異世界戦争.   作:ロングキャスター

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静空の嵐

 

 

ロックナプル前哨基地から凡そ600km後方に位置する、ラーフ社 SPACE本部陸軍基地…その基地に併設される日の出前の『ジョン・ウエスト空軍基地』の格納庫前は街灯に照らされて昼間と見紛う程の明るさだった。

 

 掃討作戦に参加する航空隊が発進準備に追われていた。

 

 現地時間 03:57…

 空軍基地の滑走路を飛び立つ2機の『電子戦術機(EF-18G グラウラー)』複数のミサイルを携えて静寂に包まれた異世界の夜空を轟音で切り裂いていく。

 

 ────────────────────

 

 ──ロックナプル前哨基地──

 

 作戦開始時刻の40分前 5:15

 

「全員!準備はいいか?!」

 

 藤原の大声が基地に轟く。隊員達は思い思いの反応でその声に返答する。基地のすぐ外では隊員を乗せるヘリ部隊が最終チェックを入念に行っていた。

 

「第2小隊、第1小隊の2小隊はCH-47に搭乗!残りの各隊はMH-60に分乗しろ!いいな!」

 

「「イエッサー!!」」

 

「よし!最終チェックだ!周りの人間と確認し合え!」

 

 藤原の指示のもと各隊員が隊員間で装具チェックを始め、同時に基地外で待機するヘリ部隊がエンジンを始動した。

 ヘリのジェットエンジンが始動すると大きなメインローターがゆっくりと回転を始める。その回転は次第に高速になり、空気を切り裂く独特の音と共に強烈な突風を発生させていった。

 

「準備いいな!搭乗開始!」

 

 藤原の号令に合わせて隊員達はヘリに乗り込んでいく。

 

《準備はいいな?離陸するぞ》

 

 パイロットからの無線が届く。

 エンジンがより強く唸りを上げて回転数が増していくにつれて風を切り裂く音が早く、強くなって行く。

 4機のヘリが離陸を始めてクダ村へ向けて飛び立った。

 

 ────────────────────

 

《こちらピクシー1、敵レーダーサイトからのレーダー信号を受信…スカイエンジェル、状況は?》

 

 コードネーム『ピクシー1』こと電子戦術機(EF-18G グラウラー)の1番機のパイロットが問い掛ける。

 

《こちらスカイエンジェル…先ほどポイントαを通過…レーダー覆域以下(探知範囲外)をローパス低空飛行中。WOW…旅人か?目が合ったぞ》

 

《了解…》

 

 ハリーは前哨基地の作戦司令室でそのやり取りを聞いていた。

 

「よし…レーダー映像を空中管制機(E-7)の映像に切り替えろ」

 

「了解。空中管制機の映像に切り替えます」

 

 ハリーの指示により司令室に置かれたモニターに映像が映し出される。

 

《こちら空中管制機、ゴーストアイ…付近に敵影無し》

 

《了解》

 

「スカイエンジェル…まもなくポイントβに到達…」

 

 司令室オペレーターの声を聞き、ハリーは腕時計を見る。

 

 ー05:53ー

 

 作戦開始2分前…

 

「ピクシー…レーダージャミングを開始せよ」

 

 ハリーの声が低く響き渡る

 

《了解…ピクシー1、レーダージャミングを開始》

 

「ピクシー、レーダージャミング開始…スカイエンジェル、上昇を開始せよ」

 

 淡々としたオペレーターの声が響き渡る。

 

《了解…スカイエンジェル、上昇を開始する》

 

 映し出されるレーダー映像からスカイエンジェルが上昇していくのが分かる。

 

 ー05:54 25秒ー

 

「ピクシー、HARM(対レーダーミサイル)発射…ミサイル着弾と同時に作戦開始」

 

《了解…ピクシー1、攻撃開始》

 

 ハリーの指示により、ピクシー1こと電子戦術機の翼下に吊り下げられた『AGM-88 HARM』2発が敵レーダーサイトに向けて飛翔を開始。

『AGM-88 HARM』とは、レーダー信号を検知してミサイル自らがその発信元に自己追尾する対レーダーミサイルである。

 

 ハリーはレーダー映像に映し出されるミサイルの軌道を見つめる。

 

「ミサイル着弾まで残り15秒…スカイエンジェル、攻撃目標到達まで残り30秒」

 

 オペレーターの冷たい声色が響き渡る。

 

「着弾まで残り10秒前…9、8、7、6、5、4…ミサイル…着弾!」

 

