Paradise of the Disqualified:Rewritten World   作:GameMaster

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12話 顔のない月

 ひとまずアビドス高校へと戻ってきた一同だったが、その表情は晴れやかとは程遠かった。

 カイザーグループによってもたらされた、二つの厚い壁に阻まれてしまったからだ。

 一つ目は、カイザーグループが長らく追い求めていた『宝』の存在そのもの。

 そしてもう一つは、不当に吊り上げられた利子の重圧。だが、それについてはユーリがあらかじめ仕掛けておいた準備のおかげで、時間を稼げる見込みがあることが判明した。

 

「借金と利子に関しては、間違いなくしばらくの間は猶予が取れるよ。

 戻る前に、ヴェリタスへ書類と、それまでに集めた情報の拡散を頼んでおいたからね。

 ひょっとしたら、大事になって催促の電話すら来ないかもしれないね

 

 その言葉を聞いて、一瞬誰もが何のことかわからずに戸惑っていたが、やがてセリカが鋭く反応し、最初に気づいたのだった。

 

「あっ! あの闇銀行から持ち出した書類のこと?」

 

「そうだよ。あの書類はカイザーだけでなく、その関連企業や取引先の企業にも致命的なダメージを与えるからね。特にカイザーにとっては、世間に知られたくない情報がすべて明るみに出る。

 違法な契約書類はもちろん、生徒会との癒着もあるはずだから、しばらくは大混乱になるよ

 

 爽やかで、まるで嬉々として語るユーリの態度に、一同は思わずドン引きしてしまった。

 

"あまり褒められる状況じゃないけど、ユーリのやり方もある意味で正しいと思うんだ。外の世界のある作品にこんな名言がある。『法の力が届かぬ悪党には、無法の裁きを』ってね。*1

 ただ、無法過ぎるやり方は後々のリスクも高い。だからこそ、僕たちシャーレは『法の力を持つ無法の裁き』として立ち向かうしかない。権力とは、こんな時に使うためにあるものだからね"

 

 その言葉を聞き、アルも深く共感を覚え、力強くうなずいた。

 

「本当のアウトローってのは、こういうことなのかもしれないわね。法を盾に悪事を働く相手に対して、たとえ無法者と呼ばれても、自分の正しさを貫き通す……」

 

"調べてみたんだが、アウトローという言葉は本来、法の加護を完全に剥奪された者を指すらしい。アウトローという概念はアウトローリーと呼ばれる制度に由来していて、極端な例を挙げれば、人権すら奪われた死刑宣告を受けた者ということになるんだ。

 逃げ込んだ先で命を奪われても、文句は一切言えない。常に秩序の側から命を狙われ続ける、まさに『法の外』に放り出された存在。それが本来のアウトローの意味なんだ"*2

 

 その言葉を聞き、アルの心はわずかに揺れ動いた。果たして犯罪者として生きることが正しい道なのか――迷いが生まれたのだ。

 しかし、先生はそんなアルの迷いを宿した瞳をじっと見据え、静かに、だが揺るがぬ確かな口調で、決して迷いのない言葉を続けた。

 

"だけどね、アウトローという言葉には、弱者のために悪党へ立ち向かう義賊の意味もあるし、仁義を重んじ、弱きを助け強きを挫くために身を犠牲にする任侠の精神や生き方もあるし、悪しき法体制や権力に反抗する反逆者という意味もある。

 アル、君はどちらかと言えば任侠や反逆者の側だ。正しい心を持ちながらも、自らの理想のために「悪に対する悪」を選んだ。

 だからその理想さえ見失わなければ、シャーレは君たちを全力で支援するよ"

 

「ええ……ええ! この私と、便利屋68ことアクア小隊に、ぜひとも任せておきなさい!」

 

「くっふ、その前にぽんこつ具合を直さないとね」

 

 アルの強い決意にムツキが軽くオチを入れて、借金の話はひとまず後回しになった。

 

"残るもう一つの問題は、カイザーグループが追い求める『お宝』か……。ユーリの推測では、『月光洞』から流れ着いた軍事兵器らしいけど……。月光洞について説明をお願いできる?"

