冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

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15.オリオンの矢編No.3

 

 

 オラリオ外壁の上に集まったクエストを受けた面々。彼らの前には神ガネーシャが数体の飛竜を連れて待機していた。

何故、そこに飛竜がいるのか。それは飛竜に乗って、目的地へ行くからだ。空から行くことによって、地上から行くよりも遥かに時短出来る。

 その意義も意味も理解出来るのだが、シンは一点だけ気になっていた。それは飛竜の中で一匹だけ、他の飛竜とは違う色をしている個体についてだ。

 

(睨まれている…、…何で??)

 

 そう、その一匹がずっとシンを睨んでいるのだ。シンを睨んでいる飛竜の身体は赤く、他の飛竜がネズミ色に比べてとても目立っている。何故、赤色なのかシンはガネーシャに尋ねると、返ってきた答えは変異体ということ。

 

「シン、何で睨まれている?」

 

「知らねぇよ。というか、オレとお前はコレに乗るみたいだな…」

 

 シンが辺りを見渡すと、それぞれが飛竜に乗っていた。飛竜一匹に対して、2人が乗るとの事。ベルとアルテミス、リリルカとヴェルフ、そして、ヘスティアとヘルメスの組み分けだ。

残るシンとフィンは当然同じ組となり、残っている赤き飛竜に乗らなければならない。

 

「グルルルルルルルルルッッッ!!!!!!!」 

 

 シンとフィンが近づくと、赤き飛竜は立ち上がり、思いっきり威嚇の構えを取る。ガネーシャはもちろんのこと、飛竜に乗ってスタンバイしていたベルたちやその飛竜たちも驚いていた。

 しかし、当の威嚇されているシンとフィン(正確にはシンだけ)は物怖じすることなく飛竜を見上げている。 

 

「これはシンのせいだね」

 

「オレのせいッ!?…こいつとは初対面だぞ!!……ったく、この時間が無駄だ。………おい、普通に乗せろ」

 

 ギロッ!!!

 

 威嚇して来る赤き飛竜に対して、シンはやり返しの意味も込めて睨みつける。それは単なる睨みではない。一つの圧力となり、赤き飛竜にぶつかった。

 赤き飛竜は悶絶するかのようにして、フラフラと後ろへ数歩下がる。だが、決してその威嚇を解くことは無かった。

 

(へぇー、耐えるか……。というか何で、初対面の飛竜に睨まれる?…………謎だ)

 

「ガネーシャ!この飛竜は本当に調教済みなんだろうな?」

 

「それは保証する!だが、どうやら君には懐かないようだ!!」

 

 ガネーシャが連れてきたということは、調教済みということであり、このに連れてきた事を考えると誰でも従う筈だ。

しかし、この赤き飛竜はシンを見るなり、彼を威嚇した。それがとても不思議な光景だとガネーシャは感じている。

 

「はぁ~、仕方ない」

 

 シンは手に武装色の覇気を纏わせると、赤き飛竜に一瞬で近づいて、ボコボコにした。その時間は僅か10秒。

 赤き飛竜はボロボロの状態でシンとフィンを背に乗せている。いや、正確にはシンのゴリ押しで乗られただけだ。シンの尋常ではない圧力。赤き飛竜はシンとフィンを乗せて飛んだ。

 

「最初から素直に飛べ」

 

 シンはつまらなそうに赤き飛竜を睨むのであった。

 

 

 

 オラリオから出て、1週間経つが未だに目的地にはたどり着いていない。最初こそ、ヘスティアたちは楽しそうにしていたが、1週間も経てば景色すら見飽きている。

尚、その道中シンは何度も赤き飛竜に挑まれたのであった。

 

「あと数日で着くね」

 

「その時、ベル・クラネルは己の運命を知る」

 

 シンとフィンはヘルメスから全ての事情は知っている。そういう身としては、彼らのように呑気な旅はしない。

 

