Paradise of the Disqualified:Rewritten World 作:GameMaster
そして、あるゲームのシステムを組み込んだ説明回になります。
先生がシャーレに就任してから、しばらくの間は目まぐるしい日々が続いた。
先生用の携帯電話の新規契約、山のような書類の仕分けと返送、各種データの調査、必要物資の買い出し、施設の維持方法の確認、各部屋の備品チェック――やるべきことは尽きなかった。
それも無理はない。
これほど大きなビルを運用し、維持している人間が、実質たった三人しかいないのだから。
ちなみに、エンジェル24は相変わらず閑古鳥が鳴いている。
補給拠点としては優秀だが、人の気配という意味ではあまりにも静かだった。
何度か区切りをつけながら作業を進め、ようやく一息つけるところまで漕ぎつけた三人は、オフィスの応接間でしばしの小休止を取っていた。
そしてその沈黙の中で、二人は先日のあの疑問を、改めて口にすることにした。
「ねぇ、ユーリさん」
「どうしたの、ワカモちゃん?」
「色々と聞きたいことが多すぎるんですよ……。なぜ刀を使うのか。どうして、あんな動きができるのか。そして――あのアプリのことも。
一目見ただけなら、私たちと何も変わらない普通の人間。ですが、不思議なことに……その中身は、まったくの別物のように感じるのです」
"ああ、それは僕も気になってたよ。確かに、あの謎のアプリのことも聞きたいし……それに、ワカモの言う通りだ。ユーリだけ、どこか別次元にいるみたいでさ。
戦っている時の動きも、“走る”とか“跳ぶ”っていうより、“飛ぶ”って感じで――まるでアクションゲームを見ているみたいだった"
その感覚は、ワカモも同じだった。
銃社会であるキヴォトスにおいて、戦闘の主流はあくまで銃撃戦だ。接近戦は、あくまで補助的な手段に過ぎない。
だが、彼女の太刀筋は違っていた。銃弾を浴びても致命傷にならないはずの生徒の身体を、彼女の刃は、まるで常識を無視するかのように切り裂いていた。
そして、銃弾では破壊困難な戦闘車両の起動部すら、迷いなく断ち切ってみせたのだ。
それは、精密な構造理解だけによるものではない。刃に乗せた確かな技量と、必要十分な力――その両方を叩き込んだ、強引でいて洗練された一撃だった。
だからこそ、なおさら異様だった。銃で撃ち抜けば「痛い」で済むはずの相手に、彼女の刃だけが、確かな流血と恐怖を与えていたのだから。
それは火力でも理屈でもない。純粋な“殺し方”の質が、決定的に違っていた。
「あー、それはしょうがないかな……“システムが違う”って言えばいいのかな? 後付けで、色々なシステムを無理やり追加した感じ……って言えば近いかも」
"システムって言うと……ゲームシステムとか、ゲームエンジンみたいな感じ?"
「正解だよ。詳しく話すとちょっと難しいから省くけど、簡単に言えば――あの事故で目覚めて、覚醒した能力みたいなものかな。色んなゲームっぽい力が使えるって感じ」
少し間を置いてから、ユーリは続ける。
「で、その中の一つが、とあるRPGみたいに、アイテムや転職が存在するタイプのやつ」
"ああ、なるほど……。つまり、あのアプリはRPGでよくある“転移アイテム”みたいなものなんだね。あの戦いの時も、分かりやすく考えれば、ユーリは“ガンナー”じゃなくて――
“剣士”、もしくは“侍”の職業に就いていた、ってわけか……"
「そう。私がアクセスすれば、他人にも適用可能だよ。
ちなみに――先生は“人間の無職”、ワカモちゃんは“妖狐の狂戦士”」
"む、無職……?"
「きょ、狂戦士ですか……。でも……何となく納得してしまいましたわ」
二人の頬が、わずかに引きつっているのは気のせいではない。
先生は“無職”という単語の破壊力に打ちのめされ、ワカモは“狂戦士”と評されて、なぜか自分でも納得してしまったからだ。
そんな中、先生はふと、ある一点に気づいた。
"―――ちょっと待って? 人間に妖狐ってことは……ひょっとして、種族まで変えられる?"
