冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

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24.モンスターとは 前編

 

 

 18階層【迷宮の楽園(アンダー・リゾート)】。モンスターが出現しない迷宮の安全階層である場所。ここにシンは調査するため、態々休日にやって来ていた。

 

(もう少し早く来るつもりだったが、色々とあったからな。それにしても、ロキ・ファミリアの連中が見つけた入り口は何処だ?地図によると……)

 

「この森の奥か…。少年を助けに向かった時の場所の近くだとは思うが、こんなに広かったか?」

 

 気の所為かもしれないが、シンは18階層が少し広くなったと感じていた。

前に来た時よりも、感覚として…歩く距離が伸びている(・・・・・)

 

「…………誰だ?」

 

 シンが気配のした方向を見た瞬間に、ズサッ!と剣を持ったモンスターに後ろから刺された。しかし、これは態と受けた攻撃に過ぎない。

 シンは最初から分かっていた。態と気配を出している者と気配を徹底的に隠している者がいること。そして、2つの気配の正体がモンスターだということも…。

その陣形からモンスターが何をしようとしていたのかを理解し、態と隙を作り、完璧な形でモンスターを誘い混んだ。

 

「……驚いた。まさか、モンスターがそんな知恵を持っているとは…。まぁ、生き残ったモンスターなら、あり得る話か?どんな生物でも学べば、それは得られるからな…。しかし、冒険者の武器を拾い、尚且つ連携する…。……お前等、オラリオの敵になりそうだな」

 

 モンスターたちが連係するという知恵を持っていた。その事実を確認するための行動を取り、見事その目で見ることが出来たシン。彼は判断する。この者たちは生半可に強い。それが故に地上に被害が多数出る可能性があると…。

 

「正直、オレを攻撃しなければ、お前等は助かった。オレは闇派閥の連中を殺しに来ただけだからな…」

 

 腹を刺されても堂々とまるで効いていないと言わんばかりに、話を続けていくシン。

そんな彼を見て、モンスターたちは驚いている。腹を刺されても平気な人間を見たら、そうなるのも無理はない。

 

「人風情が!!!」

 

「言葉を話すモンスターか…。まぁ、とりあえず…、殺すか」

 

 シンは腹を刺したモンスターの頭を手で掴み、数秒で凍らせる。更に続けて、陽動したモンスターも凍らせた。

 

「後は壊すだけだ…」

 

 シンが凍らせたモンスターを砕こうとした時、リヴィラの街から悲鳴が上がる。

シンはリヴィラの街を見ると、そこでは武装したモンスターがリヴィラの街の住人たちを殺し回っている光景が確認された。

 

「これの仲間か…。…あの強さのモンスター共に襲われれば、リヴィラの街の住人共はほとんど死ぬだろうな…。助ける義理も道理もない…。それよりも…出て来い!」

 

 木の陰から出て来たのは、数ヶ月前に暴れ、ガネーシャ・ファミリアの下に帰らず、ダンジョンに逃げた赤き飛竜だ。

 赤き飛竜は、シンに凍らされたモンスターたちの前に立つ。まるで、庇うような形だ。

 

「グルルルルルルルルルォッ!!!!!!」

 

「その立ち位置はオレの敵と言う事か…。オレの強さをお前は知っている筈だ。本当に殺る気か?…共にアンタレスを殺すために戦った仲だ。今すぐ引くならば、見逃してやる。…退け」

 

 シンの言葉を聞いても、赤き飛竜は退かない。互いが一瞬だけ睨み合うと、彼女は自身の最大の咆哮をシンに放った。

 

「グルルルルルルルルルオォォォォォ!!!!!」

 

「……ッ!」

 

(以前よりも明らかに強くなっている。……強化種)

 

 強化種とは同胞であるモンスターの魔石を喰らい、能力や知恵が特別に強化されたモンスターの事を指す。

 アルテミスの件から今日まで約2ヶ月経っており、その間、赤き飛竜はモンスターを狩っては魔石を喰らい続けていたのだ。

 

(この世界で言う第一級冒険者ぐらいの強さか…。まぁ、それでもオレに勝つ事はない)

 

「いかに強くなったと言っても、その程度だ。……退け」

 

 シンは身体から冷気を放ち、赤き飛竜と一瞬で間合いを詰めて、彼女に触れようとする。

 しかし、彼女はアルテミスの時に見せた力を使う。全身から巨大な炎を放出して、シンにぶつけた。

 

「……『アイスウォール』!!」

 

