戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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因縁に縛られた二人…

 外の五体の人造吸血鬼は既に小夜により一掃されており、キュアサニーとキュアビューティはアルフォンスのサポートに回っていた。

 九頭は三対一になった事でかなり追い込まれ、アルフォンス一人には息一つ切らせていなかったのに対して今は全身傷だらけの満身創痍状態となってしまっていた。特にアルフォンスとキュアサニーの息の合ったコンビネーションには戸惑い、隙を見せてしまった所にキュアビューティが投擲した氷剣により大腿部を貫かれていた。

 

「ハァ、ハァ…、まさか此処まで、追いっ、詰められるとは…

思いもしなかった…ぞ…。」

 

 荒い息つぎをしながら九頭は右手の忍者刀と左手のデザートイーグルを構え尚も戦うつもりでおり、さすがにサニーとビューティはこの男の気迫に押され戦意が揺らいだ。

 

「逃げたいなら逃がしてやる、九頭?」

 

 そう切り出したのは意外にもアルフォンス・レオンハルトであった。

 

「いいのか、貴様一人ではまだ俺に傷を付ける事すら敵わなかったのだぞ?」

「それでも、お前は俺一人の手で殺さなければ意味がない!

其れが俺を拾ってくれた先代殯家当主への恩返しであり、“償い”だ…。」

 

 キュアサニーとキュアビューティは不安げにアルフォンスを見るが、彼の言葉に反論はしなかった。何故なら、このまま戦えば高い確率で誰かが犠牲となる予感があったからである。九頭と云う男は人を食らう人外である“古きもの”を相手に【塔】を護り続けた一族で一番の使い手。片足を負傷しても彼は怯まず三人の誰かを道連れにして果てるだけの覚悟を当たり前の様に酷使するであろう。

 アルフォンスはそれを理解し、サニーとビューティは九頭の覚悟に呑まれた時点で足手纏いになってしまった事を悟っていた。

 

「フッ、互いに命拾いをした様だ。

…ならばその言葉に甘えさせてもらうとしよう。」

 

 そう言い残して九頭は余裕を背に見せて片足を引きながら歩き去った。

 

「…ごめんアル、ウチ助けに来た筈やのに最後で足引っ張ってもうた…。」

「私も同じです、あの忍者の方の気迫に呑まれてしまいました…申し訳御座いません。」

 

 シュンとしてしまう二人を見てアルフォンスは無表情ではあったが一言…、感謝を口にする。

 

「いや、お前達が来なければ俺はあの男に一矢報いる事も出来ず屍を此処に晒していたさ。

…怒りで我を忘れていたがお前達が助成に来てくれて平静を取り戻せた。…ありがとう。」

 

 ビューティは予想外にしていた言葉を貰い、困りげに微笑むが…、サニーは目を丸くしてアルフォンスをガン見して顔を真っ赤に火照らせた。

 

「そそそ…、ありがとうやなんて…、

ウチ等仲間やさかい…!

なあ、ビューティ!?」

「えぇ。でもサニー、顔が赤いですけれども…風邪でしょうか?」

 

 キュアサニーの急変にビューティは首を傾げて尋ねるがサニーは「ちゃうわ!」と言って否定した。

 アルフォンスはそんな二人のやり取りを見て小さく微笑む。…しかし彼は校舎内への突入を二人に許さず、外での待機を言いつけた。理由は既にサニーとビューティが精神的な疲労が限界に達しているからである。五体の吸血鬼兵との戦いは日差しの下であるが故に本領を発揮出来ずにいた吸血鬼が小夜に鬼面をかち割られ日光にて身を焦がして絶命する光景を目の当たりにし、九頭との激しい命のやり取りでもまた強いプレッシャーで圧されてしまっているなら、中の者達との連携にも支障をきたす筈である。

 

(例えそれを乗り越えたとしても、それを差し引いて尚“不安”が拭えない。

…俺がまだプリキュア達を信用していないからなのか?)

 

 アルフォンスは校舎を睨み、不安要素を更に思考する。

 

(何よりあの“吸血鬼”が好みそうなこの状況に奴の気配がない。

九頭が退く前に校舎内の鬼面共は何人かが敗走している。

銃声は更に前から聴こえない。

…既に敵は別の者達と見るべき…)

 

 其処で突然校舎で壁をぶち抜く程の爆発が起き、その穴から凄まじい放電が溢れ暴れ出した。

 

「ビューティ、あれまさか!?」

「間違いありません、キュアピースの電撃ですわ!」

 

 二人はアルフォンスの言い付けも忘れ、爆発のあった場所へと急ぐ。

 

「おい、お前達!?」

 

 アルフォンスの制止も聴かず、キュアサニーとキュアビューティはキュアピースの救援に走って行ってしまった。

 アルフォンスはあの校舎が万魔殿に思え、自身が共に行ってもそれこそ足手纏いになると考え…外で彼女達を待つ事とした。

 

「…無理はするな、あかね。」

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