「たったそれだけの情報で正解に辿り着くなんて、先生鋭いね。
正確には“転職”と“転種”。素質や条件さえあれば、違う種族の力を宿せるし、種族そのものにもなれる。職業も同じ。修練すれば、ちゃんと能力として身につくよ」
"つまり……転職や転種で得た能力を、状況に応じて付け替えられるってわけか。いやあ……ますますゲームじみてきたなぁ……"
その言葉に、ワカモはわずかに顔色を曇らせながら、静かに首を振った。
「簡単に言いますけれど……それは、とんでもない話ですわ。
種族が変われば、ほとんど別人に見える場合もあります。しかも、能力の組み合わせ次第では……手も足も出せない“化け物”が生まれてしまいます」
そう。前者も後者も、使い方を誤れば決して笑い事ではない。
仮にワカモの種族を人間そのものに変えれば、狐の耳も尻尾も消える。言い換えれば、彼女の最大の特徴はきれいに消失し、群衆の中に紛れれば見つけ出すことは極めて困難になるだろう。
トリニティに多い、天使のような羽根を持つ生徒は、そもそも見た目だけならすでに天使とほとんど変わらない。だからこそ、他種族の生徒を天使へと転種させれば、羽根が生えた瞬間、外見だけでは完全に見分けがつかなくなる。
それだけではない。
限度があるとはいえ、取得した能力の組み合わせ次第では、手が付けられない存在が生まれる。
例えば――元々攻撃力の高いワカモに、速度系の能力を上積みしたらどうなるか。
間違いなく、止められる者はいないだろう。
では、ユーリに防御力を上積みしたら?
銃弾の雨をスーパーアーマーで軽減、あるいは無効化しながら、刀を振りかざして突っ込んでくる――そんな悪夢の光景しか想像できない。
先生だって例外ではない。
元々の身体能力は貧弱なままだとしても、職業と種族を変え、能力を得れば、多少の銃弾など意にも介さずに戦えるようになる。戦況に応じた戦術と能力を使い分け、前線に立つ指揮官として、まったく別の存在へと変貌するだろう。
――だが。現段階では、まだすべて机上の空論に過ぎない。
それを裏付けるのが、このシステムを最も理解しているユーリ自身の言葉だった。
「まぁ、強力な能力なんて、そう簡単には手に入らないよ。職業や種族の知識も必要だし、使い方だって変わるから。上の等級に行くほど、ビルドには本気で悩むことになるよ」
"普通のRPGなら職業だけで済むけど、そこに種族ってもう一つの枠が加わるから、可能性はほぼ無限大ってわけか…"
「しかもね、私が今使っているシステムだと……最下位の等級だけでも、職業と種族がそれぞれ二十種類以上も存在してるのよ」*1
「“多っ!?”」
特にこの数字に強く反応したのは先生だった。
(ちなみに参考までに、ドラゴンクエスト6の基本職と上級職は各9種類ずつ、計18種類。ファイナルファンタジー5の
「上の等級に行けば、派生や強化系を含めて、普通にそれぞれ五十を超えるよ。*2
中には複数の修練が必須な職業や種族もあるけど、それだけ上の等級ってことだね」
そこまで聞かされて、二人は細かく考えることを放棄した。
説明を聞くだけでも頭が追いつかず、覚えるなど論外だったからだ。
「何と言うか……その辺は、ユーリさんに任せた方がいいかもしれません……」
"同感だよ。もう説明だけでお腹いっぱいだ。でも等級か……? ドラクエみたいに、普通と上級くらいの区分かと思ってた"
「全部で五段階あるよ。一般、上級、最上級。最上級まで修練すれば、キヴォトスでは基本的に上澄みだね。それに加えて――封印と、禁。
上級と最上級は身体能力もかなり上がるけど、それでもまだ“許容範囲”。でも封印と禁は……正直、使っちゃいけない領域。身体能力が、文字通り跳ね上がるから」
"五段階か……思ったよりずっと多いな。それに、封印……禁。文字通り、封印職・封印種・禁職・禁種ってわけか……。名前だけで分かるよ。それ、絶対に“触っちゃいけない枠”だろ……"
「身体能力が跳ね上がるって……ちょっと大げさに聞こえますね」
「世間一般の実力者を最上級に当てはめた場合、
その言葉に、二人は
現在のユーリが、どの等級に位置しているのかは分からない。だがそれでも、すでに彼女は“惨状”としか呼べない結果を容易に生み出している。
もし封印や禁の領域へ安易に踏み込めば――
それは、もはや惨状などという言葉では済まされない。
惨劇。
その言葉こそが、最もふさわしい結末になるだろう。
"……文字通り、封印だね"
「……そ、そうしましょう」
「理解してくれて何より。ひとまず、先生とワカモちゃんの種族と職業を再設定しておくね。先生は……無職だけど、一応上の等級もあるよ」
"あるの!? 無職なのに!?"
