豊穣の女主人別棟の一室では、リュー・リオンが豊穣の女主人の制服を着用して、恥ずかしがっていた。
万が一のために髪を染めているので、【疾風】だと気づくものはいないだろう。これはミアとシルの案である。
「きりきりと働いてもらうよ。高くついた飯代を返して貰うからね」
「……くっ」
食事だけではなく、体の治療までしてもらった。
豊穣の女主人で働かなければいけないというのは納得出来ていないが、恩を返さないまま逃げるなんて事をリューには出来ない。
「リュー、後でアーニャ達にも紹介するけど、最初は私が仕事を教えてあげるね」
「…!!!?」
(私がここで働く事を前提として話が進んでいる…)
「ほら、ものを教えてもらう時はなんて言うんだい?」
逃げ場が無いことを悟り、リューは次の言葉を口にする。
「…よ、よろしくお願いします…」
そうして、リューの従業員としての日々が始まった。
まず始めに彼女が行う仕事はジャガイモの皮むきだ。その時に、同僚たちの紹介が行われた。
「この子がアーニャだよ」
「よろしくニャ!!」
「リュー、これ全部お願いね」
シルに手渡されたボールの中には、ジャガイモが大量に入っている。
リューはとりあえず言われた通りに、皮むきを始めていく。すると、彼女の隣にいたアーニャが、それでは駄目だと、苦言を呈する。
「新人!まともに野菜の皮むきも出来ないのかニャ?包丁の持ち方はこうニャ」
アーニャはリューからナイフを取ろうと、彼女の手にその手を伸ばす。すると、触れられたくないリューは彼女を吹き飛ばすのであった。
「何やってんだい!!このアホンダラァァァ!!!!」
厨房にいたミアがとんでもない剣幕でリュー叱る。それも当然と言えば当然だ。店の中を荒らされたのだから。
「しかし、私の手を…」
「言い訳するんじゃないよ!!」
野菜の皮むきは包丁と食材と同僚の扱いが悪くて失敗、というのがリューの結果であった。
次は買い出しを任されるリューだが、そこでも失敗する。
「食材を買い物する時は可愛くねだると良いよ。そうすれば、安く譲ってもらえるから」
シルのアドバイスもリューには無意味だった。それはおねだりではなく、単なる脅迫となってしまったからだ。得意先の青果店からは出禁を食らい買い出しは失敗に終わる。
「リュー、殺し屋みたいだったよ」
「す、すみません…」
「ミアお母さんに後で怒られようね」
「……うっ…」
「ふふっ…、リューは可愛いなぁ。…ん?…あれは?」
シルの向いている方向には何処か来たかは分からない流れの商人が、仕入れた商品を景気良く売っていた。そこは意外にも盛況で、買い物客がとても多い。
シルは客の多さが気になったのではない。その中に見知った声が聞こえたからだ。
「おい!!その酒をもう少しまけてくれ!!」
「お兄さん、困るよ。これはブルーノ商会のルートでしか手に入らない貴重な酒。100万ヴァリス。これはまけられないよ」
「そこを何とか頼む!!90万ヴァリスでどうだ!?」
必死でまけてくれるよう最前線で懇願しているのは、豊穣の女主人店員のシンだ。
彼は取り引き先へ荷物を取りに行った帰り、偶々珍しい酒を見つけてしまった。誰かに買われてしまう前に、シンは必死で今ある有り金でそれを買う努力をしていた。
「お兄さん、必死過ぎだよ。まぁ、分かった!分かった!90万ヴァリス。これで良いよ。お兄さんの熱意に負けたよ!!」
「よっし!!」
シンは心底喜んで支払いを済ませるのであった。
酒を手に入れて上機嫌な彼は人混みから脱出すると、棒立ちしていたシルとリューを発見する。
「シル、こんなところで何をしている?サボりか?」
「シンと一緒にしないで。リューと買い出しに来たの。まぁ、ちょっと失敗したけど…」
「買い出しで失敗って…。何をしたんだ?」
