第8話:新たな旅立ち
1. 準備と監視
星詠の館を後にした俺たちは、王都の一角で今後の旅について話し合った。
「旅と言ってもどこに向かおうか」
ルーシェンは少し考えると
「アルセイン翁の所に、行ってみましょうか」
「アルセイン翁?」
初めて聞く名前だ。
「以前説明した、魔法具を唯一作ることができる、付与魔法使いです。彼は偏屈ですが、気に入った相手に魔法具をくれることがあります」
なるほど。魔法具が、マジックバックみたいなものであれば、今後の旅が色々楽になるかもしれない。
「どこにいるんですか?」
「王都から東に200kmほど行った山の中ですね。そこに宙に浮かぶ塔を建てて住んでいます」
「え、宙に浮いてるんですか?」
「ええ、ですから限られた人間しかたどり着けません。私も一度研究のため行きましたが、追い返されてしまいました」
それでは、行っても仕方がないのではないだろうか。宙に浮かぶ塔は見てみたいが、200kmはさすがに気軽に行ける距離じゃない。
「また追い返されるだけでは?」
「いえ、今回は榊さんがいます。彼は私と同じ研究者です。その特殊性に気が付けば、気にいられる可能性は高いと思います」
ルーシェンと同じタイプなのか。ルーシェンが2人になった姿を想像して、少しゲンナリした。しかし別の視点からの考察は重要かもしれない。俺は、闇の力を「武器」ではなく、「理論」として理解したかった。
「まあ今のところ他に候補もないですし、そこに向かうということで」
ルーシェンはもう行く気満々のようだ。
「はあ、わかりました……」
最初の目的地が決まった。
そして準備のために、王都の市場へと向かった。
「まずは食料ですね。まだマジックバックの中にある程度残っているとはいえ、今回は長旅です。沢山買っても多すぎることはないでしょう」
ルーシェンが淡々と言った。
「保存食、薬草、それにファルマさん用の旅の道具も必要です」
「分かりました」
王都繰り出し、様々な店で必要な物資は一通り揃えた。
干し肉や乾パン、薬草に鉱物、野営用の道具。
長旅になる以上、荷は増える一方だ。
その時だ。
理由もなく、背筋が冷えた。
顔を上げると、路地の奥に人影が――いや、違う。
視線を向けた瞬間、そこには何もない。
だが、確かに見られている。
闇の力に似た波動。
それなのに、俺の意思とは無関係に、体内の闇が微かに拒絶反応を示していた。
――これは、人間じゃない。
子爵の手の者か。それとも……。
俺は、ルーシェンに小声で伝えた。
「ルーシェンさん、何者かに監視されています」
「監視?どこに?」
「姿は見えません。しかし力が感じ取れます」
ルーシェンは、何事もないふりで視線を流したが、首をわずかに傾げた。
「榊さんが感じる以上、何かいるのは確かでしょうね。どうしますか?」
俺は額に指を置いて少し考えた。
「今は、何もしない方がいいでしょう」
これは直感だ。
「下手に手を出すと、逆に悪化する気がします」
「そうですね。注意は必要ですが……今は泳がせておきましょうか」
ルーシェンは、静かに同意した。
だが、その目は、別のことに興味を向けていた。
「それにしても、榊さんの感知能力が上がりましたね」
「え?」
「以前は、ここまで正確に気配を察知できませんでした。闇の力の使い方が、さらに洗練されてきた証拠です」
ルーシェンは目を輝かせた。
「これは、実験の価値がありますね」
「今、それどころじゃないですよね!?」
俺は呆れた。監視されているのに、実験のことしか考えていない。相変わらずだ。
こうして、俺たちは買い物を終えた。影は、ずっと俺たちを追っていた。
だが、攻撃してくる様子はない。あくまで、監視するだけのようだ。
2. エドワードとの模擬戦
夕方近くになり、俺たちは第二騎士団の詰所へと向かった。
エドワードが、そこで待っているはずだ。
詰所に到着すると、エドワードは既に仕事を終えており、訓練所の入り口で待っていた。
「来たか」
エドワードは、置いてあった重厚な大剣を手に取った。あれは模擬剣か。
「榊、お前の実力を見せてもらいたい」
