戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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少女は人として挑む…

 それは絶望的な言葉であった。インテグラは今確かに言ったのだ、お前達は逃げられないのだと…。

 そしてみゆきは其れを理解…いや、知っていた。昨日の雪の降った夜に人の死を垣間見た時から、星空みゆきは“違う世界”への境界線を踏み越えたのだと分かっていたのだ。

 

「ごめんね、みんな…。

わたしが勝手に囮なんて事したから…、こんなに大変な事態になっちゃった。

…でもね、わたし…

昨日の夜の出来事が頭から離れないの。

追ってくるヘリコプター、

襲って来た鬼面の兵士達、

初めて撃たれた銃弾の痛み、

…人が撃たれて死ぬ瞬間。

だから…

わたしは戦う、誰も傷つかない為にみんなを護る戦いをするよ!」

 

 あかねは口を噤み、みゆきの右の太腿に視線を移す。みゆきは昨日怪我をし、スマイルパクトの治癒力で治ったと言っていた。

 

「銃で…撃たれたんか?」

「うん…。隠したくはなかったけど、みんなに一杯心配かけそうだったから…どんな怪我までは言えなかった。」

 

 みゆきは顔を曇らせ、あかねは言葉を失う。沈黙が室内を支配しようとされたその時、パンパンパン…、と拍手をする音がし、今まで黙って見守っていたアーカードが一人手を叩いていた。

 

「みゆき姫、お前の決意は見せてもらった。

先ずは及第点をやろう…、だがまだ足りない。

お前は“それ”を見つけ戦い続けるのか、それとも何も出来ずに只野垂れ死ぬだけなのか、近しい未来がとても…とても楽しみでならない。

そうだろ、星空みゆき?」

 

 邪悪な嘲笑があかねの畏怖と憤怒を膨らませるが、みゆきはそんな彼女の握られた手を強く握り返し吸血鬼を見据えた。

 

「アーカードさんを幻滅させてしまうかも知れないけど、わたしはわたしのままで戦うよ。

わたしはプリキュアで…人間だから!」

 

 強気に笑顔を作るみゆきはアーカードが歯茎を隠すと、ほんの一瞬だが此方に微笑んでくれた様に見えた。

 昨日今日出会っただけなのにみゆきは何故か彼には奇妙な信頼を寄せてしまう。

 そしてほむらは彼の存在を矛盾に感じていた。アーカードは人の命を何とも思わずに躊躇いなど微塵もなく殺し、屍の山を築く恐ろしい化け物に違いない。…だが何故彼はインテグラと云う女性の下で人の味方の様な立ち位置に居るのだろうかと…。

 そしてアーカードは目の前にいる少女達を紅い瞳に映し出し、この先に待つ悲劇惨劇に思いを馳せる。

 

(さて、この辺境の島国で正気と狂気の舞台が整おうとしている。

魔法少女にプリキュア…、二つ共絵本の話の産物の様な存在だ。

そしてヘルシング機関と密かに繋がる組織“サーラッド”。

その宿敵であり私のターゲットとなる秘密組織【塔】、恐らくは奴等が奪った“ミレニアム”の研究成果は既に解読されている可能性が高い。

何せ彼方側には“彼奴”がいるのだからな、そうなのだろう、“少佐”?)

 

 今此処に魔法少女である暁美ほむらとキュアハッピーこと星空みゆきが英国ヘルシング機関の傘下となり、秘密組織【塔】と対峙する事となる。

 しかし此によりみゆきとあかね達プリキュアには僅かな溝が生み出されていたのであった…。




【聖魔邂逅の章】完…
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