先生の驚きも無理はなかった。無職といえば、世間一般ではフリーターやニートを連想する。それですら“職業”として扱われるこのシステム自体が、すでに常識外れなのだ。
「あるよ。禁職の修練で、初めて超強力な補助能力が手に入るの。
無職、虚職、空職、零職……そして、その先に辿り着くのが――“職無キ者”」*4
それは“何者でもない者”でありながら、同時に“何者にでもなり得る者”。
職を持たぬがゆえに、すべての職に干渉できる。
無であるがゆえに、無限へと接続する――それは皮肉から生まれ、神話へと堕ちた、禁忌として語られる存在だった。
"何もない状態で修練か。すごく時間がかかりそうだ……やめておくよ"
「それが無難だね。将来性と立場を考えるなら、まずは一般職の“貴族”にしておくのがいいと思うよ。上級職の“王”になるには、“戦士”と“貴族”の両方を修練してマスターしなきゃいけないから、順番としてはまず貴族からかな。
非戦闘系も悪くはないけど、汎用性を考えると、その方が扱いやすいしね」
少し間を置いて、ユーリは続ける。
「それと、人間の種族設定については――まだ初期の修練すら終わってない状態。だから、今は上級への昇格も、他種族への転種もできないの。
その辺は、しばらく保留ってことで」
"人間にも上位もあるの?"
人間に上位種が存在するとは思っていなかったのだろう。先生は、素直な疑問をそのまま口にした。もっとも、RPGベースのシステムだと聞いた時点で――きっと、とんでもない何かが用意されているのだろう、という予感だけはしていた。
「闇の力を扱う種族――妖魔、亜人、吸血鬼――それらを使いこなすことで開かれるのが、“魔人”系列。それから、魔力生命体を取り込んで触手を操る“ワームサマナー”系列、ってところかな」
"しょ、触手……?(それなんてエロゲ!?)"*5
魔人までは、まだ想定の範囲だった。
だがワームサマナーの方は、完全に予想の斜め上だったらしい。先生は、周囲から見てもはっきり分かるほどの「ガビーン」というリアクションを全身で表現していた。
「ワカモちゃんは……すでに上級職の“狂戦士”をマスターしてるから、次は同じく上級職の“ガンナー”にするとして。種族は、修練がまだ終わっていない一般種の“人間”、“魔獣”、“天使”。それか、上級種の派生にあたる“中級妖狐”、“狐魔獣”、“狐芸者”あたりが候補かな。どうする?」
「人間と魔獣は、まだ分かりますが……なんで天使まで候補に入っているんですの?」
「たぶん、ヘイローがあるからじゃないかな?
そう考えると、キヴォトスに住んでいる人たちの多くは、本人が自覚していないだけで“天使適性”を持っている可能性が高いってことになるね」
ユーリは軽く肩をすくめて付け加える。
「まぁ、その分――相手が天使適性なら、“天使特攻”も普通に通るってことになるけどね」
「天使特攻」という、いかにも中二心をくすぐる単語に、先生は思わず反応してしまった。
男という生き物は、こういう響きに妙に弱い。
"それって、創作によくある“天使殺し”とか? 属性で言えば“闇”とか?"
――だが先生は、この時すっかり忘れていた。先ほど出てきた、“触手”という単語の存在を。
「闇属性も効くけど、それよりもっと効果的なのが――“快楽攻撃”だよ」*6
"まさかの斜め上ッ!!"
