ガチレズ少女は百合ハーレムイレブンを作りたい!   作:イナイレスカウトキャラ振興委員会

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やっとサッカーができる!


第八話 ガチレズ少女は上手くなりたい

 

色々とあったけれど、なんとかサッカーっぽいことができるようになるまで漕ぎ着けた私たちは、現在、ポジションを振り分けてそれぞれで練習していた。

 

今の所のポジションは以下の通り。

 

FW(フォワード):すーちゃん、椎穂ちゃん

MF(ミッドフィールダー):私

DF(ディフェンダー):瑞菜ちゃん

GK(ゴールキーパー):智ちゃん

 

ちなみに、椎穂ちゃんは瑞菜ちゃんからの推薦でFWになっている。曰く、「椎穂の可愛さは最も目立つところで発揮されるべき」とのこと。

椎穂ちゃん自身は若干困惑気味だったが、誰にどんな才能があるかなんてまだわからないし、別に拒否するほどのことでもない。瑞菜ちゃんの意見を取り入れ、そのまま進めることにした。

 

「いくよー智夏!」

「ば、ばっちこーい!」

 

すーちゃんと椎穂ちゃんは交代で智ちゃんを相手にシュート練習中だ。椎穂ちゃんの見立てでは、すーちゃんはキック力が他の人──チームメンバーだけではなく、この世界の一般の人──よりもかなり高いようで、強力なシューターになるだろう、とのこと。

相手をしている智ちゃんの方も、動物相手に鍛えられた頑強さと器用さでしっかりキーパーをこなせているようだ。

 

あぁ、そういえば、キーパーとして使うグローブはみんなでお小遣いを出し合って購入した。流石に中学生組が多く出したが。

 

で、一方私は……

 

「さて、続けるわよ刃奈さん」

「うん!」

 

DFである瑞菜ちゃん相手に、MFとして私が突破する練習だ。逆に言えば、私というMFをDFとして瑞菜ちゃんが止める練習でもある。

 

このサッカーという競技、想像以上にボールを足のみで扱うという部分が難しい。みんなで動画を見たりして技術的な知識は少しずつ、本当に少しずつ付き始めたが、じゃあできるようになるかというと話は別だ。

 

今も、どうにかボールを持って瑞菜ちゃんを抜こうとしたが止められてしまう。

 

「どうしたの?その程度じゃ必殺技なんて夢のまた夢なんじゃない?」

「ぐぬぅ……瑞菜ちゃん普通にサッカー上手すぎない?」

 

何パターンか試しているが、全て対応されて止められた。すごい、ちゃんとサッカーしている。

 

「もう一回!」

「いいわ、何度でも来なさい!」

 

DFを抜くにはどうすれば良いか。いや、()()()()()D()F()()()()()()()()()()()。それは、ボールと自分自身がDFの向こう側に行くことだ。

ならば、次はこうだ!

 

「えいっ!」

「……!」

 

今まではボールと私が一緒に越えようとしていたから止められた。なら、先にボールを越えさせる!

その後で追いつけば……!

 

「甘い!」

「ぐぬっ!?」

 

ボールだけ先に進ませ、次は私が追いつこうとした瞬間。瑞菜ちゃんの背中が私の進行を邪魔した。いつのまにか、瑞菜ちゃんは私に対して背を向けていた。それはつまり……

 

「ボール、もらうわよ!」

「あっ……!」

 

ボールを先に行かせてしまったばかりに、反転した瑞菜ちゃんは()()()()()()()()()()()()

また取られてしまった。

 

「くぅ〜!またやられた!」

「発想は悪くないと思うわよ。ただ、それをやるなら迅速な行動力と身体能力が必要よね。『蹴ってから走る』じゃあDFに付け入る隙を与えるわ。『蹴りながら走る』じゃないと」

「なるほど……」

 

発言が全く小学生ではないことはこの際置いておいて、瑞菜ちゃんの言うことは全面的に正しい。心のメモに記録しておく。

 

「というか、瑞菜ちゃん息切れてないね?」

 

私はもう汗びっしょりで息も絶え絶えなのに、瑞菜ちゃんは多少汗をかいてはいるものの、息が切れている様子はなかった。

 

「当然でしょ?野菜は栽培も収穫も体力勝負だもの」

「家庭菜園だよね?」

「農作業を舐めないで。夏野菜の収穫だけで1日が終わることだってあるのよ?ま、好きでやってるんだけどね」

「……家庭菜園……だよね?」

 

とにもかくにも、これはあれだ。

 

「……かっこいいなぁ」

「は?」

 

瑞菜ちゃん、かっこいい。セリフも行動も全部かっこいい。こうなると妹想いというか若干シスコン入ってるところもカッコよく見えてくる。

 

