Paradise of the Disqualified:Rewritten World 作:GameMaster
"ふぅ……ようやく一息つけたかな?"
「あれ……? あのロボット達、急に追ってこなくなった……? この建物に入るまでは恐ろしい勢いで向かってきたのに? 何でかわからないけど、とにかくラッキー、でいいのかな?」
目的の建物へ退避した一同は、そこでようやく一息つけた。
モモイが見当外れなことを言っているが、半分は正解で、半分は間違っている。
最後尾を務めていたユーリは、モモイとミドリの視線が前方へ集中している隙に、建物へ入る直前、敵の一団へ向けて黒魔法のメガサンダーを放ち、大まかに掃討していたのだ。
可能なら上位のラムダスパークやライトニングも視野に入れていたが、流石に殲滅させると怪しまれるため、今回は遠慮した。*1 *2
だが、モモイの言う通り、ロボット達は今いる建物の中を調べようとはせず、周囲を探し続けている。理由はわからないが、恐らくこの建物には侵入してはいけないという指示があるのだろう。
そんな状況に、とうとうミドリの我慢も限界に達した。
「良くないよ! うわあああん! もう嫌!
一体何でこんな所で、ロボット達に追われなきゃいけないの!」
「落ち着いて、ミドリ。生きていれば、いつか良い日も来るよ」
「今日の話をしているの! そもそも、お姉ちゃんのせいでしょ!!」
あまりにも見当違いなモモイの慰めに、ミドリの意見へ同意したユーリは抜刀。そして、モモイの脳天へ峰打ちを叩き込んだ。
一応手加減はしたが、それなりに「がい~ん」といい音が鳴り響いたのは言うまでもない。*3
「~~~~~~ッ!!!」
「何ふざけたことを言っているの? ミドリの言う通り、全部あんたのせいでしょ? 今ここでシャーレの権力使って、あんただけを退学にしてもいいんだよ?」
ユーリもそれなりに怒ってはいるが、流石に退学までの強権を使うつもりはない。もし仮に二人が犯罪者に堕ちるような状況になれば、最悪の場合、手足の一本は切り落とさなければならないレベルの厄介な相手になるからだ。
ユーリは、モモイとミドリをそんな手の付けられない野良犬にするくらいなら、強固な鎖で縛られた番犬にした方がいいと考えている。
そしてこの時点で、モモイとミドリはユーリのことを「絶対に機嫌を損ねてはいけない人物」として、脳内ブラックリストに登録したのだった。
「あいたた……でも、本当にここ、何をするところなんだろう?」
頭をさすりながらも建物内部を見回したモモイの疑問も正しい。
よく見ると工場のような施設だが、生産ラインらしきものは見当たらない。どちらかと言えば、研究施設か倉庫としての機能を持った場所のようだ。
そして、先ほどから周囲を巡回しているロボット達は、この建物を守るために配置されているようだった。モモイとミドリが建物について考察を始めた、その時だった。
突然、施設内にアナウンスが流れた。
『――接近を確認。対象の身元を確認します。
対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません。
対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません。
対象の身元を確認します。真神ユーリ………………エラー、判別不可能。
対象の身元を確認します。狐坂ワカモ…………資格がありません。
対象の身元を確認します。小鳥遊ホシノ…………資格がありません。
対象の身元を確認します。先生…………資格を確認しました。入室権限を付与します』
一同は困惑するしかなかった。
先生には資格なんて心当たりがないし、ユーリに出された「エラー」についても、思い当たる理由がない。それでも、アナウンスは続いていた。
『才羽モモイ、才羽ミドリ、真神ユーリ、狐坂ワカモ、小鳥遊ホシノの五名を先生の生徒として認定。同行者である生徒にも資格を与えます…………承認しました。下部の扉を開放します』
そのアナウンスを聞き、一同は足元を確認した。どう見ても、ただの床にしか見えない。
