此処は次元の狭間にある空間施設…不思議図書館。世界中のメルヘンやファンタジー等の童話や絵本が自動的に蒐集される施設で誰が何の為に創造したかは解らないがキャンディ達メルヘンランドの妖精には馴染みの深い場所であり、プリキュアの秘密基地を設けた場所でもある。
本日みゆき達プリキュアはほむら達魔法少女を此処へ招待し、彼女達だけで今の状況分析を行おうとしていた。
四人席のテーブルには黄瀬やよい、巴マミ、星空みゆき、千歳ゆまが座り美樹さやかと暁美ほむらでホワイトボードを用意して皆に見える様にテーブルの斜めに設置した。
「それでは、コレより私達プリキュアと魔法少女との合同会議を行いたいと思います。」
れいかの馴れた進行役にマミとさやかは関心しながら見つめ、やよいとあかねもれいかの話に耳を傾けた。ほむらはれいかの隣向かいでマジックペンを滑らせるホワイトボードに注目する。
れいかは先ず共闘関係にあるスマイルプリキュア、魔法少女、ヘルシング機関、サーラッドの名を書く。
「私達スマイルプリキュアは東京で偶然“古きもの”に捕らわれた柊真奈さんを追い、小夜さんとサーラッドの皆さんと出会い…その以前より【塔】を調べていたアーカードさんとみゆきさんが接触した後にヘルシング機関に協力する事となりました。」
ホワイトボードに“敵=【塔】”と書くれいかに続き、ほむらがヘルシング機関に関わった理由を説明する。
「わたし達についてはキュウべえが懸念している“魔獣の激減”の調査の為に先ずわたしが単独でヘルシング機関との接触を図り、結果的にみゆき達プリキュアとの合流を果たす事となったわ…。」
皆二人の話に頷き、れいかは続いてホワイトボードにマジックペンでキュウべえの名を書いた。
「ほむらさんの話によれば“キュウべえ”さんは魔獣の情報を得る為に以前からアーカードさん…私達の敵であるバッドエンド王国のジョーカーとパイプを繋いでいたらしいのですが…?」
れいかの質問にほむらが答える。
「えぇ、キュウべえはわたし達の魔法少女としての大まかなデータや貴女達プリキュアの行動情報の代わりに【塔】の細やかな組織図や魔獣に関する情報を得ていたみたいね。」
此にはあかねが怒りを露わにした。
「何やねんソレ、明らかに“スパイ”シーな裏切り行為やん!!」
くだらない洒落が混じってはいるがあかねは本気で憤慨する。しかしさやかが冷静な顔付きで彼女の怒りに水を差す。
「キュウべえにとっては、教えても問題ないと判断された情報なんだよ。
…でもアイツを弁護する訳じゃないけどわたし達の住居をバラした訳じゃないし、反対にキュウべえが得た情報はかなり役に立ってる。
星空さん達が危なかった時だって、アイツが教えてくれたからわたし達助けに行けたんだよ。」
さやかの話を聞いてあかねはむ~と唸って口を噤んだ。情報は制する者は戦いを制する。…インコグニート戦はプリキュア達の危険がジョーカーからキュウべえを通じて漏れ、更に味方への連絡が早かったが故に切り抜ける事が出来たのである。
れいかはマジックペンでキュウべえと書いた隣に“ジョーカー”の名前を書いた。
「キュウべえさんとジョーカーの協力関係はこの前のわたし達バッドエンド王国との休戦協定の際に切れた…と考えても宜しいですか?」
れいかの問いにほむらが答えた。
「えぇ、キュウべえの口からはハッキリ聞いてるから安心して?」
れいかはホワイトボードにあるキュウべえとジョーカーの間にある“=”に“≠”と記入して関係が切れた事を表した。
「話を戻しまして…、小夜さんや真奈さん達サーラッドとは最近改めて共闘と云う形になりましたが、みゆきさんはアーカードさんから奇妙な事を言われたそうですね?」
れいかから尋ねられ、みゆきは答える。
「うん、アーカードさんはリーダーの殯蔵人さんを信用するなって言ってた。
理由は解らないけどあの人はわたし達にとって“鬼門”だって…。」
鬼門…、鬼が現れ出でる門。災厄をもたらす門。害悪を振り撒く門。其れが鬼門である。杏子は険しい顔付きになり、ゆまの肩に手を置いた。
「もし其奴が裏切るなら容赦しねぇ。だけどそのアーカードだって何処まで信用出来んだ?
彼奴吸血鬼だろ、“化けもん”なんざ簡単に掌ひっくり返すんじゃねーか?」
杏子もまた他のプリキュア達と同じでアーカードに対しては一切信頼は置いていない。恐らくはマミやさやかもそうなのかも知れない。
「はっぷっぷ~、何でみんなアーカードさんの事嫌うのかな~?」
怪訝な顔をしてみゆきは此処にはいないアーカードを弁護するのだが、皆には全く受け入れてもらえずに拗ねてしまった。
「もう~、みゆきちゃんてば…。」
なおはみゆきにかける言葉が見当たらず困り顔となる。
「ぷ~、なおちゃんもまだアーカードさんが嫌いなの?」
なおは答えに困った。ハッキリ言えば好き嫌いのレベルではないのである…。
「みゆきちゃん、なおちゃんもわたしもやっぱりアーカードさんがまだ恐いんだよ。
理由はみゆきちゃんだって解ってるでしょ?」
やよいに言われ、みゆきは口籠もった。彼女達にとってアーカードは邪悪な存在なのだ。彼の嘲笑に彼女達は恐れしか感じ得ないのだから…。
「わたしはそれなりにあの吸血鬼を信用しているわ。」
其れは意外にもほむらの口より出た言葉であった。彼女の言葉を聞いた途端にみゆきの顔は明るくなり万歳までして喜び始めた。
「やったーっ!!