「瑞菜ちゃんかっこいいなぁって」

「……ちょっと、何よ。私なんて別に」

「いやいやカッコいいよ。顔はかわいい系だけど、サッカーもサラッとできちゃうし。カッコかわいい。最高」

「き、急に何?そういうのは椎穂に言いなさいよ……」

 

あら、初めて見た瑞菜ちゃんの赤ら顔。嬉しいのか恥ずかしいのか、それとも両方なのか。シャツで口元を隠す仕草がとても可愛らしい。

 

「い、いいから続けるわよ!ほら、さっさと準備する!」

「わかった、わかったよぅ」

 

んむ、美少女成分を存分に補給できて非常に満たされた。だから瑞菜ちゃんに背中バンバンされても痛くないぞぅ。

……さて。年下がこんなにかっこいいのに先輩がかっこいいところの一つも見せられないとメンツが立たない。次こそどうにか抜いてやる!

 

「さぁ、来なさい!」

 

瑞菜ちゃんはさっきよりもさらに気合いが入っているようだ。それでこそ抜き甲斐があるというもの。

しかし、次はどう抜いたものか。瑞菜ちゃんが言っていたことを反芻する。

『走りながら蹴る』……確かにその通りだ。だが、それだけで抜けるだろうか?

正直、瑞菜ちゃんと私の体格はそんなに変わらない。身体能力だって負けてないにしろ、そこまでの差はないだろう。

その前提で、ドリブルしながら走る私と普通に走る瑞菜ちゃん、どちらが早いだろうか。……勝てる自信はあんまり無い。……待てよ?

 

はたと、思いついた。いくつか見た動画の中の一つ。見た時は『こんなのいつ使うの?』と思っていたが……そうか。ボールをDFの向こうに持っていくにしても、D()F()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やり方で持っていく──つまり時間稼ぎができれば、私に対して背中を向けているDFを抜き去る余裕が生まれる。

 

これだ。ぶっつけ本番だが、やってみるしか無い。

 

「……!」

 

私は小走りでドリブルをしながら近づく。瑞菜ちゃんはいつでも対応可能な態勢だ。

ここからが一発勝負!

 

「ふっ──」

 

前に出した左足と後ろに持ってきた右足で、ボールを挟み込む。右足で左足にボールを巻き上げて、その動作のまま左足を上に弾き、踵でボールを前に蹴り上げる──!

 

「んなっ!?」

 

咄嗟に瑞菜ちゃんは私に背を向けて抑え込もうとするが……遅い。いや、()()()()。ボールはまだ滞空中だ、数瞬抑えたところで瑞菜ちゃん自身も触れない。そして、高く舞うボールに意識を取られた瑞菜ちゃんを私が抜き去るのは、難しいことじゃない!

 

「──!」

 

瑞菜ちゃんの傍を通り抜けて全速力で走って、宙に浮いたボールに追いつく。そして──足の甲で、ボールを受け止めた。

 

「…………や、やったー!」

「ヒールリフト……!」

 

ぶっつけ本番だったけど、やった!瑞菜ちゃんを抜けた!

緊張が解けて、一気に疲労感が襲ってくる。その場にへたり込むと、まだ少し余裕のありそうな瑞菜ちゃんがドリンクを差し出してきた。

 

「お疲れ様。まさか一発で成功させるなんてね」

「えへ、ありがと。どうどう?かっこよかった?」

 

ドリンクを受け取り、冗談めかして訊くと、瑞菜ちゃんは少し逡巡した後、口を開いた。

 

「……ま、まあ、少しは……カッコよかったわ。

最後の腑抜けた顔が無ければもっとよかったけれどね!」

 

瑞菜ちゃんの顔はまたしても、ほんの少しの赤みを帯びていた。

 

「……えへへ。やっぱり瑞菜ちゃんはかわいいよ」

「だから何よそれ……!私に言ってる暇があったら椎穂に言いなさいってば!」

「やだー。だって瑞菜ちゃんの可愛さは椎穂ちゃんのものじゃないもん」

「ぐぬぬ……!」

 

やたらと自分に向けられた褒め言葉を否定する瑞菜ちゃん。恥ずかしいからだろうか?そんなところもかわいい。

 

ニヤニヤしながら瑞菜ちゃんを見ていると、どうやらFWとGKの3人もひと段落したようで、こちらに近付いてきた。

 

「何の話してるの?」

「んー?瑞菜ちゃんがかわいいっていう話」

 

そう言うと、椎穂ちゃんは「そうですよね!?」と目を輝かせた。

 

「そうなんですよ!お姉ちゃんは可愛いんです!でもなぜか自分のことは無頓着で、いつも私のことばっかり……」

「何よ椎穂まで。私のことはいいの。椎穂が世界一かわいい、それで十分でしょう?」

 

