冷たい海賊は欲しいものを得られるのか   作:Connect

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第4章『愛』始まりました!!
投稿する時間は20時00分に投稿していく予定です。
毎日投稿は出来ませんが、出来るだけ頑張って、書いていきます!!
応援の程、よろしくお願いします!!


第4章 愛
43.女神祭


 

【女神祭初日】

 

 豊穣の女主人では、シンとミアがとても忙しそうに働いていた。祭りということもあり、客の入りはとても盛況だ。

 そんな忙しい時間を過ごしているシンは一つだけ疑問を浮かべていた。その疑問とは、この豊穣の女主人で神ヘスティアとベル・クラネル以外のヘスティア・ファミリアの面々が働いていることだ。

 

「新入りども!!料理は出来上がってるんだ!!さっさと持っていきな!!」

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

「注文を早く取りな!!!」

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

「皿洗いを溜めるんじゃないよッ!!」

 

「はい!!店長ッ!!!!」

 

「何で、コイツラいるんだ?」

 

 シンは頭にクエスチョンマークを浮かべていると、神ヘスティアが不満そうに、事の顛末を彼に話す。

 アーニャたちはベルたちを救助した貸しとして、ヘスティアたちに豊穣の女主人で働く事を要求した。無論、ヘスティアたちは断る事は良心的にも出来なかったので了承したわけだ。

 

 そして、その内容を聞いたシンはアーニャたちが上手くサボったのだと理解する。

 

「あいつら、上手くやったな…」

 

 厨房に戻ったシンは、そのようにボヤいた。

 

「褒めるんじゃないよ!!まったく、アタシは仕事に慣れている娘たちで十分なんだ!!こんな素人共を、このクソ忙しい祭りの時期に身代わりとして寄越すなんて!!アーニャたちは何処に行ったんだい!!」

 

 怒りをあらわにするミア。アーニャたちは帰って来たら怒られるのだろうとシンは察する。

 

「祭りを楽しんでいるんだろう。それにしても、リューまでアーニャたちと一緒に行くとは珍しいな」

 

「……シルのデートが気になったんだろうね」

 

「放っておけば良いものを…」

 

 現在、シルはベル・クラネルとデートをしている。彼女が本気で動いたことを知っているシンとミアは少しだけ嫌な予感がしていた。

 

「言えてるよ。まぁ、シルのことよりも、アンタの方はどうなんだい?」

 

「オレ?何がだ?」

 

「リューとデートする気は無いのかい?」

 

 パリンッ!!

 

 ミアからの予想外の言葉に、シンは手に持っていた皿を床に落とす。無論、その皿は割れるのであった。

 

「何してるんだいッ!!」

 

「ミアが驚く事を言うからだろうがッ!!何で、オレがリューとデートするしないの話になるんだ!?」

 

「そりゃあ、アンタたちが変な雰囲気を醸し出していたからだよ。リューの方は自覚している。アンタも自覚していると思ったが、その様子…。…初めて会った時と同じで、面倒くさいね」

 

「……自分でも自覚しているよ」

 

(…愛されたいと思いながらも、いざ愛されたら受け入れられない。罪人というのが染み付いている。…オレという存在が、ダメなんだ…)

 

「…無理なんだよ。アイツの愛を受け入れる資格なんて、オレにはない」

 

「そうかい。アタシは別に説教垂れ流すつもりはないが、一つだけ言わせてもらうよ。…それは誰が得するんだい?」

 

「………」

 

 それ以上、ミアとシンは言葉を交わすことは無かった。

 

 シンは色々と考えながらも仕事を進めていくと、いつの間にか日は沈んでいき、気づけば夕方となっていた。

昼間も忙しかったが、夜に近づくに連れて酒を求める客が急増するので、落ち着いていた店内は再び忙しくなる。

 

「このお店は普段からここまで忙しいのですかっ!?」

 

「夜はもっと混むよ!!気合入れて働きな!!」

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

 ヘスティア・ファミリアの面々は、必死で仕事をする。

 尚、彼等の主神であるヘスティアは役に立たないというよりも、余計な仕事を増やしてしまうので、ベルとシルのデートを尾行するよう言われ、午前中にはいなくなっていた。

 

「サボる暇がない…」

 

「普段からサボる時なんて無いんだよ。ほら、さっさと注文通りに作りな!!」

 

「ヘイヘイ」

 

 その日の夜はとても綺麗な花火が上がっていた。

 

 

 

【女神祭2日目】

 

 シンは食材の買い出しをしていると、街中が何やら騒がしいのを感じ取る。民間人たちは全く気づいていないが、実力ある者たちなら、街中で騒がしくしている者たちがどのような者たちなのか察する事が出来ていた。

 

「……」

 

(フレイヤ・ファミリアの連中…。何をしている?シルが少年とデートをするから見張りをするのは分かるが、あの慌てよう…。何が起きている?)

