増税クソイケメン   作:覆面生徒

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非常識

 生徒会入りしたことの報告と助言や情報の提供への感謝を表するため、菓子折りを手に挨拶回りをする日々は中々に気持ちが良い。

 モールの女性陣はとくに喜んでくれていて、後援会長ポジになりつつあるスーパーのボス格の花屋のお姉さまから抱きつかれる寸前──咄嗟に出たアイアンクローが無ければ危なかった。

 俺はババアも対象──というか日によっては一番好きまであるからして、いろんな意味で危なかった。

 

 さておき、挨拶回りをする必要があるお相手もまだいるし、いつもにも増して多忙ではあるが自己管理をサボる俺ではない。

 毎週行うようにしている寮の一階エントランスホールにある大きな鏡の前に、多忙の身であってもちゃんと足を運んでいたりする。

 そんなこんなでマナーを守り遠目から目を輝かせるギャラリーを背に色々とポージングをしていたら──。

 

「あなた、少しいいかしら?」

 

 この俺に今声をかけてくるとは随分と鼻息の荒い女子である。

 男子であっても今の俺に声掛けしてくる奴は──ああ、高円寺が無言ではあるが一緒にポージングしてくるか。

 あいつはイイ。視線で語り合えている風を演出できるし、ギャラリーも盛り上がりを見せるし、わかっている奴だ。

 

「見てわかんね? 忙しそうじゃん」

 

 それに引き換えのこの女子ったら、もー。

 

「手が空いているようにしか見えないわ」

「鏡見てんだろ! 俺が! 鏡を! 見てんの!」

「聞きたいことがあるから答えてちょうだい」

 

 言葉のみならず生意気にも鏡に映り込んできた女子は俺と同じ黒髪を持つDクラスの堀北鈴音。

 こいつはあのメガネの妹らしいし、クラスメイトでもあるので無礼な態度は一度だけ寛大な心で見逃してやろう。

 決して昨夜平田と三宅に偉そうにも寛大さについて自語りジジイしていたからじゃない。俺は元来、寛大であるからして。

 

「ふん。言ってみたまえ。堀北ガール」

 

 寛大さを意識する場合、どうしても高円寺が頭を過る。

 奴は醜いものが許せないと堂々と宣言し、それを排除できるだけの背景を持つってのにDクラスの度を越した動物どもを黙認している実に寛大な男である。

 だから少し奴の口調に引っ張られてしまう俺も許してほしい。

 決して高円寺を馬鹿にしているわけじゃあない。

 

「あなたはAクラスを目指しているのかしら?」

 

 はい? そんなこと改まって聞くことか? 

 世間話がしたかったとか? そのわりには導入が下手すぎね? 

 でもまあ顔面力は櫛田とどっこいくらいの30点くらいはあるし、雑な導入でも今まで通ってきたから勘違いしているのかもしれない。

 

「目指してる。お前よりよっぽど真剣にな」

 

 振り返り、キリッとした表情で告げてやった。

 よし、100点だ。

 

「あなたの普段の言動からはそうは見えないのだけれど」

「1年で唯一の生徒会役員の俺は既にお前たちとは立っているステージが違う。ここまで言えば伝わるか?」

「ッ! あなた……生徒会に入っていたの?」

「会長にどうしてもと請われてな」

 

 事実である。

 

「……くだらない嘘ね。生徒会に所属していることも嘘なのかしら?」

 

 事実である。

 

「フッ。会長と3年の書記からは毎月──ほら、見返りとしてプライベートポイントが振り込まれていたりする。履歴の名前を見てみろ。生徒会に請われて所属しているのは事実だ」

「……本当のようね。でも請われたという証明にはならないわ。生徒会としての活動に必要な諸経費が送金されているだけではないの?」

「疑り深い奴だな──『あ、まなぶー? 今いいー?』」

 

 端末を操作し生徒会長にして堀北鈴音の兄とスピーカーにして通話を繋げる。

 短縮ダイヤルに登録していると、こういう時にグダらないので便利だ。

 

