まのさばアイランドモード   作:六階堂エナ

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ヒロちゃん!はのうら&まのむら出演おめでとう!
また、たくさんの女の子を助けに行くんだね、本当にかっこいいよ!
きっと、みんなヒロちゃんのこと好きになるよね!
でも、覚えておいてほしいんだ。ヒロちゃんのことを一番、好きなのは、ボクだよ。
そして、ヒロちゃんの一番もボク。そうだよね?


まのさばアイランドモード

ねぇ…

聞こえる…?

 

ねぇ、大丈夫?

…だいぶ参ってるみたいだね?

 

それはボクも…ううん、他のみんなだって一緒だよ。

だって、いきなり…

こんなおかしな事に巻き込まれるなんて…

 

「…………」

 

…ねぇ、聞いてる?

 

「…………」

 

(…わからない。)

(私は…どうしてここにいるんだ…?)

 

「…………」

 

(…何が起きたんだ?)

(まず、それを思い出さないと…)

 

……………

牢屋敷、魔女因子、なれはて、裁判、処刑…それに、大魔女

…そうだ…だんだん思い出してきた。

 

魔女候補として捕らえられた私たちは、魔女因子の呪いに苦しめられていた。すべてを計画していた黒幕である大魔女を突き止めた私は、被害者の少女たちを救うため、【死に戻り】の魔法を行使した。私は【最後の魔女裁判】で【大魔女】…かつて自殺した友人【月代ユキ】と対峙した。

 

ユキは裁判の中で自分の気持ちを自覚し、私たちは和解することができた。

だが、依然危険な存在である私たち魔女候補や、大魔女を世界が放っておくわけがない、私たちを守るためユキは、自らが犠牲となる選択をした、呪いの原因である魔女因子をすべて引き取る、そう言って光に包まれていく彼女、その光は徐々に広がって私たちを飲み込み、世界を白く染めて―

 

 

『ヒロ、私たちお友だちですよね?』

『私の最後のお願いを聞いてくれませんか?』

 

◇◇

 

『えっと、改めまして…この屋敷で管理を任されている、かわいいフクロウ、ゴクチョーと申します』

『…定時とかもあるので…さっさと説明していきますね』

 

『あっと…すごく申し上げにくいんですが…皆さんは【魔女】になる因子を持っています』

『【魔女】になるといろんな悪影響が出ちゃいますので』

『危険であると判断され、その治療としてこの牢屋敷への収容が決まったんですね』

 

『皆さんにはこの春から共同生活してもらいます』

『治療には魔女候補の皆さんが、【仲良く】なることが必要で』

『ほのぼの~と暮らしながら、仲良く絆を深めちゃってください』

 

『何も起きず、誰も傷つかず、誰も苦しまず、ひたすら平和でほのぼのと希望を育て合う日々…』

『キズナを深めて【希望のカケラ】を集めると、大魔女が復活して』

『なんやかんやで【ハッピーエンド】になる…らしいですよ』

 

『詳しくは【魔女図鑑】をご覧ください』

『えっと…それじゃあ、ガンバってくださいね、では私はこれにて…』

 

◇◇◇

 

ーねぇ…

ー…ちゃん…

「…ヒロちゃんってば!」

 

桜羽エマは呼びかける。

久しぶりに再会した幼なじみ、二階堂ヒロの様子がなんだかおかしい。

この牢屋敷で再会した時から妙にぼんやりしている。

 

無理もない、エマ自身、自分たちがとんでもなく妙な状況に巻き込まれている自覚はある。

ただ、ヒロはこんな状況でも毅然とした態度をとるような気がしていたから少し意外ではあった

 

「…エマ?」

 

茫然としていたヒロだったが、ようやく返事をしてくれた。

 

「よかった、ヒロちゃん、急にぼんやりしちゃって、何度話しかけても返事がないからさ」

「ここは…?」

「うん…ゴクチョーの話のあと、みんな混乱してたみたいだったんだけど、規則があるからとりあえず部屋に戻ろうって話になって…ヒロちゃんの様子が変だったから引っ張って戻ってきたところなんだけど…覚えてないの?」

「…そう…か、そうだったな…手間をかけさせた、すまない」

 

うん?

 

「えっと、ヒロちゃんでもあんなにショックを受けることがあるんだね、ちょっと意外かも」

「…まあ、いろいろ思うところがあってな、そういう君は大丈夫なのか?」

 

あれ?

