Paradise of the Disqualified:Rewritten World 作:GameMaster
"そう言えばみんなほとんどセカンダリ持ってないよね? 近接武器は別枠と考えると"
ふと漏らした先生の一言に、事務仕事をしていた面々の手が少し止まった。とは言えどもいつもの面子として親衛隊のユーリとワカモ、そして当番として来ているアルの三人だ。
主力装備がプライマリならセカンダリは補助装備だ。近接武器を別枠と考えるとほぼ全員がセカンダリを装備していない事になる。
唯一ユーリだけは武器セットの「フェアリーテイルズ」として自動拳銃・回転式拳銃・散弾銃・ナイフを装備しており、これだけでプライマリ・セカンダリ・近接武器が揃っている上に、刀と素手でも戦えるし魔法と多種多様な技も使えるオールラウンダーだ。
一応魔法をセカンダリ扱いすれば大丈夫だが、大っぴらに使うのも良くない。
ブーメランやナイフ等の投擲武器もどちらかというと近接側にカテゴライズされるとなると、セカンダリを所持しているのは弓を使うアヤネだけになる。
いや、弓はある意味プライマリになりそうだけど……。
"(そう言えばユーリが使っている武器セット……フェアリーテイルズの元ネタって確か「勝利の女神:
ちなみに先生が見たのは、別名マリアンショックと呼ばれる代物で、チュートリアルの最後で同行してくれたマリアンを助ける事が出来なくなり、やむを得ず介錯として主人公がマリアンを銃殺しなければならないシーンの事である。
大抵の人はマリアンがメインヒロイン枠だと思っていた為にショックは計り知れない。
しかもその後人員補給と言う形でガチャが解禁され、あまりの心の無さにそこで引退するプレイヤーも何割かは存在する。
ちなみに、NIKKEのディレクターはバッドエンド好きとの事……。
「うーん……この辺は色々と理由がありますが、一番の理由は『自分に一番適した銃』を使う、と言えばいいのですかね……? 様々な銃を使っている内に、どのような銃なのか、どんな種類なのか、少しずつ分かってくるのです。
そうして『自分に一番適した銃』を使い続けるうちに、それが自分の手足の延長線上のように、体の一部となるのです」
先生が考え事をしている内に、ワカモが先生にも理解できるように言葉を選んで説明を始めた。
隣の机で仕事をしていたアルも少し考えてから説明の補足を追加する事になった。
「まぁ、それはあくまでも個人としての場合。例えば風紀委員会みたいな部隊に所属すると、足並みをそろえる為に武器を統一される場合もあるわ。その場合は使い続けて自分に合わせるって形ね。それでも自分で選ぶよりは時間がかかるけど、体の一部となるわ」
"つまり、普通の熟練度と専用熟練度みたいな感じか……そう考えると理論的には複数の銃器も同じように修練出来るという事?"
その言葉に、アルは少し考えながら、自分の推論を口にした。それでも仕事の手が止まらないのは元々優秀なのだろう。*1
「そうね……個人で使えるとしても多くて3、4種類って所かしら?
それ以上は多分キャパシティオーバーになるわね」
「なるほど……あえて名付けるなら独自の銃単体ブースターアビリティを身に着けるような物ね。
アルちゃんの推論を元に、検索フィルターを組み直せば、今まで出てこなかった専用のアビリティが出て来るかもね」
アルの言葉に何か判明したみたいで、ユーリが何か気づいたように言葉を続けた。
アビリティという事はおそらく強化ビルドに関する事だろう。先生は説明を求める事にした。
「ブースター。わかりやすく言えばカテゴリ別の攻撃力上昇ね。
上位にハイブースター、エクスブースター、そして併用可能なオーバーブースター。装備コストは高いけど、生半可な職業や種族だと使えないわ」
"なるほど……上位になると強くなるのは身体能力上昇だけでなく、セットできるアビリティのコスト上限も上がるからか……そうなるとユーリの場合は?"
「私の場合、ガンナー系なら銃火器全般の攻撃力が上がる銃ハイブースターの他にステータス全般の上昇もつけているの。
それに種族や職業に応じたプリセットを複数組み合わせて、状況に応じて切り替えているから」
その瞬間、全員の視線がユーリに集まり、無言の納得が部屋を包んだ。そりゃ強いわけだ……。
装備する銃火器全般の攻撃力上昇なんてキヴォトスの人間にしてみればチートだ。それなら複数の銃器を使い分けられるのも納得がいく。
だが言い換えればユーリが取得できるなら全員が取得できる訳だ。希望もある。
"何はともあれ鍛錬して底上げするしかない。千里の道も一歩から、だね"
仕事をある程度終わらせていると、何時の間にか出かける話になっていて、出かけた先は――
"……何で僕がガンショップにいるの?"