シンはミアが新しく入った店員に無茶苦茶な買い物を頼むとは思えないので、どんな失敗をしたのか気になり、質問した。
その疑問を投げかけられたリューはとても悔しそうにしていたとか…。
野菜の皮むき、買い出しを失敗したリュー。彼女の次の仕事は接客である。愛想笑いの出来ない彼女は淡々と仕事をこなそうと奮起するが、客にすこぶる無愛想と言われ撃沈した。
「やることなすこと失敗ばかり、思った以上にポンコツだね」
ミアからのストレートな物言いに、リューは再び撃沈する。
かつてアストレア・ファミリアでも失敗ばかりしていた事を思い出し、彼女は落ち込んだ…、というよりも昔のことを思い出して、表情が暗くなる。
再び仕事へ戻るリューの背中を見て、ミアは頭を悩ませるのであった。
リューは店内へ戻ると、2カ所から自身を見つめる気配を感じ取る。それには殺気が含まれておらず、例えるなら何処か脱力したような視線。追っ手の類ではないと判断し、彼女は仕事を続けていく。
■
リューが豊穣の女主人で働き始めてから数日が経過した。今日も今日とて、彼女には豊穣のでの仕事が待ち構えている。
この数日間に、シルはもちろんの事、アーニャという同僚もリューによく絡んでいた。今も彼女の隣で積極的に声をかけている。というよりも、愚痴をこぼしていた。
「まったく、ミア母ちゃんは人使いも猫使いも荒いニャ」
「……」
(確かに人使いが荒いのは同感だ…)
リューもこの数日で、ミアの人使いの荒さは身を持って知らされた。
「相変わらず、リューはシケた顔ニャ。そういうのは辛気臭いって言うニャ。ミャーは知っているのニャ」
その言葉はとてもズケズケと刺さるものだと、リューは思う。それと同時に彼女はアーニャに気を遣われていると思うのであった。
しかし、実際のアーニャは気など遣っていない。思ったことをそのまま口にしただけである。
「辛気臭いのは辛気臭いニャ。ミア母ちゃんはエルフ使いも荒いから悩み事なんて忘れるニャ。メイもシンもかなり明るくなったニャ」
「……シン」
「シンの事が気なるのかニャ?」
「ッ!?気になりませんよッ!あんな失礼な人ッ!」
「失礼?シンは何をやらかしたニャ?…シンは何でも熟すから、分からないことがあったら聞いたら良いニャ。酒を渡せば、かなりお願いを聞いてくれるニャ。……まぁ、シンのことは置いといて、ミャーの言いたい事は、リューも勝手に落ち込んで、勝手に悩んで、勝手に立ち直れば良いって事なのニャ」
根拠のない事を平然と言葉にするアーニャだが、何処かその言葉が少しだけリューの心に響く。
そして、それと同時にリュは思う。今はとても明るいアーニャも昔は今の自分と同じだったのかと…。
「貴方もそうだったのですか…?」
つい口に出してしまった、その言葉。リューの言葉を聞いたアーニャは慌てふためく。彼女もここの店員。訳あり者だと言うことだ。
「ミャーは…ミャーは仕事を思い出したのニャ!!ちょっと、行ってくるニャーーーッ!!!」
アーニャの慌てる姿を見て、リューは申し訳ない事をしたと思うのであった。倉庫から持ってきた野菜がたっぷり入ったカゴを指定された場所に置くと、ミアから声がかかる。
「リュー、次は皿洗いだ。ぶきっちょなエルフでも、それくらいなら出来るだろう?」
「…分かりました」
「皿を割るんじゃないよ」
「……はい」
豊穣の女主人はとても忙しい。皿洗いとて、次から次へと皿が運び込まれてくる。
終わりのないこの作業をしながら、リューはいつまでこの仕事を…、この日々を続けていくのだろうと疑問に思う。
(体力が回復した今、逃げ出そうと思えば、いくらでも逃げ出せる。では、なぜ私はここにいる?義理堅いエルフの性格が邪魔したのか…。いや、違う。……私には帰る家が無いのだ)
「……ッ…、私には…」
