戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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交わる緩やかな時間…

 殯邸に喚ばれ、サーラットと協力体制となってまた数日が過ぎた。あの日、サーラットのメンバーと交友を深める事は出来たのだが、その後…小夜とアーカードはみゆき達の前に姿を見せる事はなかった。

 そしてその後の数日の間に魔法少女達にはまた一人仲間が出来ていた。名前は“千歳ゆま”、杏子とさやかによって助けられた小学生程の少女である。

 彼女が魔法少女になった際に杏子とキュゥべえの間にトラブルがあった様ではあったが、みゆき達はその事情について立ち入ってはいけないと感じ、深く聞こうとはしなかった。

 午後の授業も終わり、下校時間となる七色ヶ丘中学校。2年2組の教室ではみゆき達が今日の予定を互いに話していた。

 

「今日はみんなどうするの?」

 

 みゆきの質問に先ずあかねが答える。

 

「ウチ今日は部活ないし…、たまには店の手伝いしようかなぁ思うてる。」

 

 次にやよい…。

 

「わたしも今日お母さん帰り早いって言ってたから夕御飯作ってあげたいな…って。」

 

 れいかもまたとても残念そうに今日の予定を皆に話す。

 

「申し訳御座いません、私は生徒会の会議がありますので皆さんと御一緒する事が出来ません…。」

 

 そしてなおが口を開く。

 

「わたしも…今日“佐倉さん”と会う約束があるんだ。」

 

 なおの口から佐倉杏子の名前が出たのが不思議に思えたのか、みゆき達四人はなおに注目して二人が何時から友達になったのかと聞き始めた。

 

「えっ、いや、この前ゆまちゃんを紹介された時にわたしが妹と弟がいる事話したら買い物付き合ってくれっ…て言われたから今日行こうって約束したんだ。」

 

 みゆきはなおの話に思わず笑みがこぼれた。その笑顔に気付いたやよいがそれとなく彼女に聞いてみる。

 

「どうしたのみゆきちゃん、何か良い事でもあったの?」

「うん、戦いの事以外で魔法少女のみんなと友達になれそうだな…って思ったらスゴく嬉しくなっちゃった♪

なおちゃん、明日またそのお話聞かせてね?」

「えっ…、うん、分かった。」

 

 四人とも今日の予定は私用となるが、まだみゆきが今日の予定を話していないのであかねからみゆきに聞いてみた。

 

「みゆきは今日、どうするん?」

「わたし…?

わたしは…、久し振りにキャンディと一緒に不思議図書館通って英国大使館へ行ってみようかな~?」

 

 四人はみゆきの発言にギョッとし、慌てて彼女を止めた。

 

「いやいや、そんなお友達の家行くみたいに行く場所じゃないやろ、みゆき!?」

 

 あかねの言葉にやよいが強く頷く。

 

「そうだよ、あそこはヘルシング機関の秘密基地なんだよ!」

 

 やよいの言葉になおが突っ込みを入れる。

 

「やよいちゃん、それ以前の問題だから…。」

「みゆきさん、本来大使館と云う場所は各国がその国との外交を行う為に置かれた施設であり、私達の様な一般人はおろか…日本の政治家でさえ簡単に出入りが許されない所なのです。

言わば日本の中にある別国の領土、“国際問題”になるのは免れませんよ!?」

 

 れいかの強い説教に押されてみゆきは苦笑してたじろぐ。

 

(それじゃあ、みんなで英国大使館に押し入った時既に国際問題になってしまってるんじゃないかな…?)

 

 …と其処に英国大使館より預かった端末機が鳴り、みゆきはそれを取り出して届いたメールを確かめる

 

[至急、大使館へ来い。

アーカードより…。]

 

 …といった内容が英語で書かれており、みゆきは苦しげな表情となり首を傾げた。

 

「…英語読めない…、アーカードさんのバカ!」

 

 和訳に苦しむみゆきにれいかがメールの内容を見て彼女に内容を伝えた。

 

「至急、英国大使館に来て欲しいとありますね…。

何かあったのでしょうか?」

 

 それを聞いたみゆきの目が輝き、アーカードからの“招待”に心を弾ませた。

 

「やったーっ、アーカードさんの方から“会いたい”なんて来るなんて…

想いが通じ合うわたし達はきっと、運命の糸で繋がっているんだわ♪♪」

「吸血鬼相手にそんな結滞な糸を繋げるなや!」

 

 いきなりあらぬ方向へ思考が飛んでいるみゆきにあかねは即座にツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見滝原モノレール駅の改札前、佐倉杏子は千歳ゆまを連れて会う約束をしている緑川なおを待っていた。

 時刻は約束の時間よりはまだ早い二十分前、杏子は“じゃがりこ”を三本ゆまにやり、自分も一本を加えてポリポリと食べた。

 そして時間は約束の五分前、改札口を挟んだ奥になおの姿が人混みの中で見えた。

 

「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった!」

 

 改札口を抜けて駆け寄るなおを迎える杏子とゆま。

 

「別にいいよ、ほぼ約束通りだ。」

 

 杏子は特に表情を変えずになおに言葉を返し、じゃがりこの箱口を彼女に向けた。なおは少し戸惑ったが箱口から二本抜いてそれを食べる。

 

「ありがとう、佐倉さん。」

「杏子でいいよ、あたしもアンタをなおって呼ぶから。」

 

 ざっくばらんな態度だが、なおとしては其方の方が気を遣わずに良いと考えて彼女に応えた。

 

「分かった。

それじゃ杏子、話って…何かな?」

「あぁ、大した事じゃないけど…、

ゆまの洋服買うのに付き合って欲しくてさ。

ほむらとマミは一人暮らしだしさやかも一人っ子でよ、この前みゆきに聞いたら妹がいるのってアンタだけだって言うから誘ってみたんだ。」

 

 なおの中で合点がいった。杏子は妹分であるゆまの洋服選びに妹がいるなおの意見を聞きたかったのである。ゆまとの出会いとその後の事情を想像するなら杏子としてはやはりアドバイスをくれる仲間が欲しかったのだろう。

 そして彼女はその相手になおを選んだのである。

 

「そっか、それじゃあ早速行こうか?」

「あぁ、いくよ、ゆま?」

 

 杏子は今さっき貰った残りのじゃがりこに夢中のゆまの頭を突っつき、三人はショッピングへと繰り出した。

 見滝原モノレール駅側にある子供服専門店に入り、杏子は真っ直ぐ洋服の方へ向かおうとするがなおは彼女を呼び止める。

 

「杏子ちゃん、ゆまちゃんの下着とかはいいの?」

 

 そう聞くと杏子は「あっ!?」と声を洩らし、ゆまの手を引いて下着売り場に足を向けた。

 

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