冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

31 / 56

第3章『氷風』始まりました!!
この章は、頑張って出来るだけ毎日投稿していこうと思います。
投稿する時間は今日と同じ19時30分に投稿していくので、見てくだされば幸いです。


第3章 氷風
27.氷獄・疾風


 

 

 人造迷宮。それを攻略しようとフィンは考えている。彼が闇派閥から得た情報によると、【精霊の分身】による破壊作戦開始は少なく見積もっても20日後。つまりは、まだ時間に猶予があるというわけだ。 

 

 しかし、悠長にして良いわけでもない。敵には戦力も地の利もある。それ故に他のファミリアとの協力は必須。ロキやリヴェリアがギルドを介して、協力を募る中、フィンは豊穣の女主人を訪ねていた。その理由はもちろんシンだ。

 フィンには戦力がいる。圧倒的な強さ、それこそ次元の違う力を持つシン。彼を頼るのは当然と言えば当然だ。

フィン自身と個人的ではあるがシンは協力関係を築いている。シンが断る可能性は30%ぐらいだとフィンは考えていた。

 

 だが、豊穣の女主人を訪ねたフィンは予想とは異なる断られ方をされる事となる。

 

「いないッ!?」

 

「ああ。1週間前からね…。全く、あのバカ。どこで何をしているんだろうね」

 

 1週間も店に顔を出していないシンに呆れているミア。彼女はシンから1週間前に少し出掛けると言われた以来、彼と会っていない。少しというのが1週間以上というのは、ミアの拳が握られる要因となっている。

 

「シン、帰って来たら休み無しで働かせるからね!!覚悟しておくんだよ!!!」

 

 ミアから放たれる怒りのオーラにフィンはもちろんの事、豊穣の女主人の店員たちも圧倒されるのであった。彼女はシンが何処にいるのか知らないが、彼が面倒事に巻き込まれているのだと…。

 シンが豊穣の女主人にいないのは、最近では珍しいことでは無い。だが、何処に行ったのかをミアに告げず、1週間以上店を空けるのは少し変なのだ。

 

(あのバカ…一体、何処にいるんだい…)

 

 ミアは嫌な予感がしていた。まるで、良くないことが起きるかもしれない…。いや、既に起きたかもしれないと…。

 

 シンに人造迷宮攻略を頼むどころか、会うことすら叶わなかったフィン。

 

「いつ帰ってくるか、分からないか…」

 

 これは予想外だと頭を悩ませているフィン。シンの変わりになる戦力を見積もることなど出来ない。それはシンの実力を知っている者たちからすれば、当たり前の事実。

 だから、今出来る限りの戦力と作戦で人造迷宮を攻略する。それがフィンのするべき事であり、フィン自身もそれを分かっていた。

 

(…ミアですら、1週間も見かけていない。…シンは何処にいるんだ?まさか、これ以上の面倒事に巻き込まれているのか?…まぁ、彼を心配するより、自分の身を心配する方が賢明か…)

 

 確かに、シンの心配をするよりも、これから先に行われる人造迷宮攻略の方を心配すべきである。

 それから3日後、ロキ・ファミリア主導による人造迷宮(クノッソス)攻略が開始された。その間にもフィンは豊穣の女主人に通い詰めたが、結局シンと会うことは無い。一体、シンは何処にいるのだろうと、フィンは不思議に思うのであった。

 

「…シン」

 

 

 ロキ・ファミリア主導による人造迷宮攻略開始から3日後。

 18階層では殺人事件が起きたと騒ぎになっていた。そして、これもまた運命なのかベル・クラネルもこの階層にいる。

ベル・クラネルたちは遠征の任務をギルドから与えられて、イレギュラーはあったものの遠征を終え、傷を癒すために18階層にいたのだ。

 

「殺人事件…」

 

「ええ、犯人は【疾風】と言われています」

 

「【疾風】って…」

 

 【疾風】とは誰なのか。その正体はリュー・リオン。復讐のために闇派閥をほとんど壊滅させた者。彼女の行為はあまりにも行き過ぎた報復行為だった。彼女は賞金首としてギルドのブラックリストに載り、冒険者の権利も剥奪されている。

【疾風】の正体を知っているベルは動揺していた。まさか、そんな事をするとは思っていないからだ。

 

 今まで、リューに散々助けられて来た恩や、シルや豊穣の女主人たちに良くしてもらった関係もある。

 ベルはリューの無実を調査するために、行動を開始しようとした。そして、そんな彼と共にダンジョンへ来ている遠征仲間たちも彼についていく。

 

