ホラーかと思ったら異世界召喚だった   作:絵成数基

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ストック無くなるまでは毎日投稿したいと思います。それでは初投稿です。


王都への道

第5話:王都への道

 

1. 救出の後

 

「ファルマ、大丈夫ですか?」

ルーシェンが少女の名を呼んだ。

少女は弱々しく目を開け、苦しそうに息をした。

頭から血を流し、服が汚れている。

「とにかく、治療しないとですね」

ルーシェンはマジックバッグから何かを取り出した。

小さな瓶だ。それに魔力を込める。

「私が作った試作の回復ポーションです。これを飲めば……」

だが、その前に、とルーシェンはファルマの服に手をかけた。

「ちょっと、身体に他の傷がないか確認しないといけませんね」

そして、服を脱がせようとした。

「ちょっと待った!」

俺は慌ててルーシェンを止めた。

「何をしてるんですか!」

「え?傷の確認ですが?」

ルーシェンは不思議そうに首を傾げた。

「いや、だからって、いきなり服を脱がせるのはまずいでしょう!」

「なぜですか?」

「なぜって……この子、女の子なんですよ!」

「だから何ですか?」

ルーシェンは本当に分かっていないようだった。

俺は頭を抱えた。

この人、本当にダメだ。

「とにかく、ダメです!」

「そうですか……」

ルーシェンは残念そうに手を引いた。

ファルマは弱々しく笑った。

「大丈夫……です……私が……自分で……」

ファルマは震える手で、服の中を確認した。

「身体は大丈夫です……膝を擦りむいた……くらいです……」

「頭からの出血が多いですね」

ルーシェンが頭を診て言う。

「でも、傷自体は浅いようです。頭の傷は出血量が多く大怪我に見えますが、見た目ほど重傷ではありませんね」

「それなら……私の……傷薬で……」

ファルマは懐から小さな瓶を取り出した。

「自分で……調合した……ものです……」

ファルマは震える手で、傷薬を頭の傷に塗った。

すると、驚くべきことが起こった。

傷が、みるみるうちに塞がっていく。

出血が止まり、皮膚が再生していく。

「すごい……」

俺は思わず声を上げた。

「神官の回復魔法でしか、傷は治せないと思ってましたけど……」

「高品質な傷薬なら、回復魔法と同等の効果がありますよ」

ルーシェンが説明した。

「そして、ファルマは高名な薬師シアン・アストンの妹。彼女の調合技術も、相当なものでもおかしくないですね」

俺は希望を抱いた。闇の力は回復力も上げるので、軽い傷ならすぐ治る。しかし重い傷になるとどうなるかわからない。

回復魔法を受け付けない俺でも、この傷薬なら使えるかもしれない。

「ルーシェンさん」

俺はこっそりルーシェンに耳打ちした。

「俺も、この傷薬、使えますかね?」

「可能性は高いでしょうね。闇の力は魔法を弾きますが、薬は物理的な作用ですから」

「じゃあ、早速実験を……」

ルーシェンの目が輝いた。

「今、それどころじゃないですよね!?」

俺は慌ててルーシェンの暴走を止めた。

「そうですか……残念です」

ルーシェンは本当に残念そうだった。

俺は溜息をついた。

「とにかく、この場を離れましょう。また襲撃があるかもしれません」

「ああ、そうですね」

ルーシェンは水魔法で、ファルマの血を洗い流した。

「洗浄魔法を使うと、ずぶ濡れになってしまいますからね。水流操作で、血だけを洗い流します」

血がある程度綺麗に洗い流され、ファルマの顔色も少し良くなった。

そしてある程度綺麗になったファルマの顔を近くで見て、思わず視線を逸らしかけた。

大きく澄んだ目に見つめ返されると落ち着かない。整った鼻筋と、少し主張のある唇が妙に印象に残る。

栗色の髪が無造作に揺れていて、それが余計に無防備に見えた。

——これは、普通に美少女だろ。

ただ泣きはらしたような跡は気になった。

「立てますか?」

少し挙動不審になりながらも、俺はファルマに手を差し伸べた。

「はい……ありがとう……ございます……」

ファルマは俺の手を取り、立ち上がった。

ルーシェンが先に歩き出す。

「では、行きましょう。王都に向かう途中に、ストークレンという街があります。そこで一泊する予定でした」

「ストークレン……分かり……ました……」

ファルマはまだ少し弱々しいが、歩けるようだ。

俺たちは、ストークレンに向かって歩き出した。

 