 

 そこで一同は互いに助け合いながら、先生に月光洞についての説明を始めた。

 月光洞とは、一体いつから存在しているのか定かではないが、未開拓地域や禁止地域に点在する巨大な穴の総称である。

 

 だが月光洞からは時折、さまざまな物資が絶え間なく流れ着いてくる。それはキヴォトス全体のレベルを上げるものから、全く意味のわからない不可解なものや、明らかに軍事兵器と思しき危険な物まで、多種多様にわたっている。

 加えて、流れ着く場所や流れ着き方も時折大幅に変化しており、その謎は深まるばかり――まさに不可解極まりない大穴なのである。

 

「そうなると、カイザーが必死に探しているのは、最大級の月光洞――私たちはそれを大月光洞(だいげっこうどう)満月光洞(まんげつこうどう)と呼んでいる。そこから流れ着いた、あるいは何らかの方法で転移してきた何か、そう考えるのが自然だろうね」

 

 カヨコは神妙な表情を浮かべながら、ユーリの推論に静かに賛同した。

 それを受けてユーリも話を引き継ぎ、今日起きた一連の出来事と今後の対策について冷静にまとめ、力強く締めくくった。

 

「今ここで結論を出しても、やるべきことは限られている。情報が明らかになって大事になるまでには、最短でも一日は必要だと思っているし、その後カイザーPMCが反撃に出る可能性もある。

 今回時間を稼げたのは、借金返済と吊り上げられた利子の保証金に関してだけよ。私たちに残されたのはその間に確実に決着をつけることね」

 

"その通りだね。

 準備を整えるには作戦報告をまとめる必要があるし、何より休息も欠かせないからね"

 

「まぁ、とりあえず本日はこの辺にしておこう。解散解散~。これは委員長命令って事で

 

 先生が本日の作戦を終わらせる宣言をすると、それにホシノも軽く乗っかり、にぎやかに解散命令を元気よく発した。入り口付近にいたアクア小隊が真っ先に退出し、その後ノノミ、セリカ、アヤネが続いて部屋を後にした。最後にワカモとユーリが部屋を後にした。

 室内にはホシノとシロコ、そして先生の三人が残っていたが、シロコは何か違和感を覚えたらしく、首を傾げながら誰もいない方向をじっと見つめていた。

 

 実は、最後にユーリが退出したのは、誰にも気づかれずに霊体化するためだった。

 部屋を出てから瞬時に転種し、屍技:霊体化を発動。何事もなかったかのように、さりげなく戻ってきたのだ。

 シロコには気づかれるかもしれないとは思っていたが、まさかこんなにあっさり見破られるとは思わず、内心ひやりとしたのだった。

 

(これ、嘘でしょ……? 想像を遥かに超えるほどゴースト適性が高い……!

 もしゴースト系列を重点的に鍛え上げれば、封印種のエターニティへと一気に駆け上がることも間違いない……ッ!!)

 

 結局、シロコはホシノの説得で帰ることになったが、先生は諦めることなくそのままホシノの説得を根気強く続ける決意を固めた。

 一人で勝手に犠牲になろうとしているのを、先生は何となく気づいていたからだ。

 

"聞きたいのは退部届のことだ。シロコが見せてくれたよ"

 

「うへ~。いつの間に……先生、ちゃんとシロコちゃんを叱っておいてね~。

 それで肝心の退部届はどこにいったのかな?」

 

 そのやり取りの最中、ユーリは静かに霊体化を解除した。驚きで目を見開くホシノをよそに、彼女は軽く掲げた手のひらに炎を宿らせ、小さく揺らめかせていた。

 

「こんな感じで、

 

 まるでアニメやゲームのワンシーンのように揺れる炎を、ユーリは力強く握り潰す。

 あまりにも異様なその行動にホシノは思わず引いてしまった。

 

「うへ……ユーリちゃん、本当に一体何者なの? どう見ても普通の人間じゃないよね?

 まあ、とりあえず面と向かって言うのも何だから、少し歩きながら話さない? さすがにこの場で逃げたりもしないし、もし逃げ出したら間違いなくユーリちゃんに捕まるから」

 

 そう言いながら校内をゆっくり歩き出し、ホシノはぽつぽつと学校のことを語り始めた。

 砂漠化が進む中、校舎を転々と移り歩いてきたこと、この別館にたどり着いたこと、様々な不満はあるものの、それでも結局このアビドスが好きなのかもしれないという思い。

 そして、空気が少し変わり、彼女は重要な話題を切り出した。

 

「……先生、正直に話すよ。私は二年前から、変な奴に提案を受けてた。

 あいつら、PMCで使える人材を集めているみたい」

 

 それは、カイザーコーポレーションからのスカウトだった。しかも何故か高校に入ってから何度も繰り返されていた。

 ホシノの頭に浮かんだのは、借金という盾で脅し、頑なに自分たちの陣営へ引き入れようとする怪しげな人物の姿だった。もちろん、その提案に乗ってしまえばアビドス高校は消滅してしまう。だからこそ彼女は頑なに拒み続けてきたのだが……。

 あの出来事でホシノの心は揺れていた。だからこそユーリも説得に回ったのだ。

 

「多分、幸か不幸か私たちが流した情報で彼らの計画は大幅に狂うことになるけれど、決して油断はできない。で、ホシノちゃんに提案を持ちかけた人物って、もしかして名前をわざと出さなかったり役職を曖昧にしている例のあの人のこと?

