実質的に再度父親を亡くしたマミへの罪悪感を抱えたココロ。
サトルの運転するバイクの後ろに乗っていた。
二人は無言で夜となった虹架町の道路を走る。
「…………」
長い沈黙が続く中、ふと疑問を抱いたココロが口を開く。
「そいえばさ、これどこ向かってんの?」
「……拠点だ、所謂隠れ家って奴だな」
そして二人を乗せたバイクは街外れの路地裏にやってきた。
奥にあるシャッターが開かれる。
真っ暗であったがバイクが入ると電気が点けられた。
ボロい車庫だった。
ココロは少し嫌悪感を覚えながらも停められたバイクから降りる。
サトルも降りてヘルメットを外した。
その目は少し赤く腫れている。
しかしココロは何も聞けなかった。
「こっちだ」
サトルに案内されるまま扉を潜る。
するとそこはまるでハッカーの部屋のようで多くのパソコンなど電子機器に囲まれていた。
「帰ったぞ」
サトルがそう呟く。
するとメインのパソコンらしきものが置かれている机の前の椅子が動く。
そこから眼鏡をかけた男性が姿を現した。
「お疲れー、今日の収穫は?」
サトルとは打って変わって気さくな様子の男性は問う。
「また孤独型だ、ここ最近そればっかだな」
「反動で怒り型も生まれやすくなるからねー、この間もそれで大変だったでしょ」
「今回は大丈夫だ、宿主はアライヴにしっかり保護された」
「上手くやってくれると良いけどね」
サトルは汚いソファにトガっと座る。
すると男性がココロに気付く。
「あれ、この人が例の?」
「あぁ、姉を探してるってヤツだ」
男性は椅子から立ち上がりココロに握手を求める。
「"灰原リクト"って言います、サトルの相棒みたいなもんで」
「誰が相棒だ、都合よく使ってるだけだ」
ココロはリクトの手を取り握手を交わす。
しかし彼の明るい雰囲気にココロはまだ着いて行けなかった。
「よろしくお願いします……」
リクトはココロの様子を見て状況を察する。
サトルを指差して伝えた。
「あーコイツね、宿主に気ぃ使えないタイプだから。いつもの対応見てたら嫌になりますよね」
「それは別に……」
するとサトルはソファに座ったまま言う。
「俺はヴォイドを倒すだけだ、宿主のケアはアライヴの仕事だろ。ついでに俺を恨んで心が埋まるなら良いじゃねぇか」
「また強がってさぁ」
当たり前のように話すサトル達の会話を聞いているがココロは何処か胸が痛んだ。
先程サトルの目が赤く腫れていたのを見たからだ。
「っ……」
彼の本心と状況を理解できず複雑な気持ちになってしまい何も発言できなかった。
『仮面ライダージェネシス』
第2章 身も心も
翌日、虹架町の中心近くにあるビル。
その中である若い男が歩いていた。
多くのスーツを身につけた職員たちとすれ違う。
挨拶を交わしながら進んで行き小さな扉を開ける。
子供部屋のような室内には昨日父を失った少女マミが座っていた。
「やぁ、マミちゃんだね」
その男はぬいぐるみを持つマミの前に座り優しい笑顔で挨拶をする。
「お兄さんは……?」
「俺は"植村シンジ"。君を助けに来たんだ」
握手をしようと手を伸ばすがマミは警戒している。
シンジはそれを受け入れ手を引っ込める。
「……良ければお兄さんに話聞かせてくれないかな? 少しでも君の心を楽にしたいんだ」
マミは顔を上げシンジの顔を見る。
そして座ったまま話し出す。
「パパがね、居なくなっちゃった……独りは寂しいよ」
「そっか、俺もその気持ちは分かるよ」
「お兄さんも……?」
「俺も怪物のせいで家族を亡くしてね、君の苦しみはよく分かる」
自身の過去を語り出す。