先生がいた日本では、一般人になじみがない銃砲店……つまりガンショップだった。
検索をかければ一応日本でもあるが、基本的にクレー射撃か狩猟にしか使われない上に、規制も非常に厳しい為まず意識が向かない。だが今いる地は超銃社会のキヴォトス。銃を持たない人間は裸で生活する変人よりも少ないと言われるほどなのだ。
「今の所先生には銃を使う機会はありませんが、それでも軽率に見られない為には銃を持っている必要がありますわ。流石にそんな機会は来ないと思いますが……万が一、私達がいない時に何かあったら頼れるのはその銃だけ、という意味でもありますわ」
ワカモの説明に先生も納得がいった。例え使用する機会が無くてもキヴォトスでは必須の装備であり、万が一の場合は自衛の為に使わなければいけないのだ。
「それでも先生はまだ銃弾一発で瀕死か即死になるから注意してね。わかりやすく言えば先生の
その例えはわかりやすいなと先生は思いながら、色んな銃を物色していった。手に持ってみるとやはりモデルガンとは違い、本物の重さがある。
ワカモやアルが使用している狙撃銃を持ってみると相当重い。取り回しの事を考えると常に持つのは難しいだろう。そう思いつつも、相談する事にした。
"どうせあんまり機会が無いならロマンにわりふってもいいかな?"
やはり男と言うのはかっこいいガンアクションにロマンを感じるのである。無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き等は大好物である。
なお、アルもその手の話が通じるので真っ先に反応したのは言うまでもない。
「どんなロマン?」
"まずはリボルバー系、後スピンコックが出来る奴"
スピンコックとはレバーアクション式の銃で行うリロードアクションで、その名の通り回転させたり後ろにスイングする技だ。
「そうね……リボルバーはわかるけど、スピンコックに関してはあまりお勧めできないわ。銃に負担がかかるし、片手で扱える分隙も大きいの。派手だけど実戦向きじゃないわね」
この辺は動画等で動きをよく見て見ればわかるが、レバー部分に負荷がかかっているし、両手で扱うよりもリロードが遅いのだ。
しかも、速さを重視して無理にスピンコックすると、銃への負荷はさらに増えるし、場合によっては暴発もあり得る。ロマンだけでは済まないのが現実だ。
そう考えるとロマン一筋と言うのも中々難しい物である。
"そうなるとリボルバータイプ、かなぁ?"
「でも先生の場合だと、片手持ちは絶対無理だね。体格や握力的に、普通の人間でも扱いが難しい大口径だから。私たちは普通に使えるけど」
当たり前だが、普通の人間は大口径銃を片手で扱えない。ユーリも普通に片手で拳銃を扱っているが、使用しているのは50口径と言う大口径。熟練者でもしっかりと両手で扱う代物なのだ。
「そうなると護身用でも、サブマシンガンかアサルトライフルがよろしいかと思いますわね」
「うーん……それでもサブマシンガンの小口径じゃ威力不足ね。護身用として考えると、やっぱりアサルトライフルかしら?」
先生の肉体スペックを考慮すると、ワカモもアルも悩んでしまう。
先生の望みもかなえたいが、万が一の事も考えるとそうも言っていられないのだ。
「あ、これなんてどう? SR-410とTR-410」
その時、ショットガンの所からユーリに声をかけられた。
三人がその場所へ赴くと、ユーリの手には二丁の銃があった。
"へぇ、リボルバーとショットガンが合体したような構造なんだ。いいね、サイズもちょうどいい"
それは、簡単に言えばリボルバーとショットガンを組み合わせた銃だった。先生にとって大きすぎず、それでいて小さくもないサイズだった。
「でも、これ……410……? あ『.410規格』のショットシェルね。直径は約10ミリちょっとだから……9ミリ弾より大きくて、普通の散弾銃よりは小さいって所かしら」
「ケージ換算だとしても41、つまり32ケージ未満。護身用としては心細いですわね……ですがそれ以外の銃になると……片手では使えませんわね」
「一応護身用としてショートバレルを選んだけど、どうかな?」
そのリボルバー式散弾銃は確かに男性受けしそうな形状だったが、キヴォトスでの護身用としてはいささか頼りない武器だった。