 実は流した情報の中に、意図的に残さないよう明記しなかった項目があったんだ。

 おそらく復元を恐れて、最初から入力していなかったんだと思う」

 

 ユーリですらその実態を完全に掴み切れていない、その正体不明の人物こそが、間違いなくこの陰謀の黒幕の一人に違いないだろうと推測している。

 

「私もあいつの正体は知らない……ただ、私は黒服って呼んでいる。何となくぞっとする感じで、怪しさだけならユーリちゃんより上かも。でもあのカイザーPMC理事ですらあの黒服を恐れてる」

 

 その後も三人はさまざまな話題で言葉を交わしていたが、ホシノは巧みに話をかわし、先生に本当のことを悟られないようにしていた。

 ホシノはひとつ大切なことを忘れていた。傍らにひっそりと立つ少女が、必要とあらばいくらでも非情で冷酷な手段を取れる恐るべき存在だということを。

 そしてホシノの決意が固いように、ユーリの覚悟も定まっていた。説得に応じなかった場合の手札を容赦なく使うことにした。

 

「ホシノちゃん、ごめんね」

 

「え、何のこと?」

 

 ユーリはそっとホシノの両肩に手を置き、真剣な目で視線を合わせた。実はこの瞬間、彼女は魔技:恍惚の魔眼を発動していたが、ホシノがそれを抵抗(レジスト)したため効果は及ばなかった。そこで、ユーリはもう一つの手段に切り替えたのだ。

 もしこの時ホシノが、ユーリの両腕に巻かれていた包帯に違和感を覚えていたら、まだ逃げることも可能だったかもしれない。しかし、すでに時は遅かった。

 

「―――屍技:ミイラバンデージ*3

 

 そう呟くと、巻かれていた包帯がほどけると同時に、ホシノの両腕と両足を強力に縛り付け、さらにいやらしい拘束具のように絡みついていった。

 

「なっ、なにするの……ひぃん!? 何してるの、ユーリちゃん!? ちょっとそれ、かなりいやらしいんだけど!?」

 

「だってさ、このまま自分ひとりで犠牲になろうとしてたんでしょ? 先生には無理やりごまかせても、私にはそんな姑息な手段は通用しないんだ」

 

「し、しま……ひゃぁっ!? どうやって包帯をそんなふうに巻きつける事……ひうっ!? や、やめてよ、ユーリちゃん! 本当にやめてぇ……お願いだから……!」

 

「おーおー、耐える耐える。さすが快楽属性にはかなりの耐性を持ってるね。でも残念、ホシノちゃんは拘束耐性に弱い種族だから、一度絡め取ったらもう逃げられないよ」*4

 

 ユーリの言葉通り、ホシノは抵抗むなしく、包帯で淫靡に縛られてしまった。スカートはめくられたまま縛られ、下着や肉体を蠱惑的に表現されている。

 

「ユーリちゃん、いくらなんでも、おじさんはさすがに怒るよ? 今なら見逃してあげるから、やめ……そ、その手つき、な、何を……? そ、それって……え、え、か、体が……!?

 

「ようやく効いたわね――これは魔技:恍惚の魔眼。瞳術と呼ばれる視覚干渉型の術。

 そして淫技でお仕置きしてあげる。勝手に一人で犠牲になろうとして、そのあとのことを何も考えていない――そんな不器用な分からず屋には、少しくらい懲らしめが必要でしょう?

 

 この時ようやく、ホシノは自らが犯した致命的な選択ミスに気がついた。もし本当に皆を守る覚悟があるのなら、あの瞬間、解散命令を出した直後に即座にその場から姿を消すべきだったのだ。

 そうすれば、たとえどれだけ責められたとしても、自らを犠牲にして仲間を守るという目的は果たせていた――そのことに今さらながら思い至ったのである。

 

「これはあくまで“お仕置き”だから、先生にはちゃんと最後まで見届けてもらうつもり。安心して。もしあなたが望むなら、その時は先生に差し出すことも約束してあげるから

 