 

「聞いたところ、とりあえず危険はなさそうだし、しばらくの辛抱だ、エマ」

そう言って、ヒロは慈愛に満ちた聖母のような表情で、エマを励ました。

 

間違いない! ヒロが優しい! というか、怖い! 逆に怖い!

 

◇◇◇◇

 

ヒロが優しい

こんな風に言うと、ヒロがとんでもなく凶悪な人間であるように思うかもしれないが、そんなことはない。

 

普段のヒロは品行方正を絵に描いたような人物で、委員長やら生徒会長やらを率先して引き受ける人の先頭に立つ性格だ。みんなの憧れで、常に中心で可憐に微笑んでいた。

美人で人当たりもいい。真面目で実直、人に厳しく、自分にはもっと厳しい。学校の人気者で基本的に誰にでも優しい。

 

そう、基本的に

エマは数少ない例外である。

 

エマとヒロ、二人は幼なじみで親しくしていたのだが

中学のある時期を境に疎遠となっていた。

エマがヒロの怒りを買い、ヒロから嫌悪と忌避の感情を向けられていたのだ。

 

ヒロは誰からも一目置かれていた。

ヒロは『クラス』の、ではなく『学校』の中心人物なのだ、その影響は幅広く、エマは皆から無視され暗黒の学園生活を送ることとなった。

ヒロが何かしたわけではない。ただ、エマの状況を知りながら捨て置いた。

 

エマ自身、当時の記憶は曖昧で、なぜそこまでヒロに嫌われることになったのかまるで分からなかった。そんな状態で関係の修復が望めるわけもなく、結局卒業まで没交渉となっていた、そんな折にこの牢屋敷で再会したのだが…

 

「身体に異常は?気分は悪くない?食欲はあるか?」

「だ、大丈夫…だよ?」

 

中学で最後に会ったときから一体何があったというのか。

ヒロの態度は驚くほど軟化して、なんだかもう、病気の時の過保護なお母さんみたいな感じだった。

 

ヒロのあまりの変わりようにくらくらしてくる。

理由がわからないのがなお怖い、この牢屋敷に来て今が一番不気味かもしれない。嵐の前の静けさというか、毒を盛る前の優しさというか……思わず警戒してしまう。

 

「ど、どうしたのヒロちゃん?…なんか…変だよ」

「あ、ああ…その…」

 

自分でもおかしなことをしている自覚はあったのか、ヒロはエマから距離をとった。

そして、ヒロにしては珍しく、そわそわと視線を泳がせ深く葛藤している様子だったが、意を決し覚悟を決めたまなざしでエマに向き直る

 

「エマ、すまなかった」

「えっ!?」

 

二階堂ヒロが桜羽エマに謝罪している、これはかなり珍しい。折り目正しい最敬礼で、ヒロの真剣さが伝わってくる。ヒロの手は、微かに、けれどはっきりと震えていた。

 

エマは自身に対してここまで真摯に謝罪するヒロを見たことが無かった。

突然の出来事にエマはすっかり混乱してしまって返事ができずにいると、ヒロが顔を上げる。

 

上目遣いのヒロと視線が交わる。

普段のヒロの強く凛とした瞳が不安に揺れている。

エマの心は強く搔き乱れた。

 

「え、えっと…何のこと?」

「それは…中学でのことだ、私は思い違いから一方的にキミを責め、つらく当たった…」

 

思い違い?何のことだろう?エマにはわからない。

ヒロは何に対して怒っていたのだろうか?

その『原因』が思い出せない、自分はなにか大事なことを忘れているような―。

 

「私は正しくなかった」

 

『正しさ』を重視するヒロが、自身の過ちを認める。

 

「本当に…すまなかった、君には心から申し訳ないことをしたと思っている、一生かけて償うつもりだ」

 

ヒロの言葉は熱を帯び、エマの胸を打つ

 

「私はこういう人間なんだ…独りよがりで、キミを傷つけてしまう。…君のそばにいる資格なんてない…もう少しだけ我慢してくれ、こんな茶番はすぐに終わらせる、そうしたら私は君の前から消えるから―」

 

喉の奥に苦い味がする。中学時代、一人で食べたお弁当の味だ。

エマはヒロに傷つけられた。その傷はいまだじくじくと痛んでいる。

それでも―。

 

「それでもっ、ボクはヒロちゃんと一緒がいい!」

「…っ!」

 

