増税クソイケメン   作:覆面生徒

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生徒会

 現生徒会長及び生徒会については、入学以来シコシコと調べていた。

 2年や3年の女子生徒のみならずケヤキモールやその他店舗の女性従業員からも聞き込んでいたので、目立っていたのだろう。

 だからだろうけど、どうせならこちらからタイミングを見計らって生徒会に乗り込みたかったし、呼び付けてきた張本人たる生徒会長が男子であることにテンションがまったく上がらない。

 

「お前が色々と嗅ぎ回っている生徒──庵治征十郎か」

「嗅ぎ回っていたわけではありません。生徒会の方々は多忙なご様子でしたので、直接お話を伺うのはご迷惑になると考えていました」

 

 生徒会室という空間によく映えるだろう自身の姿を思い浮かべていると、下がっていたテンションも少しは持ち直せてきた。

 叶うのであれば写真か動画に残したいが、現状カメラマンを買って出てくれる者はいなさそう。

 生徒会長である堀北学の側に控える女子ならワンチャン──無理そ。

 

「それで? お前の目的はなんだ?」

「生徒会への加入です」

 

 それにしても生徒会ってのが教師並みに生徒の個人情報にアクセスしちゃえるっぽいのには驚いた。

 ただまあどうせ個人情報を覗くっていう真っ黒な行為には10万ポイント以上支払っているはず。

 基本無料だったり10万以下で覗けるなら俺が生徒会に加入した時点で茶柱がぶら下げているニンジンが意味をなさなくなるし、あの時点で俺の生徒会入りも考慮していたはず。

 待てよ。よく考えると茶~さんって馬鹿じゃないけどアホっぽいし……マジで考えてないかもしれない。

 ま、10万くらいいっか。あの時点で櫛田の過去を知れただけでも価値があったし。

 てか杞憂だ杞憂。生徒会だからって10万ポイント以下で見放題なわけねえって。でえじょうぶだ。

 

「ほう。では自身の実力を示してみろ」

 

 模範解答としては自身のこれまで積み上げてきた努力、それに伴う成果を示すことだろう。

 でも今求められているのってそういう普通じゃないはず。たぶん、

 

庵治(あじ)なんて珍しい名字な時点でお察しかと思いますが、うちは代々保守ですので。ご期待に沿えるかと」

 

 曾祖父は惰弱と謗られ、祖父は老害と叩かれ、父は馬鹿息子と揶揄される政治音痴な家との評判が圧倒的だが有名ではある。

 選挙があるたび家が細くなっている感があるけども。俺、政治には自信がありますってな顔を全力で作る。

 こういうのは言葉じゃなくて雰囲気が大事だ。

 

「……」

「……あの、会長」

「良かろう。お前を生徒会書記に任命しよう」

 

 断れることを前提に日参する予定であったのに、通っちゃったっピ。

 シンプルに虎の威を借る正攻法ではあれ……結果オーライだ。

 でも書記かあ。副会長の席に据える予定の1年がいるのかもしれないが……書記かあ。

 

「書記ですか……失礼ですが、会長は南雲副会長の排除を本当にお考えになっているのでしょうか?」

「あなたっ! 書記に任命されることがどれだけ──」

「橘」

「す、すみません」

 

 役職上、会長の下である書記の橘茜が何故口を挟んで来るのか。

 おそらく今までも堀北学に対して異論を唱えた者に噛みついてきたのだろう。

 それに俺は男女の色恋に詳しいんだ。恋愛もののドラマや映画を母や姉らが爆笑しながら鑑賞している横でたくさん観てきたし、レディコミも嗜んでいる恋愛強者。

 

 だから男女の関係くらい一目で看破できる。

 

 彼女を今まで放任してきたのであろう堀北学は──こいつ、学生ながらにすでに橘茜の尻に敷かれているなっ! 

 

「お二人は既にご婚約されていらっしゃるんですか?」

「お前は一体何を言っている?」

「……」

 

 橘茜が堀北会長にチラチラどころかほぼガン見ってくらい視線を飛ばしている。

 もう言っちゃいなよ。あたしの尻に敷かれてることもう言っちゃえばいいじゃん──ということだろうな。見せつけてくれちゃってからに。わかりやすい二人だな。

 

「ああ、一応隠されているおつも──失礼、隠されているんですね。さておき副会長の席を現時点でいただけませんと、堀北会長が退任された後、南雲副会長の会長就任阻止が難しくなりませんか? 繰り返しとなりますが、堀北会長は本当に南雲副会長の排除をお考えなんですか?」

「俺はそうは考えない。南雲を止めるのに副会長の席は必須でもなければ必要でもない」

 

 もしかして副会長に据える予定の1年もいない? 

