冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

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36.氷風No.3

 

 リュー・リオンの表情が少しだけ明るくなった。それは同僚たちの目から見れば、分かることだ。

 何処か作られていた壁のようなものも少しは取り除かれ、彼女は同僚たちと楽しそうに話している。

 

 そんな中、シンだけはリューに話しかける事はあまりない。というよりも、この前の言葉以来、彼はリューと言葉を交わしていない。

 理由は不明だが、リュー自身、シンに避けられているような気がしてならない。そんな折、シルがリューに話しかける。

 

「リュー、シンを見なかった?」

 

「いえ、見ていませんが…」

 

「もしかして、またサボりかな?この1週間、ほとんど毎日抜け出しているの…。しかも、今日は昨日と同じで天気が雨なのに朝から抜け出すなんて、一体何をしているのかしら?」

 

「雨の日はサボらないのですか?」

 

「普段はね。濡れたくないって言っていたから。その証拠に昨日は雨が止んでから出かけていたもの」

 

 雨の日に仕事以外で店を出ることはあまりないシン。そんな彼が今日は珍しく店の外へ出ている。

これは果たしてサボりなのか、それとも何かの用事なのか?

 

「シンのことは放っておきな。どうせ、酒にでも釣られて、フラフラと出歩いているんだろう」

 

 厨房から顔を出したミアは、やれやれと呆れている。彼女は珍しく怒っているふうには見えない。

 

「シンの話なんてするだけ無駄さ。シル、アンタは野菜の皮むきをしな。そして、リュー!!」

 

「は、はい!」

 

「アンタは雨で寝込んでいるアーニャの看病でもしてきな。全く。雨の中、ずぶ濡れで遊ぶなんてバカだよ。体調管理も出来ないのかい」

 

 昨日、雨がめちゃくちゃ降っているにも関わらず、外でずぶ濡れになりながら遊んでいたアーニャは案の定、熱を出して現在進行形でダウンしている。

 ミアはそんなアーニャを叱って、今日一日安静にするよう言いつけたのだ。

 

 コンッコンッ!!

 

「アーニャ、入りますよ」

 

「ゴホッ…ゴホッ…リュー、どうしたのニャ?」

 

「看病です。さぁ、服を脱いでください」

 

「ということは、リューから触ってくれるのかニャ!!」

 

 期待を膨らませて言葉にするアーニャだが、そんな期待はすぐに裏切られる。何故なら、リューは手袋をして完全防備しているからだ。

 

「どんだけ触られたくないニャ」

 

「これは、染み付いた慣習がどうしても反応してしまうので…。この間の事もすみませんでした」

 

「気にしてないし、もう慣れたニャ」

 

「……ああして、自分の帰りを待っている人がいるとは嬉しいものですね」

 

 アーニャの身体を拭き終えたリューは先日のお詫びも兼ねて、ミアから聞いたアーニャの大好物を自身で料理したものを取り出した。

 アーニャはお腹が減っていたので、ちょうどいいと思う。リューの持ってきた箱を開けるとその中身はとても酷いものだった。

 

「これは…何ニャ?」

 

「少し焦がしてしまいましたが、よければどうぞ?」

 

 リューが不器用な事を改めて分からされたアーニャ。彼女はこんなものは食えないと叫ぶのであった。

 

「ミア母ちゃんかシン、メイの料理が良いニャ!!これは不器用の域を超えているニャ!!!」

 

「アーニャ、好き嫌いはいけない」

 

「そう言う問題じゃないニャ!!!」

 

 結局、アーニャはご飯を食べずにそのまま眠るのであった。

部屋を追い出されたリューは自身の不甲斐なさに落ち込む。

 厨房にいるミアの元へ向かっている途中で、いつの間にか豊穣の女主人に帰って来たシンとすれ違う。

 

「……ッ!?」

 

(これは、血の臭い…)

 

 シンとすれ違った瞬間、彼から血の臭いがした事に、リューは気付いた。しかも、一人二人では無いと直感する。

 

「シンッ!何だい、その臭いは!!早く風呂に入りな!!ちゃんと湯船に浸かるんだよ!!」

 

「シャワーだけじゃダメか?」

 

「ダメに決まっているだろう」

 

「ヘイヘイ。全く、溺れたらどうするんだ」

 