 シンは即座に巨大な氷の壁を作り、自身を守る。赤き飛竜の出した炎は氷の壁を少し溶かす事には成功したが、シンに届く程ではなかった。

 

「そもそも覇気を使えない奴はオレに勝てない。ったく、一度警告したのに…、それを受けなかったのはお前の判断ミスだ」

 

 シンは周囲に氷の刃を生成して、それらを赤き飛竜に解き放った。当然、赤き飛竜は全身から炎を出して、それらを溶かそうとする。それこそがシンの狙いだ。

 

「とりあえず、気絶しとけ」

 

 ドンッ!!!!とシンは一撃を赤き飛竜に与えた。武装色の覇気を纏ったパンチだ。赤き飛竜は白目をむいて、その場に倒れ込む。

 

「全く…。余計な時間を使わせやがって…。お前は何がしたいんだ?そもそも目的は何だ?…いや、考えても無駄か」

 

 シンはどうでも良さそうに、凍っているモンスターを破壊しようと右手に氷の剣を生成する。

 そして、いざ氷像となったモンスターを破壊しようと、氷の剣を振り下ろそうとした…、その瞬間に、聞いたことのない声がシンに聞こえる。

 

「……シン、あなたこそ私の求めている人だ」

 

「ッ!!!?何だ、この声はッ!?」

 

 突然、聞こえて来た謎の声にシンは驚く。

 

「あなたこそ、私が唯一認める者…。お願いします、彼等を見逃してください」

 

「誰だ?何処から声を…?」

 

「先程、あなた様からご褒美を貰った者です」

 

「ご褒美?そんなもの…」

 

 一体何のことか分からないが、もしかしてと半信半疑ながらもシンは先程気絶させたであろう赤き飛竜を見る。

そこには当たって欲しくなかった予想通りの光景があった。

赤き飛竜が明らかに喜んでいるのだ。

 

「……ご褒美というのは、さっきのパンチか!?」

 

「ええ!!子宮が疼きました!!」

 

「怖ッ!……ん?…ということは、これは……飛竜の声なのか?」

 

「ええ。ようやく、あなたに声を届ける事が出来た」

 

 赤き飛竜の声音はとても落ち着いている。彼女は立ち上がり、シンを見つめた。シンはつい聞き惚れてしまうような感覚を彼女から与えられていたが、その惑わしさを彼は振り払う。

 

「届けてどうする?というか、人の言葉を話せたんだな…」

 

「ええ、目立つ行為をしたくはありませんが、あなたになら知られても良い。……シン、彼等を見逃してください。彼等は暴走しただけです。それも人によって、歪められた感情だ」

 

「感情?モンスターが?」

 

「何ら不思議ではないでしょう。あなたの目の前にいる私も感情を持っている。そもそもモンスターが人と同じ感情を持たないと決めつけている事こそ、人の浅はかさというものです」

 

「なるほど、確かにな。的を得ている意見だ。…だが、正直どうでも良い話だ。人と同等の感情がモンスターに有ろうが無かろうが…。…オレにとって、重要なのは一つだけだ」

 

「それは何ですか?」

 

「…豊穣の女主人(オレの居場所)…。オレはそれが全てだ」

 

 そう言い終えたシンは氷の剣に武装色の覇気を纏うと、彼によって氷像となっているモンスターたちに向かって、刃を振り下ろした。

 

「『天の川(ミルキー・ウェイ)』」

 

 シンの振り下ろした氷の剣からは巨大な斬撃が放出され、モンスターに真っ直ぐ向かって行く。

 

「テンッ!!ルーッ!!」

 

 赤き飛竜はモンスターたちの名前を叫ぶが、叫んだところで意味はない。彼等の運命は決まっていたのだ。シンを襲撃した瞬間から…。

 

「暴走させられたと言っていたが、結局奴らも人だからという理由で全て殺そうとしている。そんな者たちを生かしておく理由が果たしてあるか?何よりも、そいつらはオレに向かって刃を向けた。最早、命の取り合いだ。……オレは誰にでも優しいバカじゃない」

 

「………ならば、私も殺すのですか?」

 

「戦闘の意志が無さそうだからな。今回だけは見逃す。アルテミスの件を考慮してな…。というか、オレは闇派閥の連中を殺しに来ただけだ。モンスターのゴタゴタに付き合うつもりはない」

 

 そう言って、シンは人造迷宮の入り口へと向かうのであった。

そんな彼の後ろを赤き飛竜は付いていく。 

 

