デビルサマナー:おじさんハッカーズ   作:葛葉狐

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傭兵の半分はベテランになってから死ぬ(二上門地下)

 

「急な話だし、それに危険な場所だから。

 ーー応募があるとは思っていなかったけど。

 まさかお尋ね者が、それも二人も。助太刀に来てくれるとはね……」

 

 よくセットされた長髪に、細いシルエットのパンツスーツ。

 年は俺よりもいくぶん下に見えるーー女に年齢を訊くわけにはいかないーーその女。

 ナオミは、工事現場の封止テープを潜り、俺たちを先導するように歩いてゆく。

 

「厄介な仕事なんて放り出して。俺たちをファントムに突き出した方が、おまえは儲かるんじゃないか?」

 

 放棄されて久しい工事現場を抜け、闇が凝ったようなトンネルへと踏み入る。

 俺の軽口に、ナオミの背中は軽く肩をすくめ応じた。

 

「あら、ご冗談。ファントムが裏切り者に賞金なんて掛けるわけないでしょう?

 自分の手で片をつけないと組織としての面子が立たないじゃない」

 

 いかにも上層部の言いそうな事である。俺は頷いた。

 ヒョオオオ、と泣き咽ぶような風が吹きつけ、ナオミは髪を抑えた。

 

「逆にーー請け負った仕事を放り出したら。

 私の方が裏切り者扱いされるわよ」

 

 そのナオミの呟きは聞き過ごせず、俺は聞き返す。

 

「そう言うってことは……これはファントムから受けた仕事なのか?」

「え? 分かってて手伝いに来てくれたんじゃないの?」

 

 俺は横のフィネガンを見る。サングラスの向こうの表情は平静なままだ。

 こいつ……。

 わかってて受けて、しかも黙っていやがったな……。

 

「てっきりーーファントムの動きを探って下請けに潜り込んできたのか。

 あるいは、ファントムからの仕事をこなし、上層部に取りなしをしてもらいたいのか。

 ……そのどちらかだと思っていたわ」

 

 ナオミの見立てももっともである。まあ俺はGUMP使えない時間潰しに金稼ぎでもしようと思っただけだが。 

 俺は(知らなかったがもし知っていたら)前者の目的に従って動くだろうし、フィネガンの狙いはおそらく後者だ。

 暗いトンネルを背負いつつ、ナオミは振り返って後ろ向きに歩き出す。

 

「どうする? 裏切り者さん。

 ファントムなんかの手助けはしたくないから、やっぱり仕事キャンセルする?

 今ならまだ違約金取らないわよ?」

 

 薄く笑うナオミだが、こいつも当然俺が家族を殺された事は知っているのだろう。

 これでも気を遣ってくれているのである。

 

 ナオミは葛葉一族に属するレイと古馴染みらしいが、俺と同じようにーー同流派の師や一門を殺されたとかで、深い確執があるらしい。

 そのせいで葛葉やヤタガラスからの仕事はけして受けようとしない、フリーのサマナーだった。

 大陸で拳術を修め、西欧で珍しい召喚術を修めたという経験豊富なサマナーだ。

 ファントム絡みの仕事をよく受けるせいで、組織からはファントム寄りのサマナーとみなされ、その実力もあってずいぶんと便利使いされている。かなり稼いでいるだろう。

 ファントムに使い倒されてここまで死なずにきている以上、こいつも相当の実力者である。

 

 俺は帽子を直すと、ナオミの視線から目元を隠した。

 

「……いや。

 お前の言う通り。この天海でのファントムの目論見には興味がある。

 仕事は続行ーーで構わない」 

 

 足を早める。黙って追い抜いた俺の横顔に、あら、とナオミが目を見張る。

 

「護衛が後ろ歩いてたらーー仕事にならないだろう。

 前衛(ポイントマン)なら、俺たちに任せろ」

 

 顎をしゃくると、フィネガンも無言で前に出、俺に並ぶ。

 ふうん……と、どこかつまらなそうな目で俺を見つめ、ナオミは呟いた。

 

「先輩として教えてあげるけど……フリーのサマナーっていうのはね。

 もっと自由に。振る舞ったっていいのよ?」

 

 ナオミは後悔のない選択肢がすぐ眼前にある事を教えてくれる。

 組織の枷が外れたならば、復讐の炎も燎原へ広げ放題というわけだ。

 脳裏によぎる深紅の絨毯を追いやり。俺は軽口を返す。

 

