戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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入り乱れる光と闇…

 炎を纏って自ら火炎弾となるBEサニーのBEファイアが美樹さやかを襲い、此を紙一重に躱す。

 

「熱っ、あっつーいいっ!?」

 

 佐倉杏子はBEビューティと斬撃勝負をして“キンキン”て刃鳴を聞かせ、巴マミはBEマーチの連続蹴撃をマスケット銃でいなしながら闘っていた。しかし後方にてBEピースが雷撃で仲間を援護し、三人は攻戦に出れずにいた。

 

《ちっ、あのピース擬きがうぜえっ!》

《同じく、鬱陶しいたらありゃしない!》

 

 念話で杏子がぼやき、さやかも杏子に同意。マミもまたBEピースをどうにかしたいと考えていた。

 

《何かしないと…、何時までも足止めされてる訳にはいかないのにっ!!》

 

 しかし突如そのBEピースの悲鳴が上がり雷撃が止んだ。マミ達もBEの三人も“彼女”に向き、そしてその“惨状”に目を疑った。

 なんと野鎚の皮膚から蛆の様に湧いて出た魔獣達がBEピースを抑え付けているのだ。

 

「だっ、だれかっ…たすけ…!?!?」

 

 しかしBEの仲間達は動かず、助けようとした魔法少女達の慈悲の手は届かず、BEピースは魔獣達によってバラバラに八つ裂きにされてしまった。BEカードは彼女が死ぬ寸前に抜け出、消え去る。三人のBEプリキュアは魔獣が見境ない事を知った途端に戦意を失い、BEマーチが真っ先に野鎚より駆け降りてしまう。

 

「クソッ、こんな馬鹿げた所にいられるか!!」

 

 そう毒吐いた途端またもやカードが抜け出、力を失った彼女は元の姿に戻ってしまう。

 

「嘘っ、嫌…!?」

 

 BEマーチはポニーテールの私服の姿で悲鳴を上げながら落下して消えた。

 BEビューティは視点が合わない程に狼狽え、何を思ったのか氷の剣の切っ先を喉元にあてがった。いち早く気付いたマミが止めようと飛びかかるがBEビューティはマミに氷の刃を飛ばし、マミはそれを弾き返すがその隙にBEビューティは自分の喉を串刺しにして息絶えた。やはりBEカードは彼女から抜けて其処には見知らぬ女学生の亡骸が転がった。それは余りに呆気ない…無惨且つ虚しい最期であった。マミは亡骸の見開いた目を優しく閉じ、唇を噛み締めた。

 そして取り残されたBEサニーは茫然と立ち尽くし、やはり彼女からもBEカードは抜け…ブレザー姿のショートヘアの少女となった。

 さやかと杏子が命を絶たせまいとその少女を捕まえるが、彼女達を野鎚より湧き出て来た魔獣達が囲んだ。

 

「はっ、ははは…、これでお前らも終わりや。

ウチ等BEプリキュアもハッピー一人しかおらんけど、お前らを道連れにするんなら本望や!」

 

 BEサニーであった少女は嘲笑い、何時の間にか手に筒の様な物を持っていた。さやかと杏子はその筒を見て青ざめる。

 

「アンタそれ…っ!?」

「暁美ほむらの“爆弾”じゃねえか!!」

 

 少女は躊躇わず爆弾のスイッチを付けた。ほむらによって造られた爆弾は殺傷性が高い上に手榴弾と同じ使い方が出来る為にさやかと杏子は彼女から即座に離れるとマミが二人を背にして防御陣を張った。そして次の瞬間、光が広がった。野鎚の肩の位置で大きな爆発が起こり、野鎚が僅かに顔を歪め吼えた。

 爆風が止み、煙が薄くなったその場所にはあの少女の血が咲き開いたかの様に広がり、弾け飛んだ肉片がバラバラと散らばり無惨な様を物語っていた。しかし魔獣達はその爆発を物ともせずに再び三人の魔法少女達を取り囲んでいく。さやかはBEサニーだった少女の肉片を横目に見、魔獣に敵意一杯の眼孔で睨みつけた。

 

「自爆なんて、馬鹿だよアンタ達…。理解出来ない。…だから哀れんだりはしない!

…でも、少しくらいは同情してあげる。」

 

 そう言いながら目尻に涙を溜めたさやかは二本のサーベルを両手に握り締め、杏子も多節槍を回して切っ先を魔獣に合わせた。

 

「あたしは彼奴等の気持ちを少しは理解出来るよ。

…受け入れてもらえなかったんだ。

…打ち捨てられたんだ。

…だから、死を選んだ。

彼奴等はあたしが選んだかも知れない選択肢の一つだった…。だからさやかより少しだけ多めに同情してやるよ。」

 

 そしてさやかと杏子…そしてマミは互いに背を向け、マミはマスケット銃の銃口を魔獣に向けてさやかと杏子とは違う…BEプリキュアの行為に対して拒絶を口にした。

 

「わたしは彼女達に一切同情なんてしない!

命を無駄にする行為を絶対認めない!

