちは司道ちゃんのチームに勝つことができた。司道ちゃんはリベンジに燃えていたようだったが、すーちゃんと私の必殺技をどうにかしない限りまだまだ負けるつもりはない。
司道ちゃんは今回も挨拶に来てくれたので、そのタイミングで以前鈴林さんが言っていた大会についての話を共有していた。
「聞いたことのない大会ですね……」
「そうなんだよね。でもなんか、今週末に発表されるとかで。今日か明日には何かあるんじゃない?」
「ふむ……」
ガールズフットボールフロンティア。15歳以下の女子のみで行われるサッカー大会。詳細は不明だが、鈴林さんの言葉を信じるならそれが来年開かれるとのこと。
「その大会に参加される予定なのですか?」
「まあね。でもほら、まだ私たちって5人しかいなくて。参加するにしたって人数が足りないんだよ」
「そうですね。来年開催ということであれば、通常の
詳しいな司道ちゃん。そう、私たちにはあまり時間がない。さっさと11人揃えて、1年間一緒に過ごして絆も実力も育んでいかなければならないのだ。
「……それで、何故自分にその話を?」
「ああうん、それなんだけどね。
よかったらさ、司道ちゃんも私たちと一緒にサッカーやらない?」
「えっ……!?」
これが今回の主目的だった。
ぜひ、と告げると、司道ちゃんは少し考えて、申し訳なさそうに頭を下げた。
「……せっかくのお誘いで申し訳ないのですが……すみません」
「え〜、そっかぁ」
「自分、どちらかというと本業はサバゲーなものでして。以前お話したように、ここに来たのもサバゲーでの司令官の動きを練習するためです。そんな
私の動機と司道ちゃんの動機、どっちが不純だろうね?という言葉は飲み込んだ。
「自分、中学校に上がったらサバゲー部に入る予定なんです。サッカーに専念する時間が取れるかはわからないので……」
「そうなんだ……サバゲー部ってあるの?」
「はい!父は昔所属していたと言っていました!」
目をキラキラさせてそう言われると、司道ちゃんのやりたいことを否定するわけにもいかない。
今回は諦めるしかないだろう。
「あ、でも週末はここにきてまたお相手できればと思いますので!練習が必要な時はぜひ仰ってください!」
「うん。ありがとね!」
とはいえ、またこうしてサッカーしてくれるんだからありがたい話だ。実戦形式での練習が必要な時は、週末に個サルに行こう。
「……というわけで、その子にもフラれちゃったんですよ〜」
「
女漁りとは聞き捨てならない。私は煩悩の赴くままに好みの女の子に声をかけまくっているだけだ。
そう主張すると、「よくそんなこと堂々と主張できますわね!?しかも
「全く……
「いやいや、煩悩まみれだからそれを浄めるために来るところなのでは?」
「あら、でしたら坐禅でも組んでいきまして?わたくし、厳しく見てあげますわよ」
「すいませんそれはやめておきます」
ニッコリと威圧感のある笑顔で言われ、私は顔を逸らした。アレは苦手だ。足痛くなるし、変なこと考えそうになってビシッとやられるし。
ここ
普段着が着物で大きな赤いリボン、ということで、どことなく大正浪漫チックな印象を醸し出している。
花蓮ちゃん先輩は私が以前すーちゃんとの関係が拗れてヤケクソになっていた時に声をかけた女の子の1人だ。その時はめちゃくちゃガードが固くて……固……うん、本人の名誉のために固かった、ということにしておこう。固くて、全く崩せなかった。のだが、その割にめちゃくちゃ面倒見がよく、相談なんかも聞いてくれていたし世話を焼いてくれたりしていた。口調は厳しく聞こえることも多いが、良い人なのである。
そんな花蓮ちゃん先輩の実家のお寺になぜ来たのかといえば、お寺のお掃除を手伝うため……というのは建前で、久しぶりに花蓮ちゃん先輩に会いたくなったから。
