アルゴンNSビルの屋上へ銀光が迸りーーそして静寂が訪れる。
俺たちの間を夜風が吹き抜けてゆく。
「……フィネガン……?」
ーー目の前には。
サングラスにオールバック、白のワイシャツに黒スラックス、ガンベルトに帯銃ーーと、さながら麻薬王めいたいでたちの壮年男性。
謎の光体の直撃後も、髪がいきなり銀髪に変わった以外は……外見上の変化は見られなかったが。
名を問われた壮年男性は、とてもいい笑顔で答える。
「アタシ? アタシはネミッサ」
その返答にーーさすがに俺は黒帽子を目深に下げ、呟く。
「……キッッッッツ……!」
一体どうして、こんな事になったのか。
ーー話は数時間前に遡る。
* * *
深夜。海沿いの無人のオフィス街を、二条の光芒が切り裂くように走り抜ける。
薄暗い路面を疾駆するのは……深海色をまとう一台の怪物。
怪物の名はランボルギーニ・ディアブロ。『悪魔』の名を冠した外車だ。
その運転席へと座り、ステアを握る者は、すなわち悪魔の操縦者だ。
この俺ーー悪魔召喚士、卜部広一朗(うらべこういちろう)である。
バックミラーに映るのは、黒帽子の鍔よりくたびれた眼を覗かせる四十男。いつもなら上から下まで黒スーツ一式で決めているのだが、蓬髪を押し込んだ黒帽子の下、その顔には無精髭が伸び、その痩せ肩は帽子やボトムスとえらく不似合いなグリーンのフライトジャケットに覆われている。
すべてはやむを得ない交渉の結果だ。髪や髭は優雅に整える余裕がなく、またお気に入りのスーツのトップスは最愛の人へと捧げてしまった。
助手席へ放り出したGUMPが、振動に合わせ跳ねている。
召喚陣投影ダブルモニター裏面の傷が……潜ってきた修羅場を思い起こさせる。
“俺はこの国での案内役だったが、意見番とも考えている。
ダメだーーそんな計画には協力できない”
俺の所属していたファントムソサエティは「大いなる存在の遍歴へと力を捧げる」ことを大目標とする組織だ。
この国に根ざす旧い家系の末裔として……海を渡って進出してきたファントムに、案内役兼監視役として加わっていたのが俺だった。
“ウラベ。お前はファントムに逆らうというんだな?
その意味ーー本当にわかってるんだろうな?"
原初の大陸よりデジタル化することで連れ出すことに成功した、魂収集の巨大自律生命体“マニトゥ"。
太古の昔ーー宇宙の果てから送られてきた観測装置だと、やつらは言っていた。
だがマニトゥの行う魂の収集は、観測なんて生易しいレベルじゃなかった。
“ああ。ーーさすがに今回ばかりは見過ごせない。
この国の人々があんなにも大勢、むざむざ犠牲になる様を……黙って見過ごすわけにはいかない“
廃人だ。魂を奪われた人間は自由意志のない廃人へ堕し、やがて理性なき獣のごとく暴れ始める。
その非道なる収集をーー国の次世代地方開発計画を隠れ蓑に、数十万人を対象に行おうと試みる計画。
三年前の平崎事件ーー市がひとつ丸ごと贄に捧げられかけた危機が脳裏へ蘇る。あの時は所属サマナー、シド・デイビス一人の暴走として処理された上に、同じ旧い家系……当代の葛葉キョウジが阻止してくれたため事なきを得たが。
“そうか。葛葉を呼び寄せる程度の利敵行為なら、これまで同様見逃されていたものを。
今後は脱盟者としてお前を追うことになる。
残念だよーーウラベ“
そう言葉を残し電話を切ったのは、西という政府省庁の重鎮だ。
中身は人ではない。いつの頃からかこの国の政府中枢へと、ファントムは既に食い込んでいた。
千年ほど前であれば。そういった連中が権力中枢に寄ってくるのを撃退するのが、卜部や葛葉の公務だったはずだ。
今やその使命は苗字へ残るのみである。
“鍵が開いている……?