 この提案を受け入れてしまったら、もう二度と元の自分には戻れなくなる――そんな危機感を理性は激しく訴えかけていた。

 今こそ拒絶し、反論すべきだと頭では分かっているのに、体が言うことを聞かない。

 まるで本能の奥底が、これから訪れる肉体的な快楽を望んでいるかのように、抵抗する力を奪っていくのだった。

 

「本当は、もう少しだけでも、みんなとちゃんと相談しておくべきだったね。残念だけど、後悔は反省のあと。だから――お仕置き、始めるよ」

 

 もう何をしても手遅れだと分かっていても、ホシノは床にへたり込んだまま、必死に首を振って抵抗の意思を示した。

 だが、どれほど必死に拒絶しようと、現実は非情に冷酷だった。感情も願いもすべて、彼女の前では無力で、何の意味も持たなかったのだ。

 

「とりあえず、敏感と恍惚のデバフ付けてから本格的なお仕置きかな?」*5 *6

 

 たとえ快楽攻撃に対して耐性があったとしても、威力が高ければ無意味だ。

 近づいてくるユーリの怪しい手つきに、ホシノは必死に抵抗しようとしたが無意味だ。激しい手淫快楽攻撃により、耐久(HP)はみるみるうちに削り取られ、ホシノは過剰な快楽に呑まれて深く意識を失ってしまった。

 数分後、ようやく意識が戻ると、床には大きな水たまりが広がっていた。

 その異様な光景に気づいたホシノは、自分が失禁(おもらし)してしまったことを悟り、涙で頬を濡らした。

 心が折れそうになるほどの仕打ちに耐えかね、ユーリに弱音を吐こうとしたその瞬間――見てはいけない、後悔するほどの光景を目の当たりにしてしまった。

 

 いつの間にか全裸となったユーリが、妖艶で淫靡、かつ挑発的なファイティングポーズをホシノに向けて堂々と取っていたのだ。

 それは女王位の資格を持つクイーンサキュバスだけが使える淫技―――

 

サキュバスアーツ零式*7

 

 目にした絶望を塗り替える圧倒的な快楽の奔流に、ホシノはついに意識の淵へと沈んでいった。

*1
ヒューマンバグ大学関連の作品より。

*2
Wikipediaの説明をもとに、ある程度自己解釈しています

*3
威力C 快楽属性 束縛のデバフ効果

*4
ゾンビ系種族は快楽ダメージに対しては50%、快楽系状態異常に対しては25%の耐性倍率を持ち、比較的高い耐性を有している。しかしその一方で、拘束耐性の倍率は125%と高く、拘束には弱い傾向がある。

*5
敏感…快楽属性の耐性倍率を二倍にする。つまり二倍のダメージが通るようになる。

*6
恍惚…快楽状態異常の一つ。数ターン行動不能だがアイテムやスキルで解除可能。

*7
威力SS 快楽・物理属性 絶頂(快楽系即死)効果




 今回の物語に登場する「月光洞」についてですが、原作の蓬莱学園シリーズをベースにしつつ、もんぱら要素も加えています。複数の月光洞が存在するのはそのためであり、場所を特定させないことでご都合主義的な展開にも柔軟に対応できるようにしています。
 特に「最大級の月光洞」(大月光洞や満月光洞と呼んでいます)は、本作オリジナルの設定で、もんぱらにおける最大級のタルタロス(ラストダンジョン)をモチーフにしています。流石に突入する展開は一切ありません。

 また、ホシノの処遇に関しては実は3パターンのプロットを検討して悩んでいました。
 一つは原作通り見過ごす案、二つ目は先生の説得とユーリの説得か恐喝で止める案、そして三つ目は先生が見過ごしかけたのをユーリが捕まえて調教する案、です。
 当初は一番目の案で執筆を進めていましたが、既にホシノの思惑に気づいている為に無しに。
 説得は通じない可能性もあり、恐喝案はやりすぎかと思い却下し、最終的にR15相当のやり方でのお仕置きに落ち着きました。
 最後がちょっとオーバーキルで犯りすぎ? 気にしない気にしない。

 なお、今話のタイトルの元ネタは、2000年に発売されたR18PCゲーム『顔のない月』からお借りしました。
 実は原作は未プレイなのですが、タイトルと、あの有名な原画家さんのことは以前から知っており、今回改めて調べてみたところ、なんとリメイクが出るとのこと。不思議な縁を感じています。
「顔のない」は表情の消失や変貌を、「月」は本作における『月光洞』に絡める形で、ダブルミーニング的に意味を持たせています。
 これを機に一度プレイしてみようかな……とも思うのですが、積みゲーが山のようにあるので、悩ましいところです(笑)
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