 しばらくすると、森の中で逃げている親子が見えた。シンとフィンより前を飛んでいたベルとアルテミスはすぐに行動に移る。すなわち、親子を助けに向かったのだ。

仕方ないとばかりに、シンは手綱を握り、ベルたちを追いかける。

 

「あんな一般人、見捨てれば良いものを…」

 

「それが出来ないのが情というものだよ」

 

 先に降りたアルテミスとベルは親子を追いかけていた未知なるモンスターたちと戦闘を行っている。

シンとフィンも2人に加勢しようとすると、後方からも大量の未知なるモンスターが向かって来ていた。

 

「めんどくさいな…」

 

「そんな事を言っている場合じゃないよ」

 

「………少年の方を任せる。オレは目の前の敵を粉砕する」

 

「了解」

 

 シンは身体から冷気を発すると、そのまま冷気をモンスターに向かって放つ。モンスターは一瞬で氷漬けとなり、氷像と化した。そして、凍ったモンスターの上に巨大な氷を生成する。それを興味なしと言わんばかりに、シンは落とす。凍ったモンスターたちは全て砕けるのだった。

 

(意外と弱かったな…。もしこれがアンタレスの力なら、たかが知れている。まぁ、神の力がこの程度のわけもないが…)

 

 シンはベルたちの元へ向かおうとすると、ベルの声が響く。

 

「間に合えェーーーーッ!!!!」

 

 その声が途切れると、ドンッ!!!と音がした。音のした方向を見ると、地面が数十メートル抉れている。抉れた先にはあの槍が突き刺さっていた。

 

「何が起きた?」

 

 シンは親子を警護していたフィンに尋ねる。

 

「……神アルテミスがモンスターの中に突き進んだ。そして、増援でやって来たモンスターに対して、ベル・クラネルが槍を投げたら、こうなったわけさ」

 

「あれが槍の威力か?」

 

「そのようだね…。恐ろしいよ…神の力は…。まぁ、それは僕たち神の恩恵を持っている身からすれば、今さらだけどね」

 

「神の恩恵か…。あんなもの、よく付けていられるな…心底不愉快なものだ」

 

 シンは彼等の背中にある神の恩恵の事を考える。神が人の背に刻む神の恩恵。それは人々に力を与えている。だが、シンはとても気分の悪いものだと思っていた。

そう思うのは元の世界(・・・・)での事があるからだろう。

 

 モンスターを退けた後、助けた親子から事情を聞く。彼女たち曰く、この辺りの村々は先程現れた未知のモンスターに襲われているらしい。

 アルテミスは旅の食料を親子にパン以外全て分け与える。それにヘスティアは怒るのであった。

 

「これからの食料をどうするんだい!!!」

 

「申し訳ありませんでした!!!」

 

 アルテミスは見事な土下座を決めた。ヘスティア曰く、今のアルテミスは自分の知るアルテミスとは違うらしい。

その話にヘルメス、シン、フィンは何処か知らないフリをしている。

結局、ベルが食べられる木の実を見つけて食糧難は解決した。

 

 その日の夜、ヘルメスから半分程度の事情がベルたちに伝えられた。もちろん、アルテミスの()の状態を教えてはいない。

 

「その槍だけがアンタレスを倒せる。…オリオン(・・・・)、槍に選ばれたあなただけが倒せるんだ」

 

 その言葉を最後に皆はそれぞれの寝床につく。そんな中、シンは野営地より離れた森の中を歩いている。彼の後ろには赤き飛竜が堂々と彼をつけていた。

 

「チッ!!鬱陶しいな!!!何のようだ!!!」

 

「グルルルルォォッ!!!!!」

 

 赤き飛竜はシン目掛けて、真っ直ぐ突進する。シンはそれを避けることなく殴り飛ばす。赤き飛竜は一発喰らっただけで、立つことは叶わず、気絶していた。

シンはどうでも良さそうに、それを放って歩いていく。

 

(やっぱり、いたか…。昼間の援軍が何処から来たのか気にはしていたが、これだけいるとはな…)

 