「そんな時にここの人達が優しくしてくれて救われたんだ、だから俺も同じような人達の助けになりたい」
するとマミはシンジの言葉を強く否定した。
「違う、怪物が嫌なんじゃないのっ……怪物でもパパはパパだったよ……」
「え……?」
「パパが居てくれれば良かったのに、アイツがパパを殺した……! それが嫌なのっ!」
その言葉を聞きシンジは彼女の境遇を理解した。
もう一度しっかりとマミに向き直り本題へ移る。
「……ソイツについて教えてくれる? 俺はソイツを捕まえようとしてるんだ」
その言葉でようやく少し心を開いたマミはシンジに状況を伝えた。
***
マミから話を聞いた後シンジは仲間たちと例のヴォイド狩りについて情報を纏めていた。
「どうやら例のヴォイド狩りは普段は人の姿でこの街に紛れ込んでいるようですね」
シンジが前に立ちホワイトボードに情報を書いて行く。
上官らしき男も頷いていた。
「厄介だな、そもそもヤツはヴォイドなのか?」
「その可能性も大いにあるでしょうね」
シンジは拳を強く握りながら言う。
「許せない……心の穴を余計に広げるような真似を」
「現にヤツの影響でヴォイドを再度発現させる者まで現れてるからな」
「ただヤツへの恨みで心の穴が塞がれた者が居るのも事実……」
しかしシンジはヴォイド狩りへの怒りを露わにしている。
「でもそんなの意味ありませんよ、ヴォイドが出ないからって別の苦しみが生まれるなんて……!」
そしてシンジは上官たちへの感謝の気持ちを述べる。
「貴方たちに救われて幸せです、なのにただヴォイドを倒せば良いだけみたいな考え方……腑が煮え繰り返ります」
シンジの様子を見る上官たち。
「本題に戻ろうか。何故ヤツはヴォイドの出現を知り我々より先に現れる?」
「……内通者が居るのかも知れませんね」
内通者。
その言葉を聞いたシンジは余計に拳を強く握る。
「何でそんなヤツに協力するんだ、俺が全部暴いて償わせます……!」
そう宣言するシンジは腰に巻かれた青いベルトを撫でた。
一方サトル達の拠点ではリクトがパソコンでヴォイドの情報を調べていた。
気になるものを見つけたらしくサトルを呼ぶ。
「おーいサトル、これとかどう?」
やって来たサトルはパソコン画面を覗き込む。
そこにはとある中学校にまつわるニュース記事が映されていた。
「中学校で行方不明者ねぇ……この学校で何か最近の変化は?」
「突然転校生が来てるね。そこから行方不明者が出始めた、関係ありそうなんだよね」
「調べる価値はありそうだな。アライヴの動きは?」
「ちょっとずつ調べてるみたいだけど本格的には動いてないね、他のもあるから」
「じゃあここにするか」
上着を羽織り準備を整えるサトル。
するとある事が気になったリクトが問う。
「でもさ、昨日の子に顔晒しちゃったんでしょ? 今まで通り動けるかな?」
マミはハッキリとサトルの顔を見ていた。
「それに君がそんな失態を犯すなんて、らしくないよ。彼女と会って何か変わった?」
リクトは隣の部屋を視線で指しココロの存在を匂わせる。
「……ヤツらが何処まで俺に近付いてるか、確かめるためにも動くさ」
しかしサトルはココロの話題には触れず誤魔化すように拠点を後にした。
取り残されたリクトは溜息を吐く。
「はぁ、彼女だってヤツらにとっては君への手掛かりだよ」
突然やって来た部外者であるココロの存在に危機感を覚えていた。
***
するとココロが起きて来る。
寝癖で髪がボサボサで目を擦りながら拠点を見渡す。
「あれ、サトル君は?」
「もう行ったよ、次のヴォイドを探しにね」
「え、私を置いて?」
