増税クソイケメン   作:覆面生徒

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合掌

 俺は真面目な奴が好きなんだろうと思う。

 よく話して遊ぶことも多い平田にしろ三宅にしても真面目だ。

 あまり絡みがないとはいえ、クラスメイトの幸村も真面目な奴だから好感が持てるし、高円寺も自分に対してものすごく真面目だから尊敬までしている。

 綾小路も幸村と同様に真面目枠だったけど、仏様なようだし恐れ多いから評価対象にはできない。

 

 それは女子にしても当てはまる。

 堀北妹も無礼なのに話していて何故か楽しいのは真面目だからだろうし、堀北兄も同様だし裏の橘茜も好きだ。

 Bの神崎や一之瀬も普段は生真面目が服を着ている感じがするので話しやすい。

 

 だから上級生の女子で好感が持てるのは真面目な人ばかりになるし、彼女らは何に対しても真摯に向き合ってくれる。

 軽音部に所属する彼女らはとくに顕著で、練習量や傾ける熱意を見ればわかる。

 

「おジャ魔女カーニバル……?」

「そうです。バンドスコアはこれです」

 

 このスコアを本屋で見つけたときは少し手が震えた。

 AIが作り上げたネタ動画のイメージが強かったが、スコアの方はちゃんと出版されていた模様。

 

「……う、うん。それでわたしらはこれを……練習しておけばいいのよね?」

「ですです。文化祭はないみたいですけど、思い出に皆で演奏したいですし──QUEENはもう皆さんで散々演奏したでしょうから、俺が歌うってんならこれでしょう」

 

 フレディーの域の声はさすがの俺も出せない。

 でもモノマネは可能だ──身内受けする程度ではあるが。

 

「……うん? うん」

「俺が生徒会長になったら来年か再来年には文化祭を開けるよう学校側に働きかけます。そこで演奏しますから、先輩方は是非聴きに来てくださいね」

「うん……いぐ。ぜったいいく」

「わたしも、そうなったら勿論……」

「うん! 今から楽しみ! だね!」

 

 バンドを引っ張っているギターボーカルの先輩のみならず、ドラムとベースを担当する先輩らからも有り難いお言葉を頂戴する。

 

「メガネをせっついて今年開催させるよう……うーむ、やはり将たる橘茜の方を先に……」

「堀北くんをメガネ呼びなの! 相変わらずだねー! あの人のシンパってかなり多いし! さ! 怒られちゃうよ!」

 

 ドラムを担当する先輩はフランクな方で、わりとストレートな物言いをされる。

 

「でえじょうぶです。メガネ呼びはメガネの前でもしますんで」

「余計大丈夫じゃない気もするけど、庵治くんならへーきかー」

 

 でも発言にあわせてジャカジャカとドラムを叩くのは聞き取り辛いのでご遠慮願いたい。

 

 

 

 ■

 

 

 

「このことは誰にも言わないでもらえると……助かる」

「……うん、もちろんだよ。色々と事情はあるんだろうけれど、僕に何か……手伝えることは?」

「ないな。あったとしても巻き込むわけにもいかねえよ」

 

 2年の帰国子女の女子は本場のハロウィンにて仮装をガチっていたようで、特殊メイクがとても上手で知識も豊富だ。

 なので顔や体に生々しい傷跡メイクを施してもらい、平田を部屋に呼び出したうえでベッドに横たわっていたらびっくりするくらい信じてもらえたので演技にも力が入ってしまう。

 

「──それにしても……庵治くんが魔法少年というのは、本当なの、かな?」

「……ほんと、だよ」

「そう……これ、メイクだったりしない? また僕を揶揄っていたりしない?」

「っせーな。ピリカピリララすんぞ」

 

 もう少し部屋を暗くすべきであった。征十郎失敗。

 

 

 

 ■

 

 

 

 軽音部に顔を出したりメイキャップ☆したりする中、迎えた七夕の日は結局デートをしなかった。

 須藤の逆転裁判へ向けて目撃者探しや、逆転への一手を考えたりが佳境を迎えていたらしく、櫛田の方から別日を指定されたからだ。

 それにしても堀北発案の見事な作戦が功を奏して、Cクラスが訴えを取り下げる展開にまで持っていったそうだが、堀北単独の力ではないだろう。

 いつもそばで見守っていらいっしゃる御仏の加護があったに違いない。

 