「全隊へ…オペレーション『静空の嵐』…始動!」

 

 ハリーの声が司令室に低く響き渡った。

 

 

 ────────────────────────ー

 

 ──ミサイル着弾の十数分前──

 

「ん?」

 

 オイローパ空軍のレーダー監視員がレーダー上に検知した反応に眉をひそめる。

 

「なんだって?」

 

 彼の同僚が覗き込む。

 

「どうする?室長に報告するか?」

 

「う~む…いや…やめておこう。昨日もこの流れで結局ドラゴンだっただろ?」

 

「たしかに…」

 

「こんな日の出前に叩き起こしたら機嫌を損ねちまう…というか、ドラゴンだとかこっちの異界飛行生物は無駄に図体がデカいせいで航空機なのか区別がつかん…」

 

「全くだ…」

 

 オイローパ空軍兵はレーダーを見つめる。

 

「こっちに近づいてるような…お?消えたぞ」

 

「ほらな?ドラゴンか何かだろう…叩き起こさなくて正解だったな」

 

 2人は安堵する。

 

「ったく…そろそろ代用珈琲じゃなくてちゃんとした珈琲が飲みたいな」

 

 監視員がボヤく

 

「ああ…一説によれば、珈琲は将校に献上されてるらしい」

 

「本当か?てことは下っ端には代用品ってことか…」

 

「ああ…だから、たまにはこういうのはどうだ?」

 

 監視員の同僚がポケットから紙に包まれたチーズを取り出す。

 

「お?どうしたんだよそれ?」

 

「糧食係からくすねて来たんだ…俺ら下っ端もたまにはこういう贅沢があってもいいだろ?」

 

「よし…早速食べよう」

 

 監視員は腰に下げたの銃剣を抜くとチーズを切り分けていく。

 

「あ~…いい塩加減だ…これが珈琲じゃなくてワインならな…今度はワインをくすねられないか?」

 

「やろうとしてるんだけどな…なかなか難しくてな」

 

 2人はチーズを堪能しながらレーダーを見つめる。

 

「それにしても…このレーダーがあれば敵空軍の動きは丸わかりだな…まさか我々がこういうのを開発しているとは思ってもいないだろうな」

 

「ああ…奴らは陸空の連携に依存している…その空を支配してしまえばこっちのものだ。帝国の勝利は近いぞ?」

 

「はは!全くだ…」

 

 突如2人の会話を爆音が遮る。監視室の照明がちらつき、建物が揺れる。その揺れに卓上のチーズが床に落ちた。

 

「な、なんだ?」

 

 2人は何事かと辺りを見渡す。

 

「あれ、レーダーが消えてる…」

 

 監視員がレーダーの電源が完全に切れていることに気がついた。

 

「発電機がイカれたか?ちょっと見てきてくれ」

 

 監視員が同僚に言うと同僚は部屋を飛び出した。

 監視員はレーダーを復帰させようと複数のスイッチを操作する。しかし何をやっても復旧することはない。しばらくして慌てた様子で同僚が扉を開ける。

 

「ま、不味いぞ!」

 

「どうした?!」

 

「レ、レーダーが…吹き飛んでる…!」

 

 監視員はその言葉に戦慄した…

 

 ──────────────────ー

 

「うぅ…さむ…」

 

 オイローパ空軍の空軍基地で夜間警戒に従事していた陸軍兵は異世界の肌寒さを感じる夜明け前に身体を震わせていた。

 彼は重い小銃Kar98kを右肩に担いだまま夜空を見上げる

 

(ああ…故郷の夜空もこんな感じだったな…)

 

 彼は心中で呟く。異世界の澄んだ夜空に浮かぶ月が薄っすらと周囲を明るく照らし、煌めく星々に故郷の夜空を重ねた。

 

 彼は視線を落とし警戒任務に意識を戻す。

 決められたルートを辿り、基地周辺の警戒に当る。ふと彼は立ち止まり、ポケットを弄って煙草を取り出すと、同時に1枚の紙が地面に舞い落ちた。彼はそれを拾い上げると微笑む。

 

(ああ…エリカ…元気だろうか…君に会いたいよ)

 

 彼は写真に写る婚約者にそっと口づけすると胸ポケットにしまい込む。

 

(ったく…こんなに寒いならレーディッツに司令室警戒を譲るんじゃ無かった…何時も通り室内警戒の方が良かったな…)

 

 彼は自身の優しさを呪い、煙草を咥えて火をつけようと俯いた。

 

