Paradise of the Disqualified:Rewritten World 作:GameMaster
今章のタイトルはとあるネタから、全編餓狼伝説シリーズをオマージュにしております。
章のサブタイトルも『リアルバウト餓狼伝説スペシャル
1話 百鬼夜行連合学院の伝えたい新しい
"うぅ~~~む……やっぱり人手が足りないなぁ……"
「あの戦いでシャーレの認知度が一気に上がったからね。
手伝ってくれる人もそれなりに増えたけど、それ以上に仕事が増えたよね……未だに畑違いの依頼も来るけど、他の人員が足りない分こちらにも来るそうだよ」
アビドスでの戦いは、今までそれなりだったシャーレの知名度を一気に大きくさせた。
その結果が、大小種類問わず送られてくる依頼の山、山、山。それなんて東亜プランのシューティングゲームのタイトルだと言いたいくらいの山だ。*1
他の部署やヴァルキューレに仕分けても、量が多すぎて対応できないのだ。
"手伝いって言ってもアクア小隊みたいに住み込みで働いてくれる子なんて余程の事が無い限りいないからなぁ……打開するアイデアはある事はあるけど……"
「以前おっしゃっていた『冒険者の酒場ならぬ喫茶店』ですね。
悪くは無いと思いますが店舗経営のノウハウが……」
そんな時、電話が鳴り響いた。
こういう時、余程の事が無い限り一秒もしないうちに受話器を取るのがユーリだ。
「はい、こちら連邦捜査部シャーレです」
『あっ、本当に出ちゃった!? ど、どうしよう!?』
電話の主は心の準備が出来る前に繋がったことに混乱しているようだった。その時傍らに誰かがいるのだろう。深呼吸のアドバイスが聞こえてきた。
そうなると、当然お茶目ないたずらをしたくなるものだ。
『すぅー、はぁー、すぅー、はぁー……』
「ひっひっふー、ひっひっふー」
『ひっひっふー、ひっひっふー……ってそれは深呼吸じゃないですよ!?』
どうやったらそんな考えに行きつくのか、深呼吸をラマーズ呼吸法にすり替えるアホな事を行ったのだ。当然電話主もつられてラマーズ呼吸法をしてしまう。
気づいて即座にツッコミをしてくるが、これで緊張は溶けただろう。
「ごめんごめん。でも緊張はとけたでしょ?」
『それは、そうですけど……。ところでそちらは連邦捜査部シャーレで間違いないですね?』
「はい、間違っておりません。先生に代わって私、真神ユーリがご用件をお伺いいたします」
そこからの会話を、ユーリはメモを取りながら箇条書きで先生とワカモに情報を共有していく。
会話の中身はこうだ。
・電話をかけて来てくれたのはシズコという少女。
・百鬼夜行連合学院の「お祭り運営委員会」の委員長。
・
・春のお祭り「
・新しい試みをします。ついでにちょっとした相談事もあります。
「――わかりました。先生に確認を取り次第……あ、OKだそうです。はい、失礼します」
その後数分もしないうちにメールにポスター兼案内図のデータが送られてきた。文面が妙に媚びていて、微妙に怪しさを醸し出している。
"桜花祭に、百夜堂か……(文末に「にゃんにゃん♪」って……エロゲじゃあるまいし)"
この時二人は既に先生が行くだろうと確信していた。それと同時に、何らかのトラブルも発生するだろうと確信していた。
なぜならここは超銃社会キヴォトスだからだ。
「ワカモちゃん、下で訓練中のアクア小隊に第三級召集命令をお願い。こちらはリビング小隊に第三級召集命令を発令するね」
"あっ、やっぱり何らかのトラブルが起きる事前提なんだ"
「あなた様、相談事があるという事は大抵は荒事ですわ。いくらユーリさんが百戦錬磨とは言え、一人でやれる事は限度がありますし、限度を伸ばせば周囲に被害が及びます。お忘れで?」
ユーリの召集命令に関して先生が少し懸念を示すと、ワカモはユーリが全力を出せば出すほど被害が広がることを説明し、先生は暴走した時のことを思い出して納得した。