「全く……久しぶりに顔を出したと思ったら女の子の話ばかり。滅多に来ないのだから、来た時くらいは煩悩を抑えなさいな」
「へへ〜、そもそもここに来たのだって花蓮ちゃん先輩に会うためですよ〜?」
「またそういう歯の浮つくようなことを……!先輩を揶揄うのもいい加減になさい!」
言いながらも、花蓮ちゃん先輩の顔はほんのりと赤い。褒められ慣れてないのだ、この人。
私が初めてナンパした時も、赤くなってあわあわした末に持っていた箒でぶっ叩かれたわけだが、その反応で分かった。あ、この人は私が声をかけたからじゃなくて
なので、この反応が続く限りは残念なことに脈なしだ。
「大体貴女は──!」
「まあまあ、カレン。かわいい後輩に、そんなに強く当たったら、嫌われてしまうわ〜」
私へのお説教を続けようとする花蓮ちゃん先輩の声を遮って、庫裏の奥からゆるふわな声が聞こえてくる。
「あ!もみちゃん先輩!」
「はぁ〜い。もみちゃん先輩ですよ〜」
お盆を携えて現れたのは、こちらも私の一つ上の先輩である
あと、智ちゃんを超える私史上最大の
「
「甘くていいじゃないですか!私ってかわいい後輩なんですから!」
「よくもいけしゃあしゃあと自分で言えますわね!?」
「いいじゃない、可愛い後輩なんだもの〜」
「「ね〜」」
もみちゃん先輩に抱きつくと、優しく抱きしめて貰うと同時、ふわりと優しい香りが漂う。
もみちゃん先輩は匂いの専門家だ。スパイスを扱って自分で香水を作ったりもする。こういう人を調香師と呼ぶのだろうか。
「さぁ、そろそろお掃除は一旦休憩にしましょう〜。おやつを持ってきたわ〜」
「わーい!もみちゃん先輩大好きー!」
「……はぁ。頭も痛くなってきたからそうしましょう」
私が蓮聞寺で掃除を手伝うようになったのは、言わずもがな花蓮ちゃん先輩に声をかけたからだ。懐かしいなぁ。
確か、『お姉さんかわいいねぇ、一緒にお茶しない?』とかテンプレもテンプレみたいな言葉を吐いた気がするが、それに対して花蓮ちゃん先輩は
『し、知ってますわよ!!そういうの、
と真っ赤っかになって箒でガンガンやられたのだ。今にして思えば、小学生の時分で相当に耳年増だったと言える。
その後、『煩悩を晴らすためにウチで修行なさい!!』と引っ張られていき、しかし「よその子に勝手に修行させるのはなぁ」という住職さん(花蓮ちゃん先輩のお父さん)の意向で、一旦境内の掃除をしてもらおう、ということになったのがきっかけである。
花蓮ちゃん先輩は品行方正で文武両道。誰から見ても完璧優等生だ。お寺の娘なことも影響しているのか、自他に厳しく慎ましやかながら、世間知らずの箱入り娘としても育てられてきた。
……なのだが、幼馴染のもみちゃん先輩が言うには、
『カレンはね〜、お寺の修行にも熱心に取り組んでいたんだけれど、聡すぎるのがダメだったのかしら。ある日、調べちゃったのよね〜。「煩悩」って何のことなのか』
厳しい修行の中、花蓮ちゃん先輩は強いメンタルでそれらを熟し、そして仏教をさらに深く理解しようと様々な文献を紐解いた。その中で多く出てきた「煩悩」とはなんぞや、というのが気になったことが、花蓮ちゃん先輩の転機だったと言う。
『ある日、「紅絹乃は…………その、煩悩の意味って、知ってますの……?」って、赤くなりながら聞いてきたんですよ〜。なんのこと?って首を傾げたら、タブレット端末を差し出してきまして〜。そこにはほら……女の人のえっちなやつが、所狭しと映り込んでまして〜』
つまり幼い花蓮ちゃん先輩は、「煩悩」のことを調べようとして要らん深みに嵌りこんだ結果、あはーんうふーんなサイトに行き着いてしまったと、そういうことらしい。