そして、モモイとミドリ以外の全員が理解した。足元にあるのは床ではない。
――――扉だということを。
「足元が開く! ホシノちゃんお願い!」
「先生はこっちに! ワカモちゃんはしがみついて!」
足元が開く。判断が早かったのは、ユーリとホシノだった。
ホシノはすぐさま右腕で先生を抱きかかえると、瞬時に左腕の包帯を解き、天井を通っている太いパイプへ巻き付ける。落下する瞬間、ワカモもホシノにしがみついた。
「さ、流石に二人分追加でぶら下がるのは、キツイ……!!」
普通の包帯なら即座にちぎれてしまうところだが、神秘を使った屍技となれば話は変わる。
ホシノの身体能力がそのまま反映されているため、その気になればロボット一体くらいなら容易に振り回せる。それでも、一度に二人を抱えたまま支えるのは流石に大変なようだ。
一方、ユーリはいつの間にか背中に
そのためか偶然か、モモイの着ているコートとスカートはめくれており、三人に下着を見せつけるようになっていた。幸いな事にミドリはスカートではなくハーフパンツだった為に、コートはめくれていても下着は見えていない。残念。
「あ、あれ……? 落ちてない?」
「え、え……? 飛んで、る?」
"(……中々の絶景だな、うん)"
モモイとミドリは理解が追い付いていないが、流石に動転するより足元がない恐怖が勝り、大人しくユーリに抱え上げられていた。
ワカモとホシノは流石に空気を読んでモモイの下着が丸見えな事は言わない。先生はしっかりと目に焼き付けてから目をそらしていた。先生は気づかれていないと思っているが、三人とも先生がしっかりとモモイの下着をガン見していた事は気づいていたが、黙っていた。
誰もそれについて口にしなかった。今ここでモモイに指摘すれば、パニックを起こして余計に危険なことになりかねないからだ。そのまま一同はゆっくりと下へ降りていくと、思ったよりは深くないことに気づいた。照明が少ないせいか、そう感じただけらしい。実際には、四メートルか五メートル程度の深さだったようだ。
「うへ~……流石に二人を支えるのは大変だったよぉ~。もう少し鍛えないとね~」
「いえ、包帯って鍛え……ああ、ホシノさんの
「た、助かったぁ……」
「って、お姉ちゃん!? ユーリさんの背中に綺麗な羽根が生えている!?」
緊急時だったとはいえ、ユーリが天使系統に転種したことがバレてしまったのは仕方がなかった。だが、先生は別のところに違和感を感じていた。
普通、天使系統は基本的に一対の羽根だ。だが、今のユーリは
バランス型の天使系列、近接戦闘を得意とするヴァルキリー系列、そして遠距離攻撃を得意とするキューピッド系列。
だが、今のユーリはその三系列のいずれにも当てはまらない。むしろ、それらよりもさらに上位の存在であるように感じられた。先生はそこから導き出される推測を口にした。
「ユーリ? それ、もしかして……封印種?」
ユーリは困ったように笑うと、素直に認めた。
「あっちゃぁ……。緊急時とはいえ、瞬時に二人を救出するならこれしかなかったんだけど、やっぱり先生は鋭いよね……。普段は強すぎるから使わないようにしてるんだけどね……。
うん。天使系封印種、
その言葉に、意外なことにモモイが反応した。
「し、
天使の階級を下から言うと……
だからか!? さっき確認の時だけユーリさんがエラーを出したのはっ!?」
「お姉ちゃん、普段の成績は悪いのに、何でそんな所だけ博識なの……?」
ミドリの呆れももっともな話だが、先ほどのエラーの理由に気づいたモモイの推測も、また間違ってはいなかった。明らかに人外として規格外となっているユーリの能力なら、通常の機械で調べても、その出力の高さからエラーを吐き出しても不思議ではない。
そういえば先ほどの確認時、ワカモとホシノもモモイとミドリより読み込みに時間がかかっていた。恐らく、二人も上位種族になっているからこそ、普通の生徒よりも出力が高かったのだろう。
モモイもモモイで、ユーリに対する疑問は無数にあった。