 血の臭いがしていた事にミアは怒ることはあっても、問い詰めることはしない。それはシンが何をしていたのかを知っているかのような反応だ。

 リューは豊穣の女主人でシン以外の同僚たちとは比較的上手く過ごしていた。アーニャとも信頼関係を気づけている。だが、シンだけは全く関係値というものがない。

 

「店主、シンはどのような人物なのですか?」

 

「そんな事は本人にでも聞くんだね。アタシは忙しいんだ。客は今日もたくさん来てる。アンタも溜まっている皿でも洗って貢献しな!!」

 

「は、はい!」

 

 シンという人物がどのような人間なのか、リューは知ることが出来ないでいた。まだまだ信用も信頼もない関係だが、シルやミア、同僚たちはシンを信頼しているように見える。

 

「彼は一体何者なんでしょうか…」

 

 シンという同僚の底が見えない。リューは彼のことを次の日までも考えていた。

 そんな時、リューは誰かに視られているのを感じ取る。姿は見えないが、確実にいると断言出来る。

 豊穣の女主人の仕事を始めた時から視線は感じていたが、今のように殺意を丸出しになどしていなかった。これは状況が変わったのだと推測出来る。

 

 このままでは豊穣の女主人に迷惑がかかると思ったリューは、ミアのいる部屋へと足を運ぶ。そして、ミアに店を辞めることを伝えようとしていた。

 いざ部屋のドアをノックしようとしたその時、中から声が聞こえてくる。

 

「残りは2つだってね?」

 

「ああ、残りは2つだ。これでも早く潰したんだが、…恐らく面倒なのがそこに残っているな」 

 

「何でそっちを先にやらなかったんだい?」

 

「それは結果論だ。偶々面倒なのが残っただけだ。大体、かなり早く事を進めたんだ。本来ならもっと時間はかかっていたんだが、…まぁ、色々あったおかげでここまで早く事が進んだ」

 

 そこから先、話が聞こえてくることは無かった。話が終わったと思い、リューは部屋のドアをノックする。

 

 コンッコンッ!!

 

「失礼します。すいません、話が……、シル?」

 

「おはようリュー、どうしたの?」

 

 ミアのいる部屋には、先ほどの話し声からして、ミアとシンがいるのをリューは分かっていたが、まさか二人の他にシルがいるとは思っていなかった。何よりもシルは住み込みではない。それなのに、こんな朝早くからミアの部屋にいるとは思わなかったのだ。

 

「ミアに話があるようだな。オレは朝の買い出しに行ってくるよ」

 

「ああ。頼んだよ」

 

 シンが部屋を出た後、ミアは口から言葉を出す。

 

「どうしたんだい、こんな朝っぱらから…。まさか、雇って貰ったばかりで悪いが辞めさせてくれ、なんて言うんじゃないだろうね?」

 

「ッ!?」

 

「まったく…【疾風(アンタ)】を嗅ぎ回っている連中がコソコソし始めたからって、動じてるんじゃないよ」

 

 ミアもまたリュー同様に、彼女を視ていた者たちの存在に気づいていた。ミアの強さを考えれば、分かるのは当然だが、その正体を知らない者たちからすれば、予想外の存在なのだろう。

 

「私がここにいれば…、貴方達に迷惑が…」

 

「迷惑なんてアンタが運び込まれてる時からずっと被ってるんだよ、バカタレ」

 

「ぐっ!!」

 

「勝手にいなくなるなんて許さないよ。アンタを雇ったのはこのアタシさ。そしてこの店も店員も全部アタシのもんなんだからさ」

 

 凄いことを堂々と言うミアに、リューは圧倒される。

しかし、彼女は悩む。迷惑をかけたくないと…。

 

「リュー、せっかく一緒に働けるようになったのに、お別れなんて寂しいよ」

 

「……シル」

 

「大丈夫だよ!ミアお母さんもそうだけど、アーニャたちはとても強いから。何よりもシンは強過ぎる(・・・・)から。何処かに行くよりも、ここにいた方が安全だよ」

 

 リューはミアやアーニャたちが強いのは何となく分かっていた。それこそ並のファミリアよりも強いことを…。

 

「だが、それでも…」

 

「うじうじ言ってんじゃないよ。こんな時が来るなんて、最初から分かっていたことだろう。アタシ等に迷惑かけず上手いことやって、落とし前をつけたら良いのさ」

 