 シンの目的地は森の中には珍しい、木々のない大きなクレーターがある場所だ。その場所には昼間に現れた未知なるモンスターが数百体程度、ウニョウニョと蠢いている。

 

「早く片付けて寝るとするか」

 

 未知なるモンスターの数は数百体。その数をシンは一瞬で蹂躙するのであった。彼の感想としては、全く意味のない単なる作業というものだ。まだ、食人花の方がマシではある。

 

「やはり、君は異質だね」

 

 シンは声のした方向を振り向くと、そこにはアルテミスが槍を構えて立っていた。彼を見ているアルテミスの目は人を見る目ではなく、怪物を見る目だ。

 

「正直、アンタレスより危険かもしれない」

 

「それで?危険だとして、殺すか?」

 

「残念ながら、今の私には殺すことも殺す選択も出来ない。私はオリオンを導く事しか出来ないよ」

 

 アルテミスは構えていた槍を降ろした。そして、疲れているのか、木にもたれかかって座り込んだ。

 

「色々と限界が近いようだな」

 

「私は単なる残穢だからね…。………さて、態々会いに来た理由だが……、実は君に頼みたい事がある」

 

「断る。他を当たれ。神の願いは基本的に聞かないことにしている。例外はフレイヤだけだ…」

 

「フレイヤの恋人なのかい?」

 

「絶対に違う!!あいつの恋人になるわけないだろう!!」

 

 本気で嫌そうにしているシン。言葉だけだとフレイヤの言うことは聞くように思えるが、本質的な意味としてはフレイヤというよりもシルの事を彼は指していた。

 

「そうだろうね。君は神を嫌っている」

 

「分かっているなら、他を当たれ」

 

 シンがその場を去ろうとすると、シンの手をアルテミスは掴み、彼の動きを止める。

シンは鬱陶しそうに、アルテミスの手を振り払う。不愉快そうにアルテミスを睨むと、彼女は真剣な眼差しでシンを見ていた。

 

「…もし、オリオンが私を殺す。その覚悟が出来なかった場合、君が私を殺してくれ」

 

「……ヘルメス曰くオレには殺せないらしい。殺すには神創武器でないといけないとか…」

 

「そう思っていない癖によく言うよ。……ヘルメスは分かっていない。いや、あの時(・・・)に君の記憶と力を観測していなければ、私も分からなかっただろう。君の本当の強さを知っていなければね…」

 

 アルテミスが言葉にした『あの時』というのはシンが槍を引き抜こうとした時のことを指している。

彼女はあの瞬間に何の因果か、シンの記憶を断片的に覗いてしまった。そして、それと同時にシンの力量がどの程度か理解したのだ。それらを総合的に判断して、シンならアンタレスを殺すことは可能だと考えていた。

 

「………もし、君さえ良ければだ。…正直、私はオリオンなら乗り越えると信じている。言い方は悪いが、君は保険だ。だが、理解して欲しい。下界を守るためには私も最善を尽くさないといけない」

 

「元はと言えば、お前たち神のせいだろうがッ!!!…その圧倒的な力でオレのいるべき場所を消したッ!!そして、あいつの野望をッ!!!何もかもあの島(・・・)で無にした!!いや、それ以上の絶望(・・)オレ(・・)に与えた!!!!」

 

 シンはアルテミスに怒りの言葉を吐き出すが、それは本質的にぶつける相手を間違っている。それが分かっているからこそ、シンは一瞬で冷静になった。

同じ神でもそれぞれ違うと頭では分かっているのだから。

 

「悪い、今のは忘れろ。…オレの世界を持ち出してしまった」

 

「ああ。忘れるよ。でも、頼んだよ」

 

 シンは返事をする事も頷くこともなく、野営地へと向かう。その後ろをアルテミスは歩いていく。道中、気絶している赤き飛竜を引きずって戻る事になり、若干不愉快にしているシン。

シンに引きずられている赤き飛竜は少しだけニヤけているのを彼は見落としていた。

 

 

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