『カレンはそれはもう大慌てしてましてね〜。幼心に悪いことだとわかっていたのか、転げ回りながら「煩悩退散!煩悩退散!」と叫び散らかしてました〜。うふふ、かわいいでしょう〜?』
かわいい。私も見たかった、ロリ花蓮ちゃん先輩がえっちな写真見て転げ回ってるところ。
で、その後も花蓮ちゃん先輩はえっちなことを「煩悩」と捉え、それを(お寺の娘としては)悪いことだとわかりつつも「修行のため、教えを深く理解するため」と言いながら興味津々でチラチラ調べているとのこと。かわいすぎる。
とまあ、そんなわけで。花蓮ちゃん先輩は品行方正完璧超人に見えて、えっちなことに繋がりそうな言葉とかシチュエーションとかにやたら詳しく(変な曲解や偏った知識を含む)なってしまい、結果私のナンパで大錯乱。それが今もこうして付き合う関係を築くに至ったというわけだ。
ひでぇ馴れ初めだ。
もみちゃん先輩に出されたシナモンクッキーを齧りつつ紅茶をちびちび飲みながらそんなことを思い返していると、花蓮ちゃん先輩のじっとりした目が私を睨みつけていた。
「……あなた、何か失礼なこと考えてませんこと?しかも特大の」
「やだなぁ、花蓮ちゃん先輩と会ってからのことを振り返ってるだけですよ」
「まあそれなら……いや、貴女と出会ってからロクなことがありませんでしたわね。やっぱり失礼なこと考えてるでしょう?」
「そんなことありませんよ、
「今すごいルビ振りませんでしたこと!?」
疲れそうなほど突っ込む花蓮ちゃん先輩を見て、もみちゃん先輩は穏やかに笑う。
「相変わらず仲良しさんね〜」
「これが仲良しに見えますの!?紅絹乃、そろそろ目が腐り落ちたりしませんこと!?」
「あら?でもカレンったら、刃奈ちゃんがなかなか顔を出してくれないから、『何をしてるのかしら……』とか、『無茶してないわよね……?』とか、いつも心配そうだったじゃない〜」
「もっ、紅絹乃……!?それは……!」
え〜、花蓮ちゃん先輩かわい〜。私のことそんなに……あれ?私のことそんなに心配してたの?まじで?
「え、もしかして花蓮ちゃん先輩から私への好感度って割と高めだったりします?」
「んなわけないでしょう!?」
「高いと思いますよ〜。刃奈ちゃんが来るといつもドタバタしちゃいますけど、その分夜は気持ちよさそうにスヤスヤ寝るんです〜。こんなにテンションが高いのも刃奈ちゃんが居てくれるからですしね〜」
「紅絹乃……?貴女、どっちの味方ですの……?」
「私はいつでもカレンの味方ですよ〜?」
うがー!と叫ぶ花蓮ちゃん先輩と、うふふ〜といつも通りマイペースなもみちゃん先輩。幼馴染同士の絡みっていいなぁ、と思いながら、私は紅茶を啜った。
「……あ、そういえばもみちゃん先輩、今日は香水ちょっと変えたんですか?」
「あら、あらあらあら〜!気付いてくれたの〜?そう、そうなのよ〜」
先ほど抱きついた時に気になったことだった。先述したようにもみちゃん先輩は調香師みたいなことをしている。主にスパイスをよく使う人で、すごくいい匂いを常に漂わせているのだが、一部では「匂いを扱うことで思考誘導を可能にしている」という噂すらある。
だが、今日はいつもと匂いの感じが違った。どちらかというと、いつもよりは薄めな感じだ。
「新しいスパイスを試していてね〜。あまり使いすぎると強い匂いになっちゃうかと思って少なくしたんだけれど……少し少なすぎたかもしれないわね〜。刃奈ちゃん的にはどうかしら〜?」
「そうですね……いつもより薄めだけど、全体的な感じとしては滑らかだなーって印象ですかね?ちょっとピリッとした香りを混ぜてみてもいいんじゃないですか?」
「も〜、刃奈ちゃんったら話がわかるわ〜!カレンったら全然興味持ってくれないんだもの〜」