(仲間はもういない。ファミリアの主神アストレア様は私がこの都市から逃がした。復讐という黒い炎に焼かれて汚れてしまった醜い自分から遠ざけたくて…。そんな理由で突き放した私が、どうしてアストレア様を求めて再び一緒に暮らせるだろうか…)
「……私にはないんだ」
(今の私は全てを失った空虚感を誤魔化すため、この酒場を利用している。慣れない仕事と忙しい労働の日々が虚しさを一時でも忘れさせてくれる。止むをえないと言い訳し、無為な毎日に寄りかかっている)
「……最悪だ」
(…結局私は目標を見つけられず、未来の事も考えられず、失った過去を引きずり続けているだけ…。全てはただの現実逃避なのかもしれない。そして、もう一つ…)
「リュー?手伝おうか?」
リューの隣に現れたのはシル・フローヴァだ。
リューが安易にここを離れられないのは、シルという存在がいるからである。離れる踏ん切りがつかないでいた。
「…結構です。私にかまけていないで、自分の仕事を…」
「私の仕事はひとまず終わったから…。それに店内は女性客が増えて、シンが配膳をやっているの」
「それはどうして?」
「シン目当てのお客さんも多いの。シンはかなりモテるから。でも、シンがたくさんの女性客の相手をしているのは珍しいかな?いつもは軽くあしらう程度なのに…。まぁ、そのおかげもあって、私の手が空いたのはラッキーかな。こうしてリューの手伝いが出来るから」
「シンという男はとても不埒な男だ…」
シルから今のシンの話を聞いて、嫌悪感を出すリュー。
一人の男性が複数の異性に手を出すなど、彼女からすれば不快極まりないものなのだろう。
現時点でのリューが下すシンの評価はあまりよろしくない。会って数回しか話していないが、ここまで評価を落としているとは、シンも知らないことだろう。
「それはどうかな?もしかしたら、誰かの為に色々しているのかもしれないよ?」
「イヤらしい男だ」
「色々って、そう言うことじゃないよッ!?大体、シンが誰かを抱くなんてあり得ないから!!」
「だ、抱くッ!?不埒だッ!!!」
「リューが言い出したみたいなものだよッ!?もう、真面目な話をしようと思ったのに、シンのせいで変な感じになっちゃった」
明らかにオレのせいでは無いだろうと、シンがこの会話を聞けば、そのような発言をするだろう。
だが、あいにく今の彼は女性客の相手をしている最中だ。この会話を聞くことはない。
「真面目な話とは?」
「リューのこと。…仕事はもう慣れた?」
「…ほんの少しは。まだ失敗ばかりですが…。貴方のように要領が良くないので…」
「ふふっ、そんな事ないよ。私も失敗ばかりしていたから。それこそ、リューよりも酷かったもん」
「…貴方が?」
シルはとても要領が良く、客からの評判も良い。この酒場の看板娘にふさわしい働きをしていると言える。
そんな彼女が失敗ばかりしていたとは、リューにはにわかに信じがたいのだ。
「うん。私が働き始めた時は失敗続きで、ミアお母さんに怒られてばかりだった」
「とても信じられない」
「そうだよ。今でも料理は苦手なんだ。家に帰ったら寝台に飛び込んで、もぅ〜〜〜〜って悶えたんだ」
そんなシルの姿が想像出来たのか、リューの口元は緩み、軽く笑っていた。
それを見たシルは安心する。
「ふふっ…、やっと笑ってくれた。リュー、あれから全然笑ってくれなかったから。…リュー、何だか悩んでいるみたいだったから…」
「……私は…、貴方が分からない」
「え?」
「何故、そこまで世話をやこうとする?」
(仕事の手伝いもそうだが、…もとを辿れば、この酒場で働けるよう融通を利かせて、帰る家もない私に雨宿りの場所を与えてくれた)
シルはリューが倒れていたあの日から、ずっと彼女を助けていた。シルが何を考えているのか、リューには分からない。
