ドンッ!! ドンッ!!! ドンッ!!!!
青い飛竜の攻撃はとても強力だ。それも再生してからは威力が倍以上に跳ね上がっている。
だが、青い飛竜が決まった攻撃を仕掛けるたびに、青い飛竜から出る煙は量が増え、色も濃くなっていた。
(やっぱりだ。腕を振り下ろす攻撃、突進、竜巻、それらの攻撃をするたびに煙が増えて、色も濃くなる。あの咆哮をしないのはリスクがあるからだ)
ベルはこの戦いの中でも成長は止まらない。むしろ加速している。戦場での冷静な分析はとても役立つ。
「グルルルルルルルルルォ!!!」
青い飛竜による突進。それをベルは交わす。そして、その間にも彼のチャージは溜まっていく。
「はぁっ…はぁっ…」
「大丈夫かい、ベル・クラネル!!」
「は、はい!!大丈夫です!!アイシャさん、もう少しだけ奴を引き付けましょう」
「ああ!ほら、へばってないで行くよ!!」
「分かってるわよ」
アイシャに言われ、ダフネもまた青い飛竜の引きつけを続ける。ベル、アイシャ、ダフネの縦横無尽の移動に、今の青い飛竜では正確に仕留める事は出来ない。
「グルルルルルルルルルォッ…」
「ふんっ!!かなり限界のようだね!!」
青い飛竜は3人から距離を取ろうと後退した。そして、その瞬間に、自身の最高峰の魔剣を作り終えたヴェルフがベルたちのところへ来たのだ。
「ベル、これが俺の魔剣だ」
ヴェルフの手に持つ魔剣。それはこれまで彼が作ってきた先祖と同じクロッゾの魔剣とは全く違うものだ。名乗るならヴェルフの魔剣と言えるべきもの。
このヴェルフの魔剣の最大の特徴は使い手の魔力に依存することで使用制限がなくなっていることだ。決して自壊することがないという、これまでの魔剣の常識を覆す物。
「『始高・蒼炎』!!!」
それはクロッゾの魔剣以上の威力を見せる。
後退した青い飛竜を一瞬で覆う烈火の蒼炎。青い飛竜はそれをまともに受けてしまい、もがき苦しんでいる。
しかし、本来ならモンスターは消し炭になっているところだ。
青い飛竜はその耐久力と再び使った再生の力で何とか消滅を免れている。
「まだまだ行くぞ!!」
「ヴェルフ、僕もッ!!」
ヴェルフの魔剣に続こうと、チャージを終えたベルも魔法を放とうとする。
その時、青い飛竜は明確な自身の死を連想出来てしまう。それ故に最大火力の咆哮を放とうとする。
「グルルルルルルルルルオォォッ!!!」
自らの身体が崩れていくのも垣間見ず、青い飛竜は今までで一番の咆哮を解き放った。
それを正面からヴェルフとベルは迎え撃つ。
「『始高・蒼炎』!!!」
「『ファイアボルト』!!!」
ヴェルフの魔剣は魔力を使う。この一撃でヴェルフの魔力は尽きるだろう。
そして、ベルの方もそろそろ限界だ。チャージ完了後の最大火力の魔法。これが通じなければ、恐らく何人かは死ぬ。
「「はああああぁぁぁッ!!!!」」
「グルルルルルルルルルオォッ!!!」
互いの渾身の攻撃がぶつかる。引いた方の負け。力負けした方の死。生と死、二つが彼等には選ばされる。
「このまま負けるわけにはいかない!!!!必ず勝つ!!!!」
「グルルルルッ………ッ!?」
それは一瞬の出来事だった。青い飛竜の咆哮は徐々に押されるどころか一瞬でベルとヴェルフの攻撃に負けたのだ。
青い飛竜の上半身は吹き飛び、残った下半身は徐々に煙が濃くなり、崩壊していく。
そして、それは足場が崩れ、
青い飛竜の敗因は主に三つ。一つ目は最初からボロボロだったところだ。シンによる攻撃が思いのほか重かった。
二つ目はあの再生の力を使った事だ。本来なら崩壊する身体を、無理矢理再生させた。その力は強力だが、代償として、徐々に身体が崩れていく。
そして、最後の三つ目はベル・クラネルやヴェルフ・クロッゾ、派閥連合の底力が爆発したところだ。彼等の力は完全に青い飛竜の想定を遥かに越えていた。
「はぁっ…はぁっ…勝っ…た…」
