戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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初めまして、濁酒三十六です。この小説はフォレストページの自サイトに連載中の小説を転載しました。


聖魔邂逅の章
不穏の影…


 イギリス大英帝国の首都ロンドン郊外にある広い敷地を持つ大きな屋敷…。

 その一室にて三人の人物が険しい顔で国の存亡に関わるかも知れない重大な案件について話し合っていた。…一人は黒服サングラスの男。一人は赤黒い部隊服に真っ黒な左腕、ショートヘアの若い女。一人は窓際にある豪華なデスクにて椅子に足を組み高級葉巻を加えた褐色肌にロングヘア、左目に眼帯をした中年女性。

 眼帯をした中年女性は葉巻を口から離して煙を吐くと、鋭い眼光を黒服サングラスの男に向けて侮蔑の言葉を吐き出した。

 

「三十年前の惨劇を経験しておきながら、尚も“その力”を欲していたとはな…。

度し難い売国奴共だ!」

 

 黒服サングラスの男は自分に対して言っている訳ではなくとも、向かいに座り葉巻を吸う女性の威圧感に気圧されて額に汗を滲ませる。

 彼はこの女性の部下であり、エージェントである。

 先日、MIー5より齎された情報に三十年前に首都ロンドンを強襲したネオナチス…ミレニアム機関が残した悪魔の極秘資料を隠し持っていると云う一部の政府研究機関を彼等ヘルシング機関の特殊部隊が制圧し、取り調べていた。

 黒服のエージェントはその研究機関の大まかな犯罪行為を手に持つ資料から読み上げた。

 

「機関施設内を隈無く調べた所…やはり彼等はミレニアムの吸血鬼製造の研究資料を入手していました。

しかし実験らしい実験はしておらず、資料も暗号化されている箇所が殆どでその解読に手こずっていた様子でした。」

 

 其処で黒服の男は一区切りをして、眼帯の中年女性は黙ったまま男の報告を聞き続ける。

 

「…しかし、どうやら彼等は外部の組織と接触して暗号の解読を協力依頼していた模様です。」

 

 其れを聞くと、眼帯の中年女性だけでなく傍らで聞いていた黒い左腕の女もその瞳に危険な光を宿らせる。

 

「愚か者共がっ!!

…して、その組織の名は!?」

 

 二人の女性の鋭い視線を浴びて萎縮する黒服だが、冷や汗をかきながら最後の報告をした。

 

「そっ、その組織の名前は…、

“塔(The tower)”

…日本の“裏”を牛耳る集団です。」

 

 報告を終えたエージェントを退かせ、室内は眼帯の中年女性と黒い左腕の女の二人だけとなった。

 

「セラス、アーカードを呼んで来い?」

「了解しました、インテグラ様。」

 

 黒い左腕の女…セラス・ヴィクトリアは軽い返事を返すと影に吸い込まれる様に消え、残された褐色肌眼帯の女性…インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングは葉巻を灰皿にすり潰すと立ち上がって後ろの窓から外を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本…東京都にある見滝原町。高層建築物が立ち並ぶ夜闇の中を四つの人影がまるで忍者の様に屋上から屋上へと飛び移っていた。

 その四つの影を追うもう一つの大きな影があり、ソレは両腕をまるで蛇の様に伸ばして襲いかかって来た。

 

「お出でなすった、行くぜさやか!」

 

 影の一つが振り返り、長い髪を結ったポニーテールと手に持つ長槍を振り翳して追って来た大きな影に向かって突進する。

 

「ちょっ、杏子!?」

 

 また一つ影が振り返りポニーテールの少女…佐倉杏子を追ってショートボブの少女…美樹さやかが続くと二つの影も止まって一人は両手に二挺のマスケット銃を握り、一人は長い黒髪を右手で返して弓矢を取り出した。

 

「仕方ないわね、暁美さん援護射撃行くわよ!」

「分かりました、巴さん!」

 

 ツインロールヘアの少女…巴マミの二挺のマスケット銃と黒髪長髪に赤いリボンを巻いた少女…暁美ほむらの一矢が同時に発射されて杏子とさやかを脇から抜き去って襲いかかろうと伸びてきた影の両手に見事命中して粉砕した。

 影は夜闇に絶叫し、僧侶の様な衣を翻してスキンヘッドにモザイクがかかったかの様な不気味な形相に怒りを刻んで口から瘴気による毒息を吐き出した。

 しかし杏子の長槍が他節根に変化し、吹き荒ぶ暴風を起こして此を吹き飛ばしその隙にさやかは敵の懐に飛び込んでいつの間にか両手に握った片刃の双剣でザクリとその胸に“×”を刻みつけ、続け様に杏子がそのモザイクがかった額を長槍で突き貫いた。

 断末魔が四人の耳を劈き、悪しき僧侶はボウッと炎に包まれて消滅した。

 

「アンタはーっ、

どうしてイツもイツも先走るのよっ!

わたし達チームであの〈魔獣〉と戦ってるんだから勝手な事しないでよね!?」

 

 静まり返ったビルの屋上で白いマントの上からも分かるくらいに肩を怒らせた美樹さやかが長槍を両肩に担いでふてくされている佐倉杏子を怒鳴りつけ、その間を取り持とうと巴マミがさやかを宥めようと頑張っていた。

 

「美樹さん、気持ちは解るけどもうその位で…。

佐倉さんだって反省してる筈だから…ね?」

 

 マミがそう言うと杏子は長槍を担いだまま背伸びをしてニヤリと笑ってさやかを見る。

 

「そーそー、反省してますよ~。

だからもー許してね、さやかちゃん?

…ニッヒヒ♪」

 

 明らかに反省とは無縁の杏子の態度にさやかは「ムキーッ!」と奇声を上げて掴みかかろうとした所をマミに止められた。

 

「まっ、待ちなさい美樹さん!」

「止めてくれるなマミさん、今日とゆー今日は杏子に目に物見せてくれる!!」

 

 暴れるさやかを必死に押さえるマミ。そんな二人の慌てる姿を杏子はケラケラと笑っていた。

 そして一人、その光景を黙って見つめている暁美ほむらは優しげに微笑み…“存在無き友”に想いを馳せる。そんな彼女の右肩に一匹の白い猫…いや、三角耳から更に長い耳の様な物を伸ばした赤い瞳の生物が現れてほむらに話しかけてきた。

 

「相変わらず仲が良いね、君達は…。」

「えぇ、この光景は“あの娘”が望んだモノですもの…。」

「あの娘…?

ああ、前に話していた“まどか”っ子だね。

今は“円環の理”となり魔法少女を導く存在となった少女。

まぁ、僕には未だ信じられない話だけどね。」

 

 白猫の様な姿をした生物…インキュベイターことキュウべえはほむらの肩から降りて地面に座り左耳の後ろを足で掻いた。ほむらの表情は少しカタくなり、キュウべえに冷たい視線を浴びせる。

 

「それより、少々厄介な状況になってきているんだ。

…聴いてくれるかな?」

 

 何時も飄々と言葉を交わす彼が少しだけ緊張感を持っている事に気付いたほむらは険しい表情となり、キュウべえに頷き返した。

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