 でも南雲雅ってある意味では厄介極まると思う。話を聞くに彼はある意味では詰んでる人だから、それを自覚した場合が怖いし。

 私物と称する相手、退学に追い込んだ相手は背景のない生徒を選んでいたっぽいが、陥れた生徒と恋愛関係にあったり友情を育んでいた生徒が皆無だったわけもない。

 実際、被害にあったと思われる彼女らは卑屈になりがちな目の色の奥にどろどろとした感情を隠している。

 南雲はこの学校を卒業したあと不慮の事故で消される確率が非常に高いし、それを自覚して無敵の人化しそうな怖さがある。

 

 さておき、堀北学の意図がまったく読めない。

 保守的な考えであるとの主張の俺を受け入れたことから考えても、急進が過ぎる南雲とは相反し排除を考えていると予想したが、外した? 

 

 もうボクわかんなーい。

 

「そっすか。ならせめて会計に──」

「会計は原則非公開の役職な上、新入生は就けない」

 

 普通の学校と違って動く金(ポイント)の量が大きいからこその措置か? 

 生徒会内外から的にされることを危惧して? なら生徒会長が兼任している? そもそも非公開だとか新入生が就けないってのが不自然だし、本当かどうか怪しいところだ。

 金にまつわる役職は普通透明性を全面に出すべきだが……でもこの高校だしなあ……わっかんねえ。

 

「なるほど……じゃあ書記で我慢しまーす」

「あなたっ! 先輩に向かってその口の利き方はなんですか!」

「庵治征十郎。それがお前の本性か」

「本性? 本性なんてガキの頃に誰しもが失うもんじゃないですかー? 無くさずに大事に抱えてる奴なんて本物のやべえ奴だけっすよ」

 

 Dクラスにも本性を捨てきれずにいる生徒が何名かいるけど、あいつらは本気でヤバい。

 櫛田を介して伝え聞いたところによると、奴ら勉強を教えてくれている堀北のイジメの相談なんてしやがっていたらしく、そんな堀北の従者っぽいあの初々しい綾小路をも堀北の肩を持つならイジメの的にするぞってなことをグルチャ上で本人に向けて直接凄んでいたそうな。

 ガキの多くが持つグロさや凶悪な部分をさっさと捨てなきゃ、池たちのようないつまでも幼稚で本物のヤバい奴になってしまう。

 

「そうすると俺は本物ということになるな」

「はい? まあ橘に虐められるのがたまらん! ってのが本性なら本性なんでしょうね、あなたの中では。それは本性ではなくてただの性癖でしょうけど」

「在り来たりな手な上にさきほどから攻め口が変わっていない。下世話な話題を出して揺さぶろうとしても無駄だ」

「揺さぶる意味あります? てかもう俺たち仲間だろ!? 正直に橘茜の尻に敷かれてると言えェェェェエ!」

「では手続きが終わり次第通達する……帰っていいぞ」

 

 言葉のみならずシッシと手を振り退室をほどこしてくる堀北学。

 一方の橘茜は口元を手で覆い顔を赤らめている。

 

「えー、やだー、会長ともっとお話しするー」

「せん。さっさと帰れ」

「バナさんもなんとか言ってよー。バナさんの言うことなら会長も素直に聞くんでしょー?」

「バ、バナとは、もしかして私のことですか!?」

 

 四文字の名字って呼びにくいからアタシ苦手。

 

「そー。二人っていつから付き合ってるんすかー?」

「庵治。いい加減にしろ。任命自体を取り消すことも──」

「失礼しゃっす。おつしたー!」

 

 ふん。従順な犬を飼っているじゃないか、橘茜──いや、裏生徒会長。

 

 

 

 ■

 

 

 

 生徒会への加入が正式に認められ、書記としての役職を拝命。

 数日後、仕事を教えるとの旨の内容のメッセージが3年の書記を装っている裏生徒会長橘茜より届く。

 その日はモールに入っているフラワーショップのババアが主催するちょっとしたお茶会でお喋りに花を咲かせる予定が入っていたので、これを無視。

 花を咲かせている間、橘茜から何度もメッセージが届いたので彼女の飼い犬である生徒会長の堀北学の浮気調査中であると返答をしたところ先方が完全に沈黙した。

 

 そして、その日の晩に角を生やした堀北学と橘茜が揃って俺の部屋にアポなしで訪れてきたので、素直にごめんなさいしてやった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 翌日は2年の複数の女子がどうしてもというので夕食をおごらせてあげ、その次の日は対抗した3年女子に手料理を振る舞わせてあげた。