 相変わらずの無茶苦茶な言葉。だが、リューにとって、彼女たちの言葉は、まるで自身をファミリアの一員のように、扱っているようで嬉しかった。 

 だからこそ、彼女は腹を括る。

 

「私が蒔いた種だ。何とかしてみます」

 

「…好きにしな。さてと、アタシとシン、シルは今日の夜、用事がある。アタシたちがいなきゃ店は回らないだろうから夜の方は閉めるよ」

 

「用事ですか?」

 

 その用事が一体何なのか、リューは気になる。

 

「私は新しく雇ったアンタのことを説明しなきゃいけないのさ。この馬鹿娘に過保護な連中にね…。シンはシンで、やる事があるから夜は休む」

 

「それはどういう?そもそもシンのやる事とは?」

 

「これ以上の説明はしないよ。まったく、アンタよりこの馬鹿娘の方がよっぽど面倒だ。…はああぁぁー、放り出してやろうかね」

 

「ミアお母さん、私何もしてませんよ?」

 

 とても可愛らしく話すシルだが、それはミアには通じない。

ミアは面倒くさそうに、シルを振り払う。

 

「まぁ、そういうわけだから留守は頼んだよ。他の連中にも伝えといてくれ」

 

「分かりました」

 

 理由のわからない状況だが、リューはこれ以上聞かない事にした。彼女は部屋を出ようと、回り右した時、ミアから注意事項を言い渡される。

 

「ちなみにさっきの話じゃないが、店のものを壊すんじゃないよ。アタシが帰って来た後、もしも店に何かあったら、タダじゃおかないからね」

 

「…ッ、お、覚えておきます」

 

 あまりのミアの眼力に圧され、言い淀むリューであった。

 

 

 その日の夜、臨時休業ということもあり、従業員一同はとても喜んでいる。ミアとシルは用事があるので、アーニャやリューたちに店を任せて出かけた。

 豊穣の女主人に残されたアーニャたち従業員一同は自由だ!自由だ!とワイワイ羽目を外していく。

 

「これは…、怒られますね…」

 

 その惨状を見て、リューは確定で怒られることを悟る。

アーニャたちは店の酒や食材を勝手に使い、離れの食堂でパーティーを行っている。間違いなく、ミアの怒りが爆発するだろうと分かる状況だ。

 そして、その後、リュー以外の全員が酔いつぶれて、その場で眠るのであった。

 

(仕方ありませんね…)

 

 リューは眠っているアーニャたちにタオルをかけ終えると、自身もそろそろ眠ろうと自室へ歩いていく。自室のベッドで横になり、眠ろうとする。

 今日は珍しく、ぐっすりと眠れるとリューは思う。そして、そう思った瞬間にこれはダメだと危機感が彼女の中から込み上げて来た。その感覚はとても正しい。

 

「はあっ…はぁっ…!!!」

 

(この香りは眠りの香ッ!?)

 

 眠りの香は吸った者を眠りに誘う魔道具だ。通常であれば、一度眠ればよっぽどの事がない限り、眠りから覚醒することはない。

 リューは耐異常のアビリティを習得しているので、何とか眠りから覚醒したが、それでも眠りに落とされそうになった。恐らくかなりの調合と素材を使ったのだと、彼女は悟った。

 

(まさか、曲者揃いの酒場を襲撃するとは…。酒場の皆は恐らく、起きてこない。人質にされる前に動かねば…)

 

 短刀を2本持ち出し、部屋から出ようと、リューはドアノブに手をかける。その瞬間、扉の先にある廊下。そこに殺気を交えた気配があるのを彼女は感じ取った。

 

(…この先にいる)

 

 リューはゆっくりと廊下に足を踏み入れた。しかし、辺りには気配はするものの誰もいない。

 そっと静かに歩き出そうとするリュー。そんな彼女に襲いかかる刃が現れる。

 

「ッ!!?」

 

 ドンッ!!と床にめり込む力。それをリューは何とか避けた。

彼女は敵を見定めようと前を向く。その彼女の目の前には、フードを被った一人の猫人の少女が立っていた。

 

「あーあ、眠っていれば楽に終わったのに」

 

 そう言った猫人の少女の手元には暗剣が見える。そして、それを見た瞬間にリューは敵の正体の予測がついた。

 

