Paradise of the Disqualified:Rewritten World   作:GameMaster

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4話 Get The Sky -With Your Dreams-

「いいですか、あなた達が衝動的に良かれと思ってやった事は任務の放棄、強いては仕事の放棄、責任や義務の放棄と同じことです。

 それすなわちあなた達が目指す目的の放棄と同義です。わかりますよね?

 

「「「「はい、すみません……」」」」

 

 あれから大捕物の後始末をヴァルキューレに任せ、合流した修行部とフィーナを待っていたのはワカモの説教だった。理由があったとしても、全員無断で離れたのだ。

 それは誰だって怒るし説教もする。

 

「もし今回の任務、二つの小隊が違う任務で参加できなかった場合を考えてみなさい。先生が大怪我、最悪死亡した場合は責任がどこに来ると思いますか?

 まず、こんな事になるまで魑魅一座を放置していた百鬼夜行学院連合、そして護衛任務を放棄したあなた達ですよ。それに商店街会長の思惑を見抜けなかった百鬼夜行の商業会、さらに即座対応を行わなかった陰陽部……責任追及で被害がどこまで広がるか想像できません。

 あなた達は今回の事で多大な被害を起こす可能性がある事を自覚しなさい。

 任務中は最低でも一人か二人は残す、報告(ほう)連絡(れん)相談(そう)は必ずする。わかりましたね?

 

「「「「はい、すみません……」」」」

 

 その光景を見ていたシズコは信じられないものを見ているようだった。七囚人と呼ばれ、思うがままに破壊衝動に身を任せていた厄災の狐がまるで別人のようにふるまっている。

 服装も、いつも間にか連邦生徒会の制服に戻しているので別人だと言われても違和感はない。

 

「凄いですね……あの厄災の狐と恐れられた人をあそこまで変えるなんて……」

 

"まぁ、ああなったのは原因があったからね。その原因を取り除けば、頼れる子だよ"

 

 先生はシズコの質問に答えながらも、どうしてああなってしまったのか疑問を感じていた。いくら神秘が強くても精神に異常が出るものとは考えにくい。

 そしてユーリの能力によって判明した、何者かによって与えられた謎の破壊衝動。

 

"(おそらく……ワカモは黒幕によって、そうなってしまった被害者なのかもしれない。キヴォトスを滅ぼすとは言え、何でこんな面倒なことを? それとも目的は別にあるのか?)"

 

 観測空間の出来事を元に考察を進めていくが、まったく答えが見つからない。情報があまりにも少ないのだ。こればかりは情報を集めるしかないのだ。

 

"難題もまだまだ山積みだしな……"

 

「何がですか? あなた様?」

 

 考え事もまとまらず、どのように情報収集を行うか悩んでいると、いつの間にか説教を終わらせたワカモが側にいた。話せる内容でもないため、適当にごまかす事にした。

 

"いや何、この休暇と観光が終わったらシャーレにどれくらいの依頼が溜まっているかって思ったけど、考えないようにしていただけだ"

 

「それもそうですね。それにここでやる事もまだ残っています。

 今はひとまずお祭りを楽しみましょう」

 

 そんな時、イズナがいい笑顔で近づいてきた。

 その様子に先生はなんとなく大型犬を思い浮かべ、ワカモは「また増えた」と思っていた。

 

「イズナはついに見つけました。最初からイズナの夢を応援してくれた、先生の隣でなら……イズナはこれから先もずっと、夢を見続けることができます!

 先生、いや主殿! 今からイズナは、全てを真の主君である主殿に捧げます!」

 

 その言葉に周囲はざわついた。

 イズナにとってそれは忠義を示す言葉でもあるが、受け取り方によって、それは――

 

「ん、大胆

 

「うへぇ~、若いねぇ~」

 

「ぷ、プロポーズ、ですね……」

 

「ま、いいんじゃないかな?」

 

 そう、大胆なプロポーズにしか聞こえない。

 その事実に気づいたイズナの顔がだんだんと赤くなってきた。わいわいと周りがイズナに集まり、色々と問いただす中、ワカモとユーリはその様子を眺めていた。

 

「で、どうするのですか?」

 

「やる気だけは人一倍あるけど、他が色々と足りないね。前提条件のシーフにもなってないし、勉強も不十分。まずは修行かな?」

 

 そんな事を話していると、ユーリを見つけたイズナが助けを求めてきた。

 

し、()(しょ)ぉ~。助けてくださいぃ~

 

「……まぁ、確かに忍者としての実力は私が上だけど、私は師匠って柄でもないしな……。情報操作も修行のうちだよ。頑張って

 

 その辺の教育も考えないとなぁと思いつつも、修行として助けを断るのであった。

 そうしているうちに花火が打ち上げられる時間が近づき、最後の準備としてシズコとフィーナが仕事に戻ることとなり、修行部の面々も手伝うと言って離れていった。

 おそらく、またワカモの説教が来るかもしれないという脅えかもしれない。

 周囲の人々も花火をいい場所で見ようと移動を開始し、シャーレの面々もそれに倣って人々の流れに乗り、展望台へと歩みを進めた。

 

