Paradise of the Disqualified:Rewritten World   作:GameMaster

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2話 織りなす絆を手に取る異邦人

 

 そこは、見たことがない場所だった。

 

 そこは、教室だった。

 

 そこは、『外』の空が広がっていた。

 

 そこは、壁が崩れ落ちていた。

 

 そして――そこには、一人の少女が机に突っ伏したまま、深い眠りに落ちていた。

 

"ユーリ!?"

 

「先生!?」

 

 見知らぬ場所で、なぜ互いがここにいるのか、二人には理解できなかった。まさか相手も同じ場所にいるなど、誰が予想できただろうか。

 ユーリは無言で視線を送り、空色の髪の少女を起こすよう先生に促す。先生が頬をつん、と軽くつつく。反応はない。もう一度、つん。さらにもう一度。

 しびれを切らしたユーリも加わり、二人で交互につつき続けた。

 

 やがて少女はゆっくりと身を起こし、眠たげな瞳で二人をぼんやりと見上げた。

 

『せ、先生!?』

 

「やっと起きた」

 

 少女は一瞬硬直し、次の瞬間、完全にパニックに陥った。

 しばらくして二人で落ち着かせてから、改めて自己紹介を促す。

 

 少女の名はアロナ。

 ここ――シッテムの箱の内部に常駐するシステム管理者。すなわち、AIの一種だという。

 

『なんでユーリさんまでここにいるのですか? ここは本来、先生しか来られない場所のはずなのですが、どうして……』

 

 アロナの疑問はもっともだった。

 先生もまた、理由に心当たりはあったが、まだ確信には至っていない。

 

「たぶん……私が『外』の魂と融合しているからだと思う」

 

 ユーリは静かに言った。

 

「先生、さっき話したよね。四年前に死にかけたって。あれは……半分は本当で、半分は嘘」

 

"―――え?"

 

「本当の私――『真神ユーリ』は、あの事故のあと、消えかけていた。そこに、外からの魂……『私』が入り込んだの」

 

 淡々とした声とは裏腹に、その内容はあまりにも重かった。

 

「消えゆく彼女の魂を守って、包んで、必死に支えて……それで、なんとか生き延びた」

 

『そ、そんな……』

 

"そんな、事が……"

 

「だから、この場で……二人だけに教える。もう一人の『私』の名前」

 

 ユーリは、ほんの一拍置いてから続けた。

 

「織機の“織”と書いて―――シキ

 

"……あれ? どこかで聞いたことがある気が……?"

 

「らっきょ、知ってる? (から)の境界」

 

"それって型月(TYPE-MOON)の……って、そこから取ったの!?"

 

 その瞬間、先生の脳裏にどこかで見た、あまりにも既視感のあるネタ調の一文が浮かんだ。*1

 

『悲報:外の魂、意外とオタクだった(でーでーん!)』

 

 ……いや、そんなことを考えている場合じゃないだろう、と内心で自分にツッコミを入れつつも、思わず小さく苦笑してしまった。

 不思議と、その事実が妙にしっくり来てしまったあたり――もう手遅れかもしれない、と先生はどこか諦めたように静かに思った。

 

 そして、アロナと先生の認証が行われることとなった。

 ……その過程で、先生が少しだけアロナをからかってしまい、結果的に泣かせる羽目になり、二人がかりで慰めることになったのだが。

 

―――二人の事情説明中―――

 

 結局のところ、生徒会長の行方について、アロナは何も知らないという答えだった。

 だが、ユーリだけは、どこか引っかかるものを覚えていた。

 

「念のためもう一度聞くけど……アロナちゃんは、生徒会長の情報も、失踪についても、本当に何も知らないんだよね?」

 

『そ、そうですけど……ぁぅぅ……』

 

"ユーリ、何か思い当たることでもあるの?"

 

「……こういう場合、大抵は万が一を想定して、情報をわざとアロナちゃんに渡していないか、もしくは渡せない状態にしている

 

 一拍置いて、ユーリは続けた。

 

「それに、周囲にも相談できない状況。つまり――生徒会、もしくはそれに近い組織の中に敵がいる。暗殺か、拉致監禁された可能性も十分にある」

 

"……そうなると、サンクトゥムタワーの復旧にも、罠が仕掛けられている可能性がある?"