「お前は【黒猫】?」

 

 【黒猫】とは依頼達成率ほぼ100%を誇る凄腕の殺し屋だ。裏の世界ではかなり知られている存在。

彼女の本名はクロエ・ロロ。成り生き上、神ニョルズから恩恵を得ている。

 

「これで暗殺は失敗。ここからは力ずく」

 

 クロエは煙玉を投げ、目くらましを行う。そして、幻影の魔法を使い、リューを殺そうと動き出す。

 

「本物はこっちだ!!」

 

「流石はLv.4…。でも、これで終わり」

 

「それは、どういう…、これはッ!!?」

 

 リューは先ほど微かに斬られた腕を見る。傷こそ切傷程度だが、じくじくと不自然な熱を発していた。

 

「たくさんの毒を吸わせてきた。今日、吸わせたのは毒妖蛆の毒液。知ってると思うけど、これは耐異常のアビリティを貫通し、少量でも死に至らせる劇毒。特効薬も持ってないでしょう。まぁ、持っていても使わせないけど」

 

 眠りの香、煙、毒、幻影。どれも暗殺にはもってこいのものばかりだ。オラリオきっての暗殺者【黒猫】の強さを、リューは目の当たりにした。

 最早、幻影と本物の区別は今のリューには出来ない。撤退する選択肢を彼女は取る。

 

「雇い主は誰だ?」

 

「言うと思う?」

 

 煙が立ち込めていく。クロエの姿が確認出来ない。

直感で何処にいるのか当てようとするリューだが、その時に窓ガラスを割って入る者が現れる。

その者は窓ガラスどころか、窓周りも破壊したのだ。

 

 リューはその隙を突いて、外へと脱出する。

 

(離れが…、店主にどやされる。いや、今はそれどころではない。…あの攻撃は魔法ではない。素手であれを!?)

 

「流石に簡単にはいかないか…」

 

 一見華奢な雰囲気の女性だが、その身のこなしから只者ではないと、リューは察する。

 それもそのはず。彼女の名はルノア・ファウスト。

依頼達成率ほぼ100%と噂された【黒拳】という異名で知られる賞金稼ぎだ。

 

「何するニャ!!…ん?というか、【黒拳】!?」

 

「ということは、【黒猫】ね…。まさか標的重複するとはね。獲物が被った場合は早い者勝ち。それがうちらのルール。どっちが仕留めても恨みっこなしね」

 

 こうして、ルノアも戦いに参戦した。この不利な状況での三つ巴。リューは凌ぎきれる自信が無かった。

 

 ルノアはクロエと違い、その戦い方に小細工はほとんどない。真っ向勝負での肉弾戦。その一撃一撃がとても重い。

 毒を喰らっているリューは、ルノアの攻撃を防ぐことで精一杯だ。まだ、クロエもいる。どう立ち回っても負けは見えていた。

 

(どういうことだ?黒猫は攻撃して来ない?様子見しているのか?)

 

 ルノアはリューを攻撃しているが、クロエは攻撃して来ない。リューは様子見しているのだと思っているが、実際は眠りから目覚めたアーニャと戦闘を行っていた。

 そして、その事実はすぐに分かる事となる。

ドンッ!!と屋根からクロエとアーニャが落ちて来たのだ。

 

「アーニャッ!?」

 

「リュー、すぐに助けるニャ!!」

 

「させるわけないニャ!!」

 

「何処向いているのよ【疾風】!!」

 

 最早、三つ巴ではない。アーニャが加わった事により四つ巴の戦いと化していた。

 

(最早、手段を選んでいる場合ではない)

 

「『今は遠き森の空。無窮の夜天に鏤む無限の星々。愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の旅人。空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ…、星屑の光を宿し敵を討て』」

 

「並行詠唱ッ!!?」

 

「『ルミノス・ウィンド』!!」

 

 自爆覚悟の大技。ルノアはもちろんの事、クロエやアーニャ、そして、魔法を放ったリューまでもが吹き飛んだ。

 しかし、それで倒れる者たちでもない。第2ラウンド開始しようかと各々が武器を構えた。

いざ、戦闘再開と思われたその瞬間、男の笑い声が響き渡る。

 

「はははっ!!!いい塩梅に互いを潰し合っているな!!」

 