うっ、と気まずそうな唸り声を上げる花蓮ちゃん先輩。どうやら花蓮ちゃん先輩は、匂いにあまり頓着がないらしい。
「それは申し訳ないですけれど……仕方ないじゃありませんの。わたくし、そういう匂いの違いはまるで分かりませんし……」
「すみません、違いがわかる女で」
「腹立ちますわねほんと……」
そういえば、境内を掃除していて見つけたものについても聞いておこう。
「花蓮ちゃん先輩も花蓮ちゃん先輩で、趣味が進んでるみたいじゃないですか〜」
「趣味……?」
「ほら、花壇ですよ花壇。新しい花植えたんですね」
そう言うと、花蓮ちゃん先輩の顔が乙女のようにぱぁっと明るくなった。いや乙女だけどね。
「そうなんですの!よく気付きましたわね!」
「パンジーにキキョウですかね?ちっちゃくて可愛いかったです!」
「ええ、ええ!そうなの!あまり目立つ場所に植えられないのだけれど、今回は日の当たるところに植えられたから、ちゃんと咲いてくれましたの!」
花蓮ちゃん先輩は、境内に花壇を作ってこっそりお花を植えるのが趣味だったりする。実家がお寺ということもあって、普通に家の庭でやるようなガーデニングは難しいらしいのだが、なるべくお客さんから見えないような位置でこっそり育てる、ということで許可をもらっているようだ。
「小さいお花って可愛いですわよね……。あんなに小さいのにあんなに綺麗に、精一杯咲いている感じがして」
「私も好きです。あ、今度はガーベラなんかどうですか?ハッキリした色をしてて、私は結構好きなんですよね」
「あら、いいセンスをしてますわね。そうですわね、ガーベラ、育ててみようかしら」
花蓮ちゃん先輩は本当にお花が好きで、こうして花のことを話している時はすごく笑顔だ。この可愛い顔を見たくて、花のことを色々調べたりもしたっけ。
「やっぱりわかる人と話をするのは楽しいですわね。紅絹乃は花を見ても、匂いのことしかコメントしませんもの」
「だって〜、私にとっては見た目よりも香りが重要なんですもの〜。お花は香りが強いものも多いんだから、やたらに植えるのはちょっと〜」
花蓮ちゃん先輩が匂いに疎いのとは逆に、もみちゃん先輩は花のことについてはあんまりらしい。以前聞いたところによると、花蓮ちゃん先輩が好きな花をいくつか植えようとしたところ、「匂いの組み合わせが悪いから別の組み合わせにして」と要求したらしい。
もみちゃん先輩にとっては匂いが最重要で、花の見た目や花に込められた意味は二の次なようだ。
2人の趣味の話はある程度ついていけるので、度々こうして私が2人の話を聞いているのだが……その話はどれも、「匂いの違いを花蓮ちゃん先輩にわかって欲しい」だとか、「自分の好きな花をもみちゃん先輩にもわかって欲しい」だとかで、なんかこう、ごちそうさまって感じだ。
しかしもみちゃん先輩が作ってくれたクッキーは美味しい。もう一つ、と手を伸ばすも、クッキーを探す指は空を切った。いつの間にかテーブルの上の皿は空っぽになってしまっていたらしい。
「あら、もう無くなってしまいましたわ」
「あら〜、もう少し作っておけばよかったわ〜」
「すみません、突然来たもんで」
「いえいえ〜、いつでも大歓迎よ〜。ね、カレン?」
「……まあ……そ、そういえば紅絹乃?」
話を振られた花蓮ちゃん先輩は、ものっそい強引に話を変えようとしている。自分でもおそらく無理があると思っているであろう花蓮ちゃん先輩の拙い切り替えを、2人で優しく受け入れて話を聞くことにした。
「……何ですのその目。いや、そうではなくて。紅絹乃、いつもクッキーや洋菓子と紅茶をおやつに出すじゃない?」
「ええ、そうね〜」
「なんで洋風なの?うちはお寺なのだけれど……」
……え?今更?
