異世界戦争.   作:ロングキャスター

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帰還後の日常

 

 本部基地の一角に作られた屋外射撃場。

 

 夜間以外常時利用可能なこの射撃場には訓練のみならず、非番の隊員たちもよく訪れる。この日も複数の銃声が鳴り響いていた。

 藤原は右腰に1時間ほど前に受け取った新しい銃が下げていた。

 

 厚紙製の標的を険しい眼差しで睨む。

 

《ピーッ》

 

 という腰に下げたタイマーから電子音が鳴るとサッと銃を抜いて標的に5連発撃ち込む。

 

「2秒1…」

 

 藤原は5連発のタイムを読み上げる。

 

「重いのによくやりますねぇ」

 

「次は胴体2発、頭1発で行くぞ…タイマー頼む」

 

 藤原はタイマーを篠原に渡す。

 

「スタンバイ…」

 

 藤原は集中する。再び電子音が鳴り、銃を抜き取ると標的の胴体に2発、頭部に1発を撃ち込む。

 

「1秒6!しかも全部正中線命中じゃないですか!」

 

 篠原は驚きの声をあげる。

 

「こいつが優秀なんだ」

 

「全くブレてませんでしたし…」

 

「次撃ってみるか?」

 

「是非!」

 

 篠原は銃を受け取るとサルーポジションから両手を突き出して標的に10連発撃ち込んだ。

 

「え~!全然ブレない…そっか…この1.4キロの重さで反動を打ち消してるのか…」

 

「そう!それも世のシューターが絶賛してるポイントよ」

 

「ホント…9mm撃ってるとは思えない反動…22LR撃ってるみたい」

 

 篠原はプロの手つきでマガジンを抜いてチャンバークリアして銃を眺める。

 

「それでスタッカートみたいなハイエンドハイキャパシリーズより安いからなぁ」

 

 篠原は再び弾を込めて弾倉内の残りを全て撃ち尽くした。

 

「グルーピング命中精度も凄い…これガンスミスに調整してもらったわけじゃないんですよね?」

 

「ああ…工場出荷状態のままだよ。どうだ?キンバー最高傑作と称される2k11は?」

 

 藤原は自慢げな表情で篠原を見る。

 

「いやぁ…ここまでとは思わなかったです…ホントに競技銃みたいですね~」

 

「だろう?お前もそろそろヘッケラーから乗り換えたらどうだ?」

 

「いや、それは結構です!」

 

 ヘッケラー好きの篠原はキッパリと断った。

 その様子に藤原は笑う。

 

「ああ…そうか…」

 

「とは言え、もう少し撃ってもいいです?」

 

「なんだかんだ気に入ってるじゃねえか」

 

 篠原は藤原から新しい弾倉を受け取ると子供の様な無邪気な表情で標的を穴だらけにしていく。

 

「あんま違う銃ばっかり撃ってないで自分のUSPも撃ってやらないと銃が拗ねちまうぞ」

 

「え?そうですかねぇ」

 

 篠原は藤原に銃を返し自身のUSPを撃つ。

 

「う~む…やっぱりこれだなぁ」

 

「まぁ使い慣れてるだろうしな」

 

「でもなぁ〜…やっぱり私もVP9買おうかなぁ…」

 

 篠原は天を仰ぐ。

 

「いいじゃんVP9」

 

「ん〜でも…CC9と迷ってて…」

 

「CC9ってなんだけ?」

 

 藤原は問う。

 

「ヘッケラーが最近出したコンパクトキャリーです…ただ正直日頃からコンシールドキャリーするわけじゃないし…う~ん…」

 

「コンパクトキャリーはな…特に俺らじゃほぼ必要無いからな…」

 

「もうちょっとハンドガンのライナップを増やしてほしいなぁ…」

 

 篠原はUSPを眺めながら呟く。

 

「確かに。ヘッケラーはハンドガンのライナップはそこまで豊富じゃないからな」

 

「う~ん…こうやって他人が新調してたら触発されちゃって…」

 

