Paradise of the Disqualified:Rewritten World 作:GameMaster
目的地に向かう途中、シズコから修行部のことを聞くと『一言で言えば変わり者の集団』と答えが返って来た。その最中何か争いごとの声が聞こえて来たので見に行ってみると――
「降ろして、降ろして! せめて足を閉じさせて!!」
「ほらほらどうかな~? 大人しく投降しなければこの子がどうなるかな~?」
「ふふふ……うふふふ……この特製の利尿剤を飲ませますよ……」
パトロールに出たホシノが、
当然相手も黙ってはいないが、人質を取られて武器を突き付けられると手出しが出来ない。
残された道は投降か人質を見捨てて逃走するしかない。もちろん見捨てた場合は仲間がどんな辱めに合うか理解している為にその方法も取れないのだ。
ご丁寧に側にいたムツキはスマホの動画撮影まで行っている。どう見てもこれから失禁するところを録画するつもりだ。
「うわぁ……手段としては有効とはいえ、どっちが悪党なんだか……」*2
ドン引きするシズコの言う通り戦法としては悪くはないのだが、はっきり言って絵面が酷すぎる。そんな時だった。
「そこまでだよ! ……ってなにこの状況?」
"また増えた……と言うより誰?"
「――はっ!? 何だ誰だと聞かれたら、答えてやるのが人情ね!」
どうやら勢いよく登場したかったのだろう。だがこの状況をみて呆然としていたところで先生のつぶやきを拾い、そのまま自分達がかっこいいと思える決め台詞と共に三人の少女達が現れ……おそらく話に聞いていた修行部が決めポーズを取った。
……確かに、こんな状況でこんなことをするのはある意味変人なのだろう。
だが、問題はそれだけでなく、一部の面々は思わず口に出た。
「「「うわ、でっか……」」」
そう、三人のうち二人はあまりにも豊満な胸部を持っていた為にホシノ、セリカ、ムツキの三人は思わずその大きさに口を滑らせてしまった。
無論先生もそう思っていた。男性だから仕方がないのだ。
「……ね、言ったでしょう? 変わり者だって」
"(すごく、おおきいです……) ああ、うん。ソウダネ……"
シズコの言葉にも先生は上の空だ、仕方がないだろう。その爆乳の生徒は、どう見てもゲヘナ風紀委員会のアコみたいに横乳を出していたからだ。しかも大きい分余計に肌色面積がまずい。
どう見てもノーブラか、ヌーブラの類だろう……。
しばし一同呆然としていたが、意外にも正気を取り戻したのは
そのまま
その時、先生の足元にハルカが持っていた薬瓶が空になって転がっていた。ハルカはあの状況を利用して怪しい薬を一気に飲ませたのだろう。
つまり、逃走途中に人質となっていた少女は見事に
思いもよらず目的の修行部が集まってしまったため、自己紹介と情報交換をすることになった。
修行部の部長で「より安らかで完璧な睡眠」を目指している
副部長で「大和撫子」を目指している
部員でツバキやミモリのような女性に憧れて目指している
「世の中って不公平だよね……おじさんなんてこんな体形なのに、何でカエデちゃんはノノミちゃん並みにあるんだろうね……」
「ん、腹いせに揉んでいい?」
「そうだよね~。身長も私たちとほぼ変わらないのに……揉むしかないね」
そんな中胸囲の格差社会という、大きな胸を持つ者と持たざる者の小さな争いが生まれようとしていたが、これは仕方がない。
カエデはその低身長に反してその胸部は巨乳と言うより、爆乳の類だからだ。
身長がほとんど変わらないホシノとムツキが目の敵にするのも無理はない。ついでに何故かシロコも目の敵にしてカエデの爆乳を揉もうとしていた。
(ちなみにカエデの身長は142cm、ホシノが145cm、ムツキが144cm、シロコが156cm)
流石にこのまま止めなければ、三人による淫靡な光景になりそうだったので、
そして情報交換すると、普段は思い思いの行動をしている
この事に関してはシャーレ側も把握しており、今頃はイズナが尋問を受けているはずだが、あのぽんこつ具合だ。有益な情報は期待しない方がいいだろう。
そうなると、やはり
修行部の三人は血も涙もないと言っているが……。
"多分、ユーリならもっとえげつない方法をするだろうな……相手の目の前でチェーンソーを取り出して脅しそう……それでも言わなかったら本当にそれで四肢切断とかやりそうだし"
「そうですわね。何せ平然とした顔で、私に対して達磨と言う比喩表現を使いましたから……」
何せシャーレ奪還戦の時、ワカモに対してもそんな発言をしたほどだ。絶対にやる。