「リュー、ちょっと付いて来て?」
リューはシルに付いていく形で、酒場の外へと行く。
シルの向かった先は、都市の第7区画に多く存在する無人の建物の一つだ。階段を登り、屋上へと歩いていく。
「うん!今日も凄く良い天気!!」
「店を出てきて、いいのですか?こんな事をすれば、あのドワーフの店主にどやされるのでは?」
「いつも頑張ってるから、ちょっとくらいなら大丈夫だよ。それに今はシンが店にいるから、私たちが抜けても何とかなっていると思うわ」
「そうなのですか?」
「シンはとても頼りになるから。ふふっ…、リューもいつか分かると思うわ」
まるで捉えどころのない風のような少女。それがシルに対するリューの評価だ。
「それで、どうして私をここに?」
「ここは私のお気に入りの場所なの。リューにも知って欲しくて」
シルの言う通り、確かに見晴らしの良い場所だと、リューは思う。
「これ以上高くても低くてもダメなの。街にいる人たちの息遣いが感じられて、オラリオを何処までも見渡せる。…たった一つの大切な場所なの」
「………ッ!?」
(アリーゼも高いところが好きだった。屋根に登って、将来の事をよく語り合ったものだ…。でも、そんな彼女はもう隣にいない。シルの瞳に映る空がどんなに美しくても私には…、こんなにも色褪せて見える…)
とても綺麗には見えない。悲しいとは思わないが、何処までもそれはリューにとって、とても虚しい事だった。
「ねぇ、リュー。ここにいるとよく分かるの。今、街がどんなことを思っているのか」
「街の思いが分かる?」
「うん!顔を上げて歩いていく人の顔とか、大通りを元気よく駆けていく馬車とか、冒険者様達の喧嘩や子供達の笑い声を聞いたりして、…けど、何年も前からオラリオは、ずっと悲しんだり、怖がってたりしていた」
それが指すのは、闇派閥を始めとした悪の台頭が都市に混乱と恐怖を招いたもの。オラリオの暗黒期と呼ばれていた。
冒険者以外にも多くの一般市民が犠牲となり、オラリオの住人は日々その恐怖と向き合っていたのだ。
「でもね、今は違うの。街が少しずつ笑顔になった。人々が笑うようになったの。それはリューたちのおかげだよ。たくさんのファミリアが戦って、傷ついて、それでも頑張ってこの街を守ってくれた。街はリューたちのおかげで平和になったよ」
「………ッ」
(…違う)
「だから頑張ってくれたリューも幸せを見つけなきゃ。一番頑張ってくれたリューが幸せになれないなんて…、私は嫌だな」
「違うッ!!」
あまりにも美化し過ぎているシルの言葉に、リューは我慢出来ずに言葉を荒げる。アレは正義なのではない、単なる憎悪に支配された醜い行いだと…。
責められるこそあれど、褒めるられる事では決してないと…。
「仲間を殺された私は復讐という醜いものを宿した!!疑わしきを片っ端から殺した!!オラリオの至るところに被害を出した悪人だ!!」
「それでも、酒場に来た冒険者様が、神様が、おっしゃっていた。オラリオはまた生まれ変わると…。リューにはこの光景を見て欲しいの。例えば、あそことか…」
リューはシルの指さす方向を見ると、そこでは楽しげに遊ぶ子供達やのどかに過ごしている住民達の姿が見られる。
治安が悪かった時代では、絶対にあり得ない光景だ。
「…知らなかった」
(私は仲間を失って、何も残っていないと思っていた。でも、目の前で広がるこの光景は…、知己たちの残していった正義の成果…ッ!私達が成し得た、友の命の代償)
「皆の代わりに私が言うねリュー。私たちのために戦ってくれてありがとう」
その言葉を聞いて、リューは涙を流す。
シルの言葉が何よりも嬉しかったからだ。
「ほら、今はみんな笑っていられるよ」
「……あ」
(アリーゼ、皆、…私は貴方たちの代わりに見届けます。アリーゼ達の残していったものを、彼女達の分まで…。…空が青く見える)