「模擬戦、ですか?」
「ああ。お前がどれほどの実力を持っているか、この目で確かめたい」
エドワードは真剣な表情で言った。
「私は騎士団副団長としての責務がある。どうしても旅に同行することができない。だからファルマを、お前に託す。だが、お前がファルマを守れるだけの力を持っているか、確認させてくれ」
俺は、エドワードの目を見た。
その目には、叔父としての愛情と、騎士としての厳しさが宿っていた。
「分かりました」
俺は頷いた。
「それに、格上の戦士との戦いは、俺自身の糧にもなります」
「ありがとう」
エドワードは微笑んだ。
「では、訓練所の中央へ」
訓練所には、既に何人もの騎士が集まっていた。
副団長の模擬戦となれば、見物人が集まるのは当然だ。
エドワードはその中の1人に、審判をするよう声をかけている。
「榊さん……大丈夫ですか?」
ファルマが不安そうに聞いてきた。
「叔父様は……その、とても強いです」
「大丈夫だよ」
俺は笑顔で答えた。
「負けるかもしれないけど、全力は尽くす」
「でも……」
「大丈夫」
俺はファルマの頭を撫でた。
「信じて」
ファルマは、不安そうな表情のまま頷いた。
俺とエドワードは、訓練所の中央に立った。
手には、刃の潰された模擬剣。
実戦用の剣ではないが、それでも当たり所が悪ければ命に関わる。
「では、始めよう」
エドワードが言った。
「準備はいいか?」
「はい」
俺は闇の力を体内に纏った。
外に漏らさず、体内で最大限に練り上げる。
「では……始め!」
審判役の騎士が声を上げた。
瞬間、エドワードが動いた。
速い!
四十代とは思えない速度で、大剣が振り下ろされる。
俺は咄嗟に横に飛んだ。
大剣が、俺がいた場所を叩きつけた。
地面が、僅かに凹む。
「そんなのでは、ファルマは守れんぞ!」
エドワードが叫んだ。
そして、再び大剣が振るわれる。
今度は横薙ぎ。
俺は模擬剣で防いだ。
激しい衝撃が腕に響く。
重い!
大剣の重量と、エドワードの膂力が、俺の剣を押し込んでくる。
俺は闇の力を腕に集中させ、何とか押し返した。
「ほう、やるな」
エドワードは感心したように言った。
「だが、まだまだだ!」
エドワードの攻撃が、加速した。
上段、下段、横薙ぎ、突き。
様々な攻撃が、休みなく繰り出される。
俺は必死に防いだ。
だが、徐々に押されていく。
エドワードの剣は、まるで嵐のようだ。
一つ一つの攻撃が重く、速く、そして正確だ。
「まだ終わりではないぞ!」
エドワードの大剣が、俺の左側から振るわれた。
俺は右に飛んで避けた。
だが、エドワードは既に次の攻撃に移っていた。
大剣が、俺の頭上から振り下ろされる。
俺は模擬剣で防いだ。
だが、その衝撃で、俺の体勢が崩れた。
エドワードは、その隙を逃さなかった。
大剣が、俺の腹部に向かって突き出される。
まずい!
俺は咄嗟に体を捻った。
大剣が、俺の脇腹を掠めた。
刃が潰されているはずなのに旅人の服が裂け、痛みが走る。
だが、致命傷ではない。
俺は距離を取った。
息が荒い。
エドワードは、余裕の表情を浮かべている。
「まだまだだな、榊」
エドワードは大剣を構え直した。
「お前の動きは良い。だが、経験が足りん」
「そうかもしれませんね」
俺は息を整えた。
「でも、まだ終わりじゃない」
俺は闇の力を、さらに練り上げた。
体中の闇の力を、限界まで高める。
そして、エドワードに向かって突進した。
「来い!」
エドワードも、大剣を振りかぶった。
俺とエドワードの剣が、激突した。
激しい打ち合いが続く。
俺は、必死に攻撃を繰り出した。
だが、エドワードは、全てを防いでいく。
そして、カウンターを狙ってくる。
俺の攻撃を防ぎ、すぐに反撃に転じる。
その速度と正確さは、まさに達人のそれだった。
「もっと速く!もっと強く!」
エドワードが叫んだ。
「それでは、敵は倒せんぞ!」
俺は、歯を食いしばった。
確かに、エドワードは強い。
圧倒的に強い。
このままでは、負ける。
だが、まだ諦める訳にはいかない。俺はファルマを守るんだ!