 展望台は人混みにあふれていて、気を抜くと全員がバラバラになってしまいそうだった。幸いにも先生の両サイドはユーリとワカモが固めており、前方はいつの間にかイズナが先生の懐へと収まっていた。ワカモは多少の不満を抱きつつも、仕方ないと諦める。

 アクア小隊もリビング小隊も少し離れてしまったが、全員がバラバラにならずに花火を見れる場所を確保したようだった。

 

 そうしているうちに、大きな爆発音が響き、夜空に大輪の花が咲いた。

 

「あ、始まりました……!」

 

 イズナの言葉が呼び水になったように、普通の花火や電子投影されたホログラム花火が百鬼夜行の夜空に咲き乱れる。色とりどりの花火にイズナは素直に喜び、ワカモは何も言わず先生へ寄り添い、ユーリは遠い目をして眺めていた。

 

「この景色……主殿と一緒に見られるだなんて……。

 その、色々とご迷惑をおかけして申し訳ありません。その……」

 

 ふとそんな弱音をこぼしたイズナの頭を、先生は優しい手つきで撫でていた。それを見ていたユーリは(これが二次創作でチープに使われる撫で惚(ナデポ)なんだろうなぁ……)とか思いつつ花火を眺めていて、ワカモはなんとなく先生の肩へ頭をすり寄せていた。

 

「主殿……これからも末永くよろしくお願いいたします。イズナはこれからも修行を続けて、主殿の為に頑張っていきますので!」

 

 その夜空は、色とりどりの花火が咲き誇っては消えていく、祭りの夜に相応しかった。

 

 後日、イズナは「忍術研究部」に入部したと聞き、ユーリは頭を抱えることとなった。

また自称弟子が増える……確実にっ!」と嘆いていたのは言うまでもない。

 

 

 

 後日、シズコとフィーナにシャーレでやろうとしている事を説明することになった。

 それは喫茶店を経営しながら、そこでシャーレに回された仕事の一部を生徒が代わりに行うというものだったが、教育や実地訓練の意味も含めた運用方針である。

 

「つまり、失敗しても大丈夫だったり、時間的に余裕がある仕事を生徒に振り分ける事で、シャーレに協力してもらい、優秀だったり見どころがある生徒をスカウトする、という形ですか……」

 

「昔の西部劇に出てきた、酒場みたいなものですネ!」

 

"まぁそんな感じかな? 今回の騒動で出た被害はこちらが無期限無利子で補填して、返済は依頼料って形にしておけば、初めは返済のために仕事を頼むけど、返済が終わってもこのシステムを利用してくれれば、こちらに仕事を回さずに済むからね"

 

 他にも全員が色々とアイデアを出してくれた。累計報酬によるランク分け、ランクごとの上限(キャップ)システム、被害が出た場合の一時金預かり(デジポット)、モバイルオーダーなど……。

 粗が目立つが、現時点ではテスト段階だ。状況に応じてシステムアップデートを行えばいい。そして注意事項も細かく決めていくが、そこにシャーレに関する一文も追加しておく。

 

*状況によって、シャーレからスカウトが来る場合もあります*

 

 この文章で何人かは修行部やイズナが来ると言っていたが、現実は非情だ。

 

修行部はあの調子なら逆に足手まとい。イズナちゃんは本気で鍛え上げないと無理だね

 

 一番の実力者であるユーリがそう評価したら一同は納得するしかない。

 

「それじゃあさ、訓練的な項目も入れておかない? おじさんもやっぱり今回の件で定期的にいろんな訓練しておかないと実感したからね」

 

 ホシノの意見を皮切りに全員がアイデアをさらに出し合う。戦闘訓練だけでなく職業訓練の項目を作っておけば、進学だけでなく就職の助けにもなる。

 他にもアビドス組やイズナのような学力が低い生徒のための学習支援、希望があれば不良生徒の更生支援なども行うことも決まった。

 こうして、シャーレの新たな試みは着々と形になっていった。

 

 後日、告知を出して百夜堂とシャーレのコラボイベントを開催することとなり、そこで今回の依頼仲介所を紹介することになった。

 開店前、シャーレ組は何故か全員メイド服を着込み、開店準備をしていた。ちなみに先生は執事服を着ている。一応全員この時までに猛特訓を行って一般職のメイドと料理人をマスターしており、ホールとキッチン両方こなせるようにしている。

 開店五分前、ユーリがマイクとスピーカーを持って店から出ると、並んでいた客たちは何かのイベントが起きると思い、期待した。

 

「いらっしゃいませ♪ 百夜堂へようこそ♪」

 

 

 軽快なミュージックと共に紡ぎ出される歌声。店内では意外な才能に驚いた面々が間抜けな表情をしており、様々な能力を所持していることを知っている先生とワカモですら呆然としていた。踊り子や吟遊詩人は想像できたが、まさかアイドル系列まで存在すると思わなかったのだ。

 店の外ではあまり見かけない少女がメイド服を着て歌って踊っているのだ。盛り上がらないわけがない。いつの間にかノリのいい観客たちは合いの手や掛け声で周囲のテンションを上げていき、オタ芸で一緒に盛り上げていた。

 

「ご来店、ありがとうございます♪」

 

 歌い終えて、最後に〆の言葉を言えば、周囲は大盛り上がりだ。

 ここぞとばかりにシズコが店の外に出て列を作るよう指示を出す。

 

百夜堂にご来店ありがとうございます!