 その時だった。

 突然の突風が彼を押し、顎紐を外していたヘルメットが吹き飛ばされる

 

「な、なんだ?!」

 

 彼が咄嗟に後ろを振り向くと耳を劈くけたたましい轟音が夜空を震わせる。その直後、空軍基地の一部が爆音と炎に包まれ続けて滑走路が土柱を上げて吹き飛んだ。

 

「…敵…襲?」

 

 彼は一瞬硬直した後吹き飛んだヘルメットを拾い上げて基地の方へ駆けていった。

 やがて基地全体に空襲警報が鳴り響き一心不乱に司令室へ向かう。

 司令室に着くと彼は硬直した…

 

 司令室があった建物はバラバラに吹き飛び崩壊していた…

 彼は辺りを見渡す。建物から少し離れた所に血を流して倒れる1人の男を見つけ駆け寄る

 

「レ、レーディッツ…」

 

 自身と交代していた同僚の亡骸に言葉を失う。しかし彼は恐怖や悲しみより先に交代していた事への安堵を覚えた。

 

「何がどうなっている!状況は?!」

 

 背後から轟くその怒号に男は正気に戻り振り向く。

 そこには空軍基地司令官が居た。

 

「え、えと…司令室が…全壊しました…!」

 

「そんな事は分かっておる!レーダーサイトからの報告は!?」

 

 司令官の言葉に目の前の惨劇しか分からない彼はオロオロと言葉に詰まる。

 

「司令室が崩壊したため、連絡手段が御座いません!」

 

 他の同僚が状況を伝える。

 

「被害は?!」

 

「司令室並びに滑走路が破壊された模様です!」

 

 司令官の問いかけに同僚は応える。

 

「むぅ…よい!迎撃機を飛ばせ!」

 

「っ!また来る!」

 

 警戒兵は再びこちらに向かってくる敵機に気付くと声を上げる。

 

 敵機は航空機が保管されていた格納庫に爆弾をばら撒いて格納庫を破壊する。

 混乱の中、ようやくサーチライトが敵機を照らす。

 

「あ、あれは…あれが…黒鳥…!」

 

 警戒兵はサーチライトに照らされた敵機スカイエンジェルこと『F-15E ストライクイーグル』を見て戦慄した…

 真っ黒な塗装を施したその巨鳥の姿はオイローパ兵に『死を運ぶ黒鳥』または『ワルキューレの使者』として恐れられていた。

 その巨鳥に釘付けになった彼は、垂直尾翼に邪悪な笑みを浮かべる天使が描かれた部隊マークがハッキリと見えた。

 

 空軍基地を襲った黒鳥は颯爽と夜明け前の夜空に消えていった。

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 夜明け前、マイヤーは兵舎代わりとして利用されている宿の一室で眠りにふけていた。

 彼だけでは無い。夜間警戒に従事する者以外は皆同じように眠っていた。

 

 日の出時刻 05:55

 

 日が昇り始めたその時、轟音と揺れが宿を襲う。

 

「なにごとか!」

 

 マイヤーは飛び起きる。ハラハラとホコリが舞い落ちる天井を見上げ彼はすかさずベッドを降りて上着を羽織る。

 

 煙が充満する廊下と混乱する兵士たちを見渡し、

 

「皆落ち着け!武器を持ち直ちに屋外に退避せよ!」

 

 流石は訓練された兵士たちである。マイヤーの一喝に直ちに規律を取り戻し、マイヤーもモンドラゴンを携えて屋外に飛び出した。そして彼は半壊し煙を噴き出す宿を見て困惑する。

 

「なんだ…これは…?」

 

 困惑する彼を無視して不可思議な事象が立て続けに発生する。明るくなり始めた夜空を切り裂く断続的な音が次第に大きくなっていく。

 空を見上げる彼らの頭上を3機のヘリが駆け抜けていく。

 

「なんだ!敵機か!対空戦闘!」

 

 マイヤーは直ちに空を舞うヘリに向けてモンドラゴンを撃つ。

 しかし、ヘリの両端に付けられた『M134 ミニガン』が迎え撃つオイローパ兵に弾丸の雨を降らせる。

 ヘリはそのまま広場の方へと向かった。

 

「敵機は広場に行ったぞ!追え!」

 

 マイヤーと兵士たちはヘリを追って駆け出す。

 

 

 ──────────────────ー

 