ほむらちゃんにもアーカードさんの魅力が解るんだね♪♪」
終いには立ち上がってほむらに飛びついてガッシリ首に手を回し離れなくなってしまった。
「キャンディも抱きつくクル~!」
それを見ていたキャンディもみゆきの真似をしてほむらの頭にしがみつく。彼女は抵抗こそしないが、その表情は暑っ苦しいと言わんばかりに目を細めて歪めていた。
ほむらがアーカードを支持する理由は自分達にとって単純に最大の戦力となっているからである。そして何故かは解らないが、アーカードがみゆきを裏切る様な真似は絶対にしないと云う確信が心中にはあった。
(本当に不思議な関係よね…?)
みゆきとアーカードの関係が自分達の今後にどう影響してくるのかもまだ分からないが、アーカードはみゆきに対し何かしらの興味を持ち…みゆきはアーカードに対して“初恋”の様な感情を抱いているのだと推測していた。
そしてれいかはホワイトボードに書いた【塔】の字をマジックペンで差す。
「では、懸念としてサーラッドに関しては彼等の本拠地へ行く事の“自粛”を提案します。」
れいかからの提案はプリキュア達は会合前に聞いていたが、やはり仲間を疑う後ろめたさもあり賛成しながらも表情を曇らせた。
しかしほむらからある指摘を受ける。
「それはいいとして…、
“アルフォンス・レオンハルト”の件はどうするの?」
現在アルフォンスは七色ヶ丘市にてみゆき達の日常に於いての警護にあたっており、今はあかねに武術の基本を教えたりもしていた。
「アルフォンスは大丈夫や!
あん人は“仲間”を裏切る様な事はせえへん!!」
あかねがほむらの言葉に強く反抗をする。
「そっ、そうだよ。
アルフォンスさんとても優しい…かな…?」
「うおい、やよいちゃん!?」
やよいの煮え切らない応援にあかねは情けない声を出した。
「でも彼奴、殯蔵人のボディガードだろ。
スパイの可能性もあるんじゃないか?」
直球で言い出したのはやはり杏子であった。彼女の言う通りでアルフォンスは殯蔵人の直属のボディガードで秘書である矢薙春乃よりも彼に近い存在なのである。もしアーカードの言う通りに殯が危険な存在であるならプリキュアの情報はアルフォンスを通じて筒抜けと云う事になる。
「…ていうか日野さん…、アルフォンスって人に格闘技習ってるんでしょ?」
さやかが疑念の眼差しをあかねに向け、彼女がアルフォンスのみならず、あかねにまで疑いを向けてきたのだとみゆき達は思った。
「美樹さん、杏子ちゃん、ほむらちゃん、アルフォンスさんは絶対に味方だよ!
だって、だって、この前わたしとキャンディにソフトクリーム買ってくれたもん!」
「そうクル、ソフトクリーム美味しかったクル♪」
ほむらに抱きついたままあかねとアルフォンスを弁護するみゆきとキャンディだが、さすがに鬱陶しくなったのでほむらは無言でみゆきの手をほどき、キャンディを自分の頭からみゆきの頭に移動させた。
其処へ何時の間にか隣に来ていたあかねが何やらすがる様な目でみゆきに尋ねた。
「みゆき…キャンディ…、“アル”からソフトクリームって…、ホンマ?」
普段見せない弱気な彼女にみゆきは驚きながらもその質問には首を縦に頷いた。
「そんな~、ウチまだコーラとポカリしか奢って貰うてへん…。」
ガクリと肩を落とし、一気に憔悴するあかね。アルフォンスとしてはコーラとソフトクリームの差に大した差を感じたりはしていないのだが、“今”のあかねとしてはこの差は無視出来ない“事件”であった。
「あかねちゃん?」
「あかねどーしたクル?」
項垂れたあかねの顔を覗き込むみゆきとキャンディだが…、あかねの表情からは完全に生気が失せていた。
そんな彼女に向けてマミが謳う…。
「季節は冬ども心は春なり…、あぁ真っピンクのサクラサク…。
by巴マミ…フフッ♪♪」
『まっ、マミさん…???』
ニヤリと笑い、祟り目の様なマミの瞳が何とはなしに怖いと感じた少女達であった。
時折脱線しながらも会合は続き、プリキュアと魔法少女達は今後の方針を固める。“ヘルシング機関”との関係をそのままに、サーラッドに対しては殯邸への行き来を自粛…殯蔵人と一人だけでの接触は厳禁としてアルフォンス・レオンハルトは今の状況を逆手に取り監視をする。しかし他のサーラッドメンバーに関してはヘルシングと同じ今の協力関係を維持する。そしてプリキュアは魔獣討滅への全面協力と魔法少女もまた彼女達との連携を重視する事となったのである。