 そんなわけで裁判も終幕してDクラスにポイントが無事振り込まれたわけで、匂わせデートをする運びとなった。

 何かイベントに絡めたりするのも面倒だし、不味くなる飯を食うという無難なプランに落ち着いたが。

 

「クシクサ、おすすめ教えて」

「……」

「クシクサ、お・す・す・め・お・し・え・て」

「……はいはい、あんたどうせキノコでしょ。このキノコのクリームパスタ──ううん、キノコそば? これでいいんじゃない」

 

 キノコそばね……ありだ。

 

「ういー。んでクシクサ、目新しい情報は? とくに女子関連」

 

 櫛田に同学年の女子のことを聞くことが多過ぎるし、そろそろ他に協力者となりそうな1年を用意した方がいい。

 とはいえ、今のところ候補になりそうなのは──別のクラスの女子だし、櫛田ほどの勤勉さもなさそうだから迷う。

 

「それウザいから普通に話して」

「はい」

 

 結局櫛田は欠かせない駒であり指し手でもある。ものどかしい。

 

「……うちのクラスの佐倉さんがストーカーに合ってたみたいで、ぼかしてはいたけど被害に合いそうになったみたい」

「ほーん。学校か茶柱が動いて解決した感じ? てかその犯人は退学にでもなったのか? 1年じゃなさそうだし上級生か?」

「ううん。生徒じゃなかったみたい……」

「は?」

 

 マジで、は? 

 

「たぶん電気店のあの従業員が……で、たまたま居合わせた綾小路くんと一之瀬がそのストーカーから守ったみたい」

 

 ツッコミどころが多すぎて考えがまとまらねえよ。

 とにかく一番引っ掛かる部分だけは指摘しておこう。

 

「一之瀬のことは敬称略すとこ好き」

「……うっさいわね」

「てかそのストーカーって──」

 

 櫛田自体当事者でもないので詳しく知らなかったようだが、俺が聞きたがるような話であると予想していたようで、櫛田なりに被害に合いそうになった本人や関係者から色々と聞き取りをしたようで、おおよその事件の概要は掴めた。

 やはりこの学校に出入りする者の審査はざる過ぎる。

 

「お前も寮の鍵とか位置情報対策してるだろうけど……スタンガンの所持って女子ならポイントで買えたりすんのかね?」

「さあ? でもそこまでする必要──」

「あんだろ。お前って顔はマシな部類だし」

 

 30点フェイスだった当初と比べ、櫛田は最近美容に金を回し始めた成果が出ており、35点くらいにはなっている。

 

「……うざ」

「スタンガンが無理ならもう石とか? とりあえずカバンにでも入れとけよ」

「石……? どう使えってのよ」

「掴まれちまうと手遅れでも追い掛けられてる状態だとかなら石投げるなり、隙ついて頭ぶん殴るなりすりゃ反撃できんだろ。あ、あと紐もな。あると便利だしオススメ教えてやるよ」

「紐? 紐なんて……拘束したり?」

「止血やら施錠にも使えっし、縛るといろんなもんが運びやすくなる」

 

 ぷらんぷらんする体は実際運びにくいし、痕が残りやくなるから縛るのが鉄板だ。漫画で見た。

 

「運ぶ……?」

「あとは日々の運動もな」

「……イヤよ。運動中に襲われるかもしれないでしょ」

「誰かと一緒にやりゃいいだろ」

「……」

 

 櫛田といつも一緒にいる女子を頭に浮かべるに運動が得意ってタイプでもないし、それで悩んでいるのかもしれない。

 いや、櫛田なんだし幾らでも誘える相手はいるだろうし、誰と走るかで色々と考えを巡らせているのか。

 

「女子でもわりと毎朝走ってる奴いんぞ。BとCばっかだけど」

「……ふーん。考えとく」

「あと爪はあんま伸ばすなよ」

 

 どうせもうすぐ切るはめになる。

 

「どうしてよ」

「筋トレもさせっからだよ」

 

 筋トレはついでだけども。

 

「はあ?」

「自重トレだけでもやれ。覆面も特別に貸してやる」

「やらないし、いらない」

 

 サイズが合わない可能性があるが、覆面は複数持参しているし少しくらいの調整で済みそうなら夜なべすることも吝かではない。

 