『……ああ、なんだ』

「『俺に生徒会役員辞められたら困るー?』」

『困りはしないな。代わりを探すだけだ』

「『困るって言ェェェェエエ!』」

『用件はなんだ。早く言え』

「『あ、うん。おれー、パパ学の愛情度をたし──』チッ、切りやがった」

 

 相変わらず軽口の通じないメガネだ。

 

「……」

「これで俺が請われていることが証明されたな」

「……あなたは何がしたかったの」

「わからん。ノリでこうなっただけだ。あ、お前ってもしかして生徒会に入りたかったりしたか? だから俺に探り入れようとしたのか?」

 

 なんだか堀北に釣られて高円寺口調が秒で消され、しまいにはカチッとした口調になってしまっていた。

 でも釣られるのはなんとなくイヤだからわざと口調を崩していく。

 

「いいえ。私は生徒会に入らないわ」

「そ? ま、入りたくなったら言えよ。同じクラスのよしみで仲介してやらんこともないぞ」

「結構よ。生徒会には入らないと言ったはずよ。それよりもあなたは本気でAクラスを目指しているのかしら? はぐらかさずに答えてちょうだい」

「目指してるってばー」

「それなら勉強会に参加しなさい。あなたなら皆に教えることもできるわよね」

「真面目な話、生徒会って思いの外やることが多いんだよ」

「……そう、それなら仕方がないわね。でも手が空いている日は参加してちょうだい」

 

 一連の流れでそこは信じちゃうこいつって……一之瀬とは違った意味で危ういな。

 高学歴なのを買われて新興の宗教団体にめちゃくちゃにおだてられたあげく、どっぷりなコースが視える。

 とはいえ一方的な要求にはしっかりと正論パンチで答えておくべきだろう。

 

「そもそもの話、学力上げたいってんなら教師に教えを乞うのが筋じゃね?」

 

 俺も教師ではないけど先達たる2年や3年の帰国子女から、遊びながらではあるけど英語と中国語習ってるし。ネイティブな発音カッケーから。

 クラスメイトに頼るよりも専門家だとか需要と供給がもっと合致した相手に頼る方が健全だと思うんだけどなあ。勉強会つってるけど、教える側に労力に見合った見返りがないのも不健全だ。

 

 何より俺以外がする寄生って嫌いだし。

 

「……おそらくポイントの支払いを求められるんじゃないかしら」

 

 この学校のことだからあり得そうなのが恐ろしい。当然が存在しないってやつだな。

 言っても詮無きことだけど黄色い帽子の創業者の格言をこの学校には少しは見習ってほしい。

 

「そう? 頼むだけ頼んでみたら?」

「ええ、一応お願いしてみるわ。おそらく断られるでしょうけれど。だからあなたも手が空いている日があれば勉強会に参加してちょうだい」

 

 自分の主張を曲げない奴だな。

 あの初々しい綾小路をこういう強引な手法で従えているのかもしれない。

 でも俺は初々しいい綾小路ほど優しくはないので、まだまだ反撃という名の屁理屈の準備がある。

 

「教師が無理だったら次はツテ頼れや。まなぶーの妹だろお前」

「……兄に頼るわけにはいかないわ」

「なんで? 上の兄妹には頼ってなんぼじゃね? 俺なんて去年までホラー観た日の夜は姉ちゃんの部屋で寝てたぞ」

 

 ホラー好きのオカルト姉さんはカレーばっかり食ってて心配。

 たまには刺激のないものを口にしてほしい。

 

「あなたにとっての常識は非常識なことを理解した方がいいわね」

「じゃあ俺に常識を教えてくれよ」

「お断りするわ」

 

 嘘、だよね? 