「ーー中華料理食べ放題、のようにか?」

 

 虚を突かれたナオミの笑い声が、トンネル内に響く。

 

「……太るぞ」

「ぶち殺すわよ?」

 

 笑い声が殺気に急速冷凍された。女はこれだから怖い。

 やり返す俺を呆れた目で見やってから、ずっと黙っていたフィネガンが声を発した。

 

「……そろそろ仕事の話をしたらどうなんだ。

 ナオミーーお前ほどの実力者が護衛を頼むとは。

 この仕事、相当危険なのか?」

 

 フィネガンは実に真面目である。

 真面目くんの水差しに、俺とナオミは互いの顔を見交わし、軽く肩をすくめた。

 余裕のない奴である。

 

「べつに。人手が要るほど危険な任務、ってワケじゃないけどね。

 ……勘よ」

「何だと?」

「ーー女の勘」

 

 謎めいた色白の顔から発せられた返答に、俺とフィネガンは顔を見合わせる。

 そう言われてしまえば、男の俺たちには何も言えない。

 

「調査探索の護衛とあったが……そもそもここは何なんだ?」

 

 地下トンネルだったはずの周囲はいつしか、幾何学模様の壁に覆われていた。

 

「トンネル工事中に出てきた、地下遺跡らしいわ。

 ーーかつてこの地に在った二柱の神を祀る場所。あるいは、墓所。

 霊廟……かしらね」

 

 神も死ぬのか。そりゃ神主も過労死するわ(以下略)

 

「調査探索とはいったい何だ。まさか学術調査でもあるまい?」

 

 ナオミは一笑に付した。

 

「私たち壊し屋にそんな繊細な仕事ができるわけないでしょう。

 ーーお掃除よ。いつもの、お掃除(ダーティ・ワーク)」

 

 重い両開きの石扉を押し開けると、籠った瘴気の匂いが鼻をつく。

 

「空気が変わったわねーーここからが本番よ。どう? ウラベ」

 

 引き抜いた俺のGUMP、モニタのソナー表示は真っ赤だ。

 

「反応大。エネミーソナーがそこら中で反応していやがる……」

「目的地は最奥。左右どちらかの列石墓室と言われているわ。

 ーー行きましょう」

 

 そこでふとナオミは、俺の顔に目を留めた。

 

「いい顔になったわねーーウラベ」

「……。」

 

 俺は答えない。

 じっとりと、粘りつくような視線を頬へ感じながら……俺はそれを振り切るように。

 GUMPを構え、暗い墓所へと踏み出してゆく。

 フィネガンが呆れたような顔をしているが。俺にだってもうわかっている。

 ナオミの今の台詞はーーくだらぬ秋波などではない。

 俺の顔に張り付いているのは……喪失感だ。

 大切なものを失った人間だけが理解する事のできる、深い深い底無し沼のような、そんな喪失感だ。

 ともに奈落へ引き摺り込まれてしまいたい感覚へ一秒ごとに打ち克っていかねばならない。そんなタチの悪い、誘惑だ。

 ナオミの張り付いたような笑みはーー先輩としてのそれである。

 後輩の通過儀礼を見守る先駆者としての微笑みだ。

 自らの辿ってきた苦難の道を今まさに歩み始めようとする俺に自分の姿を重ね、懐古と共に見物しているのだ。

 そして同時に監視しているのだ。その苦しみから逃げ出して何処へも行くことがないように、と。

 自分が喪失と復讐という重荷を抱えここまで歩いてきたように。お前も歩き続けるのだ、と。

 共感性絶望。

 お前の苦しみは自分が一番よく分かっている。そして同時に、自分の苦しみをお前は一番よくわかるはずだろうーーそんな、絶望の共有者を見つけた昏い喜び。

 それこそがああいう、三日月のような笑みを形作らせる。

 見据えた目は動かぬまま。三日月の口元がさらに裂け、俺を安心させようと言葉を紡ぐ。

 

「ウラベ。安心なさい。慣れればどうという事はないわ。

 遠ざかればそれだけ飼い慣らせるというもの。

 一番怖いのは、怒りが消えてしまうことだけよ?」

 

 先輩は親切に、抱えきれない喪失感と復讐心との付き合い方を教えてくる。

 