エマの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

そのときのヒロは印象的だった、まるで心臓を貫かれたような表情で、恥じ入るように目を伏せていた。

 

ヒロが謝ればエマは許すしかない。

そんなことはわかりきっていた、エマの優しさにヒロは甘えていた。

ヒロはエマにそんなことを言わせてしまった自分自身をひどく恥じた。

 

「ボクに悪いところがあったら言って、直すから。ボク、変わったんだよ。もう前のボクじゃない」

「悪いのは私だ…エマはなにも悪くない…」

 

絞り出すようにヒロは答える。

もはやヒロの胸の内にあるのは慚愧と自責の念だけだった。

 

「ヒロちゃん、ボクと一緒にいて。一人は嫌だよ…」

 

中学時代、ヒロに嫌われたのは辛かった、悲しかった、絶望もした、

腹が立つことも、許せないこともある。だがやはりヒロはエマにとって特別な存在なのだ。

 

「…わかった…一緒にいる」

「ヒロちゃん!…うん、うんっ!」

 

エマは喜色満面、喜びをあらわにして快諾する。

エマは、感極まったように震え、涙を浮かべつつも満面の笑顔でヒロに抱き着く。鼻先をかすめるヒロの微かな香りに、エマの強張っていた心がようやく溶けていく。

 

「うれしいよ、ヒロちゃん!…ボクたち、ずっと一緒だよね!」

「…あぁ…ありがとう…すまない、エマ」

「?…えへへっ」

 

ヒロは、エマを抱きしめ返そうと腕を伸ばし…結局やめた。

 

「…あぁ…夢みたい…」

「…私も、そう思う…」

 

◇◇◇◇◇

 

しばらくエマの抱擁が続いていたが、唐突にスマホの通知が鳴る。

 

「うわっ!な、なに?」

「落ち着くんだエマ、どうやら希望のカケラとやらが手に入ったらしい」

 

魔女図鑑を確認するとそこには、【よくできましたね】というメッセージととも希望のカケラを手に入れたことが表示されていた。

 

「ほんとだ…なんかずいぶんとタイミングがいいね、もしかしてカメラとかで監視されてたりして…」

「いや、カメラの類の心配はない。魔法なんてものがあるんだ、のぞき見している誰かがいたとして不思議じゃない…どちらにしろ害はないから大丈夫だ」

「?」

 

エマは断定的に言うヒロに違和感を覚える。 カメラがないと、なぜ言い切れるのだろう。 神経質なはずのヒロが、監視されている状況を「大丈夫だ」と楽観視するのは、やはりどこかおかしいような…

 

「とにかく、【これ】を集めれば終わるんだ。心配しなくても大丈夫だ、エマ」

「う、うん…」

 

そこで、エマの胸にひとつの疑念が飛来する。

ヒロの謝罪は希望のカケラ目当てのでまかせではないのか、エマの不安は当然といえた。

 

「…わかっている。私が信用できないんだろう?」

「そっ、そんなことないよ!」

「いいんだ、君がそう思うのも当然だ」

 

ヒロの真面目な性質が裏目に出ている。なんだか話が変な方向に行っているような…

 

「償いというわけではないが、反省の証として誠意を見せたいと思う」

「誠意?」

「あぁ、私にできることなら何でもする」

「えっ!?ホント!?ヒロちゃんが何でもしてくれるの!?やったあ!」

「……………………………………………………………………………………」

 

ヒロの迂闊な発言にエマは食い気味に食いついた。

 

両腕でガッツポーズを決め、その場でジャンプして快哉を叫ぶエマに対し、ヒロは信じられないものを見たかのように目を見開き、一歩引いた、いや、二歩、三歩。それくらい。心の距離はもっと離れてるような。

 

「うわ、どうしよう。何してもらおう何してもらおう。何をしてもらうのがベストなんだろう。いや待て、慌てるな、ボク。こういうときこそクールに。この未曽有のチャンスを最大限に活かすんだ!」

「……………………………………………………………………………………………………………」

 

「なんでもかー。そういわれると迷っちゃうなー。待って!?そういえばヒロちゃんは叶える願いの数を限定していない!つまりさっきの言葉、取りようによれば、ボクの言うことを無限に聞いてくれるって意味!?」

「ひとつだ!」

 

エマの予想外のリアクションに放心していたヒロだったが、何とか訂正が間に合った。

危ない、ヒロの人生が終わってしまうところであった。

 

「なんでも『ひとつだけ』いうこと聞く!」

「えへへ…」

 