 

「は……? おま……なんで? 勉強会開いて教えてやってるのに、堀北先生は生徒を選り好みするんですの? おまん、マジで言ってる? 俺のお誘いを秒で……」

「あなたに常識を授ける意義がないわ」

 

 理解した。こいつは俺の敵である。

 

「Aクラスを目指すなら俺に常識を授けた方がよくね? ついでにお前をぶん殴ろうとした野郎も生徒にして常識勉強会開くのはどう? 常識を身に付けた俺らはAクラスを真面目(・・・)に目指すようになるかもよ?」

 

 敵であるからして無茶ぶりをしていこう。

 

「……ふざけないで。あなたに常識を学ぶ意思があるようには思えないわ」

「勉強会に嫌々参加する落ちこぼれには学ぶ意思があんの?」

「……あるわ」

「嘘吐くの下手クソかよ」

「嘘ではないわ」

 

 ん? 敵認定したってのに秒で雑魚認定せざるを得ないんですけどー、もー。

 軽井沢じゃないんだから雑魚なら雑魚で突っかかってくるなよー、もー。

 松下くらい根性がある奴だって勘違いしちゃうだろうが、もー。

 

「人が良すぎるんだか無垢なだけなのか、わかんねえ奴だな」

「とにかく伝えたいことは伝えたわ」

「待て待て。常識勉強会は中間終わってからやってくれんのか?」

「やらないと言ったはずよ」

「やらないことを了承した覚えがない。やれ。俺に常識を植え付けろ」

 

 雑魚なら雑魚なりにさっさと負けを認めろ。

 

「それこそ教師に教えを乞えばいいわ」

「おお! ナイスな切り返しだな」

 

 これは一本取られましたな。

 素晴らしい切り返しにこの征十郎感服仕る。

 雑魚であるとみくびっていた己を恥じるばかり、いかにもいかにも。

 

「それじゃあ失礼するわ」

「ういー、ばいばーい」

 

 ばいばい返せよ! 敗者だからって舐めてんの? 

 

「ばいばーい! 堀北ー! ばいばーい!」

「……」

 

 テコでも返さない模様。なので立ち去ろうとする堀北を追いかけ、並んで歩く。

 まだこちらを無視する堀北はそのままエレベーターに乗り込むようで、当然同乗する。

 

「ばいばーい!」

 

 大きく手も振るう。

 エレベーター内に自身の声が大きく反響するが構うまい。

 

「さようなら。これで満足かしら?」

「ばいばーい!」

「……」

「ばいばーい! 堀北ばいばーい!」

「……ば、ばいばい」

「よし!」

 

 大きく頷きつつ思考する。

 堀北の寮の部屋は13階であるようで、上昇中のエレベーターの中はしばらく二人きりである。

 

「……」

「A目指すんなら勉強もいいけど嘘吐く練習くらいしとけよ。なんなら教えてやろうか?」

 

 負けを少しは取り戻しておこう。

 

「不要よ」

「そう?」

「ええ」

「でもさすがにお前も学業成績だけでクラスの順位が決まるだなんて思ってねえだろ?」

 

 具体的な説明がなくとも人材を育成すると謳っている国立の高校なわけだし、学業だけで競わせるだなんてあり得ない。

 それに世界の流れに迎合する形で日本でも高校卒業までに修めるべき学業レベルが格段に落ちているようだけど、進学校は以前のように高いレベルまで取り扱っているようだし、学業を第一とするならこの高校のカリキュラムは不自然だ。

 

「そうね。だからといって嘘が必要になるとは思えないわ」

「万能の秀才や特定分野で突出した才能を持つ天才なんてここじゃ求められてねえんだぞ? んで社会で通用する真の実力を持つ人材を育成するってなると、突き詰めた話が高水準の指導力か統率力を持つ奴を創り出すってことで──それでも嘘が不要だって考えならお前は間違いなく落ちこぼれ側だぞ」

 

 よーし! 13階に到着するタイミングに合わせて適当にペラを回していたけど丁度いいところで格好良く言い終えることができた! 完璧! 

 もの言いたげな表情で立ち竦んでないで、はよ降りろ堀北。

 ビタッと決まったんだし、何してんだ。言いたいことあんなら言い返していいからとりま降りろよ。

 

「考えておくわ」

 

 うん? そうなん? 自分でもペラが長すぎて何言ったかよく覚えてねえけど頑張れな! 

 男の兄弟がいるお前にはそれなりには期待してるし! 