ワカモの証言も合わさって事情を知らない面々は、ただ引くしかなかった。
結局この事が相手側に警戒される事となり、昼間のパトロールは不発に終わることとなった。
日が暮れ、百夜堂で全員が集まりそれぞれの結果報告を聞くと、イズナは依頼者の名前は聞いておらず、ただ眼帯をした猫の獣人という情報しか得られなかった。しかも簡単に騙されてしまった事に関しては……それはもうユーリがみっっっちりと説教したらしい。涙目だった。
そしてフィーナもアルに言葉遣いに関して色々注意を受けていたようだ。暇な時は必死に古文を勉強している。成果は乏しくないが。
結局、後手に回ることになるがパトロールからの捕縛しか手段はなかった。
"仕方がない……最終手段を使おう"
作戦内容を伝えると、修行部や百夜堂、イズナから反対されたが、代替案を聞くと出なかったため、作戦の変更は無かった。
こうして、
とは言っても内容は極めてシンプル。先生を囮にすること。他のメンバーはわざと先生の護衛から離れ、周囲の警戒に当たる。ユーリは霊体化で先生のすぐそばで待機、ワカモとイズナは二人で先生の尾行し、何かあったら即座に連絡する。
万が一に備え、先生には様々な
結果として作戦は成功。本来二つの小隊を率いているはずの先生が、一人になっているバレバレの罠にもかかわらず、相手は嬉々として先生を捕縛。そのまま連行していく中で、あまりにも簡単に成功した事について思わずシズコは呟いた。
「……まさかここまで馬鹿だったなんて」
だが尾行の最中、修行部が迷子の子供を全員で送り届ける事に離れてしまい、フィーナも任務を忘れて不良生徒の鎮圧に向かってしまった。しかも周囲に一言も告げずに。
「……他も馬鹿だとは思わなかった……まともなのは私だけなの?」
そんなシズコも緊急の仕事が入ってしまい仕方なく断りを入れ、離脱してしまった。
「シズコさんは仕方がないとはいえ……他の面々は後でお話ですね……まったく」
ワカモの呟きに一同、心の中で十字を切ったり黙祷をするのも無理はない。
こうして雑な囮作戦が呆れるほど成功してしまい、一同拍子抜けしながら後をつけて行った。
向かった先は廃屋が立ち並ぶ一角。そこで待っていたのは眼帯を付けた猫の獣人だった。ワカモの証言から彼は入れ違いで顔見せできなかった商店街会長の「ニャン天丸」というそうだが、彼は自分の事を「路地裏の独眼竜、ニャテ・マサムニェ」と名乗った。
……その名乗りに日本の有名武将を汚されたような感覚を覚えた先生は、そこらへんに転がっている鉄パイプで
マサムニェは用心して先生のスマホを回収したが、意外と甘い。何せ腕に付けているのは緊急時には別の電話回線を利用できるスマートウォッチで、発信機も付いている。
更に傍らには霊体化で姿を消しているユーリもいる。マサムニェが懐にしまったスマホを難なくスリ取り、同じ要領で先生の懐にスマホをスリ入れていた。相変わらずチートだ。
先生とマサムニェが会話で情報を集めているのと同時に、録音と録画もして徹底的に証拠も集めていく。マサムニェは勝利を確信し、次々と情報を話していき、マサムニェがイズナの事を馬鹿にしているように、外で待機していた小隊もこっそりとマサムニェのことを馬鹿にしていた。
だが、先生はイズナの事を馬鹿にされて意外と頭に来ていた。だからこそマサムニェをコケにする台詞が自然と口をついて出た。
"知ってる? こんな名言を"
「……なんだと?」
"相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している"*4
先生がその言葉を告げると、マサムニェの背後に回っていたユーリが霊体化を解除し、首筋に冷たい刃を添えていた。霊体化解除の折にいつの間にかスマホでロードアウトを変えたのだろう。いつもはメイクで隠している傷も隠さず、血塗れの制服を着ていた。
「すっ……『
「嘘だろ!? シャーレはこんな奴まで所属しているのか!?」
「もう駄目だぁ……おしまいだぁ……」
良くも悪くも、ユーリは有名だ。もしあの騒ぎを鎮圧している時に一人でもユーリが来ている情報が入っていれば、もう少し慎重になっていたはずだ。
だがユーリと対峙した相手は全て病院送りにされた為に、その情報が入ってこなかったのだ。
せめて重傷者が出た事にもう少し警戒していれば、こんな事にはならなかったのだろう。
この時点で
"孫子曰く『勝利というのは、戦う前にすべて、すでに決定されている』と。何で二つの小隊を率いている僕が、一人で歩いている理由を考えなかったのかな?"