もちろん冗談だ、ヒロが思ったよりも深刻にとらえているようだから場を和ませようというエマの軽いジョークだ…半分くらいはだが。

ヒロは呆れた様子だが、先ほどまでの暗い雰囲気はない、いつものヒロに戻っている気がする。いや、心なし以前よりも視線が冷たいような…

 

「まったく、君というやつは…」

「ごめん、ちょっと、びっくりしちゃって。でも、ホントに何でも?」

「…二言はない、何でもだ。ただ、もちろん正しくないことはダメだぞ」

 

さっそく釘を刺されてしまう、残念、そうなると候補がかなり絞れてくる

 

「覚悟は出来ている。君の心の傷が癒えるなら、私の尊厳など安いものだ。一週間語尾に『にゅ』とつけて会話して欲しいとか、一週間下着を着用せずに生活して欲しいとか、一週間毎朝裸エプロンで起こして欲しいとか、エマにも色々好みはあるだろう」

「ヒ、ヒロちゃんっ!?ボクをそんなレベルの変態だと思ってたの!?いくらなんでもひどすぎるよ!」

「いや…あの、申し訳ないのだが、さすがにそういうのを一生とか言われると、ちょっと、私としては、ついていけないというか…」

「いや、違う違う違う!自分のマニア度を不当に低く評価されていることに対して怒ったわけじゃないよ!?」

「…違うのか?」

 

意外そうな表情のヒロ、どうやら、さっきの冗談が効き過ぎたようだ。

幼なじみにどう思われているのやら、エマは不安になる。

【そういうこと】は、あくまで雰囲気とムードを大事にしつつ、段階を踏んでからやってもらえればエマとしては満足なのだ。

 

しかし、『なんでも』か…

 

「じゃあ、昔みたいに仲良くして。またヒロちゃんと友達になりたいんだ」

「…いや、それは…」

「昔みたいにだよ、変に気を使ったりするのも無し!」

「…わかった、それが君の望みなら善処しよう」

 

ヒロは内心複雑な気持ちであった。とてもではないが昔のようにはいられない。

ヒロにできるのはエマを傷つけないよう、適切な距離を保ち、それとなく見守ることだけだ。

 

「それじゃあ、仲直り記念に一緒にシャワーでも浴びない?」

「…なぜシャワー?」

「えっ?友達は一緒にシャワー浴びるんじゃないの?漫画とかだとよくそうしてるよね?」

「………」

 

どうやらエマは友達について少し勘違いしているところがあるようだ

しかし、エマに友達がいないのはヒロのせいでもある。自らの業がめぐり帰ってきた気分だった

 

「女の子同士なんだから恥ずかしがることはないよね、もちろんボクに下心なんてないよ!それともヒロちゃんは友達を信じられないの?」

「この場面でその言葉を言う友達はちょっと信じられないな…」

「大丈夫、大丈夫、大丈夫!安心して!絶対何もしないから!一緒にシャワーを浴びるだけ!ボクはヒロちゃんの裸が見たいだけでそれ以上のことをするつもりはないから」

「安心できる要素がどこにもない…むしろ君の将来が心配だ…」

 

この不埒さは自分のせいだとは思いたくない…

 

「…まあいいか。今日だけだぞ?」

「やったあ!ボク、友達同士で裸の付き合いって憧れてたんだ!早速シャワールームに行こう?」

「すまないが先に行っていてくれないか?」

「いいけど…どうしたの?」

「あぁ、今日のことを日記に書いておこうと思ってな」

 

ヒロはそう言って万年筆をかかげた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

先に行って待ってるから早く来てねと、エマは独房から出て行った。

独房の扉―といっても鉄格子なのでプライバシーは皆無と言っていい―を閉める際、嬉しそうないじらしい笑みをヒロに向け、廊下をかけて行った。

 

あぁ…本当にエマはかわいいですね。

あのきれいな笑顔をずっと眺めていたい…

 

「おい、妙なモノローグを入れるのはやめろ、ユキ」

 

私は手にした万年筆に向け話しかける。

ふざけているわけではない、この万年筆はいわくつきなのだ。

 

『いわくつきとは酷いですね。まるで人のことを幽霊みたいに』

 

どこからか声が聞こえてくる。いや、聞こえるのではない、頭の中に響いてくる感じだ

姿は見えない、私以外には声も聞こえない、だがそこにいる。

 