珍しく、この姉妹の間でも意見が分かれる部分らしかった。というか椎穂ちゃんも大概お姉ちゃん好きよね。

 

「はい、この話は終わり!終わりだから!」

 

そう言って強引に話を終わらせる瑞菜ちゃん。どうやらガードは硬いらしい。

 

「それで、そっちの練習はどう?何か収穫はあった?」

「まあ、そうね。シュートって結構難しいんだなって。なかなか思ったところに飛ばないのよね」

 

すーちゃんは少し難しげな顔だ。椎穂ちゃん曰くキック力が高いすーちゃんは、どうやらシュートのコントロールに苦戦しているようだった。

 

「私は……乙女乃先輩と比べると、やっぱりキック力が不足していると思います。利根川先輩にしっかり止められちゃいました」

 

椎穂ちゃんの課題は、逆にキック力か。前世のノット超次元サッカーならまだしも、このイナイレ世界ではシュートでキーパーのキャッチを真正面から潰すような描写ばかりだった。超次元サッカーをやる以上、きっとキック力は非常に大事な能力だろう。

 

「私は、うん。なんとなくゴールキーパーの感覚、わかってきた気がする。相手がどこに打とうとしてるのかの気配が分かれば、普通のシュートなら結構止められるかも」

 

一番満足げだったのは智ちゃんだ。思ったよりもゴールキーパーの適性があったらしい。

それぞれ思うところがあったようだ。やっぱりポジションを定めて練習するのは身になったらしい。

 

「……でもちょっとあれだなぁ」

「どうしたの?」

「いや、なんかさ。ポジションごとに練習するの、上手くなるにはすごく良さそうなんだけど、こう……チームのみんなで一緒に!って感じがあんまりなくてちょっと寂しいなって」

「あー……」

 

いままで4人でやってきた練習は、みんなで一つのボールを追いかけて自由に走り回ってきた。あれにはあれの楽しさがあったように思うのだ。

 

「……すみません。まだポジション分けしての練習には早かったかもしれませんね……」

「あっ!ごめんね、そういう意味じゃないんだけど!」

 

まずい、椎穂ちゃんがしょんもりしてしまった。

実際、椎穂ちゃんはよくやってくれている。サッカーの知識なんて私たちと同じく皆無だったのに、色々調べて提案してくれた。その提案を採用したのは私だ。

 

「気にしないで!椎穂ちゃんのおかげで私たちサッカー出来てるんだから……!」

「そうね。椎穂さんのせいじゃないから、気にしないで。……とは言え、私もみんなで一緒に練習したいって言う気持ちはわかるから、ポジション別の練習とは別でみんなで一緒にやる練習もしましょ?」

 

すーちゃんが私の言葉を補足して取り持ってくれる。全部わかってくれる幼馴染最高!素敵!かわいい!美少女!好き!

 

みんなですーちゃんの言葉に頷いて、同じグラウンドに入る。ポジションなんて気にしない、自由で私たちらしいサッカー。これが、今の私たちの楽しみになりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──個サル?」

「何それ、霊長類?」

「じゃなくって、そういうのがあるらしいよ。個人フットサル?ってやつ」

 

翌日、昼休み。一緒にお弁当を持ち寄って集まった私とすーちゃんと智ちゃんは、中学校の屋上でお昼ご飯を食べながら話し合っていた。ちなみに今日の私のお弁当はすーちゃん謹製。私とすーちゃんは、お弁当を毎日交互に作りあっていたりする。

すーちゃんが作ってくれるあまくて大きい卵焼きを頬張って至福の時間を味わっていたところ、智ちゃんがスマホで見せてくれたのがそのキーワード。「個サル」だった。

 

「チーム単位じゃなくて個人単位で参加できる、気軽な感じのやつなんだって。その日集まった人たちで即席のチーム組んだりとかして」

「へぇ、そういうのあるんだ」

 

つまり、個人単位でいろんな人たちが集まって、一緒にサッカーする、と。なるほど、良さそう。

今の私たちの拠点である公園。あそこはとても良い場所なのだが、どうしてもコートが狭い。ゴールも片面しかないし、練習には限界がある。かといって、ちゃんとしたところを借りようとすれば結構いいお値段がしてしまう。

そういうところに、この個サルというやつだ。1人あたり1000円くらいでしばらくサッカーができる。リーズナブルだし大変よろしい。真っ赤なタコさんウィンナーさんを1つ口に放り込む。

だが、懸念点が一つ。

 

「……ん?でも個人単位の参加だとチームがバラバラにならない?」

「ああ、それは大丈夫。チーム単位での参加もできるんだって。ほら」

 