!?ーーこ、これはーー
お前がやったのかーー!?“
ーー脳裏には結婚式場の赤絨毯で微笑む、妻の姿。
妻子を避難させるべく自宅へ戻ったところで、俺を出迎えたのは一面の血の海と、その中心で横たわる……物言わぬ妻の骸だった。
スーツを血で汚し妻を抱き上げる俺を、奥の子供部屋から出てきた元同僚が見ていた。
“つまらない仕事を押し付けてくれたな。
こうなるのはわかっていただろう?ーーウラベ“
GUMPを抜くのは同時。
思い出が詰まった我が家を破壊し尽くす死闘の末、最後に立っていたのは俺だった。
俺は血まみれでもう使えない上着を、妻の好きだったスエード地のダークレッドのスーツを……その亡骸へとやさしく掛ける。
代わりに米軍放出品のフライトジャケットひとつを空っぽの心へ引っ掛け、自宅だったものを後にした。
……ここから逃げなければいけない。
……必ずや復讐しなければいけない。
“お前は誰だーーレッドマン?
組織に追われる俺に協力しようというのか? 目的は?
ファントムの計画を止めたい……それは理解できるが"
車載電話に架けてきた謎の男、レッドマンの指示に従いーー警戒線を潜り抜け。
俺はこの、天海市へとたどり着いた。
ーー次世代型情報モデル都市。
ファントムの“マニトゥ"計画の実行予定地として、現在も開発中の地方都市である。
その時、軽快な電子音とともに、運転席のパネルに“call"の文字が踊る。
俺はハンドルを握るまま、片手で車載電話を取り上げる。
「ああ……レッドマンか。
目的地はアルゴンNSビルーー了解した。
五階、電算機室からーーそのプログラムを抜き出してくればいいんだな?
ネミッサ・プログラム……いやいい。興味はない。
ーーあんたには世話になったからな」
電話を戻す。
俺がここへ辿り着くのを支援してくれたレッドマンからの依頼は、アルゴンネットサービス社の自社ビルへ忍び込み、そこに厳重に保管されているひとつのプログラムを盗み出してきて欲しい、というものだった。
天海市を次世代型情報都市となすべくネット(網)とウェブ(網)とを張り巡らせる、勤勉な蜘蛛がーー近年成長著しいIT大企業「アルゴン社」である。アルゴンネットサービス社はその一支社として、ネットワーク接続サービスを市内全域へ提供している。
そこからプログラムを盗み出す。やる事はまるで企業スパイのそれだが、マニトゥをデジタル化・データ化してこの土地へ運んできた経緯を考えるとーーおそらくはマニトゥの起動に必要な、重要な「臓器」のようなものーーそれこそが、盗み出すべきプログラムなのだろう。
俺は咥えていた煙草を唇から離す。短くなった煙草の先を見上げれば、天井へたゆたう紫煙。まるで霧か密雲のごとく蟠っている。
ーー正直、助かった部分はあった。
殺された家族の復讐のため、ファントムに戦いを挑むにしても。俺一人ではせいぜい、変電所への攻撃とか、天海市全域への電力供給を止める方法しか思いつかなかっただろう。
だがネット上のデータは、デジタル的な普遍存在。
電源が切断すれば、その提供は停止するがーー
電源が復活すれば、再び変わらず蘇る。
マニトゥ・プログラムを破壊するにしても。恐らく対象は膨大なデータ、加えてネットワークの何処へも退避可能。コピーもバックアップも作り放題だ。
俺も長年召喚プログラムを利用する者の一人としてそれくらいは見当がつく。正直、そんな相手とどう戦えばいいのかわからない。
だから、ネットワーク運用側から取り上げておくべき重要なプログラムを抽出指定してもらえたのは……とても助かった。
俺はパワーウインドウを下げ、吸い殻を放る。
窓外へ紫煙が吸い出されてゆくのに合わせ、橙に浮かぶトンネルの内壁へ車内音楽のピアノが反響した。
クラシック。モーツァルトのレクイエム。
ーーここからの闘いはすべて、亡き家族へ捧ぐ鎮魂歌だ。
短いトンネルを抜け。俺は滑らかに制動板を踏む。
俺が愛車ーーランボルギーニ・ディアブロを停めたすぐ先には。
“Algon Net Service buildings“
夜なお光る自社看板の向こうに。夜間照明に下から照らし出され、冷たく輝くーーアルゴンNSビルの威容が浮き上がって見えた。
* * *
セキュリティの生きたビルの中へと忍び込む。
握るGUMPの表示から、もう一つのセキュリティにはすぐに気づいた。
「!……エネミーソナーが反応していやがる……」
既に辺りを悪魔がうろついている。
盗まれて困るプログラムを置いてあるなら、番人を置くのは道理だ。
だがこんな、昼は普通に社員がいるようなオフィスビルに……?