 

「可能性はゼロじゃない。復旧は最優先事項だからこそ、細心の注意を払って臨むしかないね」

 

 そして二人は顔を見合わせて小さく頷き、アロナへと視線を送った。

 アロナもまた、静かに頷き返す。

 

『では、注意しつつサンクトゥムタワーの復旧を行います……admin権限取得完了……制御権回収完了。ですが、このまま生徒会へ制御権を渡すのは危険だと思います』

 

"そうだね。もしユーリがいなかったら、僕は無用の長物だって判断して、普通に制御権を丸投げしていたと思う。でも……万が一を考えると、緊急時に備えるべきだ"

 

「うん。最悪の事態を想定して、専用のバックドアと緊急時の最上位権限を仕込んでおいて。

 普段は生徒会が運用する。でも、何かあれば監視状態から即座に先生へ権限が移るようにして」

 

 ユーリは一拍置いて、低く続けた。

 

「正直、生徒会を完全に信頼できる要素はまだない。狡猾な敵が内部に潜んでいるかもしれないし……それ以上に恐ろしいのは、無能で足を引っ張る味方。

 もし、それが敵に送り込まれた存在だったら――暗殺の可能性だって考慮しないといけない」

 

 ユーリが最も恐れている最悪の可能性。それは、生徒会長が何者か、あるいは何らかの組織によって狙われ、すでに暗殺されてしまったのではないか、という仮説だった。

 

『わかりました! 専用バックドアと緊急時の権限取得、仕込んでおきます!』

 

 あくまで想像の域は出ない話ではある。

 だが結果的に、生徒会に対する監視とカウンターを同時に仕込む形となった。

 

"ありがとう。よろしくね"

 

 

 

 ―――二人の視点が現実へと戻ると、リンは通信端末で誰かと話していた。

 会話の内容から、無事に制御権が回収されたことに安堵している様子が伝わってくる。

 

「お疲れさまでした。停学中の生徒につきましては、これより我々で追跡および排除の対応を進めてまいりますので、ご安心ください。よろしければ、そちらのワカモもお預かりしましょうか?」

 

 彼女にとってはごく自然な申し出だった。だが、ユーリにはそれなりの考えがあり、今回はあえてワカモをこちらで引き受けることにした。

 

「目的があるから、彼女はこちらで預かるよ。

 最悪の場合は、達磨にして動けなくすればいいだけだから。安心してね」

 

「「"全然安心じゃない!"わよ!」です!」

 

"達磨ってあの達磨だよね!? 人間相手に達磨って、もしかしなくてもそういう意味だよね!?"

 

「いくら何でもそれはやりすぎじゃないですか!? 四肢切断なんて、行政がやる処罰じゃありませんよ!? 下手したら出血多量で死にますよ!?」

 

「ふ、ふふふ……い、いくら何でも私をそんな……あっ、目が笑っていません……」

 

 四肢切断の比喩表現としての“達磨”という言葉が飛び出した結果、あまりにも物騒すぎる発言に、三人から同時に総ツッコミが入ったのは言うまでもない。

 ―――残念だが、あまりにも当然の反応である。

 

 そして一同は、リンの案内でビル内上層部にある連邦捜査部『シャーレ』へと向かうことになった。だが、ワカモがその場に座り込んだまま、まったく動こうとしなかったため。

 結局、ユーリが俵担ぎのように担ぎ上げ、そのまま連行する形となったのだが―――。

 

「ちょっ!? なんでそんな普通に持てるんですか!? い、いえ、それよりも……その……あそこの縄を、ほんの少しだけ緩めていただけませんか……? いえ、先に進まないでください!

 このままだと、その……先生に下着を見せてしまいますから!

 

だが断る

 

"うわぁ……最っ低な使い方だぁ……"

 

 ユーリの即答に、先生は少し引いていた。

 気にはなっていたが、興味が無いと言えば嘘になる。

 だがさすがに俵担ぎされて下着を堂々と見せているワカモの尻を、リンの視線に晒されながら直視するほどの胆力は、さすがに持ち合わせていなかった。

 仕方なく、彼女を後ろに下がらせることにした。

 

 ――内心、ほんの少しだけ名残惜しさを覚えながら。

 

 地下から階段を上がり、さらにエレベーターを使うと、すぐ近くにシャーレの部室があった。

 そこで一同はリンから、シャーレに与えられている権限の範囲と、現時点では明確な目標や方針がまだ定められていないことを説明された。

 

 ――とは言え。

 

 事務机に積み上げられた書類の山を見て……いや、見なかったことにしよう。

 

"つまり、こっちの意思で何でも動ける、便利(なんでも)屋みたいなものか……シティーハンターとか、銀魂みたいな感じかな?"