俺は、エドワードの攻撃パターンを観察した。
上段から振り下ろし、そして横薙ぎ。
そのパターンは、ほぼ決まっている。
ならば、その隙を突けば……。
エドワードが、再び大剣を振り下ろしてきた。
俺は、左に飛んで避けた。
そして、エドワードの右側に回り込んだ。
今だ!
俺は、エドワードの脇腹に向かって剣を突き出した。
だが、エドワードは既に動いていた。
大剣を横に振り、俺の剣を弾いた。
そして、そのまま大剣を振り上げ、俺の頭上から振り下ろしてきた。
二段攻撃!
一段目でカウンターを取ろうとしたら、二段目が来る!
俺の脳裏に、何かが閃いた。
これは、臨死体験の中で蘇った記憶。
かつて、俺が使っていた技。
二段切り返し。
俺は、エドワードの大剣を模擬剣で受け流し、そのまま体を回転させた。
そして、エドワードの懐に飛び込んだ。
模擬剣が、エドワードの喉元に突きつけられた。しかし同時にいつの間にかエドワードの大剣が頭上で止まっている。
「……そこまで!」
審判役の騎士が叫んだ。
訓練所が、静まり返った。
そして、次の瞬間、騎士たちのどよめきが起こった。
「まさか……副団長と相打ちとは!?」
「あの男、何者だ!?」
「信じられない……」
エドワードは、大剣を下ろした。
そして、俺を見て微笑んだ。
「やるな、榊」
「ありがとうございます」
俺は息を整えた。
心臓が激しく鼓動している。
「お前の実力、確かに認めた。まだ詰めが甘いところがあるから続ければ、いずれ私が勝つだろう。だが……守るには、十分だ」
エドワードは俺の肩を叩いた。
「―榊。
次に会う時は、もっと強くなっていろ。そしてファルマを、頼む」
「はい」
俺は頷いた。
「必ず、守ります」
エドワードは満足そうに頷いた。
だが、その時。
「榊さん!」
ファルマが泣きながら走ってきた。
「死んでたかもしれないじゃないですか!」
ファルマは俺に泣きつき、涙を流しながら怒った。
「心配したんですよ!」
「ごめん、ファルマ」
俺は謝った。
「叔父様も!」
ファルマはエドワードにも向き直った。
「榊さんを殺すつもりだったんですか!?」
「いや、それは……」
エドワードは困惑した。
「すまん、ファルマ。少しやりすぎた」
エドワードもファルマには弱いようだ。
こうして、模擬戦は終わった。
だが、訓練所の影で、一人の男が俺たちを見ていた。
騎士団長。
その目には、嫉妬と憎しみの色が宿っていた。
3. 旅の準備
模擬戦の後、エドワードは俺たちを自分の執務室に招いた。
「まず、これを」
エドワードは、小さな札を二枚取り出した。
「これは?」
「騎士団の協力者であることを示す証明印だ」
エドワードは説明した。
「これを各地の騎士団に見せれば、信用を得やすくなる。何かトラブルに巻き込まれた時助けになるだろう」
「なるほど」
俺は札を受け取った。
確かに、騎士団の紋章が刻まれている。
「それと、伝達鷹のマーキングを受けてくれ」
エドワードは、友人だという召喚術師を呼んだ。
「こちらは、クレイン。召喚術師で、伝達鷹を扱える」
「よろしく」
クレインは気さくな男性だった。
「では、マーキングを」
クレインは手をかざした。
まず、ルーシェンにマーキングを施した。
淡い光がルーシェンの体を包み、すぐに消えた。
「次は、ファルマさん」
ファルマにも、同様にマーキングが施された。
「そして、榊さん」
クレインが俺に手をかざした。
だが、その瞬間。魔力が、弾かれた。
「え?」
クレインは困惑した。
「マーキングが……できない?」
「どういうことだ?」
エドワードが聞いた。
「分かりません。何かが、マーキングを弾いているんです」
クレインは首を傾げた。
俺は、内心焦った。闇の力が、魔法を弾いたのだ。
「まあまあ、私とファルマさんにマーキングができたんだから、十分でしょう」
ルーシェンが助け船を出した。
「榊さんは、私と一緒にいますから」
「そうですか……分かりました」
クレインは釈然としない様子だったが、引き下がった。