「それで、どうするんだ?」

 

「とりあえずは討伐隊に加わりましょう。直接会って、事情を聞くのが一番です」

 

 ベルたちは【疾風】の討伐隊に加わり、ダンジョンを進んでいくが、それは彼等の試練と貸す。

討伐隊の前に現れたのは、殺気を向けている【疾風】だ。

 

「邪魔をするな…」

 

 殺意に満ちたリュー・リオンは、討伐隊と鉢合わせても引く気はない。むしろ、ある者たちを狙ってその討伐隊を襲う。

 

「ジュラッ!!!!お前を殺す!!!!」

 

 ジュラと呼ばれた者こそ、かつてアストレア・ファミリアを壊滅された闇派閥の一人だ。

 リューは人造迷宮攻略のために、アスフィの依頼のもと、ヘルメス・ファミリアと共に参加していた。その時、ジュラを発見したのだ。それから、ずっとジュラを殺すためにリューは追いかけて来た。

 その事を知ったベルたちはジュラに敵意を向ける。

 

「じゃあ、あの人が殺人事件を企てた人!!」

 

「そうだ!!俺はアイツを従えるんだ!!!なぁ、エルフ!!お前も覚えているだろう?アイツの圧倒的強さをッ!!アイツの…ジャガノートのよぉ!!!!」

 

「まさかッ!?」

 

「その通りだ!!へっへっへっ!!ジャガノートを俺のペットにするんだよ!!」

 

「させるわけないだろう!!!!」

 

「全てが遅ぇよ!!!」

 

 ジュラの周りには、彼が従えているモンスターが数匹いる。それは全て深層のモンスターだ。ジュラに深層のモンスターを捕らえる力はないのだが、闇派閥にはその力があった。

 調教師として、モンスターを従えたジュラを倒そうと、リューやベルは交戦していく。

 

「ジャガノートをッ!!もう一度ッ!!!」

 

 狂気に満ちているジュラ。彼は再びジャガノートを顕現させようとする。

 

「させるか!!!」

 

 リューはジャガノートの出現を止めようと、ジュラのダンジョン破壊を妨害しようとする。

しかし、リューたちは知らない。ジュラの仲間が別の場所でダンジョンを破壊しようとしていることなど…知る由もない。

 

「……へへへっ…終わりだッ!!何もかもブッ殺して、ブッ壊す!!あの圧倒的な存在!!俺は欲しい!!あれが欲しい!!独り占めしたい!!必ず手に入れる!!!」

 

 ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!と他方から爆発の音が始まった。それは収まるどころかどんどん激しくなっていく。

爆発が収まった数秒後に、ダンジョンから厄災が生まれる。

 それこそがジャガノートだ。ダンジョンに対し悪意を持って過剰な破壊活動を起こした時、ダンジョンの意思によって生み出される。破壊された組織の修復よりも破壊した者達の排除を優先させたもの。

 

 ジャガノートの咆哮がベルたちのいる場所まで聞こえる。恐らく、この27階層全てに響いたと言っても過言ではない。

 ジュラの仲間たちはジャガノートを出現させるという仕事を完了させた。後は逃げるだけなのだが、破壊をした当人たちが狙われないという事などあるわけもない。

 

「どういう事だよ、ジュラぁぁぁッ!!!」

 

 時間にして僅か1秒。ジュラの仲間たちはジャガノートに瞬殺された。ジャガノートの行動はそれだけで終わらない。それはすぐ近くにいる冒険者たちをターゲットする。その冒険者たちというのは【疾風】の討伐隊だ。 

 討伐隊は敵うわけのない蹂躙の舞台へと強制的に参加させられた。その圧倒的強さを前に逃げるしかない。だが、ジャガノートはそのスピードで最後尾にいる者たちから次々と殺していく。

 

「何だよっ…何なんだよッ!!!」

 

 討伐隊のリーダーであるリヴィラの街の元締めであるボールスは嘆く。冒険者たちが成すすべも無く、次々と死んで行くのだ。無理もない。

 彼等の逃げた先にはベルやリューたちがジュラと彼の調教するモンスターと対峙していた。

 

「逃げろッ!!殺されるぞッ!!!」

 

 ボールスの言葉に全員が反応する。討伐隊の面々は最早ボールスと残り数人だ。それも死に近づいていた。

 ジャガノートはボールスの後ろにいた冒険者たちも次々と殺した。討伐隊はベルたちを除けば、ボールスだけしか残っていない。

 

「ボールスさんッ!!」

 