 

「やぁ、シン」

 

「……フィンか」

 

 買い出し中のシンに声をかけたのは、彼と交流のあるロキ・ファミリア団長フィン・ディムナだ。

 フィンは街中でフレイヤ・ファミリアが散開しているのを聞き、情報収集と暴れないよう牽制するために街中にやって来た。そこで偶々シンと出会ったというわけだ。

 

「フレイヤ・ファミリアが何やら騒がしいようだけど、一体何を企んでいるのかな?」

 

「オレと探り合いをしたいのか?」

 

「あまりそういうつもりはないよ。出来れば、君とは敵対したくないからね。…僕はシンを大切な友人だと思っている。だからこそ、敵対したくない」

 

「友人ねぇ…。………まぁ、オレもお前と探り合いなどしたくないからな…。けど正直な話、オレも何が起きているのか知らない」

 

 シンとしても、この現状で何が起きているのか分からない。この騒ぎ自体もシルの想像通りのことなのか、それとも本当のイレギュラーなのか…。シンには、全く分からないのだ。

 

「…そうだ、フィンに聞きたい事がある」

 

「僕に?シンが聞きたい事なんて、一体どんな難しい問いなんだい?」

 

「そんな変なことは聞かねぇよ。…アザトース(・・・・・)という神の名を少しでも耳にした事があるか?」

 

「アザトース?いや、聞いた事がないな。そのようなファミリアの存在も僕の知る限りはない」

 

「……そうか」

 

 シンはフィンが知らない事について、驚きはない。

 なぜなら、シン自身もアザトースと名乗る女神に出会ってから、独自に調べを行っていた。しかし、結果は惨敗。アザトースと言う神の情報は一つも手にはいらなかったのだ。

 

「その神がどうしたんだい?」

 

「いや、ちょっと気になる事があっただけだ」

 

「気になる事?」

 

「…ああ。最近はそんなことばかりだ」

 

 シンは顔を上げて、曇った空を眺める。空の先には天界と呼ばれる場所があり、そこで神々が見下ろしているのだと思いながら…。

 

(神か…。違う、この世界の神々は天竜人とは違うんだ。同じではない。だが、それでも認められない。神という存在をオレは…)

 

 シンの脳裏には、オーディール王国が滅んだ時の事。自らの目の前で、死に行く父親の姿。

 

『…オレたちは禁忌を犯し過ぎた。…なぁ、アザトース…』

 

 そして、ロックス海賊団が実質崩壊した時の事が過る。

 

『アレが何かって?そうだな、さしずめ…、あれは“世界”!!!』

 

 それがシンにとって、ロックスとの最後の会話だ。その後、彼はロックスと会話をすることが無かった。

 

「シン?」

 

 突然、立ち止まり、心ここに非ずのシン。そんな彼を心配して、フィンは声をかけた。

 

「…ッ、いや、何でもない」

 

 ドンッ!!!! ドンッ!!!! ドンッ!!!!

 

「「ッ!!!!!?」」

 

「フィン、聞こえたよな?」

 

「ああ。誰かが戦闘をしているようだね。音からして、向こうの倉庫の方だ」

 

「……嫌な予感がするな」

 

「僕もだよ。何故か、とてつもなく親指が疼いている。まるで何か大きな事が起きる前兆のようだ」

 

 シンとフィンは、音のした方向へ急いで向かった。

 二人がその場所にたどり着いたのは、音を聞いて、動き出してから僅か1分後。

 その場所で行われている光景を見たシンは全身からとてつもない殺気を放っている。

 

「…おい、動くな。……これは警告だ」

 

 何故、彼がここまで怒っているのか。それは急いで駆けつけた先で、フレイヤ・ファミリア幹部が、リューやアーニャ、クロエ、ルノアと戦闘を行っていたからだ。

 それも圧倒的、強者による蹂躙。リューたちは成すすべも無く叩きのめされていた。

 

 シンは大切な者たち(・・・・・・)を傷つけられ、怒りが込み上げている。今にもフレイヤ・ファミリア幹部たちを殺そうとしているぐらいだ。

 

「何でこんな事になっている?フレイヤの命令か?」

 

「「「「「………ッ!!!」」」」」

 

「どうした?答えろ!!!」

 

「「「「……ッ!!!」」」」

 

 シンの殺気を受けて、フレイヤ・ファミリア幹部たちは動くことは出来ない。もし、下手に動けば、その瞬間に死が即座に訪れてしまうからだ。

 だから、ガリバー兄弟の長男アルフリッグは慎重に言葉を絞り出した。

 

「女神の付き人を消すために動いた。それだけだ。…こいつらはそれを邪魔した。だから、邪魔されないようにした。…だが、殺すつもりはない。それはあの御方が望んでいる事ではないからな」

 

「なるほど、理解した。……付き人が暴走したのか」

 