「俺たちの勝ちだッ!!!」
青い飛竜の撃退。これは全員の誇るべき事だ。しかし、まだまだ喜んではいられない。シンとリューが下の階層へと流されたのだ。二人を探さなければならない。
だが、全員の疲労はピークどころか限界を超えていた。今の状態では流石に動けない。
「何とか倒せた…けど、」
一同が一息つく。その時、ダンジョンが揺れた。
これ以上何があるのかと一同は思うが、ここはダンジョン。イレギュラーなど日常だろう。疲労困憊の彼等にもう逃げ場はない。
「グキャアアァァッ!!!!!」
「アンフィス・バエナ…ッ!!?」
現れたのはアンフィス・バエナ。双頭の水竜のモンスターで、下層の階層主だ。魔導士による遠距離戦は殆ど通用せず、討伐には接近戦を余儀なくされる。推定能力はLv.5。
約1カ月ごとに生まれるのだが、今回は完全にイレギュラー。まだ1ヶ月も経っていないのだ。
「はぁっ…はぁっ…、」
「ベル様ッ!!?」
「まだ、やれる…」
疲労困憊なのは目を見るより明らかだ。恐らく、この場の誰よりも疲れは溜まっている。それでもベル・クラネルは立ち上がり、階層主であるアンフィス・バエナを睨む。
「…だな。まだまだだ!」
「全く、イレギュラーばかりだね!!」
「諦めるには早いですね。というか、さっきの飛竜よりはマシな気がします」
「それは言えてる」
全員がアンフィス・バエナを倒そうと奮起した。
そんな時、この27階層に足を運んでいる者たちが現れる。
「それが新しい魔剣か?手前に見せてみろ!!!ヴェル吉!!!」
「椿ッ!?」
「おうともッ!!助けに来てやったぞ!!安心しろ、アンフィス・バエナぐらい手前等で片付ける!!」
「手前等?ほかに誰が?」
「アタシ等だよッ!!」
ドンッ!!と手に持つスコップでアンフィス・バエナを地面に叩きつけたのは、豊穣の女主人の女将であるミア・グランドだ。
そして、彼女の後ろには、豊穣の女主人店員であるアーニャ、クロエ、ルノアがいた。
「ミアさんッ!?どうしてここにッ!?」
「中々帰ってこない奴らを連れ戻しに来ただけさ。道中でボールスから聞いたよ。何でもシンとリューが下の階層に落っこちたらしいね。全く、あのアホ男。何をやってるんだい」
「シンは泳げないのニャ。仕方ないニャ」
「それでも落ちるアイツが悪い!!ったく、坊主ッ!!」
「は、はい!!」
「下がってな。アタシ等でこのデカブツを片付けるからね」
そう言ったミアは勢いよく前に出ると、その拳でアンフィス・バエナを殴り飛ばした。
そして、続け様に連撃を加える。ミアに続く形で椿やアーニャたちもアンフィス・バエナを攻撃した。
「弱いねッ!!」
ベルたちはその光景に圧倒される。前衛をミアが一人で担当し、それ以外の者たちは側方から攻撃していた。
その結果、アンフィス・バエナという下層の階層主をたったの3分で圧倒的かつスピーディーにミアたちは倒したのだ。
「暴れ足りないよ!!」
「「「「「強いッ!!!」」」」」
「坊主ッ!!何があったのか話なッ!!」
ミアに詰め寄られ、ベルは事の詳細を鮮明に伝えた。
「なるほど。かなり苦労したようだね。アンタたち遠征組はとりあえず18階層に戻りな。ボロボロ過ぎる。シンとリューの捜索はアタシ等がするよ」
「でも…」
「うるさいよ!!アタシ等だけで問題ない!!アンタたちはそもそも足でまといだ!!まぁ、その青い飛竜とか言うのを倒しただけ良くやった方さ。ほら、死ぬ前に帰りなッ!!勇気と無謀を履き違えるんじゃないよ!!……アンタたちは良くやったさ」
ミアたちはシンとリューを探しに下の階層へ進んでいく。
ベルたちはミアに言われた通り、18階層へ戻ることとなる。
(ミアさん…)
■
ベルたちが青い飛竜と死闘を行っている頃、リューは辺りのモンスターを無我夢中で倒していた。