「リューの瞳、凄く綺麗になったよ」
「それはきっと貴方のおかげです」
「本当!嬉しい!私はリューみたいな人が誰かのために美しく在れる人が好きだから」
シルの言葉を聞いて、リューは唖然とする。彼女は何処まで目の前の少女は美しいのだろうと思う。
「リューはこれからどうする?やりたいことが見つかったなら、無理にお店にいなくてもいいんだよ?私がミアお母さんに話しておくから」
「私は……、貴方に恩を返したい」
「そんな事で良いの?」
「ええ。貴方がいなければ、私は仲間たちに叱られるところだったのですから」
(シルはアリーゼたちが残していったものを、私の目指したい未来を気付かせてくれた人だから)
「それじゃあ、これからもお店で一緒に働いてくれると嬉しいなぁ」
「分かりました。もとより行く場所もありません。しばらく厄介になります」
「うん!!これからよろしくねリュー!!…じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
「ええ」
シルとリューが豊穣の女主人に帰ると、店の入口ではミアとシン以外の店員たちが二人を待っていた。
何故いるのかとリューが尋ねると、アーニャたちは一緒にサボるためだと誤魔化していたが、彼女たちもまたリューを心配して待っていたのだ。
「マシな顔になったニャ」
「ええ。辛気臭い顔をするのは止めにしました」
そんなリューを見て、アーニャは改めて彼女と握手しようとするが、やはりと言うべきかリューに触れるかというところで、腕を弾かれるのであった。
「何でニャ!!!?」
「すみません」
「謝るぐらいなら触らせろニャッ!!!」
アーニャは何が何でもリューに触ろうとするが、リューはそれを避けるか弾くかしていた。
アーニャは少し疲れて、息切れしている。止まっている彼女を見て、シルがリューに抱きつくのであった。
「私はリューに触れるもんねー」
「シル、その…離してください」
「ダメ?」
「ダメでは無いですが…」
「シルだけズルいニャ!!!」
アーニャは何度も何度も挑戦するが、全て無力化されるのであった。そんな2人の掛け合いを同僚たちは微笑ましそうに眺めている。
だが、数分も経てば、彼女たちの親代わりでもある
「馬鹿娘共ッ!!揃いも揃っていつまでさぼってるんだい!!シンとアタシでこのクソ忙しい店内をきり盛りさせる気かい!!早く仕事に戻りなッ!!」
「「「「戻りますッ!!!!」」」」
ミアの迫力ある言葉に、全員が店内へと戻っていく。
その中にいるシルの後ろ姿を、リューはアリーゼと一瞬だけ重ねた。だが、すぐにそれを振り払う。
(違う。彼女達はアリーゼ達の代わりになんてならない。そんな事を考えるのは、シル達に対する冒涜だ。仲間を失った、この痛みと喪失感が癒えることはない。過去を振り返る事があっても、未来を向かなくては…。シルに感謝を)
笑顔でシルたちのいる方へと歩いていくリュー。彼女が通る先にはシンが不思議な目で彼女を見つめていた。そして、次の瞬間、彼は言葉を出す。
「未来を向く気になったのは上々だ。シルの奴が励ました結果、お前の顔も幾分かマシになった。…まぁ、せいぜい足掻いて生きろ。────1つだけ忠告しておく。当分はこの店で大人しく仕事をしていろ。その方が面倒事は起きない」
「………貴方は何者だ?」
頭に浮かんだ数ある質問の中で、リューはその質問を言葉に出した。それが正解なのかは分からないが、彼女は正しいとは思っていた。
「何者か?……そうだな。強いて言うならば、元海賊だ。【疾風】リュー・リオン、忠告はしたからな」
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