「おい!!付いてくるな!!オレは忙しいんだ!!仲間のモンスターのところにでも行ってろ!!」

 

「付いていくのは私の自由です。それと彼等は確かに仲間と言えば仲間ですが、主な目的は違う」

 

「………はぁー、気絶させるか」

 

「それはそれで私としては、嫌ではありません。むしろご褒美ですが、今は私情を抑えます」

 

 出来れば、ずっとそのドMという私情は見せないで欲しいとシンは思うのであった。

 

「……何が目的だ?いや、そもそもお前は何者だ?出会った時から変な奴だとは思っていたが、その強さと知性…。単なるモンスターじゃないな」

 

 赤き飛竜が単なるモンスターではない。その判断したシンだが、彼は赤き飛竜が人の言葉を話しているから、そのように判断したわけではない。

先程、襲ってきたモンスターも人の言葉を話していたが、目の前にいる赤き飛竜は根本的に何かが違うように感じられた。

 

「そうですね…。あなたには話しましょう。私は母から産み落とされた免疫機能です」

 

「免疫機能?というか母とは?」

 

「母は母ですよ。………侵入者を殺す者もいれば、私のように調べる者も生まれるのです」

 

「…調べるだと?」

 

「ええ。…五年前、大規模な破壊が行われた時に私は生まれた」

 

「………五年前か」

 

 五年前という単語を聞いて、シンは一人のエルフを思い出す。そのエルフがいたファミリアは壊滅した時期であり、その詳細を彼女から聞いているシンは関係があると予測する。

 

「……もう一人いたのですが、すぐに死にました。あの子は排除、私は調査。調査が主の私に生まれ持った力はそこまでありません。しかし、あの子と違い、寿命が長い。調査する期間は多くあります。これからもね…」

 

「………どうしてガネーシャ・ファミリアに?」

 

「色々とダンジョンを徘徊して四年過ぎだ頃、ガネーシャ・ファミリアに捕まりましてね。あの時の私の実力では、あそこの団長に勝てない。あの女強過ぎますね。まぁ、幸いにもテイム目的だったので、殺されませんでしたが…。外の世界も見たかったので、そういう意味では良かったものです」

 

「呑気な奴だな…」

 

「ええ。あの時、大人しく捕まって良かったと今では思います。あなたと出会えたのだから」

 

 赤き飛竜は思い出す。初めてシンを見たときの高鳴りを…。

強さを始め、彼こそが全てを成し遂げる存在だと…。

 

「あなたと出会った時から、ここに戻ろうとは思っていました。幸いにもガネーシャ・ファミリアの団長はいませんでしたから、逃げるのは余裕でした」

 

「……オレに何を望む?」

 

「救いを…。……あなたで無ければ、ダメなのです」

 

「……興味ないな。お前と同様に人の言葉を話すモンスターたちもな…」

 

「…彼等の名は異端児(ゼノス)。いずれ、変革をもたらす者たちです。少なくとも私は期待しています。ここに帰って来てからは全ての異端児たちを見定めました。彼等はイレギュラーですから、直接見る必要があった」

 

「異端児ね…。お前とは別なんだよな?」

 

「ええ、本質的的には全くの別物です。羨ましいとは思いますが…」 

 

「………あっそ。……ん?……誰かこの階層に来たな。それもかなりの人数だ」

 

 シンは人の気配がする方向を見る。そこにはガネーシャ・ファミリア団長率いる討伐隊がリヴィラの街へと向かっていた。

 現在、リヴィラの街には殺された冒険者と殺したモンスター、そして、モンスターを怒らせた者たちが数名いるだけだ。

リヴィラの街において、主要な冒険者たちはとっくに地上へと逃げていた。恐らく、彼等からの情報で討伐隊が派遣されたのだろう。

 

「まぁ、そっちは適当に殺し合っていろ。オレは闇派閥に用があるんだ。………………本当に付いてくる気か?」

 

「ええ、そこには異端児たちがいる筈。彼等を救わなければ…」

 

「そいつらと関わったから、強くなったのか?」

 

「いえ、あの女にあなたを取られるわけにはいかないので!!」

 

 赤き飛竜の言うあの女とはリューの事を指す。余程、ボコボコにされたのが悔しかったのだろう。

尚、彼女をボコボコにしたリューもこの階層に来ている。アスフィとアイシャに誘われ、闇派閥を倒すために…。

 

「何か嫌な予感がするんだよな」

 

 シンの予感は当たるのだろうか…。

 

 




後編は明日投稿します!
ここまで見てくださりありがとうございます!!
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