2. 警戒の道

 

ストークレンに向かう道中、俺は周囲を警戒していた。

さっきの三人組が、また襲ってくるかもしれない。

特に、弓使いがいた。遠距離からの狙撃も十分あり得る。

「ルーシェンさん、大丈夫ですか?また襲われるかもしれませんよ」

「ああ、大丈夫でしょう」

ルーシェンは楽観的に言った。

「彼らは私をあれだけ怖がっていましたからね。すぐに襲撃してくることはないはずです」

「でも、念のため……」

「心配性ですね、榊さんは」

ルーシェンは笑った。

俺は溜息をついた。

この人、危機感が足りなさすぎる。

それでも、俺は警戒を緩めなかった。

木々の間、茂みの中、あらゆる場所に視線を向けた。

だが、幸いなことに、ストークレンに着くまで襲撃はなかった。

魔物も、盗賊も、遭遇しなかった。

道中、ファルマはポツリポツリと、今までの経緯を語ってくれた。

「私の兄は……シアン・アストン……高名な薬師の一人です……」

ファルマは弱々しく語り始めた。

「兄が調合できない薬は……ないと言われています……」

「シアン・アストンか。確かに、彼は天才だ」

ルーシェンが頷いた。

「私も何度か会ったことがありますが、調合技術は圧倒的でした」

「でも……その才能が……仇になりました……」

ファルマの声が震えた。

「私たちが住んでいた……デンヴァールという街を治める……レオニス・ムステル侯爵が……兄に……ある薬の調合を命じました……」

「ある薬?」

「人を……溺れさせ……最終的には痛みも感じなくさせ……身体のストッパーも外す……禁断の陶酔薬(エクスタシア)です……」

俺は息を呑んだ。

「それは……麻薬じゃないか」

「はい……王国では重罪です……でも……侯爵は兄を反逆者として……捕まえて……強制的に作らせようと……」

ファルマの目から涙がこぼれた。

「兄は拒否しました……でも……侯爵は……私を人質に取ろうとして……」

「なんてことだ……」

俺は怒りを覚えた。

子供を人質に取るなど、許されることではない。

「それで、あなたは逃げたのか」

ルーシェンが聞いた。

「はい……兄に恩がある……冒険者チーム『黄金の剣』が……助けてくれました……」

「黄金の剣……」

ルーシェンは少し考え込んだ。

「聞いたことがあります。凄腕の冒険者チームですね」

「はい……ガレスさん……エリカさん……ブライアンさん……アーロン……」

ファルマは一人ずつ名前を挙げた。

「彼らが……追手を振り切って……私を逃がしてくれました……召喚獣の飛竜に乗せて……王都に向かいました……」

「王都に?」

「はい……王都には……叔父がいます……第二騎士団の副団長……エドワード・アストン……」

「ああ、エドワードか。彼なら私も知っています」

ルーシェンが頷いた。

「でも……追手の執拗な追撃で……一人……また一人……私を逃がすために……犠牲になりました……」

ファルマの声が震えた。

「最後には……アーロンも……飛竜ごと囮になって……ガレスさんも……私を守るために……」

ファルマは泣き崩れた。

俺は、何も言えなかった。

目の前で自分を守るために仲間が死んでいく。それは、どれほど辛いことか。

一方、ルーシェンは呆れたように言った。

「レオニス・ムステル侯爵……王弟でありながら、禁断の陶酔薬を作らせるとは。愚かですね」

「愚か、って……」

俺は呆れた。

「もっと怒るところでしょう!」

「怒る?なぜですか?」

「なぜって……子供を人質に取って、麻薬を作らせようとしたんですよ!」

「確かに、非合理的ですね。発覚すれば、侯爵の地位どころか最悪命も失うでしょうに」

「そういう問題じゃなくて! 人として、やっちゃいけないことだろ!」

俺は頭を抱えた。

この人は、本当に感情というものが分からないのか。

だが、ファルマは小さく笑った。

「ルーシェンさんは……昔から……そうでしたね……」

「そうですか?」

ルーシェンは不思議そうに首を傾げた。

こうして、俺たちはストークレンへと向かった。

 