「……カレン?いくら苦しい話題転換だとわかっていたとしても、あまりにも今更すぎるんじゃないかしら〜?」
「もみちゃん先輩と花蓮ちゃん先輩って幼馴染ですよね?今まで疑問に思わなかったんですか?」
「思ってましたわよ!!思ってましたけれど!!言い出す機会がなかったんですのよ当然のように毎日出てくるから!!!」
……ということらしいです。まあここは大人として、少し無理はあっても乙女の話題転換として乗って差し上げましょう。ね、もみちゃん先輩。
「そうね〜。……私が出すおやつが洋風なことに、特に理由はないのよ?強いて言うなら……」
「言うなら?」
「和菓子や緑茶は、スパイスを使わないもの〜」
「ああ、そう……」
……結局、頭からつま先までスパイスでいっぱいらしい。流石もみちゃん先輩だ。
「あと、疑問といえばあれよ。貴女」
「私?」
「そうよ。その、紅絹乃のあだ名なんだけれど」
なに?「もみちゃん先輩」のことですか?
「そう、その「もみちゃん先輩」というやつ。それはその……あれよ。ど、どうにかならないの?」
「どうにかとは?」
「あれじゃない。ほら…………若干響きが、その。破廉恥……というか」
……はい?
「どの辺が破廉恥なんです?」
「そ、それを私に言わせますの!?」
「いや、言われないとわかんないですし」
「そりゃ、その、あれですわよ。ほら……も、「もみ」の部分が……」
…………男子中学生か何か?
「男子中学生か何かですか?」
「思ったことそのまま言いましたわね!?ああもう!だから嫌だったんですのよ!」
「いや今のは完全に花蓮ちゃん先輩が自爆したでしょ」
「もみ」だけで破廉恥扱いて。情緒が男子中学生すぎる。あまりにもえっちなことに対する免疫が少なすぎるぞこの先輩。今のすーちゃんを花蓮ちゃん先輩に見せたら卒倒してしまうんじゃなかろうか。
「あの〜、そうなると私の名前は既に破廉恥なのでは〜……?」
「いや紅絹乃は紅絹乃だから良いんですけれど!」
「もみちゃん先輩と何が違うって言うんですか」
「いや、「もみの」からわざわざ「もみ」だけを切り取った言い方をしているのが破廉恥というか……」
「……それ思ってるの花蓮ちゃん先輩だけだと思いますよ」
「ぐはっ」
花蓮ちゃん先輩が突っ伏して、カンカンカーン、とゴングがなった気がした。うぃなー刃奈ちゃんである。
「まあまあ、そんなに気にしないでくださいよ花蓮ちゃん先輩。むっつりすけべなところも可愛いと思いますよ」
「そうよ〜。えっちなことに興味津々でむっつりなカレンが可愛いんだから〜」
「もう……もうやめて……」
真っ赤な顔で湯気を出す花蓮ちゃん先輩は、今にも爆発してしまいそうだ。流石にからかいすぎたか。
「よし、じゃあ本題に入りますか」
「あら〜、何かしら〜」
「…………このメンタルの状態でそれを聞けと仰るの?」
「先輩のお好きな話題転換ですよ〜?」
「貴女ほんとにいつか覚えてらっしゃいよ……」
というわけで、茶番はここまで。今日ここに来た本題に入らせてもらう。
「私、今サッカーやってるんですよ」
「サッカー?……貴女が?」
「あら〜、意外ね〜」
「そんなに意外ですか?」
「だって貴女、サッカーに興味がある素振りなんて微塵もなかったじゃない」
「みんなに言われますよそれ……」
コホンと息をついて、話を続ける。
「今チームのメンバーは5人でして、11人集めたいんですよね」
「5人……サッカーバトルくらいならできる人数ですわね。わざわざ11人集めたいんですの?簡単にサッカーをするだけなら個サルにでも行けばよろしいのでは?」
「詳しいですね花蓮ちゃん先輩?……まあ、この前チームのメンバーで話し合いまして。ある大会に出たいなーと思ってるんです」
「大会……?」
「はい。ガールズフットボールフロンティアって言うんですけど……」
鈴林さんから聞いた大会の概要を説明すると、花蓮ちゃん先輩は少し驚いた様子だった。
「女子限定のフットボールフロンティア……そんな大会が」
「それで、もしよかったら2人にもうちのチームに参加してもらえないかなと思いまして」
「……」
そう告げると、2人は少しの間顔を向き合わせて、何事かアイコンタクトを取っていた。少しして、2人が頷く。
「少し聞かせてくださいまし。貴女、どうして私たちを誘ったんですの?」
「へ?可愛いから」
「は?」
「可愛いからです。どうせ一緒のチームでやるなら可愛い女の子と一緒にサッカーしたいので」
予想外の答えだったのか、目を大きく開く先輩方に私の本気を目で見せる。
見てください花蓮ちゃん先輩、この純粋無垢な瞳を。私の本気が伝わるでしょう?