 リューたちが声のした方向を振り向くと、そこにはクロエとルノア、それぞれに仕事を依頼した者たちが、大勢の部下を引き連れていた。

 

「ブルーノ商会…」

 

「あっちはミャーの依頼人」

 

「「なるほど、つまりは【疾風】だけじゃなくて、私達も…」」

 

「そのとおりだ!!!」

 

 【黒拳】と【黒猫】、そして、【疾風】を討ち取るために、画策したのがブルーノ商会を筆頭に横の繋がりのある商会たち。

彼等は闇派閥と繋がっており、その事実を知っている者たちを一斉に始末しようと今回の事に及んだ。

 

「これより街は生まれ変わる!新たなオラリオの秩序を作るのは我々商会だ!!お前たちは邪魔なのだよ!!」

 

「お前たち、奴らを殺せ!!」

 

 商会側の者たちは、リューたちを殺そうとするが、リューたちは全く意に介さず、それらを全て倒していく。

いくら疲弊していても、戦闘経験値や元来のレベル差があるのだ。商会側は数だけしかないので、負けるのは確定事項だ。

 

「クソッ!!何で俺たちは負けるッ!!?」

 

「もう、黙っていろ!!」

 

 ルノアのパンチを受けたブルーノ商会のリーダーは気絶する。これで黒幕は片付けられ、この件の大半が終わったかのように見える。

 だが、実際の現実はもう少し複雑だ。

 

「いや~、商会ってやっぱり数だけだね」

 

「それは同意見。だが、瀕死の者たちを殺せないか?」

 

「まぁ、全員Lv.4だから仕方ないよ」

 

「それは言えているわね」

 

 その声は屋根の上から聞こえた。リューたちがその方向を見ると、ヒューマンの女性4人がいるのが確認出来る。

そして、理解した。その者たちはとても強いと言うことに…。

 

「……貴方たちは何者だ?商会の仲間か?」

 

「惜しい。私たちは闇派閥の残党。アレクト・ファミリア。それを聞けば、嫌でも分かるだろう【疾風】?」

 

「ッ!?」

 

 アレクト・ファミリアとは、不止を司る闇派閥の武闘派。900年以上前から存在していた派閥で、アパテー・ファミリアと並んで当時の闇派閥で最恐派閥だった。

 だが、2年前の大抗争終盤でフィン率いるロキ・ファミリアの手により壊滅した筈だった。

 

「2年前、私たちの団長、副団長はフレイヤのところに殺られた。正直悲しくもないが、闇派閥が失われたのは不愉快極まりない」

 

「しかも、直近では【疾風】の暴走により、闇派閥の大半が殺されたしね。雑兵でもいないよりはマシなのに…」

 

「私たちとしても、被害は被ったわけだ。もう、闇派閥というのは壊滅したも同然。ここまで殺られたのだ。【疾風】には責任を取らせないといけない。資金源であるブルーノ商会…、それの動向を知っていた身としては、このチャンスを活かさないわけもあるまい」

 

「案の定、失敗はしたけど、【疾風】はかなり弱っている。あの化け物ドワーフもいない。今こそ絶好のチャンスだわ!!」

 

「ごめんなさいね。私たち、姉妹としては見過ごせないの。【疾風】という愚か者をね!!…それに、この1週間、何者かが闇派閥の隠し拠点を次々と潰している。そちらの方も片付けないといけないから、ブルーノ商会を急かしたのよ」

 

「姉妹…ッ!?貴方たちは【破滅の四姉妹(ルーイン・シスターズ)】ッ!!?」

 

 【破滅の四姉妹(ルーイン・シスターズ)】。それはアレクト・ファミリアの幹部たちだ。その名の通り、血のつながった四姉妹であり、2年前の時点で全員がLv.4だった。

 フレイヤ・ファミリアのガリバー兄弟と同じくらいの連携攻撃を可能としている者たちであり、闇派閥の中でもずる賢い者たちだ。

 

 ファミリア壊滅後、別の闇派閥側の神に改宗して、この2年間、闇の中で暗躍していた。

現在の彼女たちのレベルは一つ上がりLv.5となっている。

 

「私たちはお前を殺すことにより、新たな闇の時代を切り開く第一歩としよう!!」

 

「殺してあげるわ!!」

 

「そこの殺し屋たちはペットにしてあげる!!」

 

「【疾風】、死ね!!」

 

 

 




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