3. ストークレンの街

 

夕方前、俺たちはストークレンの街に到着した。

街の規模は、サクレイアよりも大きく、荷馬車なども多く行き来が見られる。

王都に近いせいか街は活気に満ちており、人々が忙しそうに行き来している。

「止まれ。身分証を」

門番が声をかけてきた。

「私はルーシェン、魔法使いです」

ルーシェンはまた札を見せた。

「これは、ルーシェン様。どうぞお通りください」

門番は会釈をして、門を開けた。

「彼らも、私の同行者です」

「承知しました」

俺とファルマも、何の問題もなく街に入ることができた。

「相変わらずその札、効果覿面ですね」

俺が言うと、ルーシェンは少し誇らしげに笑った。

「この辺りでは、それなりに知られていますからね」

街の中を歩き、ルーシェンは一軒の大きな宿屋の前で立ち止まった。

「ここが、この街で一番の宿です」

看板には『銀の月亭』と書かれている。

中に入ると、広々としたロビーがあり、清潔感のある内装だった。

「いらっしゃいませ」

宿の主人が出迎えた。

「部屋を三つ……いや」

ルーシェンは少し考えた。

「部屋を一つ、三人部屋でお願いします」

「え、一部屋ですか?」

俺は驚いた。

「ええ。襲撃の危険性を考えれば、同じ部屋の方が安全でしょう」

「でも、ファルマさん、女の子ですよ」

「だから何ですか?」

ルーシェンは不思議そうに首を傾げた。

俺は溜息をついた。ただ襲撃の危険性がある以上、別の部屋で離れない方がいいかもしれない。

そして、ファルマに聞いた。

「ファルマさん、大丈夫ですか?同じ部屋で」

「はい……大丈夫です……安全な方が……いいです……」

ファルマは小さく頷いた。

「分かりました。では、一部屋で」

こうして、俺たちは三人部屋に泊まることになった。

部屋は広く、ベッドが三つ並んでいる。

「では、まず身体を清めましょう」

ルーシェンは宿の主人に、タライのようなものを借りてきた。

そして、水魔法でお湯を出した。

「ファルマ、どうぞ」

「ありがとう……ございます……」

ファルマはタライに近づいた。

「では、俺たちは外に出ましょう」

俺はルーシェンを促した。

「なぜですか?」

「なぜって……女の子が身体を洗うんですよ。出るのが当然でしょう」

「そうなんですか?」

ルーシェンは本当に分かっていないようだった。

俺は溜息をついて、ルーシェンを部屋の外に引きずり出した。

 

4. 過去の縁

 