「……もう黙れ。ナオミ」

 

 俺は帽子を被り直し、ナオミから顔を背けた。

 

「長く付き合えばーー中華料理屋のオーナーになるか、という気も起きてくるわよ?」

「……いや、そこはどれだけ時間が経っても共感できそうに無いが」

 

* * *

 

 墓室の奥の闇をそのまま抜き出したかのように、三体の悪魔が行手を塞ぐ。

 地霊ドヴェルガー。妖鳥タンガタ・マヌ。妖精ヴィヴィアン。

 

「さてーー護衛さん達。

 さっそくだけど、実力を見せてもらう時が来たようね」

 

 ナオミは腰のカブセルホルダーに手をやったまま、涼しい顔で佇んでいる。

 一方、こちらは握りしめるGUMPのエネミーソナーに赤表示しか出ない。

 どうもここらの敵は全員格上らしい。

 ああそうだ、とナオミが思い出したように言う。

 

「私はCOMP使わないし交渉できないから忘れてたけど。

 ふたりは悪魔と交渉できるなら、会話で戦闘回避とかしてもいいのよ?」

「「いや……COMPが調整中で」」

「サマナー二人連れてきたのに!? 二人とも!?

 もういいわ! それじゃ、いつものように殲滅するだけね!」

 

 言うが早いが、ナオミは目にも止まらぬ速さでホルダーからカプセルを引き抜き……それを開放した。

 こいつの戦いは前にも見た事があるが、悪魔召喚ーーとは少し異なる。

 くりからの黒龍。

 その技名通り、黒雲のごとくねじ曲がる龍がその顎より炎の息を吹き出し、敵三体は……うち二体が倒れ、魔法抵抗の高いヴィヴィアンのみ辛うじて立っている。

 フィネガンよりも素早い俺がスキアヴォーアを抜き放ち、一撃を加えると……ヴィヴィアンもまた消滅した。

 戦闘終了だ。

 

「サポートとして役には立てたが……正直、おまえ一人で十分過ぎる戦力じゃないか?

 どうして護衛の募集を?」

 

 スキアヴォーアをしまう俺が尋ねると、ナオミは閉じたカプセルを見ながら答えた。

 

「急にーーヴィジョンが見えてね。

 生きて帰れないかも知れない、って思ったの」

 

 ヴィジョン。未来視のことだろう。

 そんな能力まであるのかどうかは知らないがーー

 こいつが倒されるほどの強敵の出現が、今見た敵の陣容からは想像できない。

 であれば。戦闘以外の要素で倒されるのか? 例えば、地下通路の崩落とか?

 

「お前を倒せる奴がいるようには見えないが……

 まあせいぜいーー護衛らしく警戒しておくさ」

 

 俺の返答に、ナオミは唇を笑みの形に曲げた。まあ及第点、あたりの意味か。

 

「しかし。いつも思うが、大した管(くだ)遣いだな……」

 

 俺が視線を向けたカプセルを、ナオミは大切そうに撫でさすった。

 西欧式の召喚術らしいが、これは恐らくーー本邦で言う、管(くだ)だろう。

 大昔の術者はこのような管に狐や飯綱を納め、術を行使していたのだと聞く。

 百年くらい前だと、当時の葛葉ライドウが際立った管遣いだったという。

 

「それは悪魔召喚というか、悪魔の技だけを召喚し再現しているのか。

 正直、どうやるのか見当もつかんがーー

 確かにそれならば。コストも低く抑えられ、また使い勝手も良さそうだ」

 

 そもそもマグネタイトを消費している様子がない。MP消費だけであの高火力高威力を実現しているらしい。

 しかもナオミには消耗している様子もあまりない。よほど低コストなんだろう。

 俺の分析に、ナオミは腰に両手を当てた。袖口から魔除けの刺青が覗く。

 

「さすがは古い一族、よく見てること。でもウラベの好みからは外れてるのよね?」

「まあーー俺はな。会話できる『仲魔』の方が性に合う」

 

 古臭いものを見るような目で、ナオミは微笑んだ。

 だが古き良きオールドスタイルにも良い部分はある。

 例えばーー今のナオミのように護衛を雇う必要が無い、とかな。

 玄室をさらに進めば、闇からは新たな咆哮。

 眠りを妨げられた、人ならざる者たちのお出迎えだ。

 ナオミが再びカプセルを構えた。

 