それに裏口の警備員詰所も電気が点いていた。巡回中なのか無人だったが。
「ベス、プッツ、それにリャナンシー……。
お前たちの力、借りる事になるな……」
俺はGUMPの握りを確かめ、その引き金を引いた。
ロックが外れ、ダブルウインドウが立ち上がり、モニタに映し出された召喚陣が起動する。
何もない廊下の暗がりへ風が吹き荒れ、虚空から滲み出るように三つの影が現れる。
召喚したのは、ストックへ常駐させている三体ーーいつもの仲魔達。
幻魔ベス。地霊プッツ。鬼女リャナンシー。
召喚のマグネタイト臭に惹かれたか。早速、暗がりから悪魔が襲いかかってきた。
俺のスキアヴォーアが闇を切り裂き、AKS74が火を吹く。ベスの回し蹴り、プッツのガンフォーン、リャナンシーのマハブフーラで片端から薙ぎ払ってゆく。
幾度かの戦闘を経て。非常階段から上階へと進んでゆく。
「ひっ! また化け物ーーいや、人間!? ここで何をしている!?」
階段上で出くわしたのは中年の警備員だった。ひどく怯えている。
俺はあきれて黒帽子を被り直した。
「……何をしているはこちらの台詞だ。
この辺りは化け物だらけだぞ。命が惜しかったら、さっさと逃げるんだな」
短く言い捨てると、俺はへたり込んだ相手に構わず廊下を進んでいった。
曲がり角を曲がって進んだところでーー後方から、男の絶叫が聞こえてきた。
……間に合わなかったか。
「くそ……ファントムめ。何も知らない一般人まで巻き込むとは……」
俺の脳裏に、自宅を血に染め横たわる妻の姿が蘇る。
ーーこんなことは早く終わらせなければ。
俺は五階の電算機室へ辿り着き、起動状態のままのサーバコンソールの前に立つ。
検索したネミッサ・プログラムは……すぐに見つかった。
だがーー
「容量が大き過ぎる……。
このGUMPのメモリでは、召喚プログラムを削除して移すしかないな……」
迷いは一瞬。俺は背後に控える三体を振り返り、これまでの感謝を込めた目礼を送る。
召喚プログラムを消去する。三体はそれぞれ心配の表情を浮かべーー空間に溶け、そのまま消えていった。
長い付き合いだったが……またどこかで出会うだろう。
俺が空になったGUMPのメモリへその「ネミッサ・プログラム」を移すとーーどこからともなく、ひそやかな女の笑い声が電算機室に響いた。
「!……自我があるのか……このプログラムには……?」
コードを外したGUMPは大容量データを詰め込んだせいか、やや加熱している。
GUMPが脈動しているような気さえするのはーーさすがに気のせいか。
俺が電算機室から出るとーー
「ーーウラべ。
組織を裏切って逃亡を続けていた貴様だったが……
最後はあっけない幕切れだったな」
そこに待ち構えていたのは。
サングラスにオールバック、白ブラウスにガンベルト、黒スラックスの壮年の男だった。
ーー悪魔召喚士フィネガン。
ファントムソサエティでも最強の呼び声高い召喚士だ。
「クッ、フィネガンか!」
襲ってきた刺客を返り討ちにし続け、ついに次の討手はこいつが選ばれたか……。
とはいえ俺もファントムでは有数の使い手として知られている。
おさおさこいつに悪魔召喚戦闘で遅れを取る気はない。
俺は反射的にGUMPを構えかけーーそして、ふたたび下ろした。
……悪魔召喚プログラムはつい先程、消去したばかりだった。
それを認めたフィネガンが鼻で笑う。
(くそーーここで死ぬわけにはいかん……!)