こうして、マーキングは完了した。
「定期的に連絡を取り合おう」
エドワードが言った。
「何かあれば、すぐに伝達鷹で知らせる。そちらから知らせたい事があれば、さっきの札を騎士団に見せれば、伝書鷹を借りられるはずだ」
「分かりました」
その時、部屋のドアが開いた。
現れたのは、第二騎士団の騎士団長だった。
三十代前半の男性で、精悍な顔つきをしている。
だが、その目には、どこか冷たいものがあった。
「エドワード、勝手なことをするな」
騎士団長は不機嫌そうに言った。
「騎士団の印を、勝手に渡すとは」
「勝手ではありません」
エドワードは冷静に答えた。
「宰相閣下の許可も得ています」
「何?」
騎士団長は驚いた表情を見せた。
「これから、宰相閣下のもとへ向かう予定でした」
「ぐっ……そうか」
騎士団長は、渋々といった様子で引き下がった。
だが、その目は、俺たちを睨みつけていた。
特に、俺に対する敵意が強い。
自分が勝てないエドワードと相打ちになったことが、気に入らないのだろうか。
4. 宰相との面会
俺たちは、再び王城へと向かった。
今度は、先に宰相が話を通しておいてくれたのか、スムーズに通された。
宰相の部屋に到着すると、宰相は相変わらずの半笑いで迎えた。
「ほほう、これはこれは。旅立つのですかな?」
「はい」
エドワードが答えた。
「では、これを」
宰相は、満足気に頷くと札を取り出した。
「王国内の通行証です。これがあれば、各地の街の出入りがスムーズになるでしょう」
「ありがとうございます」
「それと、資金も」
宰相は、重い袋を渡した。
「旅には金がかかりますからな」
俺は袋を受け取った。
かなりの重量だ。
「それと、連絡できるように、王城の召喚術師のマーキングも受けておいてください」
宰相は、王城の召喚術師を呼んだ。
現れたのは、老齢の召喚術師だった。
「では、マーキングを」
召喚術師は、まずルーシェンにマーキングを施した。
次に、ファルマ。
そして、俺。
だが、やはり、俺へのマーキングは弾かれた。
「これは……」
召喚術師は困惑した。
「何かが、マーキングを拒絶しています」
「別に構わん」
宰相が軽く言った。
「ルーシェンとファルマ嬢にマーキングができれば十分だ」
「しかし……」
「良いと言っている」
宰相の声には、有無を言わせぬ強さがあった。
召喚術師は、黙って引き下がった。
宰相は、俺をじっと見た。
その目は、一瞬だけ、鋭く光った。
まるで、全てを見抜いているかのような目。
俺は、背筋が寒くなった。
この男は、気づいているのか?
俺が、闇の力を持っていることを。
「では、気をつけてな」
宰相は、再び半笑いに戻った。
「なにか進展があれば、知らせるようにするからの」
「わかりました」
俺たちは、宰相の部屋を後にした。
5. 旅立ちの朝
翌朝、俺たちは早くに起きた。
今日が、旅立ちの日だ。
エドワードの家で、最後の朝食を取った。
「では、行ってきます」
俺はエドワードに挨拶をした。
「ああ、気をつけて」
エドワードは、ファルマを抱きしめた。
「ファルマ、無事で帰ってこい」
「はい……叔父様……」
ファルマは涙を浮かべた。
「必ず……帰ってきます」
「榊、ルーシェン、ファルマを頼む」
「はい」
「わかりました」
俺とルーシェンは頷いた。
「それと、これを」
エドワードは、俺に兜を渡した。顔の開いた兜だ。
「これは、私が若い頃に使っていた兜だ」
「いいんですか?」
「ああ。今の私には、もう必要ない」
エドワードは微笑んだ。
「お前に、使ってもらいたい」
俺は兜を受け取った。
皮製だが、重要な箇所には金属が使われており、軽くて丈夫そうだ。頭の防具は買っていなかったから助かる。サイズもやや大きいが許容範囲内だ。
「ありがとうございます」
「では、行きましょうか」
俺たちは、エドワードの家を後にした。
途中武器屋に寄り、調整してもらった鎧を受け取って装備する。
王都の東門へと向かう。
街は、まだ朝早くで、人通りは少ない。