「アライヴに君の存在まで知られてたら厄介だからね、大人しくしてなよ」
確かにサトル無しでは動けない。
不服ながらもココロはソファに座った。
そしてしばらくの沈黙の後、リクトに問う。
「ねぇ、貴方は何なの? 何で彼に協力しようと?」
リクトはパソコン画面に目を向けたまま小さな声で答えた。
「放っておけなかっただけだよ。彼、危なっかしいからね」
口ではそうとだけ告げるリクトだがその目を見ていると深い事情があるように思えた。
バイクに乗ったサトルは例の中学校の前までやって来る。
フェンスからグラウンドを覗き込むと体育の授業が行われており男子たちがサッカーをしている。
「ボール行ったぞショウヘイ!」
ある気弱そうな男子、ショウヘイの所へボールが飛んで行く。
しかしショウヘイは臆病でボールを避けてひまった。
「おい何やってんだよぉ」
そのまま敵にボールを奪われチームメイトから責められるショウヘイ。
肩を大きく落としていた。
***
試合が終わり結果は負けてしまった。
一同はショウヘイを責める。
「あそこでお前が避けなければ決められたのに」
「ビビってんじゃねーよ」
他の誰よりも悔しそうな表情を浮かべるショウヘイ。
すると背後から声を掛けられる。
「あんまり責めるなよ」
現れたのは背の高い美男子。
ショウヘイを庇うように間に入った。
「チッ、転校生……何でコイツの味方すんだよ?」
「ショウヘイだってわざとやってる訳じゃないんだ、日頃からサッカーやってる君たちと違って慣れてないんだよ」
これ以上は面倒だと判断したチームメイトたちはその場から去る。
そして転校生はショウヘイに寄り添った。
「ユイト君、いつもごめん……」
「謝らなくて良いんだよ、俺は君の友達になるために来たんだから」
ユイトと呼ばれた転校生はショウヘイにある提案をする。
「次はあの中の誰かにするかい?」
その瞳が赤く光った。
他のヴォイド達と同じ反応だ。
「で、でもこれ以上やって良いのかな? 正直イジメて来る数は減ったけど前より皆んな気が立ってる、友達が居なくなってストレスになってるんだ……」
ショウヘイは優しい心を持っていた。
「友達が居なかったから分かる、凄く辛い気持ちなんだよ。それに友達が出来た今、また失うってなったら怖い……」
友達であるユイトがやっている事に疑問を抱いてしまうショウヘイ。
そんな彼にユイトは言う。
「でもそれじゃあ君が辛いままだよ。それに君が望んだ事じゃないか」
ヴォイドとして説得をして行く。
その裏までショウヘイは読み取れなかった。
「うん、だよね……」
そんな彼らのやり取りをグラウンドにある倉庫の陰からサトルが見ていた。
スマホを取り出しリクトに伝える。
「転校生の話を聞いた、ヤツで間違いない」
サトルは転校生でありヴォイドであるユイトを睨み一度その場を離れた。
サトルは機会を待った。
ユイトが同級生を襲いヴォイドだと確信を得るまで。
襲うなら人気の少ない校舎裏か、もしくは放課後に後をつけて誘い込むだろう。
そのため目ぼしい所に監視カメラを仕掛け近くの公園で様子を見ていたのだ。
「ん……?」
すると学校の前にとあるバイクがやって来て駐輪した。
見覚えがある、それはアライヴのバイクだ。
「チッ、被ったか……」
バイクから降りたアライヴの男はそのまま学校へ入って行く。
***
ショウヘイは一人で校内を歩いていた。
トイレに行った後である。
すると背後から一人の男に話しかけられた。
「ショウヘイ君かな?」
「え?」
振り向くとそこには見知らぬ男が立っていた。
アライヴのシンジだ。
ショウヘイも学校の者では無い事がすぐに分かった。