俺は踵を返して走り出した。フィネガンは悠揚迫らぬ態度でそれを見送る。
下りの非常階段に飛び込み駆け降りるとーー階下には、ニヤニヤ笑いで立ちはだかっている一人の男。
「どうした? ウラべ。そんなに急いで。
俺の仲魔と遊んでいくか? ん?」
「フィネガンの腰ぎんちゃくが……!」
こいつは召喚士としては大した実力もない、フィネガンにくっついているだけの野郎だ。
そんな男の見せる余裕はーー俺が仲魔を呼べない事を知っているからこそだろう。
そもそもフィネガンが、俺が電算機室を出たところで待ち構えていたのもそうだ。
俺がネミッサ・プログラムを持ち去るため悪魔が呼べなくなるとわかっていたのだろう。
ここに保管されているプログラムを狙ってくると踏んでのーーこれは罠だ。
「ここに俺が来るとわかっていて、網を張っていたのか……!?」
そう吐き捨てると。男は急に、あきれたような表情を浮かべた。
「ーーあんな目立つ車を社屋の真ん前に停めておいて。
バレないはずがないだろう?」
確かに。それもそうだった。
完全に論破された俺はふたたび踵を返し、非常階段を駆け登る。
四階、五階。そして踊り場の突き当たりーー屋上扉が見える。
それを押し開け……ビルの淵へと駆け寄る。周囲を見回す。
遠く眼下には、天海市繁華街の明かりがきらめいていた。
非常用脱出シュートもなければ、近くに飛び移れそうなビルのひとつもない。
ただ風の躍る夜の屋上。進退はここに窮まった。
「終幕かーーつまらん幕切れだな」
星空のような街明かりを背負ってーー俺は振り向いた。
屋上扉を潜って。フィネガンがこちらへ歩み寄ってくるところだった。
その手には既に拳銃が握られている。
その照準は既に俺の心臓を狙っている。
冷たい夜風が身体の真芯を吹き抜けてゆく。
(やつらはネミッサ・プログラムに気づいているーー)
ここで俺が殺されれば。
せっかく命を賭しやつらから奪ったプログラムも、取り返されてしまう。
家族の犠牲も、復讐の誓いも、そしてここまでの闘いもーーすべて無駄になってしまう。
(やつらにプログラムを渡さない為にはーー)
このGUMPに作動ロックを掛け、誰もその中身に触れられないようにするしかない。
近づく銃口を睨んだまま。
コンソールを叩いてパスワードを設定しかけてーーふと、俺は手を止める。
(ーーいや。ネミッサ・プログラムがGUMPへ収納でき、加えて自我があるのなら。
あるいはーー)
夜風を挟んでフィネガンと対峙する。
そのまま俺は……握るGUMPを持ち上げて、己のこめかみへと突きつけた。
終局の光景。追い詰められた獲物はーー自決を選択する。
だがGUMPに銃弾の発射機構などない。
あるのは悪魔の召喚機構だけだ。
フィネガンが興を覚えたように足を止め、銃口を引っ込めた。
俺が足元へ捨てた護符を見て、低く笑う。
「フーーなるほど……。
貴様も一流の悪魔召喚士。考えたな。
盗み出したマニトゥの一部もまた電霊。機械ならずとも、己が身という素体を捧げさえすればーー悪魔として操れる。そう考えたか」
どうやらこちらの思いつきなどお見通しらしい。
銃口を天に向け、腕組みをして見物の構えのフィネガンはーーその俺の悪あがきに、一応……という口調で忠告を送ってくる。
「だが貴様も当然弁えているだろうがーー魔人となった者の末路は、例外なく悲惨なものだ。