想定のさらに斜め上を突き抜ける回答に、先生は再び「ガビーン」とした表情を浮かべた。
しかもワカモは、さっきまでの勢いが嘘のように、露骨にドン引きした表情で固まり、そのまま何も言えなくなっていた。
しかし、先生は転んでもただでは起きなかった。
ある、非常によろしくない――いや、ある意味で“夢のある”可能性に気づいてしまったのだ。
"ちょ、ちょっと待って。さっきのワームサマナーって……も、もしかして……"
「先生、鋭いね。ワームサマナーは快楽攻撃も普通に使えるよ」
"こ、これは……喜んでいいのか、悪いのか……"
先生は一瞬だけ遠い目をしてから、無理やり現実に引き戻るように首を振った。
"気を取り直して……育成方針だ。広く浅く行くか、狭く深く行くか……暴徒鎮圧の修練に集中しすぎると、今度はデスクワークがおろそかになるしなぁ……"
「あー、二人は私の影響でね。性行為でも修練経験値が入る仕様になってるよ」
"……今、さらっととんでもないこと言わなかった?"
「事実だから仕方ないでしょ。ちゃんと“修練”判定だから、遊びじゃなくて正式な成長要素だし」
先生はこめかみを押さえながら、深いため息をついた。
"なにそのエロゲみたいなシステム……"*7
「それで、さっき話した快楽攻撃の効果だけど、絶頂に達すると一応“戦闘不能”扱いになるんだ
で、その判定が出ると同時に経験値も入る仕組みになっているんだよ。*8
特に先生は名声、つまり“
"……まさか、育成要素までエロゲ式なのか……"*9
「理解できるように言えば、普通のRPGのシステムに快楽属性が追加された、くらいの感覚かな。普通に戦ってもちゃんと修練されるよ。
それでワカモちゃん、ひとまず先生は後回しにして、次は何にする?」
「そうですわね……選択肢が多いぶん悩ましいですが、まずは妖狐系を最上級まで極めておいた方がよろしいですわね。最初は“中級妖狐”から、お願いしますわ」
その言葉に、ユーリはワカモへと軽く手を掲げた。
「了解。……はい、中級妖狐に転種完了。狂戦士からガンナーへの転職も完了」
"意外とあっさり終わったね。もっとこう……何か派手なことが起こるのかと思ってた"
「頻繁に使う能力だからね。毎回ド派手なエフェクトなんて出してたら、正直めんどくさいよ。
……あれ? ワカモちゃん、なんで狂戦士系とは別物で常時暴走みたいな能力持ってるんだろう? 能力上昇もないからほぼデメリットしかないし、解除しておいた方がいいね」
「"えっ!?"」
何気ないユーリの一言だが、二人にとっては予想外の事実だった。
先生が心当たりがあるのかと視線でワカモに問いかけると、彼女は素早く首を横に振った。
「心当たりは、まったくありません……昔から私は、大切なものを壊さず、奪わずにはいられない性分でした。それで捕まったこともありましたが……もし、もし後付けだとしたら、どうして私に、そんな能力が……?」
この時初めて、ワカモは誰にも見せたことのない、脅え切った表情を浮かべた。今まで当然のように受け入れてきた破壊衝動が、実は何者かによって後付けされていた可能性がある――その現実が、彼女を凍りつかせたのだ。
もし、もしも。先生たちと出会わなかったら――そんな最悪の可能性をほんの一瞬でも考えてしまうだけで、想像を絶する恐怖と寒気が全身を駆け巡る。
思わず、ワカモは先生に抱きついてしまった。
先生もあまりの突然さに驚いたが、ワカモの異常なほどの脅えようを目の当たりにしてすぐに理解した。破壊衝動が後付けであることを理解した上での恐怖なのだと。
彼は迷わず、彼女を強く抱きしめた。
"…もし、それが本当なら、ワカモは犯罪者にされるようにデザインされた被害者――悪く言えば、実験体の可能性もあるわけか。
生徒会長失踪の件といい、キヴォトスを覆う闇は一体どれほど深いんだ…?"
先生はふと窓の外に目をやった。
そこには、外の世界とは違う、独特な円模様が描かれた青空が広がっていた。まるで誰かが意図して描いたかのように、規則的で不思議な模様が静かに空を支配している。
だが、心理状況フィルター越しに見ると、それはまるでドームのように映り、その外側には光ひとつない、深い心の闇が広がっているようだった。
何気ない干渉ではあったが、ユーリはふとワカモの能力の裏に潜む、誰かの意図で後付けされたらしいデメリットに気づいた。その存在が示す意味を、静かに噛みしめるようにして口を開いた。
「おそらく、先生とワカモちゃんの推測は正しいと思う…。
本来、こういうデメリット能力にはそれなりのメリットが伴うはずだけど、これは本当にデメリットしかない。ステータス上昇も、他の恩恵もまったくない。
ひとまず、暴走能力は解除しておくけど…この件をどこから調べればいいのか見当もつかない。だから、後回しにしておきましょう」
"それもそうだね。――それでワカモ、何か変わった感じはある?"