智ちゃんが画面をスクロールする。私がすーちゃんの手ごね(重要)ハンバーグを齧って幸せな気分に浸っているのを察してか、すーちゃんが読み上げてくれた。

 

「『お友達同士での参加・チーム参加も大歓迎』……なるほどね」

「個人で参加する人はその場で知らない人とチームを組んで、逆にチーム参加の人はそのままチームで対戦できるってこと?いいじゃん」

「そう。しかもここは女子限定なんだって」

 

フットサル、というやつがよくわからなかったので調べてみたところ、5vs5のサッカーらしい。……サッカーバトルと何が違うんだろう。

ともかく、良い設備で相手のいるサッカーができそう、というのは非常に良さそうに聞こえた。あと可愛い子いっぱいいそう。ぐへへ。

 

「みんなで行ってみますか!」

「じゃあ今日集まった時に予定聞いとかなきゃね」

 

そうこうしていると、昼休みが終わる間際のチャイムが鳴り始める。食べ終えたお弁当箱を「ごちそうさま」とすーちゃんに返すと、「お粗末さま」と返ってきた。いつもありがとうすーちゃん。

一先ず個サルのことを椎穂ちゃん達にSNSで連絡し、教室に急いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どこへ行くつもりだ?凛々(りんりん)。まだ練習の途中だが」

 

整備されたサッカーコート。どこぞの公園とは比べるべくもない、「サッカーをするため」に最適に整えられたそこから抜け出そうとする影に、鋭い視線が突き刺さった。

 

「……にゃは、バレちったにゃ」

 

その影は悪びれるでもなく、イタズラな笑みを浮かべて振り返る。

 

「また性懲りも無くサボりか?このような最高のサッカー訓練施設を使わせてもらっているというのに」

 

責めるような声にも、しかし影は笑って返す。

 

「ニャハハ!凛々にはちょっとここは窮屈かにゃーって。凛々に必要なのはガッチガチの施設じゃにゃくて自由だし〜」

「……良くほざく!」

 

影に向かって腹立たしげに放たれた強烈なシュート。しかし、そのシュートは──影の足に触れた瞬間、()()()

 

「にゃはっ」

 

音の一つも立てず、残像の一つも見せず。影の足に当たったはずのボールは、次の瞬間には影の手元に収まっていた。

 

「無駄無駄。()()()()()()のシュートじゃ凛々には効かないの、知ってるでしょ?」

「ちっ……」

 

鋭い目の持ち主が不服げに目を逸らすと、次の瞬間、突然足元にボールが出現する。

 

「返しとくにゃ。ボールはあっちのやつ借りるから」

 

そう言って、影はコートを出ていく。後に残ったのは、苦々しげな顔が一人と、サッカーボール。

 

 

……そして、もう一人。

 

「──おや、凛々はまた()()()かい?好きだねぇ彼女も」

「そうだろうな。……だが、あんな個サルなどに参加してなんの得があると言うんだ……」

「はっはっは。彼女には彼女の止められない"風"がある。それだけの話だろうさ」

 

寛容な様子を見せるもう一人に対し、鋭い目の少女は不満げな目を向けた。

 

「だが、これでは私たち『十二天星(ジュウニテンショウ)』のメンツが……」

「──メンツが、どうかしたかしら?」

 

最後に現れた一人。その声が聞こえた瞬間、その場の空気はどっと重くなる。まるで先ほどとは別世界のように。

 

「……火蓮(カレン)

「メンツというのは、練習に出る出ない程度で決まるものなのかしら」

「……火蓮の言うとおりだね。不美(ふみ)、君は少し考えすぎだ。もっとシンプルに考えれば良い」

「どういうことだ、清羅香(きよらか)

 

問われ、清羅香と呼ばれた少女は不敵に笑った。

 

「――結果さ。練習に出る出ない、そんなことで私たちの格が決まるわけではない。勝つか、負けるか。点を取れるか、取れないか。そう考えるべきじゃないかい?

そう、停滞した日本の女子サッカーを変革するべく集められた私たち『十二天星』にとっては、それが全てなのだから──」

 

 





・門脇瑞菜
 小学生にしてはちょっと達観しすぎているかもしれない。姉妹揃って小学生の精神ではない。それもこれも彼女がお姉ちゃんだから。

・片梨刃奈
 やっと「大体のことがうまくやれる」を発揮し始めた主人公。もうちょっと頑張ってくれてもいいんだぞ。サッカー素人すぎる。

・乙女乃スピカ
 料理が上手い……というよりは、刃奈の味の好みを隅から隅まで把握している。美味しそうに食べてくれる刃奈の顔を見るのが大好き。ほぼお嫁さん。

・最後に出てきた人たち
 全員知ってたらスカウトキャラ博士。
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