いずれ必ず自我を乗っ取られ悪魔そのものと堕す」
そんなことはとっくにわかっている。悪魔召喚士の基本中の基本だ。身体を乗っ取られれば悪魔と化す。
悪魔召喚から身を護る為の護符を外し。GUMPの収納マグネタイトを使用せず。ストック六体分もの容量を一体で占有する、自我持つプログラムをーー己が身へ向けて召喚起動。
普通に考えれば自殺行為だ。
「ーーそれでも。この俺に抗うというのならやってみるがいい。
見届けてやろう。ウラベ……お前が魔人に成り果てる様を」
同業のよしみだ、せめてこの手で送ってやろう。
そう告げ、かつての同僚は俺の覚悟を見届けるべく口を噤んだ。
黒帽子を下げて目元を隠し。俺はこめかみに、GUMPを強く押しつける。
(やってやるーー)
風の音がやけに大きい。
GUMPを握る手が震えている。
一度引き金を引けば二度とは戻れない。
(それでもーー)
ーー真紅の絨毯の上で安らかに眠る、妻の亡骸。
「……うおおおおおおぉっ!!」
俺は全ての未来を擲ち、その自滅の引き金を引いた。
そのーーつもりだった。
「ーーえっ」
やっぱりどこかで……ビビっていたのだろう。
力を込め過ぎたGUMPは引き金を引いた瞬間、汗の伝うこめかみからズルリと滑った。
顔の前に流れた銃身から召喚起動陣が立ち上がるーーはずが。
何故か盛大なエラー音と共に、GUMPからは謎の銀の光球が飛び出、掠める俺の両眼を灼く。
ブラックアウトは一瞬。
回復した視界には、ビルの外の中空へ飛来し大きく弧を描く銀の光球の姿がありーー
ーーその予想到達線に立つ人物へ、俺は反射的に……謝罪した。
「ーーあ。悪い」
「はーー?」
当然の帰結ではあるがーー召喚起動で放った悪魔は、実体化のよすがを求めて動く。
収納マグネタイトを一切使わず、6体ストック分もの大容量をたった一体で占める、自我のあるプログラムを解き放つというーーGUMPの故障確実、ピーキーな設定で撃ち放った召喚プログラムは、本来の想定であれば。
俺の身体の生体マグネタイトを喰らい尽くしーーその悪魔を顕現させるはずだった。
だが肝心なところで狙いがズレた。
そのため召喚の標的がーー射線上から比較的近い相手に、自動的に変更された。
……フィネガンである。
「バカお前ウラベふざけるなっ!……あああっ!!」
フィネガンは罵声を放ちながらも流石の反射で、空中から迫り来る銀光に向け銃を連射する。が効いていない。
そのまま、眉間に銀光の直撃を受けたフィネガンはーー
「うがあああああっ!?」
ーーひときわ大きく光り輝いた銀光に飲み込まれながら、濁音の多い悲鳴の尾を引いた。そのシルエットががくがくと痙攣している。バチバチと音を立てて床に割れ散らばっている透明な欠片はーーあれは魔除けのタリスマンか。
悪魔召喚から身を護るための魔除けをやすやすと貫通し、その身体へと入り込んでいるのだ。実にえげつない。
屋上を埋め尽くした銀の光が収まると、そこには項垂れたフィネガンの姿。
オールバックの黒髪がすべて銀髪へと変じている。
「ーーおい……? フィネガン……?」
恐る恐る声をかける俺に。
「ーーアハッ! やっと出れた!
ありがとう!
アタシの名前はネミッサよ!」
あどけない笑みを浮かべる顔を上げ。
低音ボイスで女言葉を話す壮年男性へ、俺は呟いた。
「ーーーーキッッッッッツ…………!」