「ああ…確かに…とりあえず、時間も昼回ってるし飯行くか」

 

「そうっすね!いきましょう!」

 

 2人は片付けを始め、隊員食堂へと向かった。

 

 

 ────────────────────────ー

 

 ラーフ社異界本部基地は常時4000人規模の人員を有する巨大基地だ。

 そして隊員食堂はその膨大な隊員を抱える本部基地らしく最大限800人を収容出来る巨大な施設で様々な国籍の隊員を抱える企業らしく、高品質の様々な国の料理を常時24時間提供する。

 

 藤原と篠原は食堂の入り口で本日のメニューに目を通す。

 

「今日はどの国かな〜…やった!日本・イタリア・カナダか〜」

 

「しかもカレーかぁ…唐揚げもあるし…今日は運がいい」

 

 2人は上機嫌で食堂に入る。

 プレートを持ちカウンター越しの炊事班隊員の元へ歩く。

 

「カナダメニューってなんだ?」

 

 藤原が隊員に問う。

 

「マック・アンド・チーズとシェパーズパイだ。美味いぞ」

 

「…なら、カレーライスにカツをトッピングしてシェパーズパイとティラミスを」

 

「了解…そっちは?」

 

 隊員は篠原に問う。

 

「私はカレーにカツとトッピングで唐揚げとマック・アンド・チーズ、シェパーズパイ、パスタ・ポモドーロ。あとティラミスを2つと苺サンドで」

 

 驚きの表情を露わにする隊員。

 

「えっと…一応確認するけど、間違ってはないよな?」

 

 彼の問いに篠原は黙って頷く。

 

「おお…ちょっと待ってろ」

 

 隊員が厨房へと向かう。

 

「お前…相変わらずよく食うな…」

 

「隊長に言われたくないです〜」

 

「いや、どう考えてもお前の方が食ってるから…」

 

 わいわいと賑やかな食堂の中、暫くして食事を受け取った2人は空いている席に対面で座った。

 

「「いただきます」」

 

 2人は食事を始めた。

 

「ところで、シノは明日からの2ヶ月間の長期休暇はどうするんだ?」

 

「ん〜、実家に帰ろうかとは思ってます…隊長は?」

 

「俺は…あんま考えてないな…実家に帰ろうか、久しぶりにロスに行こうか…」

 

「アメリカに?隊長は日本に帰化してるんですよね?」

 

「いやほら、向こうにも友達とか居るし」

 

 食事中の2人に一瞬だけ沈黙が流れる。

 

「2ヶ月か…2ヶ月後にはカークス軍曹いないのかぁ…」

 

 篠原がしみじみと言う。

 

「寂しいか?」

 

「そりゃあ、2年近く一緒に居ましたからね…警官になるって言ってましたね」

 

「ああ…正直この仕事よりそっちの方が色々と良さそうだけど…それこそシノも陸自に居たほうが良かったと思うけど?」

 

 藤原は尋ねる。

 

「まぁ…居続けるならレンジャーとか特戦とか目指したかったですけど…」

 

「女性レンジャー居なかったか?」

 

「実例はありますけどね…どっちも狭き門なので…」

 

「そうか…」

 

 再び沈黙が流れる。

 

「でも隊長も理由無くこの会社に来たんですよね?」

 

「まぁ…そうだな」

 

「なんか、凄いですよねぇ」

 

「そうかもな…」

 

 藤原は空になった食器を見つめる。

 

「あの民間人達…どうなるんですかね…」

 

 藤原は皿に行った視線を篠原に向ける。

 

「さぁな…そういうのは上が判断するからな…移送先は探してくれてるようだし」

 

「難民の人達もどうにかできないかな…」

 

「現実世界が難民問題で頭を抱える状況なのは知ってるだろ?だからこそ軍は消極的なんだ…」

 

「そうですよね…」

 

「食い終わった事だし、そろそろ行くぞ」

 

「そうですね」

 