 本日は大盛況なのでお店の前にスペースを空けて、周囲の迷惑にならないように二列でお並びください! トラブルが起きた場合、即座にシャーレから人員が派遣されて叩き出すのでご注意ください! それから実験的にモバイルオーダーも実施しております。お持ち帰りのお客様や、シャーレの依頼実験に協力してくれる方はできる限りそちらをご利用ください!」

 

 百夜堂に関しては意外にも民度が高い客ばかりだ。シズコの指示に従って素早く列が作られていく様は圧巻の一言。よく訓練された客は素早く列を作って並んだだけでなく、モバイルオーダーも利用して既に注文を行っている。

 

「それでは改めて……いらっしゃいませ♪ 百夜堂へようこそ♪」

 

 そこから怒涛の一日が始まった。何しろキッチン、ホールともに一般職とは言えメイドと料理人をマスターした猛者達が十人ほどいるのだ。待ち時間も少なく、長居する客は皆無。そして持ち帰りも多ければ当然回転率はすさまじい。

 それでも疲労が溜まらないようにローテーションで休憩や小休憩を取れるのは人海戦術のおかげだ。これが普段の数人だったら間違いなく無理だろう。

 

 結局落ち着いたのは夕方となり、その日の売り上げは過去最高を記録したのだった。

 実証実験の方も順調で、今まではボランティア活動として簡単な手伝いや治安維持を行っていた生徒も、しっかりとした依頼として行えば当然報酬も出る。

 そうなればやる気が出るのも当然の結果だった。

 依頼を出す方も、一部では「もう遅い陰陽部に頼むよりこっちの方が早いからいいや」と言っていたが、それはそれで仕方ないだろう。当然の結果である。

 

 こうして、百鬼夜行連合学園での依頼と実験は無事完了し、帰路につくこととなる。

 

 

 

 

"みんな、お疲れさま。これで一応状況終了だけど、報告書は後日でいいよ。今日も遅くなっちゃったけど、昨日みたいにシャーレに泊まっていく?"

 

「そうね、私は泊まっても大丈夫。最近は大将のお店を手伝ってくれる子もいるし、大将からもいい機会だからって明日も休みもらっちゃったし……

 

「そう言えば最近大将のラーメン食べてないわね……久しぶりにアビドスへ行こうかしら……?」

 

 シャーレに帰還後、セリカとアルの会話を皮切りに話が弾んでいくが、内容としては基本的に全員泊まることについては大丈夫みたいだ。

 それにシャーレがあるビル内では先生用の居住区だけでなく、生徒用の居住区も存在している。

 たかが数人増えたぐらいでは機能不全に陥らないのだ。

 

"それじゃあ今回の依頼も成功した事だし、祝賀会でもやろうか"

 

 先生のその言葉に全員が喜びの声を上げ、ジュースを購入しにエンジェル24へと突撃し、そのままオフィス……と言いたいがこの人数では無理な為、調理室近くのラウンジで行うことにした。

 全員で料理を作り、料理を持っていく。

 

"今回の依頼も無事に完遂し、今後の足掛かりとなるカフェの実証実験もとりあえずは成功した。だけど問題点もいくつかある、その辺りは全員で知恵と力を出し合い、着実に進んでいこう。難しい事はこれくらいにして、今後の行方に乾杯!"

 

 先生が乾杯の音頭を取り、思い思いに歓談や食事に舌鼓を打つ。その光景を見て、どうかこんな穏やかな日々が続きますようにと願ったのだった。




 リンクした楽曲
 Go!Go!ウェイトレス ~from Piaキャロットへようこそ!! 2~
 オッサンホイホイ? インターネット老人会? そりゃPiaキャロシリーズも30周年だからなぁ。年単位で聴いてなかったのですが、こんな歌声だったっけなぁ……と思いました。
 まぁ20年以上前の歌だからなぁ……本職でなさそうな歌声だなぁと……あと声優さんが歌ったバージョンも聴きましたが……歌の上手い人を聴いているとあからさまに「下手だなぁ……」って感想が。いや確かに有名処と比べれば差が大きいんですけどねぇ。

 ちなみに公式(F&C)が出した30周年記念動画はこちら。
 歌だけ使いたかったので、余計な空白時間やセリフはいらないため今回は使いませんでした。

 Get The Sky -With Your Dreams- ~from リアルバウト餓狼伝説2 THE NEWCOMERS~
 サブタイトルだけの予定でしたが、書き終えて読み直すと、短くても使った方がいいなと思い、使用することにしました。
 これは、アルフレッドのステージ曲で、これだけはタイトルそのまま使いました。
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