「ジョーカーてめえ、後一歩でキュアハッピーを倒せたのに何で邪魔しやがる!?」
怒りを露わにジョーカーに詰め寄るウルフルンを彼は“まぁまぁ”となだめ、ウルフルンの問いには“いつもの殺し文句”で答えた。
「コレは皇帝ピエーロ様の御意志です。
あの方の意思は我々の全ての行動を決定付けます!
今は彼女達を倒すべき時ではありません。」
皇帝ピエーロの名前を出された途端にウルフルンは唸り歯軋りをするしか出来なくなった。
ほむらは思う。飄々としながらも油断出来ない気配と威圧感を併せ持つジョーカー。姿がコミカルでも強力な使い魔であるアカンベェ。それを操りかなりの実力を持つであろうウルフルン。更に三幹部と言うならウルフルンと同格の魔物が後二人はいる筈、ならばバッドエンド王国もまた見逃せない大敵なのかも知れない。
(みゆきの思惑が別にあったとしても、彼等と戦わずに済むならわたし達も【塔】や魔獣との戦いに専念出来る。
…でも、休戦の間に彼等が何もしないと云う保証はない。
途中で協定を破棄する可能性も高いわ!)
ほむらはコチラを強い視線で睨むウルフルンを警戒しながらキュアハッピーとジョーカーを静かに見守った。
不安な気持ちがありながら気丈な顔持ちで隠し、キュアハッピーはふてぶてしい笑みのジョーカーを見据えようとすると、傍らにキュアビューティが立つ。その表情は心配そうではあったが、瞳からは彼女への信頼が強く滲み出ていた。
そしてビューティが抱えていたキャンディも彼女と同じ瞳でハッピーを見つめ、にこやかに微笑みかけた。
「さっきはちょっとビックリしたけど…
キャンディはハッピーを信じるクル。
キャンディだけじゃないクル、みんなもキュアハッピーの事信用してるクル♪」
黄色いフワフワした長い耳でハートを作りキャンディなりにもハッピーを盛り立ててくれていた。
「ありがとう、キャンディ。」
「ハッピー、私はハッピーがバッドエンド王国と休戦したい気持ち…何となく理解出来ました。
私はハッピーに賛同致しますわ。」
そうビューティがハッピーに言うと、サニー達も二人に並びビューティに続いた。
「ウチかてビューティと同じで~、ハッピーに賛同や。
今の状況でバッドエンド王国の相手はしてられへんねん!」
「わたしも、何か…
ウルフルンやアカオーニ、マジョリーナ達と戦いたくないな…とは思ってたんだよ。」
「わたしも…。
何だろう…、ウルフルン達と【塔】って同じ“悪”だとは思えなくて…。
だから…、どうしても気持ちの切り替えが出来ない自分がいるんだ。」
ピースに続いてマーチが口にした事は正にハッピーが感じていたものであった。みゆき達がプリキュアになり、今まで戦ってきたウルフルン達は人々からバッドエナジーを抜き取って悪の皇帝ピエーロを甦らせる為に動いてはいたが、彼等の悪事は人々を困らせ堕落させる事しかしてこなかった。
しかし【塔】は…“人間の悪意”は違う。同じ人を人と思わず、その存在を否定し、まるで道具の様に扱いその命を廃棄する。…そんな奴等と彼等を同じ“悪”として見たくなかったのである。
「うん、マーチ…わたしも感じた。だからわたしはウルフルン達を【塔】の奴等と一緒にしたくない!」
そう言うとジョーカーに向き直る。
「わたしはもう一度云う。
わたし達は、貴方達に休戦を申し立てたい!!」
ハッピー達の話を聴いてほむら達魔法少女は溜め息を吐いてしまうが、決して悪い気はしなかった。
前回の戦いの中で見せたキュアハッピーの優しさは彼女の心の強さそのものであると見せつけられたからである。
ほむら、さやか、マミ、杏子はキュアハッピーこと星空みゆきの器の広さに強く興味を持ったのである。例え今この場面でハッピーの提案が跳ね返されたとしても、魔法少女達もまた“彼女”を信じて行動を共にするのだと強く決めていた。
(みゆき…。)
こんな気持ちになるのは何時の日以来だろうか、ほむらはかつて死ぬ事を宿命付けられた友達の為に幾度となく時間を逆行した地獄の日々を思い出していた。
皆が敵であるバッドエンド王国の代弁者であるジョーカーの返事を待つと、彼は殊更邪悪な嘲笑を仮面の顔に刻んでおり、プリキュアと魔法少女達を不快にした。
「おやおや、皆さんそんな目くじらを立てないで下さい。
私としては願ったり叶ったりなのですから♪」
人をからかう様な口調だが、ハッピーの提案に対して“願ったり叶ったり”と口にする彼が此処に来た理由が彼女達に見えてきた。
「いいでしょうキュアハッピー、貴女の提案をお受け致しましょう!」
ジョーカーはまるで飛び込んできなさいとでも言わんばかりに両腕を広げたオーバーアクションを見せた。キュアハッピーは寸なりと休戦を受け入れた彼に対し戸惑ってしまう。