だが、おいそれと触れてはいけない類の話だと直感的に理解していた。追及すれば、間違いなく痛い目を見る。そう判断したモモイは、話題を探すように周囲を見回した。
そして――――その場にはあまりにも相応しくない存在を見つけてしまった。
「――えっ!?」
「ん……? どうしたのお姉ちゃん……? えっ……!?」
モモイが指さした先には――――
おそらく、その部屋に作られた専用の区画だったのだろう。
上には窓か何かが設けられており、外の光を取り入れるようになっている。まるでスポットライトに照らされるように、そこだけ日の光が差し込んでいた。
その中心部にはベッドのような、大きな椅子が鎮座しており、その椅子に――――
衣服を纏わぬ少女が、静かに身を委ねていた。
一同はその場所へ向かい、周囲を調べるが、特筆すべき所も見当たらない。そのため、おのずと椅子に横たわる少女を調べることとなった。
その最中、モモイが不謹慎にも、ドラゴンクエストでお馴染みのフレーズを口にする。
「返事がない、ただの屍のようだ」
当然のようにユーリから拳骨を受けたのは、言うまでもない。
ちなみに、先生はモモイとミドリによって止められていた。残念だが当然でもある。
「今のはお姉ちゃんが全面的に悪いよ。でも……この子、怪我とかじゃなくて……『電源が入ってない』みたいな感じしない?」
そのミドリの言葉に、ユーリは椅子に横たわる少女の
・Unknown
種族 人間・ドール・キメラ・下位天使・試作ロイド
職業 技師・無職・ガンナー
(ど、ドールにキメラ!? それに
ドール。それは、なんらかの原因で自律意思を持った人形であり、言い換えればロボットの一種だが、どちらかと言えばロボット系の能力を持たせた人形であり、想像するような人形に近い。
キメラ。生命工学によって造り出された人造生命であり、ドラゴンクエストのモンスターが有名だが、日本で言えば
ロイド。一言で言えばロボット。用途は様々だが、基本的には戦闘用だ。つまり、この少女は何らかの理由によって作られた人造生命であり、同時にロボットでもあるのだ。
ミドリの言葉にモモイは少女の顔や肌などを触って「すごい、肌もしっとりしているし柔らかい……」とびっくりしている最中、ユーリは跪いて少女の下半身を調べていた。
「ゆ、ユーリさん!?」
ミドリも、まさかいきなり下半身から調べるとは思っていなかったのか、驚きの声を上げる。
しかし、ユーリはそんなことも気にせず、少女の下半身に備わっている身体構造を、細部に至るまで一つ一つ確認していく。
(やっぱり……。キヴォトスでも使われないような女性型ロボットだとしても、本来なら必要のない部分まで、人間と同じように再現されている……。一体、何のために?)
その時、モモイが椅子に何か書かれていることに気づき、見当違いな読み上げをすると、ミドリがそれを指摘した。
モモイは「ALIS」と読んでいたが、ミドリの意見によると、「AL-1S」という型番のようだ。
モモイとミドリは、この場所についての考察もひとまず後回しにして、ミドリが持ってきた着替えを少女に着せることにした。恐らく、万が一の事態を考えて持ってきたのだろう。
「手伝います。いくら椅子に座っていても、一人では大変でしょう」
「ありがとう、ワカモさん」
周囲を警戒しながらも様子を見ていたワカモは、さすがに一人で着替えさせるのは大変だろうと考えたこともある。
だが、それ以上にこの謎の少女について興味があったため、着替えを手伝うことにしたのだ。
そうして着替えが終わり、ようやく先生も近づけるようになったため、少女のもとへ近づいていくと、電子音が聞こえてきた。周囲が警戒する中、発信音の出所が着替えさせられた少女だと気づくと、少女の口から事務的な言葉が発せられた。
――――状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します。
目を覚ました彼女の頭上には、キヴォトスの女性である証拠、ヘイローが浮かんでいた。