ようやく落ち着いたワカモは、名残惜しそうに先生から離れ、目を閉じた。ゆっくりと深呼吸しながら、自分自身の状態を確かめていく。
「これが、上級への転種と転職……そして暴走能力の解除……不思議ですわね。
前でしたら、すぐにでも暴れたくなっていたのに、今はとても落ち着いている気がします。
私は、こうも変わるものなのですわね」
その言葉通り、今の彼女からは別人のような静けさが感じられた。もしかしたら、これが本当の彼女の姿なのかもしれない。
「まぁ、“狂戦士”なんて、戦闘に入ったら即
確かに能力はすごく伸びるけど、そのぶん扱いが難しくなるし……もうマスターしているから、最上級職にするのも訓練時のみだね」
"修練の機会があれば、狂戦士の上位職もやったほうがいいのかな?"
「あー、最上級職の『ベルセルク』か。
でも、今よりもっと危険になるから、正直おすすめはできないなあ」*11
「それは別で修練して、能力だけ入手しておきます。今だから分かるけど、あれは自分でも変だと思いますし……。今は下手に暴れて嫌われたくありませんから」
"他にも聞きたい事があるんだけど、ユーリってどれくらい修練終わってるの?"
何気なく聞いたつもりだった。
――けれど、それが意外と先生にとって危険な質問だったのかもしれない。
「え? 最上級、全部だけど?」
その言葉に、二人の思考は止まった。
"も、もう一回……"
「最上級まで、全部だよ」
"聞き間違いじゃないよね……?"
「うん。最上級職と最上級種、全部マスターしているよ?」
シャーレオフィスに、絶叫が響き渡った。
「ちょ、ちょっと待ってください! 先ほどの話からすると、職業と種族の合計200以上を全部修練完了したってことですか!?
だって、あなたは三年間も昏睡していたはずじゃないですか!!」
"そ、そうだよ。それにリハビリに半年ってことは……半年程度で、えっと、一般職も含めると推定合計250以上の職業と種族をマスター……嘘だろ?"
二人がパニックになるのも無理はない。先生とワカモの言う通り、修練に使える時間はたった半年ほどしかないのだから。まるで作画崩壊レベルでわたわたしているようなものだ。*12
「信じられないかもしれないけど、本当の話だよ。やり方は教えないし、簡単に真似できるものでもない。強いて言うなら、“裏技”としか言いようがないかな」
その言葉を聞いた瞬間、二人はもう何も言えなかった。
――とんでもないことをやらかしているのは確実だ。だが、彼女が話す気がなければ聞かない方がいい。そう判断するしかなかった。それは、現実逃避とも言える。
"ま、まぁ今後のことを考えると、人手はやっぱり欲しいよね"
「そ、そうですわね……募集も検討しなければなりませんが、信頼できない人間が来る可能性もあるので、一概には言えませんわね……」
この話は、想定が完全に吹っ飛んでしまったため、流れを無理やり変えるのは英断だった。
こうして意見交換と各自の補強が進められ、やがて後に迫る大きなうねりに立ち向かうための準備が着々と整えられていった。
やがてキヴォトスを動かす、大きな一歩目を踏み出す日は、近い。
今回のお話は、前回の物語で登場した謎のアプリケーションの元ネタや、その能力に組み込まれている転職や転種といったシステムの由来について、詳しく説明する内容となっています。
元ネタとなったのは、同人の超絶大作RPG『もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG』です。
また、彼女が愛用する刀「月下美人」もこの作品に登場する武器で、ちょっと特殊な経緯である人物から譲られた、本物の一本です。
アプリの『
原作(もんぱら)の蜘蛛の糸とハーピーの羽をアプリ風にしてみました。
もんぱらとの違いは、スキル(技や魔法など)やアビリティの自動習得が無い点です。
ゲームでは職業や種族のレベルアップで習得しますが、このブルアカ世界ではユーリを介して能力を目覚めさせる形になっています。
そのため、アビリティの付け替え、つまりビルドも全て彼女が行っています。
リンクした楽曲
Unwelcome School ~from Blue Archive~
いつもの曲です。このタイミングで使うしかないですね。