 

 

 ■

 

 

『堀北と何話してたわけ?』

『別に何も』

『随分と親しそうにしてたようじゃない』

『べつに』

 

 お肌のお手入れもしたし、あとはもう寝るだけ。

 そんなエンペラータイム中にに櫛田からメッセージが届いた。

 時間帯と空気の読めない奴はアイドルとして大成できないぞ? 

 

『何隠してるのよ 言いなさいよ』

『言えよ』

『おい』

『言え』

 

 今日はこのまま汚く酒を飲むおばさんの配信でも観ながら寝ようって流れであったのに、櫛田からのメッセージの通知が鳴りやまない。うざい。このクリボーめ。

 

『しつこ ほっとけクソクリボー』

『は?』

『おい』

『部屋行くわよ?』

『ほんとに今から行くから』

 

 しっつこ! 

 

『どうしても聞きたいならお前の変顔の動画撮らせて』

『しね』

『あーあ やっぱ堀北の方が櫛田より頭良くて顔も良くて話してて楽しかったなー あーあ』

『しねよおまえ』

 

 櫛田は怒ると語彙力が死ぬのがよくない。

 怒れば怒るほど雄弁になってくれたほうが、将来夫婦喧嘩になった場合楽しそう。

 これはいずれそうなるよう言って聞かせる必要がある──が、今は君にどうしても伝えたいことがある。

 

『(◞≼◉≽◞౪◟≼◉≽◟)』

『↑こんな感じのお前のお得意の顔やりつつ媚び媚びの自己紹介してるとこ撮らせろ』

『きも しね』

『やってくれたらポイントもやっから』

『やらない』

『やれる自覚はあんだな』

『ない』

 

 3番の霊能COした櫛田さん黒目で見てます。

 

『じゃあ逆パターンでいいからやって』

 

 でもまあ、妥協はしてやろう。

 

『は? 意味わかんない あんたがやるの?』

『あれは俺の芸風じゃねえし てかやりたくても無理』

『きも』

『お前のお得意のきゅるきゅるスマイルしつつ罵詈雑言吐きまくるあれ撮らせて』

『そんなのしない』

『じゃあ堀北との話も言わなーい たんまりあるポイントもあげなーい』

 

 そもそも堀北との話って何? もう内容をほとんど覚えてねえよ。

 

『やってあげる その代わり前払いで1万払って』

 

 はあ!? 1万でいいんか!? 安っす! 

 

『安売りしててウケる』

『うざ やっぱりやらない』

『前払いで1万 出来が良けりゃ10万追加で出してやる』

 

 俺が女の財布に金を入れるとは──櫛田は誇っても良い。自分の顔芸を。

 

『やる 堀北との話も聞かせなさいよ』

『フー! さすが櫛田ちゃん! フー!』

 

 今日は良い夢が見れそっ☆

 堀北との話は……おすすめの文房具の話してたとでも言っとこ。

 あいつって何故かコンパス持ってるから文房具オタク臭いし。

 

 

 ■

 

 

 

 刑務所の中にだって外の世界での背景を鑑みて忖度が働く。

 高育という箱庭でも同じで、それを証拠にぼくのおとうさんは偉いんだぞを全力でぶっ放している高円寺を表立って叩くような輩は存在しない──が、何事にも例外は存在する。

 

「お前が庵治か」

 

 不意にお届けされた高圧的な声と態度の人物を警戒してか、同行している三宅が立ち位置を少し変えた。

 うむうむ、カメラマン兼SPムーブが板についてきたじゃないか。

 

 それにしても南雲雅。対面したのは初めてだけど、こいつって道化の仮装して股間をもっこりさせたら様になりそう♦

 

「さんな。庵治さん(・・)な。三下風情が敬称を略すな。親父に言い付けるぞ」

「ハッ! 外部との連絡が取れないここではそんな脅しは通用しない。お前はまだそんなことも理解していないのか?」

 

 外部との連絡は取ろうと思えば取れるだろうよ。

 部活に所属してる奴らは公式戦のたびに外に出ているんだし、話に聞く限りは漏れがないよう学内以上の監視をされているわけでもなく違反者への停学や退学、ポイントにまつわる罰則で縛っているようにしか思えない。

