「これは……死んでる!!!おじさん警察と救急車を呼んで早く!!!」
俺が叫んだ直後に眼鏡の子供が飛び込んできて、佐竹さんを見るなり指示を飛ばした。
震える手でスマホを取り出したがうまく電話がかけれない、何番にかければいい?俺がもたついていると野次馬の子供たちやら店員さんやら女子高生やらが来て――。気が付くと店内は警官だらけとなり俺は佐竹さん殺害の容疑者として取り調べを受けることになっていた。
「佐竹さんは会社の先輩で……。今日は一緒に飲みに来ただけで……」
俺はありのまま話した。
それ以外ないどうしようもない。
アリバイとか言われても普通に酒飲んでただけだし何を言えばいいのか。
「佐竹さんはなんで……病死とか、物を詰まらせたとか……じゃないんですか?」
「いまは何とも言えませんね」
帽子をかぶったデブな警官は俺には何も教えてはくれなかった。しかし殺人として動いているような気配は感じる。佐竹さんが殺されるような恨みを買っているなんて話、聞いたことはないが……。
「あれれー。このおじさんなんでプロテインの袋なんて持ってるのかなー」
眼鏡の子供が佐竹さんの亡骸の近くでそんな声をあげた。
何で子供がまだいるんだ……?
いや、あの子も事情聴取を受けているのか……?
「確かになんで空の袋を持っていたんですかな?」
デブの警官が子供の言葉に同調し、俺に聞いてくる。
周りを見ると他にも子供が3,4人いる。人が死んでる現場なのに何が起こっているんだ……。
いや、こんなの初めてだからわからない……。
「えっと、佐竹さんは、ゲロを吐いても大丈夫なようにって、持ってきていたみたいです。前に飲んだ時に電車の中で吐いちゃったので……気にしてたみたいです」
「そこまでして飲まなくてもよかったでしょうに……まあ、今回は外傷もないし毒物の反応もなかった。まあ、突発性心不全でしょう……」
「心不全ですか……?」
「ええ、病死でしょう……お酒の飲みすぎで突然あること――」
「ちょっと待ってください!」
「「!?」」
俯いた姿勢で喋るおっさんが、俺とデブな警官の話を遮った。
眠りの小五郎。
巷を騒がせる名探偵である。
「この事件は、事故でも病死でもありません。殺人事件です」
名探偵のその言葉は検視やらなんやらで騒がしかった居酒屋を無音と思わせるほどに静かにさせた。
「殺人ですか……?」
「毛利君、しかし被害者には外傷も何もない上に現場にも争った形跡すらない。それに横の席で食事をしてた君らが何も音やら争うような声を聞いていないといっとったんだぞ? 誰がどうやって殺すことが出来るというのかね?」
佐竹さんは殺されていた?
俺がトイレに行かなければ防げていたということなのか?
わからない。
くそ。
俺の頭は酒が回りうまく働かないが、名探偵の言葉は続く。
「この犯人は、巨漢な被害者を争うことなく殺すことが出来たんです。もちろん毒を食事に混ぜるということもしていない。まったく証拠の残らない殺人をこの場所で行ったんです」
「いったい誰が佐竹さんを……」
俺が知る限り誰からも恨まれてはいないはずだ……。
顔は怖いが性格は優しい先輩がいったい誰に……。
「犯人はあなたですよ! 〇〇さん。あなたが佐竹さんを窒息させて殺したんです」
えっ……。
俺ッ……!!11?????
なんで……!?!?!?!?!?!?!
なんで俺ッ!!!!!????!??!?!?
周りを見るとみんな驚いた顔で俺を見ている。
俺も多分驚いた顔をしている。
なにが起こっているんだ。そんなわけあるわけないじゃないか。
名探偵の言葉は続く。
「トリックは単純でしかし証拠が残らない。被害者が持っていたプロテインの袋にあるものが加わると凶器が完成するんです。目暮警部、トイレのゴミにあるものが見つかったらしいですね」
「ああっと、ゴミの中に見つかったのは紙くずと、レシートやらライター、ホッカイロだったが……」
「目暮警部、そのホッカイロですよ。犯人はホッカイロとプロテインの袋を組み合わせたんです。おいコナン説明しろ!」
「はいっ! えっと、この前学校で先生が実験で試験管の中でマッチを燃やしたら少し経ったら火が消えちゃったの、酸素がなくなると燃えなくなるんだって言ってたよ」
なにかわからないまま話が進んでいる。
プロテインとホッカイロ?
窒息?
なにが……えっ……????
わからないが、なにかが……なにかが……起こっている……。
「どういうことかね?」
デブな刑事さんが質問するとまた名探偵が話し始めた。
「ホッカイロですよ。警部。ホッカイロは酸化反応で熱を作り出すんです。熱を作った分の酸素は消費されてしまう。通常のビニール袋は空気を通してしまうので無理ですが、プロテインの袋はアルミ蒸着袋となっており酸素を通しません。プロテインの袋にホッカイロを入れておけば無酸素の空気を作り出すことが出来るんです」
名探偵は一度言葉を区切った。
無酸素だとどうなるんだ?
いや、なんで俺がやったことになるんだ?
殺人なのか?
「無酸素の空気は呼吸が出来ない。それだけでは済まないんです。ひと呼吸で失神。そのまま心肺停止、数分で死んでしまう。おまけにその無酸素の空気は空気に拡散させれば証拠として残らないとんでもない猛毒なんですよ。犯人は酔いつぶれた被害者にプロテインの袋から無酸素の空気を吸わせた。被害者が筋肉質であろうと一呼吸させればそれで意識を失わせることが出来ます。抵抗も何もありません。被害者の心肺が完全に停止したことを確認してから袋の中のホッカイロを回収したというわけです。この時期ならホッカイロがゴミとして出ても何の違和感もありませんからね」
「まっ、待ってください。俺は先輩を殺していません。いや、大体そんなことするならこんな場所で殺す意味ないじゃないですか!」
何とか言い返さないとまずい。
このまま犯人に仕立て上げられてしまう。
俺が犯人だとしてもこんな人目のつくところで殺す必要なんてない。
そもそも殺していないし。
とにかく反論しないとまずい。
「ここで殺したのはその方がばれないと考えたからではないですか?○○さん。無酸素の猛毒はしかし空気に拡散すれば何の証拠も残らない。不特定の人がいる場所で突然死のほうが病死として処理される可能性が高いと思われたんじゃないですか?」
「そんなわけ……。証拠は、証拠がないじゃないか!!!」
「ホッカイロにはあなたの指紋がべったりと付いているはずですよ。それが証拠です。凶器は消えても凶器を作り出すものは残るんです」
「それは……」
それは普通に使ってた奴じゃん。
そんな言葉はデブの刑事に止められた。
「ここからは署で詳しく聞かせても貰いましょう」
俺は連行された。
ちゃーちゃちゃっちゃっちゃーーーちゃちゃちゃっちゃーちゃちゃっちゃー
事件の真相は借金5万円を踏み倒そうとしたゆえの犯行だったらしい。
はした金のために再現性の高い放送ギリギリのトリックを行う犯人がいるとは世も末だ……。
「コナン君。マッチの実験なんてありましたっけ?」
「あーなんか動画とかで見たんだよ!」
わちゃわちゃしてハッピーエンド!
主人公は警察の自白強要に怯えあることないことゲロった。
佐竹さんは病死。
主人公は免罪だが殺人罪で投獄