戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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文章の最終に加筆しました。


囁かな恋歌は荒ぶる靴音に掻き消され…

 不思議図書館での会合から数日が経っていた。その間、プリキュアと魔法少女とで魔獣狩りを二度程行ったのだが…魔獣は全く見つからず、骨折り損となっていた。

 そして本日は欠伸をしながらの登校となる少女達だが、その中で美樹さやかは遠くで仲睦まじく横に並び歩く男女の背を見つめていた。

 松葉杖を突いて歩く男子の名前は上条恭介。さやかの幼馴染みで片想いの相手であり、隣に付き添うふわふわロングヘアの少女は志筑仁美。さやかの級友で数週間前までは親友でもあったが、今は上条恭介のガールフレンドであり…さやかの恋敵である。

 二人は愉しげに話しながら同じく登校する生徒達とも一緒に歩んでいく。

 さやかにはとても眩しい光景であった。しかし今の彼女は闇に隠れ、命ある限り魔獣を狩り続ける魔法少女である。普通の生活には戻れない、そして何時その命が終わるかも分からない、恭介に告白など…出来る訳がないと彼女は自分に今一度言い聞かせた。

 

(…アイツの負った“キズ”を治すと決めた時に決心した筈だよアタシッ!

恭介とは幼馴染みのままでいい。恭介の事は…仁美に任せるって…。)

 

 さやかは自分の頬を思い切り抓くって引っ張り、本気でやり過ぎたのか…抓った頬を抑えてしゃがみ込んだ。

 

「…な~にやってんだよ、さやか?」

 

 頭の上から声がしたのでしゃがんだまま頭上を見上げると、其処に見滝原中学の制服を着た佐倉杏子が怪訝な顔付きでさやかを見下ろしていた。

 

「べっ、別に何もやってないわよ!」

 

 そう啖呵を切って立ち上がるさやか。杏子はすました表情になり鞄を肩に背負うとぼそりと呟いた。

 

「上条と仁美だろ?」

 

 隣のさやかは何も言わず先に歩き出し、杏子は後に続く。

 

「何を仁美に遠慮してんだか知んないけどさやかには上条と付き合う“権利”があんだから、堂々とアタックすりゃあいいんだよ。

恋愛なんて結局は略奪愛だぜ!」

 

 鞄を持つ手とは反対の手で握り拳を作り見せる杏子をさやかは冷ややかな目を向けただけで直ぐに視線を反らしてしまった。

 

「何が略奪愛よ、恋愛と違うじゃない。

それにわたし達は魔法少女なんだから、そんな“モノ”に浮かれてる暇なんてないわよ。」

 

 そう言い切り、杏子を後ろに歩く速度を早めた。杏子はさやかの背中を見つめ、軽く鼻息を鳴らす。

 

(…まっ、確かにそうだけどさ…。

本当に“それ”でいいのかよ…、さやか…?)

 

 さやかの姿が登校する生徒達に溶け込むのを見送ると、今度は携帯を見ながら歩く巴マミを見つけた。彼女は困ったげな顔付きで携帯画面を見つめ、深い溜め息を吐く。

 

「…理解出来ないわ…。」

「何がだよ?」

 

 突然後ろから声をかけられたマミは「ヒイッ!?」と悲鳴を上げて肩を弾ませた。振り向くと其処にはニヤついた杏子がいた。

 

「何だ佐倉さんか…、脅かさないでよ~?」

 

 胸を撫で下ろすマミであったが、手に持っていた筈の携帯が無くなっておりキョロキョロとあからさまに狼狽する。

 そして杏子に目を向けると、何と彼女の手にマミの携帯があった。

 

「イヤアアアアアアアーッ、見ないでーっ!?!?」

 

 慌てて取り上げようと手を伸ばすマミ。しかし杏子は透かさず上体を反らして携帯を持った手を引っ込めた。更にマミはくるりと回って携帯を狙うが先読みをしてマミの手を躱す。

 

「返しなさい、わたしの携帯よ!!」

「別にいいじゃん、男からの告白メールに悩むなんて可愛いじゃん♪♪」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアッ、言わないでええ!!!」