 

「あの……おっしゃりたいことは何となくわかりますが、少し違うと思います……」

 

 先生の呟きを拾ったリンのもっともなツッコミに、先生は内心で少し驚いていた。意外にも、その例えが通じてしまったのだから。

 最後にリンと言葉を交わして別れた後、ユーリの提案で一同はビル前に集合することになった。

 

 それぞれと短く言葉を交わす中で、ハスミは捕らえたワカモの処遇について、ただ一言だけ、静かな忠告を残した。

 チナツはユーリの手をそっと握り、何かを言いかけたものの――結局、言葉にできず、そのまま名残惜しそうに離した。

 そして三者三様、それぞれの学校へと静かに帰っていった。

 

 

 

"SNS、ねぇ……元々持っていたスマートフォンは、キヴォトスじゃ使えないからなぁ。*2

 ……早めに、キヴォトス用の携帯電話を手に入れないと……"

 

『さすがに電話もアプリも無いのは大変ですし、重要項目として覚えておきます!』

 

 シャーレのオフィスに戻って改めて見渡すと、事務机の上には――見ないようにしていた複数の書類の山。そしてソファーには、居心地が……否、亀甲縛りのせいで座りが悪く、時折もぞもぞと身体を動かしているワカモの姿があった。

 

"お待たせ"

 

「……お戻りですね。それで、私はどうすればよろしいので?」

 

「それにしても、とんでもない量の書類だね……今回手伝ってくれた人の中で、書類仕事が得意な子に協力してもらっても……いや、それよりも先にやるべきことがあるね」

 

"え、書類仕事よりも先にやる事?"

 

「そう。先生直属部隊の設立。先生の指示ひとつで、必要に応じて手足のように動く存在。シャーレのため、そして――先生のために動く存在。

 先生が両手を広げても、その長さには限度がある。背負える重さにも、当然限度がある。先生はただの人間。いくら権限があっても、何もかもを抱え込むことはできない。

 だから私たちが、その負担を軽くする。先生の限界を、外側から伸ばす。一人や二人じゃない。 志を共にする仲間――もしくは、それ以上の絆で。先生のために戦う存在を作る」

 

 その言葉に、ワカモは静かに納得した。ユーリは彼女を、単なる戦力としてではなく――それ以上の意味を持つ存在として、迎え入れようとしているのだと理解したからだ。

 

「……だから、私をここに連れてきたのですね。それはそれとして――いつになったら、この拘束を解いてくれるのですか?」

 

 ワカモは今も亀甲縛りのままで、動くたびに股間や胸元に食い込む荒縄の感触で、落ち着かない様子で身じろぎしていた。顔が赤いのも、痛みと羞恥と苛立ちが入り混じっているせいだろう。

 

「うん。あの反応で、先生に一目惚れしたのがすぐ分かったからね。それに、シャーレ直属よりも“先生直属”の方がいいって判断したの」

 

 そう言ってから、ユーリは少しだけ悪戯っぽく微笑む。

 

「それに今すぐ解いたら、きっと恥ずかしくなって逃げ出すでしょ?」

 

「……そ、それは……否定できませんけど!」

 

 ワカモは悔しそうに視線を逸らし、頬をわずかに膨らませた。

 

"それが……ユーリの目的、なの?"

 

「いいえ。私の本当の目的は――

 私をこんな風にした奴らへの復讐。そして、私と同じ犠牲者が生まれる可能性に目を向けず、好き勝手に破壊を繰り返す連中への戒めとなる力……」

 

 ユーリは一拍置き、静かに言葉を続けた。

 

「極僅かな人間、そして先生だけが発行できる――殺人許可証(Murder Licence)よ」

 

 キヴォトスの人間は、『外』の人間よりもはるかに耐久力が高く、簡単には死なない。だからこそ、意図的に命を奪おうとすれば、想定以上に凄惨な結果を招きやすい。

 故に、殺人は『外』よりも重罪とされる。懲役刑は軽く見積もっても通常の二倍、三倍が当たり前。最悪の場合、無期懲役、無期強制労働、あるいは死刑すら視野に入る。

 