「わ……罠だったのか!?」
"あからさまに「罠です」って感じだったのに、簡単に引っかかって拍子抜けだったよ……"
外では戦闘音が鳴り響いている。意外にもそれなりに敵はいたらしいが、人外能力を得た面々にはかなわない。断続的に様々な轟音と悲鳴が聞こえてきた。
廃屋の中にも当然敵は来たが、一番の実力者であるユーリが刀を突きつけて強烈な殺気を叩きつけると全員逃げ腰になる。
「……選ばせてあげる。大人しく投降か、切られて無残な死体になるか。逃げたら殺すよ」
そうなると残った敵が選べる選択肢は少ない。殺気に耐えられず気絶するか、腰を抜かして
「遅くなってすいません!」
「一応修行部とフィーナさんにも連絡がつきましたわ。後で合流するそうですよ」
その時、シズコが先生の元へやって来た。ワカモが案内してきたのだろう、連邦生徒会の制服ではなく、戦闘時に着ている百鬼夜行の制服と狐のお面を付けていた。
その事に
大まかな話の内容を聞いたのであろう。シズコはとてもいい笑顔をしていた。
その雰囲気を察したマサムニェは恐る恐る、口を開いた。
「えっと、その、だな……諸君。全部水に流すというのは……どうだろう?」
ぶちりと、何人かから、そんな幻聴が聞こえた。
それはそうだろう。ここまで来て誰だって許せるわけがない。そんな状況でふざけた答えを出せば、誰だって堪忍袋の緒が切れる。
「んなことできるかあぁぁっっ! シズコ
「ぐはぁぁぁっっ!?」
シズコの鉄拳制裁によってマサムニェは吹き飛ばされたが、ユーリがすかさず受け止め、そのまま投げで地面に叩きつける。
「
「ぐはぁぁぁっっ!?」
倒れたままのマサムニェを一度持ち上げ、掌打を二発入れてから回し蹴り、そのまま踏みつけ、逃がさないようにした。
そしてユーリは両腕を頭上でクロスさせ、ある技を再現しようとしていた。
「レェェェイジングゥゥゥ――」
「ま、待てっ……ここまで痛めつけたこの儂に、とどめを刺そうというのか!? 頼む、許してくれ!! 後生だ、頼む!!」
だが、先生も怒り心頭だ。可能なら近くの鉄パイプでぶん殴ってやりたい気持ちもある。
だがそんな自己満足よりも、もっと酷い目にあわせるユーリに怒りを託し、とてもいい笑顔でサムズダウンしながら宣言した。
"
「――ストォォォーーーム!!」*5
「ぎいぃやあああぁぁぁぁっっっ!?」
ユーリが頭上でクロスされた両腕を勢いよく地面へ叩きつけるように振るった瞬間、轟音と共にユーリの足元から赤い闘気の奔流が吹き荒れた。
たった数秒が長く感じられ、踏みつけられていたマサムニェはボロ雑巾のようになっていた。
結局は廃屋内にいる敵は全員投降することになった。誰だって命は惜しいのだ。マサムニェも警察病院のお世話になり、後日家宅捜索の際には大量の裏帳簿が出てきたのだった。
個人で保管しており、ネットにも保存しなかったのであの大暴露から逃れたのだが、今回の件で彼の悪行が表に出ることとなったのだ。
こうして、百代ノ春ノ桜花祭を巡る戦いに終止符が打たれたのだった。
実は桜花爛漫編、ユーリが餓狼伝説3の赤いレイジングストームを出すシーンが降りて来て、そこから大まかなプロットを作り始めたんです。
だからサブタイトルは全部餓狼伝説シリーズのオマージュですし、BGMもギースステージで有名な曲です。どのバージョンにするか結構悩みましたけど……。
今回は餓狼伝説SPECIAL、ギース・ハワードのステージ曲「ギースにしょうゆ」が元ネタです。