 あと副担任の不在や保険医が担任を兼ねている等、表向き動いている教師の数が普通の高校と比べて半数以下であろうことが足を引っ張っているはずだ。

 表立って動ける少数の教師によって学外で活動する生徒を完全に近い監視下に置くのは困難だろうし、たぶんやる意思がない。

 

 そも、ケヤキモールを始めとするこの学校の敷地に出入りする従業員や業者の存在が穴だし。

 

「ああ、そっち? もう卒業したらあとは事故死ルート確定してるの気付いて無敵の人ムーブに移行しちゃった感じだ? それならまあ、敬称略して先輩風吹かすのも許してやろう。ただまあ、やり過ぎたら途中退場も普通にあるだろうから加減を間違えるなよ、お猿さん」

「……お前は自分にとって随分と都合の良い妄想をしているようだな」

 

 手を下すのが学生だとは限らないのに、こいつには危機感とか恐怖心はないんだろうか。

 ケヤキモールに出入りする者の審査なんてザルってのに悪意を持つ者、あるいは委任された人物が外部から入り込むことなんて容易いだろうに。

 

「妄想の世界に生きてんのはお前だろ。お前はやり過ぎたんだよ。身代わりすら用意せずに人から恨みを買うことを繰り返すだなんて、向こう見ずなチンピラでもやらねえよ──ああ、お前って最初から無敵の人だったのか。なるほどな。ここを出たら最後、絶望しか待ってないような事情でもあんのか」

 

 高育に関係する政治家の政敵から送り込まれた工作員だったとかするんだろうか? 

 それにしてはやり方がお粗末だし──だからこそ指示を全うできず、卒業後に消されるって自覚があるとか? 

 

 ……創作物の世界じゃあるまいし、考え過ぎか? 

 

「……」

 

 てかこいつ黙っちゃったよ。

 ここは三宅に──って目ェ怖ァ。なんやこいつ。95点♠

 俺の為に怒ってくれてるんだよな? な? 

 でもなんか不穏だし、よーし空気を変える為にもお茶目に振る舞っちゃうぞ! 

 

「まあ俺に有益な能力を示すことができりゃ助けてやらんこともないぞ。寛容だからな俺。なあ、三宅。俺って寛容くんってあだ名付いてくるくらいだもんな?」

「……正しくは寛容奉行だが」

 

 この前自語りした際、そんなことを自称した覚えがある。

 

「三宅!? おまん、よく俺の言葉を覚えて……よし、あとで特別に金の征十郎くん人形を1つ進呈しよう」

「あ、ああ……金もあるのか」

「……」

「平田にはまだ内緒だぞ? っと、んじゃなー無敵くん」

「ッ! 貴様には必ず敗北を味合わせてやる! 必ずな! それまで余裕ぶっていることだ」

 

 こいつ、中学時代のことをネタに揺さぶってくるんだろうなあ、きっと。

 でもあれってエキサイトした周りの女子がイジメや傷害を超えるところまで至ったから、大きな事件になったわけで、放置したり押されまくってなあなあにしていた俺に原因の一端はあれど罪に問われるようなこともなかったし、突くにしては難しいと思う。

 事を捻じ曲げるようなことをせず、事実を陳列された場合でも個人情報を流布した犯人を学校側に調べるよう訴え出れば済むし、仮に学校側が隠蔽したり穏便に済ませようとした場合は学外へ出ると希望してちゃんと家族に相談するなりして法に照らして訴え出れば、俺が停学や退学になるという流れを回避しつつ反撃できるだろう──それでも罰を受けたら、もうそれまでで、諦めて別の高校に入り直すが。

 

 って考えを俺の過去を知った南雲は簡単に予想するだろうし、どう動いてくるか一向に読めん! ワンチャン工作員っぽいし、物理的な排除も考えているやもしれない。

 一応紐と防犯ブザーの数を増やして、手袋にスコップ、カバンにシート、あとはバケツに洗剤、スポンジ等々揃えておこう。

 

「庵治。気を付けろよ──あいつ、何でもありって手合いだぞ」

 

 三宅きゅん!? 俺にレインボー征十郎くん人形を差し出せと言うのかい!?

 

 

 

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