「煩悩に塗れた目に見えますが……まあいいでしょう。嘘をついている感じはしませんし。それから、あと一つ」
「どうしてサッカーをしようと思ったんですか〜?」
花蓮ちゃん先輩から引き継ぐように、今度はもみちゃん先輩からの質問。私は背筋を正して、正直に答えた。
「必殺技がかっこよかったから!!」
「…………」
「…………」
花蓮ちゃん先輩はしばらく私を怪訝な目で見ていたが、やがて観念したかのように「はぁ」と息を吐いた。
「そうでしたわ。貴女はそういう人間でしたわね」
「どういう?」
「幼稚で煩悩まみれで考えなし」
めちゃくちゃ罵倒された。
「……でも、誰よりも純粋で真っ直ぐ。貴女、わたくしに一度も嘘をついたことございませんものね。本当に……その、わたくしのことをかわいいと思ってくれている、んですわよね」
「はい!めっちゃかわいいです!花蓮ちゃん先輩ももみちゃん先輩も!」
「あら〜……」
かと思ったら急に褒められた。
もみちゃん先輩がちょっと……いやかなり嬉しそうだ。顔赤いし。かわいいよもみちゃん先輩かわいい。
花蓮ちゃん先輩は再度「はぁ」と息を吐くと、こちらに手を差し出してきた。
「わかりましたわ。選ばれた理由が顔、というのが若干引っかかりますが、貴女がせっかく見つけた趣味ですもの。お手伝いしますわよ」
「私とカレンの趣味も手伝ってもらいましたしね〜。私も参加しちゃうわ〜」
「ありがとうございます!やったー!」
そんなわけで、先輩2人が私たちのチームに加わってくれることとなった。
「……カレン」
「どうしたの?紅絹乃」
刃奈が帰った後、紅絹乃はカレンに寄り添って問いかけた。
「引き受けてよかったの?サッカー」
「……まあ、わたくしもいつまでも引きずって行くわけにもいかないでしょう。それに、あの子たちとなら楽しくやれそうですわ」
「そう……でもそれだけ大きな大会なら、きっとあの子も出てくるでしょうね」
紅絹乃の言う「あの子」に、花蓮は察しがついた。
花蓮がかつてやっていたサッカーを、キッパリやらなくなった原因。
「ええ、必ずいるでしょうね。もう1人の──
何かを決意するように夜空を睨む花蓮。そんな花蓮に紅絹乃は笑いかけた。
「……でもよかったわね〜、カレン。刃奈ちゃんが元気そうで」
「まあ……そうね。ええ。久しぶりに会ったけれど、変わっていなさそうで安心しましたわ」
「ふふ、本人の前でもそう言ってあげれば良いでしょう〜?」
「それは……何となく恥ずかしくて……」
「ふふ、そう……」
しばしの沈黙。すっかり夜になった星空に、星が一つ通り過ぎていった。
「ねえ、紅絹乃」
「なぁに?カレン」
「わたくし、あの子を守ってあげたいですわ」
「…………」
紅絹乃は隣に座るカレンの手を、上から優しく覆う。
「そうね〜。守ってあげましょう〜、私たち2人で。だって私たち、先輩ですもの〜」
「……ありがとう、紅絹乃。全く、手のかかる娘ですわね」
そう言って穏やかに笑う花蓮に、紅絹乃もまた微笑むのであった。
キャラ解説はまた次の機会に……