だって、死んだら何も無くなっちゃうじゃない、全てが無駄になってしまうじゃない…。

だから、わたしは絶対に死なない!…もう、誰も死なせたりしない!!」

 

 魔獣の群れが一斉に魔法少女達に飛びかかり、重なり合って山となる。圧し潰されてもおかしくないその光景は瞬時に砕かれる。まるで火山が爆発したかの様に積み上がった魔獣達は粉々に噴き飛び、その中心にいたマミ・さやか・杏子が飛び出して散開し、湧き出る魔獣の群れを次々と撃破した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 野鎚の肩から突き落とされ、落下したキュアハッピーは力ない瞳に走馬灯を見ていた。転校して直ぐにキャンディと出会いプリキュアになり、日野あかね…黄瀬やよい…緑川なお…青木れいかと友達となり、同じプリキュアの仲間となった。そして強敵であるバッドエンド王国との戦いを繰り返して後にアーカードと邂逅を遂げ、新たな敵である【塔】と戦う為に暁美ほむら達魔法少女と共闘…小夜達サーラッドや英国のヘルシング機関と協力しながら此処まで来た…筈であった。

 しかし自分はとうとう力尽き、死を受け入れようとしている。…もう力が出ない。涙が溢れ、大切な人達を助けられなかった自分の不甲斐なさを呪う。

 

“みゆき…。”

 

 …ふと、遠くで呼ばれた気がしたが返事を返さず急落下の気圧に身を委ねてゆっくりと目を閉じる。

 

“みゆき…っ!”

 

 またも声が…先程より近くに聴こえた。キュアハッピーは声が聴こえて来た方向を探して上を見ると、彼女を追う様に落下して来る影が一つ…大きな声でハッピーの名前を叫び此方に手を伸ばしていた。

 

「みゆきいいいいいいっ!!!!!」

 

 ハッピーは目を凝らし、手を差し伸べる“彼女”を確認すると涙が涙腺より溢れ、大きく親友の名前を叫んだ。

 

「あかねちゃん…っ、

あかねちゃあああんっ!!!!」

 

 日野あかね…キュアサニーは大きな荒鷲に変身したポップに乗ってキュアハッピーに右手を目一杯伸ばし、ハッピーも右手をサニーに向かって伸ばし、互いの手が結ばれてサニーとハッピーの視線が重なった。

 

「ポップ!!」

「了解でござる!!」

 

 ポップは荒鷲の翼をはためかせ、上昇をする。だが其処に魔獣と同化した古きものの群れが二人を乗せたポップに迫った。

 

「くっ、二人共振り落とさない様に掴まってるでござる!」

 

 ポップの言葉にキュアハッピーとサニーは頷いて荒鷲の背中の毛を強く握る。するとポップは翼をバサッと大きくはためかせて更に加速して魔獣共の追撃を許さずに野鎚の左膝を旋回、勢いに乗ってもっと高く急上昇をした。しかし既に巨大な古きもの…野鎚の全身より魔獣共が次々と這い出しては下方より追うまでもなくポップに迫り、翼手の古きものもポップを狙い始めた。

 暁美ほむらを取り込み、その血肉を吸収してソウルジェムからも“穢れ”…“呪い”を無尽蔵に吸い出し、其れを魔獣達が喰らい、分裂して無限に増えていく。加藤保憲の狙いは野鎚を魔獣の苗床にしてそのコントロールを七原文人から朱食免ごと奪う事であったのだ。

 

「ハアッピイイイイッ!!」

 

 頭上より聴こえて来た呼び声にハッピーは顔を上げると、野鎚の腰部分でキュアピース・マーチ・ビューティがキャンディを守りながら魔獣と古きものと戦っていた。先程の声はキャンディでピースの肩に乗って守られながらハッピーとサニーを乗せたポップを見つけて叫んだのだ。

 

「キャンディイッ!!」

 

 ハッピーも込み上げて来た感情が我慢出来ずキャンディの名前を叫び、ポップも戦うピース達に大きく声を張り上げた。

 

「皆の衆、拙者の背中に飛び乗って下されえっ!!!」

 

 ピースとマーチ…ビューティは考えるまでもなくポップを信じ、ピースはキャンディを両手で抱き締め、マーチとビューティが二人を守る形で両側に付き野鎚の表皮を三人同時に蹴って飛んだ。荒鷲は彼女達を追って接近するが魔獣と古きものの群勢が阻もうと空中で落下するピース達に魔獣が追いつき、翼手の古きものがハッピー達を取り囲んだ。

 魔獣の幾本もの腕がキャンディに迫り、古きもの共の牙がポップに食いつこうとしたその時、五人の頭上に一人の“人外”が現れた。…“吸血鬼アーカード”である。

 キュアハッピーは見上げ彼の嘲笑と紅い目を見てあまりの嬉しさに胸が苦しくなった。

 

(わたし達を助けに…来てくれた…!)

 

 アーカードは五人のプリキュアを足下にして浮き、嘲笑のままでハッピーの顔を見下ろすと何時の間にかあの銀の銃と漆黒の銃を構え乱射し、瞬く間に古きもの共を撃ち落とした。

 そしてキャンディ達を引き裂こうと迫った魔獣達には何処から戸もなく激しい浄光が放たれて次々と消滅。間一髪でピース達はポップの背中に乗り移る事が出来た。自分達を助けてくれた者達はポップの周囲を囲み、ハッピー達と対面…スマイルプリキュアはその援軍の面々に驚き、キャンディは笑顔でその者達を迎えた。

 

「ありがとうクル!

“プリキュアのみんな”!!」

 

 キャンディの言葉にキュアハッピーは驚いたままの顔で自分に笑いかける少女の顔を見つめた。

 

「大丈夫だった、キュアハッピー?」

 

 其処にはハーフアップポニーテールでピンク色のプリキュアが優しい笑顔をハッピーに向けていた。

 

「まさか…、キュアハート。

…“マナ”ちゃん!!」

 

 キュアハッピーを助けたのは同じプリキュアで“ドキドキプリキュア”のリーダー…キュアハートであった。

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