だが、門には既に衛兵が立っていた。
「旅立ちか?」
衛兵が聞いた。
「はい」
「気をつけて」
俺たちは、門を抜け王都を出た。
振り返ると、巨大な城壁が聳え立っている。
「行きましょう」
ルーシェンが先導する。
不思議なことに、王都を出ると、監視の気配が消えた。
あの影は、あくまで王都の中での監視だったようだ。
「では、まずはストークレンに向かい、その後後研究所に寄りましょう」
ルーシェンが提案した。
「様子を見ておきたいですし」
「了解です」
俺たちは、来た道を逆に辿った。
6. ストークレンへ
夕方前、俺たちはストークレンの街に到着した。
「まだ少し早いですがここで一泊しましょう」
ルーシェンが提案した。
「明日、研究所に寄ってから、東に向かいます」
「分かりました」
俺たちは、また『銀の月亭』に宿を取った。
宿の主人は、俺たちを覚えていた。
「おや、また来てくださったんですか」
「ええ、少し旅をすることになりまして」
「それは大変ですね。どうぞ、ごゆっくり」
部屋に入ると、俺は疲れてベッドに倒れ込んだ。
「疲れましたね」
「まだ一日目ですよ」
ルーシェンが笑った。
「これから、もっと長い旅になります」
「そうですね……」
俺は溜息をついた。
だが、同時に、少し楽しみでもあった。
この世界を、もっと見て回れる。
様々な人に会い、様々な経験をする。
それは、元の世界では得られなかったものだ。
「……頑張りましょう」
ファルマが笑顔で言った。
「はい」
俺は頷いた。
宿で迷惑にならない範囲での闇の力の研究を行い、翌朝、俺たちは早くに出発した。
そして、東に向かって歩き出した。
7. 待ち伏せ
昼過ぎ、俺たちはファルマが襲われた森の街道に差し掛かった。
この道は、嫌な記憶が残る場所だ。
「ここは……」
ファルマの表情が曇った。
「大丈夫ですか?」
俺が聞くと、ファルマは小さく頷いた。
「はい……大丈夫です」
だが、その時。
前方から、声が聞こえた。
「よお、待ってたぜ」
「ひっ……!?」
現れたのは、三人の男たち。俺は怯えるファルマを咄嗟に背に隠した。
「前は名乗りも出来なかったな。俺はアルヴァスだ」
剣士の男が鞘に入った剣で肩をたたきながら名乗る。
「ミ、ミセルだ」
魔法使い、いや召喚術師と思われる男が少しどもりながらも名乗る。
「……ヴァルク」
言葉少なめに弓使いが名乗る。
アルヴァス、ミセル、ヴァルクか。
あの時の三人組だ。
「また、お前たちか」
俺は鋼の剣を抜いた。
「ああ、今度こそ決着をつけさせてもらうぜ」
アルヴァスは獰猛に笑った。
「前回は、ルーシェンのせいで撤退したが……」
「こ、今回は違うぜ!」
ミセルが自信満々に言った。
「こ、これで何とか対抗できるはず…!」
ミセルは、右腕に1mはあるカメムシみたいな淡く光る召喚獣を召喚した。
「え、なにそれ」
あまりに気持ち悪いビジュアルにちょっと引く。
「こ、こいつは反射虫!魔法を反射する召喚獣なんだ!」
「こ、これがあればルーシェンは魔法が使えないはず!使えば自分に魔法が返ってくるからな!」
ミセルはドヤ顔だ。
「なるほど」
ルーシェンは冷静に言った。
「興味深いですね」
「興味深い、どころじゃないですよ!」
叫びながら剣を構える。
アルヴァスも鞘から剣を引き抜き構えた。
「さあ、勝負だ!今は嬢ちゃんには手を出さないで置いてやる!あれからどれだけ強くなったか見せてみろ!」
今度こそ、決着をつける。
そして、この三人組の真意を、確かめる。
反射虫(はんしゃちゅう)
体長1mほどの、淡く光るカメムシに似た召喚獣。
背中に触れた魔法を反射する能力を持つ。
ただし反射できるのは、背中に直接触れた魔法のみであり、範囲の広い魔法を受けた場合は接触した一部しか反射できない。そのため、爆発や広域殲滅系の魔法には弱い。
また物理攻撃への耐性は低く、武器による攻撃で容易に倒される。
この性質から使いどころは難しく、魔力消費もそれなりに多いため、使用者は少ない。