"確かにトラブルが起きた時に人数が少ないと、後手どころか取り返しがつかなくなる可能性だって十分にあるからな"
「それにもし、トラブルが起きなければ皆で楽しめばいいだけですから」
それもそうか、と先生が思っていると、訓練を切り上げたジャージ姿のアクア小隊がオフィスにやってきたので、ミーティングの為に教室へ移動する事にした。
リビング小隊は転移でやってくるとしても、向こうの用事があるならすぐには来れないだろう。ホワイトボードに集合場所を書き、教室に移動することにした。
"さて、今回召集した理由だけど百鬼夜行連合学院のお祭り運営委員会から依頼がありました。
祭りがあるけど何らかのトラブル解決です。それと同時に百夜堂という喫茶店で運営のノウハウを学びたいと思っています"
「以前言っていた、依頼を生徒に回す場所の事だね。確かアニメやゲームなどに出てくるファンタジー作品のギルドや酒場を元にしたアレね」
アクア小隊のブレーン、カヨコが即座に反応した。
以前より仕事が増えたのは嬉しいが、それでも限度がある。
オーバーワークにならないように調整しているが、それは先生と
場合によってはユーリの制限解除と言う力業に頼る場面もあるが、やむを得ない場合を除いて使うことを避けている。
シャーレの協力者を無作為に募集する手もあるが、怪しい思惑を持つ人間など、悪意を持って来ることを考えると下手に募集も出来ない。
「そこで
ついでに依頼料代わりにスカウトする意見をムツキが出すあたり、最悪依頼料をなあなあで踏み倒されるリスクを考慮してだろう。
その時リビング小隊が教室に入ってきたので、依頼の内容を再確認する事にした。
「ふーん、つまり百鬼夜行に行ってトラブル解決。そうでなければ観光って事ね。任務了解だよ」
ホシノ率いるリビング小隊も依頼内容を確認して、下準備は整った。
後は先生の命令を待つだけだ。
全員が先生に視線を向けると、先生は深呼吸をしてから
"これより――連邦捜査部シャーレは、百鬼夜行連合学院で行われる祭りを見に行くという休暇及び観光、という名目のトラブル解決任務を開始する。なお任務完了後はそのまま休暇及び観光だ。
どのようなトラブルが待ち受けているかまったくの未知数。だが我々はあのカイザーグループを打倒しアビドスを開放した経験がある。
シャーレの任務として、『アクア小隊』及び『リビング小隊』の正式な初陣になる可能性が高い。総員、第三種戦闘配置!"
その言葉に一同は了解と返し、アクア小隊は訓練途中でジャージ姿だった為にシャワーと着替えに移動し、リビング小隊も弾薬を補充する為にコンビニへ向かった。
先生もクラフトチェンバーを持って行くためにエレベーターへ向かおうとしたとき、ワカモがガンラックから二丁の銃を手渡してきた。
それはTR-410とSR-410と呼ばれる
セイフティーロックを確認し、TR-410にはスラッグ弾を装填して左のホルスターへ。続けてSR-410にショットシェルを装填し、一回ガンスピンをしてから右側のホルスターに収める。
銃を持つ意味とその重さに未だに慣れないが、外から来た先生にはこれ位が丁度いい。
何事もトラブルがなく、シャーレ一同は百鬼夜行自治区へ到着すると、桜舞い散る街並みが目の前に広がった。先生は日本での生活を思い出し、他の面々も様々な郷愁にかられる。
百鬼夜行出身のワカモは一応こちらでは停学中の身であるために少々苦笑いをしていた。一応全員混乱を避ける為に連邦生徒会の制服を着ている。
「あっ、あっ! 危ないです―――っ!?」
そんな中一人の少女が走りながらよそ見をしていたのだろう。一同に突っ込んできたが、素早くユーリが前に出て、少女の胸元へ顔をうずめながら抱き上げて勢いを殺すため、そのまま横に二回転。何事も無いように少女を降ろした。
「――はっ!? すいませんすいません! だ、大丈夫ですか?」
"ユーリお疲れ様。彼女に怪我はない?"