 それを例外的に許可するのが――殺人許可証(Murder Licence)という、異質極まりない許可証だった。

 

 噂では、許可証を発行できる人物の正体も公にはされておらず、その人数もほんの数名に過ぎないと言われている。そのため、多くの者にとっては都市伝説の類として扱われていた。

 

「……あの都市伝説、実在していたのですか……。それよりも、もう逃げません。お願いですから、この拘束を解いていただけませんか? さきほどから、その……下着の上に荒縄が食い込んでいて……動くたびに気になってしまって……」

 

「仕方ないなー」

 

 ワカモの顔が赤いのは、ただ先生の視線を意識しているからだけではない。

 ユーリは仕込みは終わったと判断し、逃げる意思がないことを確認すると、手際よく亀甲縛りを解いてやった。ほどけていく縄と同時に、ワカモは小さく息をついた。

 

"そんな物が……でも、やっぱり殺しはいけないと思う"

 

「先生。気持ちはわかるけど――『外』の世界で、『死ねばいいのに』とか、『誰かこいつを殺してくれないかな』って思ってしまう相手も、いるでしょ?

 許可証は、そういう人間に向けられる力なの」

 

 その言葉に、先生は否定できなかった。

『外』の世界は、キヴォトスに劣らず……否、それ以上に酷い場所も無数にある。海外には、生きている価値すら感じられない下種がいるのも事実だ。その現実を、先生自身も理解している。

 もし本気で語れば、きっと延々と罵倒が止まらなくなるだろう。

 それに比べれば、日本は――ただ、少しだけ平和なだけなのだ。

 

"………うん。確かに、理屈としては理解できる。だから……最後の手段として、考えておくよ"

 

「そういえば……そこまで考えているなら、部隊名とかも決めているんですか、ユーリさん?」

 

「ある程度はね。知識の保護者、死と再生の女神――その名はキュベレー」

 

 その瞬間、先生の脳裏にはモビルスーツの“キュベレイ”がよぎったが、すぐに違うと打ち消した。もしこの場でそれを口にしていたら、きっとユーリから即座にツッコミが飛んでいただろう。

 だが、それでもどこかで聞いた覚えがあり、先生は何となく尋ねた。

 

"……もしかしてそれって、ノルンとミエルが候補に入ってなかった?"

 

「そうだよ? 良く気付いたね」

 

 その返答に、先生は思わず額に手を添えた。

 だってそれ――PCアダルトゲームブランドの名前だからだ*3

 

"それでキュベレーか……何でそこから取るんだ……"

 

「ノルンは北欧神話の運命の女神、ミエルはフランス語で“ハチミツ”。キュベレーは、古代ギリシアやローマにおける大地母神。

 私たちはまだ、運命の女神を名乗れるほどの存在じゃない。

 だったら消去法で――キュベレーになるでしょ?」

 

 そう言われてしまえば、納得するしかない。ハチミツ(ミエル)隊など語呂も締まらないし、自分たちが運命を司るなど、さすがに自意識過剰だ。

 そう考えると――キュベレーという名は、意外なほどしっくり来た。

 

"僕の直属部隊、キュベレー……ところで、どちらが隊長を務めるの?"

 

「私は遠慮しておきますわ。そんな器ではありませんし、こういう役目は、言い出しっぺが務めるものと相場が決まっておりますから」

 

 そう口にしながらも、ワカモは心の奥で確信していた。――どう足掻いても、自分はユーリには勝てない。だからこそ、迷いなく隊長の座を譲る決心がついたのだ。

 

 ユーリは静かに席を立ち、ほんの一瞬だけ視線を落として考えるように間を置いた。それから、どこか照れ隠しのように、しかし形だけはきちんと整えるように、右手を胸へ当てる。

 

「とりあえず、ベタにこうして……。

 こほん。先生直属親衛隊『キュベレー』隊長。コールサイン『キュベレー0(ゼロ)』。コードネーム『(シキ)』――真神(まがみ)ユーリ。よろしくお願いしますね、指揮官兼先生……なんてね」

 

"……はは、なんだか仰々しすぎない? というか、親衛隊?"