「さあーーここからは一気に行くわよ。

 討ち漏らしは任せるわ」

 

 カプセルから解き放たれたのはーー獣の魔王。

 闇から躍り出た悪魔たちを、魔王の剛腕が蹂躙する。

 今度は物理耐性持ちの悪魔だけが残る。

 俺はナパーム弾を投げつけ、とどめを刺す。

 勝利の余韻に浸る間もなく。第三波の悪魔が押し寄せる。

 新たなカプセルから飛び出すーー満月の女王。

 万能属性の攻撃が耐性関係なく、HPの低い魔物を落としてゆく。

 残るのは耐久自慢の物理タイプ悪魔。またお前か。

 俺とフィネガンだけでは落としきれないと判断し、魔法防御は比較的手薄と見て、俺はいちかばちかの封鏡術を展開するーー

 

* * *

 

 激闘はおよそ半日にも及んだ。

 それほどの時間経過にも感じられなかったのは、一戦一戦がすべて格上との戦いで、一瞬たりとも気が抜けなかったせいだろう。

 一手でも応手をしくじればこちらが落とされる。

 買い貯めた道具類、リソースを全部突っ込む覚悟で臨んだ戦いだったがーーナオミは当然ながら回復の技もカプセルに備え、さらには俺たちを回復するほどの余裕さえあった。

 「手数が増えて楽になっただけよ」とか言っていたが。あれは完全な謙遜だ。

 この死地を実質ひとりで突破できるナオミが危惧するほどの予感とは。一体、何だろうかーー?

 

 地下二階。最奥の墓室らしき場所へ続く三つの石扉を、ようやくすべて確認し終え……俺たちは小休憩を入れていた。

 死闘に順応した身体は、急速な成長を実感させる。

 パワーレベリングに近い探索行は、ほとんど一戦闘ごとに俺のレベルを容赦なく上げていった。

 今の俺のステータスはこうだ。

 

:ウラベ LV35

:HP315 MP137

:力10

:知6

:魔3

:耐11

:速20(22)

:運4

 

 速を上げ、格上相手でも確実に先手が取れるようになった。というかしないと生き残れない。また回避も重要だ。ここの敵は一発一発が実に重い。

 また同時に耐にも振り、レベルアップでのHP上昇分と併せてそれなりの攻撃を耐えしのげるようになった。良い防具を揃えておいたお陰もあって、まあ前衛役は務められる。

 

「随分と……鈍っていたんじゃない?」

 

 息を荒げる俺を見て、ナオミが笑う。

 

「ああーー久々に。駆け出しの頃を思い出した。

 そう言うお前は……随分と余裕がありそうだな?」

 

 涼しい顔のナオミは、ホルダー端にある二つのカプセルを叩いた。

 

「もちろんーー私は全回復の技も備えているから」

「反則に近い強さだな……」

 

 こいつの継戦能力に底が見えない。

 驚きとともに、俺はフィネガンと顔を見合わせた。

 このような難敵。俺だったらどう倒すかな……。

 呪殺攻撃で一撃死させるのが一番楽だろうが。当然、耐性防具などで対策くらいしているだろう。

 仲魔を連れず一人きりだから、石化さえさせれば勝ちではあるな。成功確率は低そうだが。

 ナオミの戦力はこのカプセルに大きく依存しているから、このカプセルを使わせなければよいのか。雷術で感電はありか。麻痺とかも有効ではあるな。まあ俺はそれらの術は使えないが。

 俺の取れる戦術としては、まず先手を取り、俺の封鏡術でひたすら行動を封じ、回復の暇を与えないまま仲魔の物理攻撃でHPを削り切る、くらいしか勝ち筋が見えないな。

 それにはまず俺の封鏡術が必ず成功する事が前提条件だが……魔力知力の高いこいつ相手に成功する確率は低いだろうな。

 であれば。速が高く、状態異常術を使える悪魔を揃えて、俺も含めて先手で状態異常かけまくって行動キャンセルさせて……

 そうなると。魔法使い系で素早くて状態異常術が使える仲魔を揃えて、俺自身は攻撃に回った方がむしろ効率的か……

 でも状態異常は必中じゃないわけだから、低確率とはいえ効く可能性があるなら、俺もダメ元で封鏡術撃っておいた方がいいか……

 