 大変に忙しかったので生徒会に顔を出すよう言われてから結構な日にちが開いたが、本日になって3年女子との演奏会の予定をリスケして生徒会室へ。いざ。

 

「ようやく来たか、庵治」

「橘先輩、ちょっといいすか? こっちこっち、調査結果報告しますんで」

「は、はいィ!? あのメッセージはあなたの冗談だったのでは!?」

「チッ。ノリ悪ィな」

「あなたねえ……いい加減に──」

「橘。こいつのペースに乱されるな」

 

 頑なだな、このメガネ。

 

「どっこいしょ。それで生徒会の仕事って俺もやんないとダメすかー? 書記の間はやる気出ないんすけどー、ブー」

「やってもらう」

「じゃあ小遣いください」

 

 ぼくお小遣いだいすきー。

 将来は国民の皆様からささやかなお小遣いを頂戴して、企業や団体からはたくさんお小遣いを頂戴したーい。

 

「あなたはまたっ! 会長に向かって失礼なことをっ!」

「いいだろう。その分お前には働いてもらうがな」

「……メガネ拭かせたり、するんです、か?」

「事務的な仕事をお前には期待していない。南雲の目がお前に向かうよう動け──具体的な指示が必要か?」

 

 事務仕事でも良かったのに。クシクサにやらせりゃいいし。

 でもまあ、俺が生徒会にサクッと入れたのって将来を見越してのヘイト役をやらせるためだったろうし遅かれ早かれだな。

 

「好きに動くので指示の方は結構です。期限は会長が卒業されるまでにはってことですよね?」

「そうだ」

「それまでに南雲が退学になった場合は?」

「ふむ……外道な手段でなければ考えよう。お前が求めているのは達成した場合の報酬だな?」

 

 動機を持たない相手を人はあまり信用しない。

 報酬としては微妙というか不要でもあえて欲しがっておく。

 

「会長の物差しが見えないのでなんともですが、まあ報酬はそうですね。とはいえポイントではありませんよ」

「ほう。絵に描いた餅になりそうだが言ってみろ」

「堀北会長の辞任及び俺の会長指名です」

「フッ、良かろう。念書もしくは契約書の作成を希望するか?」

 

 メガネにその口調、君はどうしてオールバックじゃないんだい。

 ポマードでガチガチにしてやりたくなる。

 

「あなたが約束を反故にされるとは思えませんし……俺を即日生徒会に招き入れていただいた恩もありますので、反故にされたとしても恨みはしません──盛大に悪態を吐いてメガネ割るくらいで済ませます」

「……そうか」

 

 冗談が通じないなあ。メガネは割らずに会うたびにレンズを素手で触るくらいで許すさ。

 

「それで、1年で南雲に靡いたり懐柔されなさそうな生徒会志望の生徒はいますか?」

「現時点ではいないな」

「橘先輩はどうです?」

「えっ!? わ、私ですか?」

「はい。あなたの目から見て1年の中にそういった人材に心当たりはありますか?」

 

 メガネよりも橘茜の見解は重要だろう。

 

「……私が判断すべきことではありません。ですからお答えできません」

 

 チッ。早々尻尾は出さない、か。

 

「と仰っていますが、会長はどうです? 俺に丸投げかよ~また~? となったりしませんか?」

「しないな。俺は俺の目を信じている」

「プッー、メガネのくせに。プッー」

 

 実際、南雲を野放しにしていてその尻ぬぐいを新入生に託そうとしつつあるのはプッーだよ。

 俺を生徒会に秒で加入させた功績をもって相殺されるけども。

 

「お前はふざけていなければ死ぬのか?」

「会長は真面目にしてなければ死ぬんですか?」

 

 おふざけはCPU不足を誤魔化す為の処世術だ馬鹿野郎。

 

「そもそも真面目にしているつもりがないんだがな」

「ええっ……風呂で鼻歌すら歌ってなさそうなのに」

「俺も鼻歌交じりに作業をすることはある」

「嘘だあ。バナさん聴いたことあります?」

「……」

 

 ほら見ろ。橘茜が目を泳がせている。

 

「どうやら嘘のようですねえ……ケッケッケ」

「橘」

「あ、あります。会長は時折鼻歌交じりに作業をしてオラレマス」

「……ふん! 見せつけよってからに! うちもう帰る! バーカバーカ! ローボローボ!」

 

 やっぱり付き合っとるやないか! 

 鼻歌を聴かせるなんて状況は、もう、それって一緒に風呂入っとるな! 

 橘茜の背中流しとるな、こんのメガネ。

 

 あ、風呂じゃメガネしない? え、でもこの人してそう。エロそうだし。

 

 

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