「おい……俺がやれと言った」

「……わ、わかったわよ」

「覆面も被れ。それで筋トレする姿を動画に撮らせろ」

「それは絶対にやらない」

 

 くそ。高圧的な物言いをすれば簡単に了承してくれそうだったのに、しっかりと見極めてきやがる。

 

「顔出さねえわけだし……でも1万やるよ」

「2万」

「チッ。わーった。じゃあ帰ったらすぐな」

「きょ、今日するの!?」

「櫛田桔梗の輝きはすぐ見たい。だから今日」

 

 本当は今、ここで見たい。

 ちょっとお洒落なお食事処なココで見たい。

 でもさすがに覆面姿の櫛田を匂わせ目的のデート中に目撃させるのはやり過ぎだろう。

 勘の良い女子らが目撃した場合、関係を疑われかねない。

 

「うそ、でしょ?」

「俺って何気にお前には嘘吐かなくね?」

 

 夫婦ってのはお互いの嘘を減らす努力が必要だって爺様が言ってたし、だから俺も櫛田にはなるべく嘘は吐かないようにしている。

 

「……先に送金して」

「出来高に決まってんだろ」

「チッ」

 

 

 

 ■

 

 

 

 桜色の特別バージョンの虎の覆面を被ってスクワットする櫛田は無駄に姿勢が良く、美しかった。

 軽いトレーニングを終えて汗を拭って寛ぐ覆面姿のままの櫛田も、それはそれで面白素晴らしい。

 

「お前ってホラーとか観て怖いとか思うの?」

「……別に」

「ほーん。この前女子と心霊話で怖がってたのはやっぱ演技か」

「そりゃね。怖くなくても空気読んで怖いフリしとくのが無難だし」

 

 さすが櫛田である。あの手の話で怖くなくとも怖がらない奴って何を考えているのやら。

 

「ならこのドキュメンタリー観ようぜ」

「は? 観ないわよ」

「2年のオカルトさんにオススメされたんだけど、ガチ系のやつらしくってよー、他の女子と観る前にお前で実験してえから、観ろ。ここで、今日」

「もう帰りたいんだけど──あと、これもう脱がせて」

「そ。じゃあ他の奴に頼むわ」

 

 別に櫛田にしか頼めない用件でもなし、他を当たろう。

 

「何よ……観るだけでいいの?」

「ん? いや、もう帰っていいぞ──『あ、軽井沢~? お前バケ好き? うん、バケ。んだからバケだって。そう、お化け。苦手じゃねえってことは得意より? おん、うん……松下といんの? まあ……おん、なら、うん。オッケー、んじゃ明日、放課後……んーと19時くらいにに俺の部屋来て。二人でな。一人で来たりすんなよ、おん、そう。じゃ』」

「……軽井沢と松下呼ぶわけ?」

 

 通話する際、何の気なしに櫛田に背を向けてしまったので気付けなかった。

 やましいことをした覚えはないが、なんだかそういう気分になってくる。

 

「帰ってなかったんかい……ああ、ほら飴やっから帰りな」

「いらない……また軽井沢が調子に乗るじゃない。あんたバカなの?」

「2年と3年の女子には頼めねえし、しゃーねえだろ」

「どうしてよ」

 

 俺がどうして誤魔化そうとしたり、言い訳めいたことを並べているんだろう。

 

「俺ホラー観ると小便チビるくらい怖がんの。だから上級生の女子と鑑賞会する前に耐性付けとくんだよ」

「だっさ」

「ださい部分も庵治くんの良さでもあんだけどさあ──てかもう帰っていいぞ。何してん」

 

 櫛田は嫁候補とはいえ候補。こちらへの好意を一切向けてこないんだし、こちらが気を遣う必要なんてない。だってのに──。

 

「観てあげるわよ、私が」

「軽井沢と松下に頼んだし、櫛田は別に──」

「ほら、観るわよ。電気も消す?」

「消すな。あと俺の手をずっと握っとけ」

 

 櫛田がぐいぐいと来るなら応じてやろうじゃないか。

 手をわしゃわしゃとさせて櫛田の方へと向ければ──手を合わせてきやがった。

 

 ううむ、これは想定外。

 

 

 




デスゲームに巻き込まれたので更新が止まります。
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