「ーーおい。ウラベ」

 

 フィネガンの声にはっと我に返る。

 

「いきなり、何をニヤつき始めたんだ貴様は……」

 

 ナオミの攻略法を考えるのが楽しくてニヤついていたらしい。

 

「ああ……すまん。

 このナオミを、俺ならどう攻略するかな、と考えてなーー」

「えっ……」「は?」

 

 俺の返答に二人はドン引いていた。おい。

 ナオミは何やら見下げ果てたような目を向けてきて、自らの胸を抱く。

 

「……思ったより元気そうで安心したわ。

 でも。奥さん亡くしたばかりでーー節操が無くない?」

「そっちの攻略じゃねえよ」

 

 一方のフィネガンはまたも呆れ顔だ。

 傍の石扉を見てつぶやく。

 

「これから迎えるだろう、さらなる激闘は貴様とて予感しているだろうにーー

 よりにもよって、仲間の倒し方を考えていたのか貴様は……。

 バトルジャンキーか貴様は……」

 

 失礼な。

 そんな、人を葛葉キョウジみたいに言うなんて。

 

「当代の葛葉キョウジもそんな感じなのか……」

 

 いや、アイツの方がよっぽどバトルジャンキーだ。

 そう断言すると、二人はやれやれと首を振った。

 五十歩百歩と言いたいらしい。

 

「まず考えるべきは目の前の敵だろうが……」

「いや、ちゃんと考えた結果だぞ? フィネガン」

 

 俺はナオミを指さした。

 

「ナオミは自分が帰ってこられないという予感を得た、と言っていた。

 ということはつまりーーこの不沈要塞が。何らかの形で攻略される可能性がある」

「不沈要塞とは失礼ね……」

「ものの例えだろうが。

 ともあれ、ナオミがどう倒されるかをシュミレートしておくのは無駄じゃない筈だ」

「バトルジャンキーの言い訳にしか聞こえんが……」

 

 二人の反応は芳しくない。

 だが目の前の仕事というならば、ナオミがどう倒されるかを考え、対応策を用意するのが俺たち護衛の仕事のはずである。

 それにーー今朝からずっと感じている、俺のGUMPからの拍動にも似た感覚。

 これは以前にも……経験したことがある。

 俺の予想が正しければ。

 恐らく今のナオミに必要なのは、俺らのようなただの同行者ではなくーー

 

「……まあいいわ。それに、もう休憩も十分でしょう。

 でーー二人ももう感じてるでしょう? 強敵の存在を」

 

 ナオミは闇の向こう、回廊の先にあるもう二つの扉を示す。

 中央の大扉は開かないが。ここにある石扉と、そして回廊のつきあたりにあるもう一つの扉は開く。

 というかどちらも、開けて中を見てきた。

 どちらも眠れる神が鎮座していた。

 女神ティアマトと男神アプスー。

 ……平崎も古代文明の根拠地だったが。

 この天海にも、こういった神を崇める古代文明が存在したというのだろうか?

 あるいは、他国から流れ着いた荒神をここへ鎮め祀ったというのだろうか?

 二上門。

 二柱の神の眠る地。

 

「でーーどちらを倒す?」

 

 ナオミの軽い問いかけに、虚を突かれた俺は瞬きだけを返す。

 動作停止する俺とフィネガンを見て、ナオミは笑った。

 

「大掃除とは言ったけど……そこまで説明してはいなかったわね。

 別に、両方倒してこい、なんて言われてないわ。

 移設したいシステムの安置場所として。神の御座(みくら)がひとつ、欲しいだけなんですって。

 どちらかを掃除して空き家にすればーー任務完了よ」

 

 ナオミは俺らに決定を委ねるつもりらしく、答えを待っている。

 まあこいつの強さならどちらでも殺(や)れるんだろう。

 

 さっき扉を覗いた時に、デビルアナライズは済んでいる。

 女神ティアマトは、物理攻撃に弱く、魔法攻撃に強い。

 男神アプスーは、物理攻撃に強く、魔法攻撃に弱い。

 

 さてーーどちらを倒そうか……?

どちらを倒す?

  • 俺ら物理攻撃寄りだし、ティアマト
  • いやここはあえての苦難の道、アプスー
  • 両方倒してしまってもーー構わんのだろう?
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