 ヘリ部隊の1機、『AH-64E アパッチ・ロングボウ』が宿に向けて『ヘルファイア 』を発射し建物を半壊させた。

 その後アパッチは接近し過ぎない離れた距離から機首下の機関砲チェーンガンで敵兵を破り倒すように掃射していく。

 

《広場周辺の敵を一掃した。今なら行けるぞ》

 

 アパッチのパイロットからの無線報告がやって来た。

 

「了解…少尉!広場の安全が確保された!広場に降着するぞ!降着時間は30秒だ!」

 

 藤原達第2小隊が乗る『CH-47 チヌーク』のパイロットが藤原に呼びかける。

 

「了解!全員聞け!降着時間は30秒!速やかに降りるんだ!いいな!気合い入れていけ!」

 

「「Oorah(ウーラー)!!」」

 

 チヌークが広場上空に来るとゆっくりと降下を始め着地した。

 

「行け行け!!」

 

 藤原の号令の元隊員達がヘリから降りていく。アパッチが付近を一掃した事で彼らはスムーズにヘリを降りることができ、ものの数秒で展開が完了した。

 彼らは速やかに建物等の物陰に分散し、迎撃に来たマイヤー達を迎え撃つ。

 

「散開!ゆっくりと包囲していくぞ!」

 

 藤原の指示の下、一部隊員が建物の陰を通ってゆっくりと包囲網を作っていく。

 別で降下していた本部からの増援部隊も合流し安全確保の為に一軒一軒虱潰しにクリアリング制圧していく。

 

 リック、ベア、ランディの3名がある一軒に突入する。フラッシュライトを照らし室内を捜索する。

 捜索を終えて室外に向かおうとしたその時だった。一室の奥にある押し入れの中なら微かながら物音がした。彼らはそれを聞き流すことなく扉に向けて銃を向ける。

 

「抵抗しても無駄だ!大人しく出てこい!」

 

 リックは呼びかけるが返答は無い。

 ゆっくりと扉に近づきドアノブに手をかける。依然として銃を構えるベアとランディにアイコンタクトを取って一気に扉を開ける。

 

「動くな!」

 

 その時怒号の直後、三人は目を丸くする。

 押し入れの中にはボロボロの服を身に纏い、ボサボサの髪で恐怖に怯える女性が居た。

 

「おい…ウソだろ…」

 

 ランディは民間人の姿に驚愕した。

 

「ケイ、まずいぞ!この村にはまだ民間人が居る!」

 

 リックはすかさず藤原に無線を入れる

 

《何だって?!》

 

《民間人には決して被害を出すないいな?》

 

 司令室で通信を聴いていたハリーが割って入る。

 

「了解…やるだけやってみます」

 

 リックは保証は出来んと言いたげな口調で答えた。

 

 

 ──────────

 

 

 マイヤーらオイローパ兵の激しい抵抗により、広場で戦う藤原達は膠着状態に陥っていた。

 

「クソ…シノが予想した通りたしかにモンドラゴンだな…」

 

 藤原は自身の愛銃M4A1カービンに付けた『ACOGスコープ』越しに確認出来る敵兵の銃を見て呟く。

 

「自動火器が増えてるせいで隙が減ってやがる…」

 

「まだ全隊に行き渡ってるようじゃないが…クソ…!民間人が誤算だったな…」

 

 建物の隅に身を隠していた藤原と隣にいたミゲルは隙を伺いつつ、藤原は体をくねらせて胸から上だけを建物から身の乗り出して射撃する。

 

「今、向こうのペースになってる…突破口を開かないと…」

 

「どうする?」

 

「ミゲル、合図で弾幕を張ってくれ。俺はあの車両まで走る」

 

 藤原は広場の隅に停められた敵の装甲車を指差す。

 

「よっしゃ…!やったろうぜアミーゴ」

 

「じゃあ行くぞ…3…2…1…GO!」

 

 藤原の合図でミゲルが体を乗り出して『MINIMI軽機関銃』で制圧射撃を始める。

 毎分700発を超える弾丸の雨がマイヤーらオイローパ兵に振り注ぎ、彼らの動きを抑制する。ミゲルの援護射撃を受けて藤原は全速力で目的の装甲車まで走り抜けそれを盾にする。

 

 ミゲルは藤原が辿り着いたのを確認すると建物の2階で機関銃を構えようとする敵兵を発見した。

 

「MG!!」

 

 ミゲルは大声で機関銃が居ることを警告すると共に、その建物に向けて制圧射撃を始める。

 