ファルマが身体を清め終えた後、俺たちは部屋で話し合いをした。

「それで、ルーシェンさんとファルマさんの関係は?」

俺が聞くと、ルーシェンは少し懐かしそうに言った。

「ファルマがまだ十歳くらいの時、私は兄のシアンに興味を持ちました」

「興味?」

「ええ。彼の調合技術が、どこまでのものを作れるのか、研究したくて」

「またですか……」

俺は呆れた。

「それで、デンヴァールを訪れたんです。シアンと意気投合しまして、一年ほど滞在しました」

「一年も?」

「ええ。その間、ファルマとも……まあ、それなりに交流しました」

「それなりに、って……」

ファルマが小さく笑った。

「ルーシェンさんは……歳の離れた兄のように……接してくれました……」

「そうですか?」

ルーシェンは首を傾げた。

「でも、別れる時は……大泣きしました……」

ファルマは少し恥ずかしそうに言った。

「ああ、そうでしたね。あの時は驚きました」

ルーシェンは少し困ったように笑った。

「なぜ泣いているのか、理解できませんでしたが」

「相変わらずですね……ルーシェンさんは……」

ファルマは控えめに笑った。

だが、その目には、確かに懐かしさと親愛の情が宿っていた。

そして、ルーシェンも、いつもの冷淡な表情ではなく、どこか柔らかい表情をしていた。

この人にも、感情があるんだな、と俺は思った。

「それで、ファルマさん。お願いがあるんですよね?」

俺が聞くと、ファルマは真剣な表情で頷いた。

「はい……王都にいる叔父……エドワード・アストンまで……私を送り届けて欲しいんです……」

ファルマは必死に頭を下げた。

「お願いします……」

「もちろんです」

俺は即答した。

「ここまで来たら、最後まで責任を持ちますよ」

「ありがとう……ございます……」

ファルマは涙を浮かべた。

「ルーシェンさんは?」

「ええ、どうせ王都に行くついでですからね」

ルーシェンはあっさりと言った。

だが、その目には、確かに決意が宿っていた。

「ありがとう……ございます……本当に……」

ファルマは何度も頭を下げた。

「そういえば」

俺はふと疑問に思ったことを聞いてみた。

「今まで聞いてなかったですけどルーシェンさん、何歳なんですか?」

「三十五歳ですが」

「三十五!?」

俺は驚いた。

「俺より十歳も年上じゃないですか!」

「そうですが、何か?」

ルーシェンは不思議そうに首を傾げた。

「いや、もっと若く見えるから……」

そして、俺はファルマにも聞いた。

「ファルマさんは?」

「十七歳です……」

「十七……」

俺は少し驚いた。

てっきり、十二、三歳くらいかと思っていた。

背も小さく体の凹凸が見た目ほとんどないから、もっと幼く見えるのだ。

俺は口には出さなかったが、少し複雑な気持ちになった。

すると、ファルマがジト目で俺を見ていた。

「何か……言いたいこと……ありますか……?」

「いえ、何も」

俺は慌てて視線を逸らした。

 

5. 夜の慰め

 

その夜、俺は眠れずにいた。

今日の出来事が、頭の中を巡っている。

ファルマを襲った三人組。

殺されそうになっていたファルマ。

そして、ファルマが語った、仲間たちの死。

ふと、隣のベッドから、小さな嗚咽が聞こえてきた。

ファルマが、泣いている。

「ファルマさん?」

俺は小声で呼びかけた。

「すみません……起こして……しまいました……」

ファルマは涙を拭いた。

「いえ、俺も眠れなくて……大丈夫ですか?」

「大丈夫……じゃ……ありません……」

ファルマは嗚咽を漏らした。

「ガレスさんも……アーロンも……エリカさんも……ブライアンさんも……みんな……私のせいで……」

「あなたのせいじゃありません」

俺は言った。

「悪いのは、侯爵です」

「でも……私が……もっと強ければ……」

「強さだけじゃ、どうにもならないこともあります」

俺は言葉を選んだ。

「彼らは、あなたを守るために戦ったんです。それは、彼らの選択です」

「でも……」

「彼らは、あなたを責めたりしないはずです。だから、あなたも自分を責めないでください」

俺は不器用ながらも、ファルマを励ました。

そして、ファルマの頭を優しく撫でた。

「大丈夫。俺たちが、あなたを守ります」

「ありがとう……ございます……」

ファルマは小さく頷いた。

そして、安心したように、目を閉じた。

やがて、ファルマの寝息が聞こえてきた。

俺は、ほっとした。

少しは、気が楽になったのだろうか。俺は、彼女の寝顔を見つめながら、絶対に王都までは無事に送り届けると、心の中で誓った。

一方、ルーシェンのベッドからは、規則正しい寝息が聞こえていた。

この人は、一度寝ると、なかなか起きない。

まあ、一応、部屋には強固な結界をルーシェンが張っているから、安全ではあるが。

俺も、ようやく眠りについた。

 

6. 飛竜召喚師

 