 

「部隊設立だからね。こういうのは、多少大げさなくらいでちょうどいいの。それにシャーレの部隊じゃなくて、先生の部隊って位置づけだから親衛隊にしたの。

 万が一、シャーレの権限を奪われた時の保険でもあるからね。それで――ワカモちゃんは前口上、もう決めてる? 考えてあげようか?」

 

「いえ、ですから……見た目は年下のあなたに“ちゃん”呼ばわりされるのは、正直やめていただきたいのですが……。それはさておき、どうしてコードネームまで付けるのですか?」

 

「まぁ、“ちゃん”付けに関しては追々話すとして……コールサインだけだと、少し味気ないでしょ。だからコードネームも付けるの」

 

「……確かに。では私は、単純に『仮面(マスク)』としておきましょう。コールサイン『キュベレー1』、狐坂(こさか)ワカモ。(わたくし)のすべては――あなた様のものです、先生……」

 

"はは……よろしく。まずは仲間として、ね"

 

 その言葉に、ワカモは一瞬だけ目を伏せてから、ほんの小さく微笑った。

 

 今ここに、先生直属親衛隊『キュベレー』が発足した。それは『外』から来た先生の為に手足となり、障害をことごとく切り裂く刃、撃ち抜く弾丸となり、その身命を先生に捧げる戦士達。

 

「さて、ワカモからの一方的な愛が重いなんて言ってる場合じゃないよ。ほらほらさっさと二人してシャワー浴びてさっさと枯れ果てるまでキめてきなさい。その間に私は書類仕事してるから」

 

「"いやだから早すぎ!"です!」

 

 さすがに、出会ったばかりでそこまで踏み込むには早すぎる。そう思うだけで顔が熱くなり、その恥ずかしさは計り知れなかった。

 けれど――そうした逡巡や戸惑いなど、ユーリにとっては些細な問題に過ぎない。

 むしろ、この曖昧な空気のまま時間を引き延ばすより、思い切って一歩踏み出してしまった方が、結果的には互いのためになる。彼女は本気で、そう考えているのだった。

 もう一押しという事でユーリは懐からタブレットシートを一枚ワカモに渡した。

 

「あ、ピルならあるから安心して。はいどうぞ」

 

「だから何でそんなに用意周到なのですか!?」

 

「いや、ピルは自分用だけど? 事故の後遺症で重い月経不順だから。*4

 どうせこの面々で同棲生活するんだからさっさとヤってきなさい。何の為に亀甲縛り(あんなしばりかた)して仕込んできたか解ってる? 発情させるためだよ。さっさと先生の所有物になってきなさい」

 

"いや言い方ぁッ!?"

 

「先生も先生です。さっきから、仕込んだ彼女の谷間や、わざとめくり上げたスカートの中をチラチラ見ていて、気付かないと思っていたのですか? そんな聖人ぶってないで、さっさと“性人”になって証を刻んできなさい。じれったいですね。ほらほら、二人とも行きますよ」

 

 そのまま二人を無理やりシャワールームに続く脱衣所へと押し込み――

 

「"ちょ、ちょっと!!"」

 

「ではごゆっくりー。さて書類の仕分けでもしますか」

 

 しばらくすると、あからさまに二人の行為が声になって漏れてくるのを背に感じながらも、安心して書類の仕分けを続けるのだった。

*1
ちなみに効果音は、笑ってはいけないシリーズでアウト判定の時に鳴る、あの効果音。

*2
ついでに電話回線(電波)の規格も少し違う。無線で使用できる周波数帯みたいなものと思ってくれればいい。

*3
純愛系統のNorn(ノルン)、凌辱系統のMiel(ミエル)が二大メイン。過去には姉妹ブランドのCybele(キュベレー)が存在していたが、最終的にはノルンに吸収された。

*4
ピルは避妊用として使われるのが世間一般的に周知されているが、月経困難症や月経不順の治療にも使われている事はあまり周知されていない(特に男性)




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 原神メインテーマ ~from 原神~

 選定理由は、もともと原神のサービス開始当初からプレイしていたため、この曲を時間帯のアレンジも含めてほぼ毎日必ず聴いていました。
 そのため、この場面にはこの曲を使うと最初から決めていました。
 当初の予定は原神の「風を捕まえる異邦人」のイメージでした。
 その為、タイトルもオマージュしています。
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