「お話聞かせてくれないかな? こういう者なんだけど」
シンジはアライヴの名刺を取り出しショウヘイへ渡す。
「何ですかそれ、アライヴ……?」
「君を助けに来た。心当たりはあるだろう?」
そう言われたショウヘイは真っ先にユイトの事を思い浮かべ表情を強張らせた。
「やっぱりね」
明らかな警戒心を見せるショウヘイだが安心させるためにシンジは寄り添う。
「大丈夫だよ、君の心に空いた穴を塞ぎたいんだ。話してくれるかな?」
シンジの口調から悪い人ではない事は分かった、そのためショウヘイは渋々彼に着いて行ったのだ。
学校の屋上でシンジとショウヘイは話をする。
話題は当然ユイトについてだ。
「良いんですか、授業始まっちゃいましたけど」
「先生には許可を取ってあるよ。だから焦らず思う存分話してくれると良い」
「っ……」
仕方なくショウヘイは語り出す。
ユイトが親友として転校して来るより前の話だ。
「俺、友達が居なかったんです。根暗で、誰も良く思ってくれなかった。オマケにイジメられるし……」
嫌な記憶を思い出してしまう。
「友達欲しいなって思ってたら変なハット被った人が来て……"友達なら現れる"って言って、胡散臭い占いの人かなと思ったんですけど」
「そしたらユイト君が転校してきたと」
「はい。しかもなんか俺にだけやたら優しいし……イジメの相談とかも乗ってくれて、いい気分だったんですけど……」
「……そこから同級生が失踪したという訳だね」
「……はい」
それだけでシンジが何を言いたいのかよく分かった。
ユイトの存在を危険視しているのだろう。
「君はその真相を知っているね?」
しばらく震えたままのショウヘイだったがシンジの顔をもう一度見てゆっくりと頷いた。
「……はいっ」
正直なところシンジもここで頷いてくれるとは思わなかった。
多くの宿主となる人間がヴォイドに満たされていると錯覚しその存在を隠そうとするから。
「そっか。教えてくれてありがとう、君は勇敢だ」
優しく歩み寄りショウヘイの肩に触れるシンジ。
一瞬ショウヘイが全身を震わせたのを感じた。
「もし君が良ければだけど……そのヴォイド、俺に倒させてくれないか?」
「え……?」
「君自身も負い目を感じていたから話してくれたんでしょ?」
その言葉にショウヘイは震えながら答える。
「倒して……下さいっ」
「任せな」
そしてその場から去ろうとするシンジ。
思い出したかのようにショウヘイに告げた。
「アライヴは再発防止のために更生プログラムをやってる。だから安心して、きっとそこで友達が出来るよ」
去って行くシンジの背中を見つめていたショウヘイだったがまだしっかりと覚悟が決まらず複雑な表情を浮かべていた。
その日の放課後。
ユイトは予定通りにイジメっ子の一人を校舎裏に呼び出した。
手紙を片手にやって来たイジメっ子はユイトの姿を見て落胆する。
「何だよ、告白だと思ったのに」
「悪いね、でも大事な話があるのは本当だよ」
改めてユイトとイジメっ子は向き合う。
ユイトは話を始めた。
「他に誰も居ないね?」
「あ、あぁ……恥ずかしかったからよ」
しかしその言葉に反して反対側の壁の方に彼の友人たちが立っていた。
隠れて様子を見守ろうとしていたのだろう。
「なぁ、行った方がいいか?」
「流石にこんな真似しといて、しめとこうぜ」
友人たちは歩いて出て行こうとした。
しかしそこで止められる。
止めたのはシンジだった。
「シーッ、行っちゃダメだ」
訳が分からない。
しかしシンジの背後にあったものを見て彼らは言葉に従った。
一方でユイトとイジメっ子は話を続けている。