しかも『.410規格ショットシェル』と言うマイナーな部類に該当する特殊弾薬を利用する為に、手軽に補充も出来ない。先生にとって扱いやすい反面、制約も多かったのだ。
「そうなると……やっぱり同型のカスタムモデルか、改造かな?」
つまりユーリが言いたいのは、同型でより大口径の12ケージを使えるモデルを探すか、あるいはそれを前提に新造するかという事だ。
「でもこれは改造よりもカスタムモデルの方が……あるのですか?」
ワカモは嫌な予感がして棚等を調べてみるが、ロングバレル版しか存在せず、他のモデルは無かった。結局は新造と言う形になり通常の値段より多少割増しになるが、武器の改造やカスタムモデルの注文はキヴォトスでは普通なのだ。
一緒に先生用のホルスター等も作ってもらう事にした。多少の出費は致し方ないが、これも先生の必要経費として割り切るしかない。
「そう言えば、名前は考えているのですか?」
シャーレに戻る途中で、ワカモから唐突に聞かれた事に先生は首を傾げた。
ワカモの意図をユーリが補足する形で説明する。
「キヴォトスでは銃もカスタマイズしたりデコレーションをして自分の一部とするから、それにふさわしい名前をつけるの。私ならスノーホワイト、レッドフード、ラプンツェルって感じね」
"ああ、なるほど。ワカモのは確か真紅の厄災、アルのは……なんだっけ?"
「ワインレッド・アドマイアーよ。生徒の名前はある程度覚えていても流石に銃の名前までは覚えきれないのは仕方ないわ」
"なるほど……しかし、名前、名前ねぇ……しかも二丁"
「難しく考えなくもいいのです。その銃を持った時や頭に思い浮かべた時に自然と浮かび上がったのをそのままつければいいのですから」
そうワカモに言われても簡単には思いつかない。現実逃避的に違う事を考えていると、前に遊んでいた「
確かあのゲームは面白かったけど、物語はイマイチでどちらかと言うとビターエンドだからだ。あの主人公とヒロインの名前は確か――
"ジャックとセーラ、だったな……"
そう呟いた瞬間、パズルのピースがはまるように、銃の名前が決まった。デザインもよく使い勝手が良さそうなSR-410はセーラ。武器としての性能重視としたTR-410をジャック。
何かと思う三人に考えていた事と、それが理由で名前が決まった事を話した。
後日、完成した装備一式で喜んだあと、射撃訓練等で四苦八苦したのは言うまでもない。
銃器、及び口径に関しての資料は「MEDIAGUN DATABASE」様を参考にしました。
銃を選んだ理由は、本当にロマンと実用性を両立させたからです。
ただ、この銃はMEDIAGUN DATABASE未登録=創作物未登場ですので日本の知名度は低めです。知った理由はたまたまYoutubeのおすすめに出てきたからです。
製造元が同じと勘違いしそうですが、調べると別のメーカーなんですよね。
SR-410はスールー・アームズ製、TR-410はアクサー・アームズ製で、見た目は似ていても別メーカーです。
それまで持たせるか持たせないかで色々悩んでましたが、この銃を知った途端持たせる事を決めました。現実では.410弾しか使えないため、作中では創作として12ケージ版を用意しました。
似たようなのとしてMTs255がありますが、デザイン的にはSR-410とTR-410が好みです。
名前の理由も本当に作中と同じくゲームの事を思い出して、そこから連想して名付けました。
リボルバータイプのライフルは調べた限りM1855の一つしか見つかりませんでした。
そうなるとロマンと実用性を合わせたギリギリが本話で出てきたSR-410とTR-410のショートバレル版しか無かった訳です。
今回のタイトルの元ネタは「黙示録外伝-わたしの勇者は多重神格者」です。
本編がクソゲーでザウスを傾けたけど外伝作で何とか持ち直したあの作品です。
結局ブランドを終焉に導きましたが……。永遠神剣シリーズが未完で終わってしまったのは悲しいです。何処か引き継いでくれないかなぁ……。
作中の先生はNIKKEの知識はほぼ皆無ですが、作者はそこそこなカジュアルゲーマーです。
そう言いつつも結構新規キャラ引いてますがね。最近のお気に入りはリバーレリオです。
序章についての説明が長い? マリアンショックの犠牲者を増やさない配慮です。