 ベルはジャガノートの注意を狙われているボールスから逸らすためにジャガノートへ挑む。

それをリューはやめるよう言うが、時すでに遅し。ベルはジャガノートとの戦闘を始めた。

 

「『ファイアボルト』!!!」

 

 ベルはジャガノートに向かって魔法を放つ。しかし、それは悪手だ。何故なら、ジャガノートは魔法を反射するからだ。

 ジャガノートはスケルトン系のモンスターのような外見。その全身の装甲殻は魔法攻撃を容易く跳ね返してしまう魔力反射の能力を持ち合わせている。それ故に魔術師タイプの冒険者だと全く戦いにすらならないという理不尽さ。当然、ベルの魔法も反射されたのだ。

 

「ガハッ!!」

 

 何とか立ち上がるベル。彼は右手でナイフを構え、ジャガノートの突進に対応しようとする。だが、それ自体間違い。この場にいる者がジャガノートに戦いを挑んだところで、負けることは確定している。故に一人でも逃げ延びるというのが最善の選択なのだ。

 

(魔法が効かないのなら、このナイフで…)

 

「えっ…」

 

 ベルは驚く。その理由は予想よりも速く移動したジャガノートではなく、ナイフを持っていた右手を斬り落とされたからだ。

 

「ぐあああああああああぁぁぁぁッ!!!!」

 

 ベルの悲痛な叫びが、この場に響き渡る。そんな彼に無慈悲なジャガノートは、その尻尾でベルを弾き飛ばした。

 

「ベル様ッ!?」

 

「ベルッ!!」

 

「ベル殿ッ!!」

 

「クラネルさんッ!」

 

 リリルカやリューたちが、ベルの心配をする中、ジュラは高揚を抑えられないでいた。

 

「最高だぜ、この怪物ッ!!!!」

 

 ベルたちの絶望とは裏腹にジュラは喜びを全開にしている。彼はその手に持っているモンスターを操る魔道具で、ジャガノートを支配している自身の姿を想像しているのだろう。

 

「オレのペットだ!!!」

 

 ジュラは魔道具をジャガノートに取り付けた。

 

「手始めにこの場の冒険者を皆殺…」

 

 ジュラの言葉が言い終わる前に、ジャガノートはその脚でジュラの全身を細切れにした。

 ジュラは無残にも操る事の出来ないモンスターを操ろうとし、最後には形すら残らないほどの残骸と化したのだ。

 

「グオオオオオオオオオォォッ!!!!」

 

 ジャガノートの咆哮が再び27階層に響き渡る。この場の誰が圧倒的強さを持つジャガノートに敵うというのだろうか…。

現時点でレベルだけを言えば、一番上のベルですら成すすべも無くジャガノートに負けた。最早、この場の戦力では生き残る事すら無理なのだ。

 

 ジャガノートとの戦闘経験があるリューは、過去の恐怖と今の恐怖が混じり合い、震えている。

 

(…もう、終わりだ)

 

 絶望がリューを襲う。彼女の脳裏には、何の因果か一人の男性と初めて出逢った時の言葉が過る。

 

『何だ、その酷い面は?まるで、死人だな。シルのアホが拾ってきたエルフか…。何とも面倒くさそうな奴だな』

 

(ふっ…、確かに私は酷い顔をしていた。だが、初対面でそのような事を言うものではない。全く、失礼極まりない人です。でも、…)

 

『オレを頼れ。必ず助けるからな』

 

(でも、そんなあなたがどうしようもなく愛おしい(・・・・)。私はあなたに救われた)

 

「……シン、────────助けて」

 

 それを聞いた()は動き出す。彼はいかにも不機嫌ですと言わんばかりの表情をしている。

 

「全く、この五月蝿いのは何なんだ?」

 

 彼はジャガノートの真後ろにある道を歩いていた。リューのいる場所にたどり着いた彼はその場の残忍さに目をやると、一瞬で移動して、リューを庇うように彼女の前に立つ。

 

「リュー、何でそんな顔をしているんだ?」

 

「………………シン」

 

「こんなところで会うとは運命か?はたまた単なる偶然か?まぁ、どっちでも良いか。それよりも、アレは敵だよな?お前にそんな顔をさせる奴はオレが排除する」

 

 豊穣の女主人の店員シンはジャガノートを睨むのであった。

 

 

 

 

 




ここまで見てくださった方、ありがとうございます!!
お気に入り、高評価、感想をしてくれた皆様、大変ありがとうございます!!!応援はとてもとても励みになります!!!
面白いと思っていただけたら、高評価やお気に入りをいただけると更に励みになります!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。