 2人はプレートを返却口に戻すと食堂を後にした。

 

 

 ────────────────────────

 

 その日の夜。

 藤原はBARの扉を開ける。

 

 煌々と輝くネオンの看板…そこには『BAR Danger Zone』というあからさまな名前が掲げられていた。

 

「いらっしゃい!」

 

 藤原の入店に気づいたウェイターがメモ帳片手に近寄る。

 

「ハイネケンを一つ…冷えてるので」

 

「はいよ!」

 

 藤原は注文を終えると空いているテーブル席に腰掛けた。

 息をつく間もなく、テーブルに瓶ビールが置かれる。

 

「悪い、俺も同じのを一つ」

 

 男がウェイターに注文すると藤原の対面に座る。

 

「やっと終わりか?サントス」

 

「ああ…ったく、疲れたよ」

 

「ふん…疲れたねぇ…」

 

「デスクワークも楽じゃないんだぜ?それに、誰かさんが連れてきた民間人のせいで余計大変だ」

 

 サントスは嫌味のようなニュアンスで言う。

 その時、サントスの分のビールが届き2人は乾杯した。

 

「で?民間人の容体は?」

 

「栄養失調と後は鬱だな…大きな病気が無かったのは幸いだ」

 

 サントスはビールを飲む。

 

「受け入れ出来る所は見つかったのか?」

 

「まだ返答が無い地域が多い…だいたい、開戦初期の大規模難民の時に現地各国に大量に割り振った余波がな…どこもキャパオーバーだ」

 

「でも今回は十数人だぞ?」

 

「ああ…正直、今回はキャパというよりは…ほらあれだ。状況が状況とは言え、敵に身体を売ったってのが尾を引いてる。」

 

「ふん…なんだそりゃ」

 

 藤原は呆れたような表情でビールを飲む。

 

「同情する面子もいるが…仕方ないさ、なんせこの世界は…レイシスト(差別主義者)が多い」

 

「まぁ…それは俺達の世界が言えた口じゃないけどな」

 

「言えてるな…ところで、休暇はどうするんだ?」

 

 サントスは問う。

 

「特に考えては無いな…地元に帰るか…」

 

「国へ帰るんだな。お前にも家族がいるだろう」

 

「お前がそのセリフを言うには身体がヒョロすぎる」

 

 藤原の言葉にサントスは笑う。

 

「親父さんの墓参りでもしてやったらどうだ?お袋さんも待ってはいるだろ?」

 

「まぁ確かに…帰るかな…」

 

 藤原はゆっくりとビールを飲む。

 

「みんな家族は大事さ」

 

「ああ…あの民間人達もな…」

 

「おい、変な気起こすなよ?」

 

 藤原の考え事をしているような様子にサントスは釘を刺す。

 

「大丈夫だわかってる」

 

「まぁでも正直、軍の民間人に対する対応は見直すべきだ。特にこれからはより戦争は大きくなる…現地民との関係は今以上に重要になって行く」

 

「ああ…ここの事を一番理解しているのは現地民だしな」

 

「後はどう上を丸め込むかだな…」

 

 サントスは腕を組む。

 

「だったら、現地民の自治区を造ればいい」

 

「自治区?」

 

「俺達は手を出さず、難民に場所を提供してあとは勝手に街を作ってもらえばいい。そうすれば、人も集まるし…」

 

「人が集まれば情報も集まるか…」

 

 サントスは納得するように頷く。

 

「マサチューセッツを出ててこれが思い付かない訳無いだろ?」

 

「まぁ似たことは考えてたさ…問題は自治区のリーダーを誰にするかだ」

 

「それはお前の仕事だ」

 

 藤原は嫌味のような笑みでサントスを見る

 

「はぁ…毎度毎度そういう面倒事は押し付けてくるな?」

 

「それはお互い様だ…俺が身体を使ってお前は頭を使う…適材適所だろ?」

 

 藤原の言葉にサントスはため息をついて残りのビールを飲み干した。

 

 

 

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