「マックス!俺が正面に手榴弾を投げる!反撃が止まったら40mmをお見舞いしてやれ!」

 

「あいよ!」

 

 藤原はボディーアーマーの胸につけたグレネードポーチからグレネードM67を取り出して安全ピンを抜く。

 大きく振りかぶりグレネードを投擲すると目標のポイントに転がったグレネードが炸裂する。

 

 その刹那銃声が鳴り止むとマックスは銃の下部に付けた『M320グレネードランチャー』を撃つ。独特の発射音と共に40mmの弾頭が敵に振り注ぐ。

 

「よし!今だ行け行け!」

 

 藤原は無線で全隊に指示を出す。一瞬の隙を突いて部隊が少しだが前進を始めた。

 藤原は腕時計を一瞥すると空を見上げる。日が昇り始めた事で赤くなった空。

 

「運はこっちに味方してくれそうだな…さて、後は敵のお偉いさんがお利口さんな事を願うかね」

 

 藤原は独りごちる。

 

 

 ──────────

 

「よし俺達も行くぞ」

 

 藤原の指示を受けて、カークス、篠原、グレッグの3名が他の隊員達と同じように行動を開始。挟撃の為に建物の裏を通っていく。銃を構え中腰の姿勢で静かに、素早く移動していく。

 道中同じく挟撃を目論む敵数名と鉢合わせしたが、彼らの圧倒的な練度の前にいとも容易く処理されていく。

 

 しかしその音は余計に敵を引きつけてしまい、建物の角から出会い頭で接敵してしまう。

 

 銃剣を付けたモンドラゴンを持った敵兵がカークスの胸を目掛けて突き立てようとする。

 カークスは冷静にM4を敵に突き出して銃口で敵兵の喉元を突く。突然の突き攻撃を受けた敵兵は体勢を崩してしまい、カークスはすかさず彼の胸に2発の銃弾を撃ち込む。

 その後もぞろぞろと襲いかかる3名の敵兵に対処しようとしたその時、突如建物の扉が開き飛び出した腕が篠原を室内に引きずり込んだ。

 

「シノ!」

 

 グレッグは篠原を助けに向かおうとするも、他の敵兵への対処の為に身動きが取れない。

 

 篠原は180cmを余裕で超える長身のオイローパ兵に背後から首を絞められたままゆっくりと家の奥まで引きずり込まれた。

 首を絞められているため声にならない声を上げながら身体をもがく。

 篠原は右肘で男の腹を数発殴る。男はその攻撃に苦痛で顔を歪ませ拘束を解いてしまい、篠原はすかさず男に回し蹴りをお見舞いする。

 大きく身体を後退させた男にHK416を構えて胸、腹に3発の弾を叩き込む。

 

「ふぅ…」

 

 一息ついたのもつかの間、別の男が雄叫びを上げながら横から襲いかかる。

 その男が振り上げた右手には現地民から略奪したのであろう西洋剣が握られ篠原目掛けて振り下ろされる。

 

(あ…間に合わない…)

 

 彼女の身体は脳が思考するよりも早く、これがライフルの間合いでない事を判断し重心を後ろに傾けて後退りすると同時に腰に下げた拳銃(USP9)を引き抜いて流れるように6発を叩き込む。

 男が倒れ込むとその背後から3人目の男が銃剣付き小銃(Kar98k)で刺突する。

 

「あぁ~もう!」

 

 篠原はその刺突を脚を拡げて屈んで回避すると背後からカランビットナイフを引き抜いて彼の太ももを斬りつける。

 

「ぐあぁ!」

 

 叫び声をあげて跪く敵兵に篠原は立ち上がると右腕、喉元の順でナイフを斬りつける。

 

「はぁ…はぁ…図体デカいからってナメんなよ!」

 

 篠原は息を切らせながら出口に向かう

 

「シノ、大丈夫か?!」

 

 外の散兵を処理したグレッグとカークスが室内に入って来る

 

「もちのろんですよ!」

 

「3人…お前が1人で?」

 

 敵の亡骸をみてグレッグが言う。

 

「そうですけど?」

 

「WOW…ん〜惚れちゃいそ」

 

「あ゙??」

 

 篠原はグレッグのあからさまなイジりに威嚇するように言った。

 

「おっと…こいつぁ失敬」

 

「ほら、バカ言ってねぇで行くぞ」

 

 2人の会話はカークスに遮られる形で終了し、3人は気を取り直して再び移動を始めた。

 

 

 

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