「悪霊と言わないだけありがたく思って欲しいくらいだ」

『そうですね、まあ、大体あっていますよ。』

 

月代ユキ、黒幕で、大魔女で、幽霊で、私の…友人

この不可解な状況も彼女がつくり出している。

【最後の魔女裁判】で彼女の光に飲み込まれたとき語り掛けてきた。未練があるのだと。

 

「それで、成仏できそうなのかい?」

『いい感じです。方向性はあってますよ。けれど、まだまだ足りませんね。もっと頑張ってください、ヒロ』

 

彼女の未練、それは…

 

「【みんなが仲良くしているところを見たい】か…君にしてはずいぶんと牧歌的だな」

『あなたとエマのおかげです。陳腐な表現ですが、あの裁判で友情のすばらしさ、愛の崇高さを知ったのです。』

 

胡散臭いことこの上ない、だが、私は信じたいと思う。友人の願いを叶えたいとも。

 

「それで、よく分からないんだがこの不可解な状況は魔法なのか?【死に戻り】とも違うようだが…」

『魔法というよりも【夢】ですね。今際の時に見る夢』

「どういう意味だ?」

『簡単に言うといま私たちは同じ夢を見ているのです。』

「ならばここは夢の世界か?ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし」

『いまさらでは?』

 

まったくもって本当にいまさらだった

 

『魔女因子回収の際、私たちの間には繋がりができました、それを利用して私の夢に招待したんです。』

「なぜそんなことを?」

『あのときは時間がありませんでしたから、私にとってこれが本当に最後のチャンスでした。この夢が終わる時、私は永遠の眠りにつくことになるでしょう。』

「…もう、どうしようもないんだよな?」

『えぇ、後悔はありません。ただ…最期は幸せな夢を見ていたいのです。』

「…そうか」

 

ユキは悪人だ。

人類を滅ぼそうとした。

それでも私たちは友人だ。

 

「わかった、改めてにはなるが協力しよう。」

『うふふ、ありがとうございます、ヒロ』

 

和解した彼女は、中学時代に比べても穏やかで、

 

「しかし、夢の世界か、そう考えると得心がいく」

『何がですか?』

「エマのことだ、彼女と和解できるなんて私にとって都合がよすぎる。」

『…そんなことないと思いますよ。ほかの少女たちからは牢屋敷での記憶は取り上げていますが、性格や考え方はもとのままです。あれがエマの本心なんですよ。』

「…いや、そうだとしても、私はエマのそばにいるべきではない…」

『…そうですか、相変わらず頑なですね。まあ、それは現実に戻ってゆっくりと考えるといいでしょう。あなたたちは乗り越えたんですから』

 

私はエマにひどいことをした、私がそばにいるとエマが傷つく。そばにいる資格がないというのは私の本心だ。エマの幸せに、私は必要ない。現実に戻ったらエマにはなるべくエマには関わらず、一人で去ろうと決めている

 

「協力に当たっていくつか聞きたいんだが、夢の中にいるということだが、現実の体は今どうなっているんだ?」

『夢の中でどれほど時間を過ごそうが、それは一瞬のこと。夢とは往々にしてそういうものです。現実世界ではあの光が発した時から全く時間は経過していません』

 

時間の心配は無いということか

 

「ではこの夢はいつ終わる?」

『どれだけ続きを欲しても夢はいつか覚めるものです。希望のカケラを集めきればすぐに目覚めます、集めきれなかったとしてもいずれ終わりは来るでしょう、力の限界は決まっています』

「絆のカケラはどうやったら集められる?」

『みんなと仲良く過ごして、なんとなく仲良くなれば自然と手に入ります。』

「ずいぶんとアバウトだな」

『そうですね、いわばゲームクリア後のおまけモードみたいな感じです、やってもいいし、やらなくてもいい。もう本編は終わっているのですから』

 

ユキは少し寂しそうに笑った。

彼女にとって人生はすでに終わり、わずかな余韻があるだけ。これが本当に最後だと思うと

その例えは妙にしっくり来た

 

「君へはなむけだ、できる限りのことはしよう」

『そうですね、まずはエマと一緒にシャワーですか、お胸の洗いっこでもして存分にイチャイチャしてください』

「…そんな破廉恥なことはしない、せめて背中の流しっこだろう」

『私はいつでも見守っていますよ』

「覗くな!」

 

二階堂ヒロによる牢屋敷の少女たちの攻略が今始まる。

 




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