シンは今も気を失っている状態で、身体は深刻な低体温症を引き起こしている。そして、リューもまたシン程ではないが、軽く低体温症を起こしていた。
「…ッ…はあぁッ!!!」
後先考える暇もなく、リューはモンスターを蹴散らす。
幸いと言えるべき事があるとすれば、モンスターがあまりいなかった事だ。
モンスターを倒し終えたリューは火を起こし、シンの身体を温め始める。そして、今ある持ち物でどのくらい保つのかを調べた。
「回復薬も少しだけ…。シンの持ち物は…」
リューはシンの腰に巻き付けられている小さなウエストポーチの中身を出した。このウエストポーチは魔道具で、見た目以上に収納出来るというレアものだ。
その中から出て来たのは、僅かな非常食と高そうな酒が数本。そして、
「やはりと言うべきか、シンは回復薬を持っていない。普段、怪我をする事が無いので、当然と言えば当然ですね…。シン、私が必ず助けますから」
シンの濡れている服を脱がせ、彼がこれ以上身体を冷やさないようにした。
当然だが、リューはシンの身体を見る事となる。その時に彼女は目にした。シンの腹に十字の傷がある事に…。
「今は気にしている場合ではない…」
リュー自身も恥ずかしさを捨て、人肌でシンを温める選択肢を取った。
(恥ずかしいなどとは言っていられない。…何よりもシンなら私は問題ない…。むしろ、…)
一瞬だけ邪な考えが過ったリューだが、すぐにその考えを振り払い、シンの身体と自身の身体を温める事に専念する。
そして、それと同時に周囲への警戒をしていく。
(マズイ…。ここが何処なのか分からない…。何処を進めば良いのかすらも分からない。私はどうすれば良いんだ…)
最早どうすれば正解なのかリューには分からない。
(…寝るな、私が眠れば、…)
疲労困憊の状態だ。この一日だけでも、とても大変な経験をしている。睡魔が襲うのも無理はない。
「…ッ!!」
モンスターの気配が濃くなるのを感じた。リューはすぐに戦闘が出来るようにマントを着て、木刀を構える。
奥からはモンスター十数匹がリューとシンを殺そうと、殺意を滲ませながら歩いていた。
「ッ!…動いたものから殺す!!」
リューも負けじと殺気を放ち、モンスターを牽制する。
深層のモンスターは上層や中層に比べ、戦闘の知恵が高い。この数をリューが一人で倒すのは非常に困難だ。
そして、それはすぐに証明される。
リューは何とかモンスターを数匹倒すが、モンスターの数も質も彼女を殺すには十分だ。
「ガハッ!!!」
リューはモンスターの一撃を喰らい、後方に吹き飛ばされる。モンスターたちはリューを殺そうと動く。
その瞬間に、冷気がこの場を支配する。何が起きているのかとモンスターたちは、その冷気が発せられている方向を見た。モンスターの見る先にはシンが立っていた。
彼の目はとてもくだらなそうにしながらも、殺気を含んでいる。
「グルルル…」
「獣か…。言葉が話せないのか…。話せそうなのは、そこの
シンは手を少しだけ上げる。その瞬間にモンスターたちは一瞬で凍らされた。そして、彼はどうでも良さそうに、倒れているリューの元へと歩き出す。
「シンッ!!」
リューは嬉しそうに彼の名を呼ぶが、当の呼ばれた本人は心底不愉快そうにしている。
「シン?その意味を知っていて呼んでいるのか?シンなどと名付ける者など、オレの国には存在しない」
「な、何を…?」
「ふっ…まぁ、オレの国と言っても、まだ王位継承の資格を得ていない単なる王族に過ぎないが…」
「シン、何を言っているのですか…?国とは…?」
「いい加減、シンと呼ぶのを止めろ。とても不愉快だ。オレの名は
ここまで見てくださった方、ありがとうございます!!
お気に入り、高評価、感想をしてくれた皆様、大変ありがとうございます!!!応援はとてもとても励みになります!!!
面白いと思っていただけたら、高評価やお気に入りをいただけると更に励みになります!!