翌朝、俺たちは早くに起床した。

朝食を済ませ、王都に向けて出発する準備をしていると、ルーシェンが突然言った。

「そういえば、この街には知り合いがいます」

「知り合い?」

「ええ。飛竜を召喚できる召喚術師です」

「飛竜!?」

俺とファルマは同時に驚いた。

「王都まで、歩いても半日ほどで着きますが、飛竜ならあっという間です」

「それなら、最初から言えば良かったんじゃないですか?」

俺は呆れて言った。

「ああ、そうですね」

ルーシェンはあっさりと認めた。

「ただ、その召喚術師は高齢で隠居しているんです。途中でぽっくり逝かれると困りますからね」

「それ、失礼すぎません?」

「でも、背に腹は代えられません」

俺は溜息をついた。

「まあ、いいです。行きましょう」

三人で、街の外れに住む召喚術師のもとへ向かった。

小さな家の前に立ち、ルーシェンがドアをノックした。

「ガイウス、いますか?」

しばらくして、ドアが開いた。

現れたのは、確かに高齢の男性だった。

その身体は細く、まるで枯れ木のようだ。

しかし、その目には、鋭い光が宿っていた。

そして、その佇まいには、強者の風格があった。

まるで、あのハンターな漫画に出てくる老会長のような。

圧倒的な存在感。

「ルーシェンか。久しぶりだな」

老人は低い声で言った。

「ガイウス、お願いがあります」

「飛竜か?」

「ええ、分かりますか」

「お前が私を訪ねてくる理由など、それしかないだろう」

ガイウスは苦笑した。

「王都まで、三人を運んでほしいんです」

「分かった。金は?」

「もちろん、お支払いします」

ルーシェンは金貨の入った袋を渡した。

ガイウスは中身を確認し、頷いた。

「では、行くか」

ガイウスは家の外に出て、手を掲げた。

すると、空間が歪み、巨大な生物が現れた。

飛竜だ。

全長十メートルはあるだろうか。黒い鱗に覆われ、巨大な翼を持っている。

「すごい……」

俺は思わず声を上げた。召喚獣は普段身体に寄生させて、非実体化していると聞いていたが、これほど大きな魔物も寄生させれるのか。

だが、ファルマは複雑な表情をしていた。

飛竜には、悲しい思い出があるのだろう。

「乗れ」

ガイウスは飛竜の背中に飛び乗った。

そして、なぜか、飛竜の首の付け根あたりで、腕を組んで立っている。

微動だにしない。

「あの、大丈夫なんですか?」

俺が聞くと、ガイウスは冷たく言った。

「お前たちこそ、しっかり掴まっていろ」

俺たちは飛竜の背中に乗った。

背中には、大きな突起部があり、それが鞍のように安定している。

「では、行くぞ」

ガイウスの合図とともに、飛竜が飛び立った。

 

7. 空の旅

 

飛竜は、時速四十から五十キロメートルほどの速度で飛んでいた。

風が強く、髪が激しく揺れる。

だが、背中の突起部がしっかりしているので、落ちる心配はない。

「すごい!空を飛んでる!」

俺は興奮して叫んだ。

生き物に乗って、空を飛ぶなんて!

これは、夢にも思わなかった体験だ。

下を見ると、森や街が小さく見える。

こんな景色、元の世界でもTVでしか見たことがない。

「榊さん、はしゃぎすぎですよ」

ルーシェンは冷静に言った。

「いや、だって、これはすごいでしょう!」

「まあ、確かに」

ルーシェンも少し笑った。

一方、ファルマは複雑な表情で空を見ていた。

「ファルマさん、大丈夫ですか?」

「はい……大丈夫です……ただ……思い出して……」

ファルマは小さく頷いた。

アーロンも、飛竜を召喚していた。

その飛竜に乗って、王都を目指していた。

だが、最後は囮となって追っ手を引き付けた。

「すみません……楽しそうにしてしまって……」

俺は申し訳なく思った。

「いえ……大丈夫です……榊さんが……楽しんでいるのを見ると……少し、救われます……」

ファルマは小さく笑った。

「ありがとうございます」

俺は、ファルマの強さを感じた。

こんな辛い経験をしながらも、前を向こうとしている。

そんなファルマを、絶対に守らなければ、と俺は思った。

飛竜は、あっという間に王都に到着した。

眼下には、巨大な城壁に囲まれた街が広がっている。

その中心には、立派な城が聳え立っている。

「あれが、王都ヴァレリアか……」

俺は感嘆の声を上げた。

こうして、俺たちは王都に降り立った。

新たな戦いが、始まろうとしていた。




ガイウスが立ったまま飛竜を操作しているのは、彼なりのこだわりです。普通は危ないのでちゃんと座って操作します。
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