事情聴取をするにもこの状況ではまともに出来ない。そう判断した一同は素早く少女を一同の中へと隠して何事も無いように見当違いの方向へ歩き出すと、追手は違う方向へと走って行った。
「えっと、イズナを助けていただいてありがとうございました!」
この子は一人称が自分の名で呼ぶという事はイズナと言う名前なのだろう。お互いに自己紹介すると、先生が忍者みたいと言われてしまった。
……実際、忍者系を取得しているユーリがいるが。だがユーリは彼女の
話の中で百代ノ春ノ桜花祭を見に来たことを伝えると、快く彼女は百鬼夜行を案内してくれる事になった。……食べ物の屋台ばっかりだったが。可愛いのに色気より食い気なんだろう。
そしてイズナに案内されるまま、一同が向かった先は展望台。
そこには天まで届く、満開で巨大な桜が見える場所だった。その圧倒的な光景に、一同は呆然とするしかなかった。
"……すごいね"
「うへぇ~。こんな大木初めて見たよ……」
「い、一体どれくらい育てればここまで育つんでしょうか……」
「いやハルカ、植物を育てる感覚で言っても……」
「ん、登ってみたい」
日本にも桜の木はあるが、あの桜は大まかな目測でも幹だけでも直径500mは超えているだろう。大体10kmほど離れた展望台からでもその巨大さは容易に確認できる。高さも下手をすると1kmは超えているだろう。
「えへへっ、ですよね? 丁度この時期一番綺麗に咲く、百鬼夜行の自慢なんです!」
先生はイズナが言いたい事がよくわかった。このような桜は日本人としても誇らしく思うし、どちらかというと花見行事は団子より花派だ。屋台の食事は高いからコンビニで買っているし。
そのうちイズナは一人語りをしているうちに夢を語り始めていた。
――それは、キヴォトスで一番の忍者になること。
「す、すみません、その、こんな夢を持っている人なんて今どきいないことは知っているのですが……でも、でも……!」
「夢を語れるのはいいことだよ。少なくとも私のようにならなくてすむよ」
"ユーリ?"
「ううん、なんでもない。……ごめん、ノノミちゃん。ちょっと失礼するね」
「え? はい、どうぞ」
ユーリは何らかのトラウマがフラッシュバックしたのだろう。いつもより覇気が消えたユーリはノノミに一言断って、その豊満な胸元へ抱き着いていた。
「先生、彼女は一体……」
"ユーリは過去、テロに巻き込まれてね……"
それだけで、想像するよりも凄惨な目に遭ったのだろうとイズナは察してしまった故に、何も言えなかった。少しの沈黙が場を支配したが、それでも先生は言葉を紡いだ。
"イズナ。僕は君の夢を応援するよ"
「あ……イズナの夢を、応援……たとえ、その、忍者になりたいという……そんな、普通の学生が言わないことでも、ですか?」
「――なれるよ? 私だって普通に忍者系は普通に修めているし」*2
その時、フラッシュバックから復活したユーリがノノミの胸元から顔を出しながらイズナにとってあまりにも衝撃的な事実を口にした。
一同「知ってた」としか言えない表情をしていたが。
「大事なのは、忍者の意味を理解するのと、どんな忍者になりたいかはっきりする事。それさえ間違わなければシャーレはイズナちゃんの夢を応援する立場だよ」
その言葉にイズナは感激していたが、雇い主からの依頼がまだ終わっていないということで早々に去っていった。そのまま先生は何かに気づいたように呟いた。
"やってしまった、かな……?"
夢を求めていた、追われていた、依頼が終わっていない。そこまで情報が揃えば一同何となく気づいてしまう。全員で推測のすり合わせを行えば答えは簡単だ。
おそらくイズナは、騙されてやらかした側の人間だと。
「……道理で職業が『遊び人』なんだね。騙されて無意識的に転職しちゃった訳か」
「転職ってそんな簡単に出来るものなの?」
ユーリのつぶやきにアルも呆れつつも疑問をいうしかない。基本的に転職・転種というのは特別な
「まぁ私達にとって遊び人は基本職だからねー。一応それなりに有用な特技も使えるから、ただの下地じゃないんだけどね。特に『破廉恥盗み』は……使い方によっては可能性は無限」
ムツキはしてやったり顔をして遊び人の能力について楽しそうに言った。恐らくこの先のトラブルでイズナに対峙した場合、説得に応じなければ破廉恥盗みを行うつもりだろう。
破廉恥盗み。それは相手が今まさに身に着けている
これでも全員一般職はある程度マスターしている。実際の戦闘時にはあまり役に立たない職業は訓練で優先的にマスターしているため、先生を含む全員遊び人はマスターしているのだ。
つまり、下手をすると今回の騒動、違う意味でも色々と大変になるという事だった。
今回は餓狼伝説2、ジョー・東のステージ曲「タイ南部の伝えたい新しい詩」が元ネタになっています。