 

 その悲鳴で杏子はピタリと動きを止め、その隙にマミは携帯を殴り取った。

 

「・・・“マジで…男からの告白メール”??」

 

 顔をひくつかせ、本気で尋ねてきた杏子を見てマミは思考が止まり、周囲を見渡す。

 

 

「とうとう巴さんにも彼氏が出来たのか…?」

「今までいなかったのが不思議なくらいじゃない?」

「巴さんってお高くとまっても結局男好きなのよ。」

「俺、告白しときゃあ良かった…。」

「わたしの御姉様をよくもぉぉ…っ!」

 

 意外とハッキリ聴こえてくる彼方此方の声にマミは半泣き状態で杏子を恨めしげに睨んだ。

 

「…ごめん、何か…あたしが悪かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三年生の教室に入り自分の席に着くむくれ顔のマミとその前の席に座る困り顔の杏子。普段の日はさやかとほむらの教室にいるのだが今日はマミの様子とメールの件が気になり彼女について来ていた。

 

「携帯のメールは見てないけどさ~、

本当に誰かマミに告ってきてんのか?」

 

 杏子の問いにマミは無言のままメール画面を開いたままの携帯を手渡す。その画面を見た杏子は暫し無表情のまま画面を見つめ…、その表情はゆっくりと崩れていき…、突然の大爆笑となり果てた。

 

「あっはっはっはっ、コレあのサーラッドの“チャラ男”君からの“告白メール”だったのか♪♪」

「そんなに笑う事ないでしょ!?

わたしだって、おかしいとは思っているんだけど…。」

 

 杏子の言うサーラッドのチャラ男とは藤村駿の事で何故チャラ男かと言うと…只、彼女のイメージだけによるものである。

 

「会った時は松尾さんって人を入れて三人だったし…、あの時わたし、あの人達のあまりに浅い考えに怒ってしまっていたし…、嫌われこそすれ…、こっ、こっ、告白、だなんて…っ!?!?」

 

 急にメールの文章を思い出してマミは顔を赤らめて顔を隠してしまった。

 

「…お前って、男に免疫ないんだな。」

 

 杏子はそう言い捨て、この件は様子見と決め込む事にした。…と、また直ぐにマミがムクリと顔を上げる。

 

「そう言えば、ゆまちゃんはどうしたの?」

「ゆま…?

アイツなら今日はみゆきん家でキャンディと遊んでんよ。

だから昼に迎えに行くんであたし早退すっからな。」

 

 マミは呆れ顔になり、心の中で呟く。

 

(佐倉さん…、星空さんの家を保育園にする気ね。)

 

 マミは同じ魔法少女ながら彼女の悪知恵に申し訳無いと思う中でキャンディも居る事もあり杏子の考えにも多少の合理性を理解してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は“08:50”を過ぎ、町は通勤者達が勤務地へと急ぎ交わる時間となるが、今日に限って町の至る所が“ガラン”としていた。見滝原モノレール駅も普段ごった返すホームは人気が極端に少なく、駅前商店街は何処もシャッターが閉まっておりデパートに至っては休館日となっていた。

 そして見滝原警察と警視庁が派遣した機動隊により封鎖準備が彼方此方で為されていき、見滝原中学校を中心とした半径1kmの通学路、車道…裏道や抜け道と云った“全ての道”の完全封鎖が開始されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セブンスヘブン日本支部にして【塔】の本拠地である超高層ビル最上階では悠々と高級チェアに座り寛ぐ少佐が有名ハンバーガーチェーン店の特大ハンバーガーを大口を開けてかぶりついていた。

 

「んぐんぐ、偶に食べるジャンクフードもなかなか美味じゃないか。

さて、そろそろかな?

モニターを出せ。」

 

 少佐の指示で天井より巨大なモニターが降り、少佐は愉しげにモニターを見る。

 

「始まるぞ始まるぞ、今この“人”の狂気が牙を剥き少女達の喉笛を引き裂かんと唸り声を上げている。

君達は“戦場”を前にした時、どうするのかな…“ヴァルキュリア達”よ?

クフフフフフフ…ッ!!」

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