その後、色々と会話をしてみたところ、簡潔に言えば、彼女はまるで起動したばかりのパソコンのように、必要最低限のOSしか存在せず、それ以外にはほとんど記録も記憶も残っていないということが判明した。
結局、彼女を放置するわけにもいかず、モモイの意見で一時的にゲーム開発部へと連れて帰ることが決まったが――――
「工場の地下……ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……ふふっ、いい事思いついちゃった」
「いや……今の言葉の羅列からは、嫌なことしか思い当たらないんだけど……」
そんな最中、モモイが凄まじく不穏な言葉を呟いていた。
幾人かはその考えを予想しつつ帰還すると、多少のトラブルがあったものの、予想通り、モモイはこの少女をゲーム開発部の部員にすることにしたのだ。
その際、彼女の名前を「AL-1S」という型番をもじって、アリスと名付けた。
肝心の彼女は、まるで生まれたばかりの赤ん坊のように、古いゲーム機やコントローラーを口に入れようとする。そのたびに、モモイとミドリが止めることとなっていた。
この時点で先生たちは、アリスに関する一件をシャーレで預かることにした。
今後、彼女をどう扱うのかについては、セミナーとも話をつける必要があるだろう。
一方、モモイはアリスをいかに偽造するかの相談をするために外出したが、仮にも先生たちの前でそんな話をしてもよいのだろうか……。
その後、残されたミドリと相談したり、アリスと会話しているうちに、何故かゲーム開発部が製作したクソゲーを遊ぶこととなり、先生たちもその後ろで見物することになったのだが――
キヴォトス史上最低最悪のクソゲーと呼ばれた「テイルズ・サガ・クロニクル」。
それは、開始して数秒も経たないうちに、一同が考えることを放棄するレベルの酷さだった。
そして、ちょうどその頃、モモイが戻って来ていた。
しかし、アリスがゲームを見つけて遊び始めたことには誰も気づいていなかったため、モモイはそのまま皆の後ろでこっそりと様子を窺っていた。
やがてアリスがノーヒントの初見殺しの罠に引っかかると、モモイはご満悦な様子を見せる。
その様子を見たユーリは、ようやくモモイが戻ってきていたことに気づき、ひとまず放心状態から戻ると、とりあえずモモイに拳骨を落としていい音を響かせたのは言うまでもない。
「~~~~ッ! な、なんでぇ……」
「このゲーム、あなたの悪意がありありと出ていたから」
それは先生もワカモもホシノも同じ意見だった。確かに現実の罠ならば、可能な限りヒントを与えてはいけないのが鉄則だが、ゲームに関してはあまりにも悪手。
初見殺しとしては有名なフロムソフトウェアのゲームも、何となく嫌な予感がするけど進んだら罠に引っかかってしまい、改めてその場所を注意深く見ると微妙なヒントがそこかしこに出ていると言う、
だが、この場合は違う。明らかな悪意、完全なノーヒント、さらにモモイの頭の悪さ自体がミスリードになった理解不可能なテキスト。流石にこの後からは拳骨を避けるためにモモイは調子に乗ることを止めたが、それでも時折拳骨を食らっているのは言うまでもない。
先生たちは完全に考えることを放棄して、ただただ最低最悪のゲームを無理矢理遊び続けているアリスを眺めるだけとなっていたのだった。
今回のサブタイトルの元ネタは、アリスソフトの前身であるチャンピオンソフトの「Little PRINCESS」からです。
ランスシリーズを知っている人なら、もしかしたら聞き覚えがあるかもしれないタイトルですね。
リンクした楽曲
幻想の終わり ~from
原作のシーンで流れた楽曲をリンクしてもよかったのですが、シナリオを読み直しながら考えていると、この曲がふっと降りてきました。
究極で完璧なアイドル ~from 崩壊:スターレイル~
こちらは、タイトルネタとしてもピッタリな一曲です。
会話や地の文に色を付ける事に関してアンケートです。活動報告にも詳細を書いてあるので一度目を通してください。文字に色を付ける事に関してどう思いますか?
-
全削除
-
赤のみ残す
-
赤とピンクのみ残す
-
そのまま
-
むしろ増やせ