 シンは何が起きたのか大体察する。というのも、彼は本気で気配を辿り、渦中の二人が何処にいるのかを捉えていた。

 最近、修行を始め出したシンからすれば、瞬時に判断することは出来なくても、集中すれば、この程度の範囲内であれば、気配を捉える事は出来る。

 

「付き人を殺したければ、殺せば良い。…去れ」

 

 シンの言葉を聞いて、フレイヤ・ファミリア幹部たちは女神の付き人を殺しに向かった。

 

「「「「ッ!!?」」」」

 

 シンの言葉に、リューたちは驚く。何故なら、彼のその言葉はシルを殺しても良いと言ったも同然なのだ。

豊穣の女主人という居場所、同僚たちを大切にしているシンがそのような事を言ったことに、リューたちは動揺を隠せない。

 

「…シン、どうしてニャ…?」

 

 傷を負いながらも、立ち上がったアーニャの言葉。それを聞いても、シンは動じない。

 

「何がだ?」

 

「何がじゃないよ!シルを殺しても良いってどういう事だよ!!」

 

「見損なったニャ…、シン…」

 

 アーニャ、ルノア、クロエがシンに非難の目を向ける中、リューだけは、シンの言葉に納得はしていないが、何か事実があるのだろうと、そのような目でシンを見つめていた。

 

「シン、あなたがどういうつもりなのかを教えてください…」

 

「どういうつもりなのか…。そうだな、お前等が心配している奴はシル・フローヴァじゃない」

 

「シン、それはどういう意味なんだい?」

 

 隣で聞いていたフィンは、その言葉の真意を問う。

 

「そのままの意味だ。まぁ、強いて言うなら、アレは単なる影だ。オレたちの知っている豊穣の女主人店員シルではない。本物は別の場所にいる」

 

「つまりは…偽物?」

 

「その通りだ。何よりも奴らがシルを殺そうとするわけがない。それはあり得ない事だからな」

 

「シンは、…シルの何を知っているのですか?」

 

「………言わない。あいつの口からお前等に言わない限り、オレは言うつもりはない」

 

 シンはシルが一体何をしているのかは分からない。だが、彼女が無事なことは理解している。

それ故に、シンはそこへ向かおうとはしない。

 

「とにかく、お前等の手当が優先だ」

 

 シンは懐から回復薬を取り出すと、それらを傷を負ったリューたちに手渡した。

 

「雨が降ってきたな。…何とも嫌な雨だ。まるで…」

 

「まるで何かの前兆かい?」

 

「かもな…。というか、いつまでその親指は疼いている?」

 

「疼きが止まらない。まるで、何かが起こる前触れだ。この疼き、…都市から逃げろとでも言っているのか?」

 

 フィンの親指の疼きは止まらない。むしろ、酷くなっていると言っても過言ではない。

 

「フィン!!」

 

「アイズ…、それに神ヘスティア、神ヘルメスと【万能者】まで。どういう組み合わせなのかな?」

 

「ヘスティア様と偶々会って、ベルの捜索をしていたら、ベルがここで起きた事を話してくれた」

 

「それでベル・クラネルは?」

 

「酒場の店員さんと向こうの方へ…」

 

「そうか…」

 

 雨が降り続ける中、シンは鬱陶しそうに濡れた髪をたくし上げる。彼の見る先には、罪悪感に飲まれているベル・クラネルがゆっくりとこちらへ歩いていた。

 

「ベル君ッ!良かった、無事だったんだね!」

 

「少年、シルは!!シルは何処ニャ!!」

 

「シルさんは無事です。フレイヤ・ファミリアも大丈夫です」

 

「大丈夫とは、一体どういう…」

 

「……僕は、…」

 

 少年ベル・クラネルの今の姿を見て、シンはシルがフラれたのだと理解する。

 そして、それと同時に彼はベル・クラネルに対して、強烈な怒りを滲ませていた。彼は自身にとって、大切な者を傷つけたベル・クラネルに怒りを覚えていたのだ。

 

「シン?」

 

「いや、何でもない」

 

「そうは見えないけど?何を苛立っている?」

 

「別に…。ただ、今はここを離れたいと思った。少年のいるこの場所は、今のオレには酷く不愉快だ」

 

(無意味な怒りだ。少年は自分の気持ちを優先しただけに過ぎない。しかも、精一杯の罪悪感を得てしまっている。責めるのは筋違い。だが、オレは聖者じゃない。大切な者(シル)を傷つけた少年に怒りを覚えても仕方ないだろう)

 

 ここにいたくはないと、シンはこの場を離れていく。

 

「色々あるんだね…」

 

「フィン?」

 

「いや、こっちの話だ。アイズは彼女たちを豊穣の女主人まで帯同してあげてくれ。回復薬を飲んで傷は塞がっても、疲労はあるだろうからね。僕はもう少しだけ、シンと行動するよ」

 

 アイズに指示を出したフィンは、街の中へ歩いていくシンを追いかけるのであった。

 




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