「最近ショウヘイの扱いが酷いんじゃないか?」
「チッ、だってよ……アイツ絶対なんかあるって。揶揄った奴が二人も行方不明なんだぜ? だから俺がその真相を暴いてやろうと思って……」
少し震えながらもイジメっ子はユイトに告げる。
「アイツ危ねぇよ、お前も付け入るのやめた方がいいぞ?」
「丁度よかった、君は今から真相を知る事になる」
「え?」
するとユイトの体が徐々に変化して行った。
そして遂にイジメっ子の前でヴォイドとしての姿を露わにしたのだ。
「うわぁぁぁっ⁈」
まるでゴリラのような姿のヴォイドへと変貌したユイトに腰を抜かすイジメっ子。
『さぁ、俺たちの心を埋めてくれ』
ジリジリと距離を詰めるヴォイド。
イジメっ子は覚悟を決めた。
するとそこへ。
「君、こっちへ!」
シンジが現れイジメっ子を抱き上げその場から離れた。
『何ですか貴方は……?』
ヴォイドは余裕を見せゆっくりと追うが角を曲がった所で目を疑う。
そこには大勢の銃を構えた特殊部隊が待ち構えていた。
『え……?』
「撃てぇぇーっ!」
一斉に射撃する。
弾丸は虚空のはずのヴォイドに何故か効いていた。
『ぐっ……』
「弱体化を確認! 植村さん、出番です!」
その声に合わせてシンジが現れた。
片手に謎のブラックホールが模されたようなベルトを持っている。
そしてヴォイドの前に立ちシンジはそのベルトを巻いた。
「後は任せて下さい」
そして右手に星型のアイテムを持ち構える。
「変身っ!」
そのままベルトに装着し虚空から星が生まれるかの如くその身に鎧が纏う。
体の所々に星が描かれたような姿へ変身した。
仮面ライダーアライヴである。
ヴォイドは突如として出現した自分に対抗できそうな存在、アライヴに動揺していた。
『何ですか貴方は……⁈』
『情報は共有されてないみたいだな。対ヴォイド用武装組織アライヴだ、政府非公認だけどな!』
まるで流れ星のようなパンチを放つ。
それはヴォイドの胸部に命中し大きく吹き飛ばされた。
『何故人間が触れられるっ⁈』
弾丸の時も思った、虚空であるヴォイドには物質は触れられないはず。
『俺たちの力、"無を有に"変える力だ!』
これこそが仮面ライダーアライヴの能力。
そして特殊部隊の弾丸も同じ加工がされているのだ。
『くっ……』
しかしヴォイドもただやられているだけでは無い。
ゴリラのような姿で胸を叩きその大きな腕でアライヴを殴り飛ばした。
『ぐあっ……』
凄まじい威力に吹き飛ぶアライヴ。
その間に特殊部隊が再び連射した。
『うっ……でも分かって来たぞ、攻撃した箇所を一時的に有にする力か……それならたかが銃弾ごときの一撃、一瞬で虚空と返る!』
性質を理解したヴォイドは怯む事なく進み特殊部隊を纏めて殴り飛ばす。
そして銃を全て破壊した。
ヴォイドの言う通り、有へと変えるのは一時的なものでしかない。
それも威力によって時間が変わる事も察知し一発の威力が低い弾丸など恐る事はないと判断したのだ。
『みんな……っ』
瀕死の重傷を負う特殊部隊。
彼らはアライヴに託す。
「植村さん、頼みます……っ」
託されたアライヴはその意思を汲み取り立ち上がる。
『おぉっ!』
そしてヴォイドに思い切りドロップキックをお見舞いした。
『硬いっ、これじゃあすぐ塞がる……"インセプション"が決められないっ』
予想以上の硬さに活路が見出せずにいると背後から知らない声が聞こえた。
「……変身」
その声と共に一台のバイクが飛び出して来る。
そこに乗っていたのは仮面ライダージェネシスだった。
『はぁっ!』
凄まじい威力の蹴りをヴォイドにお見舞いする。
アライヴ以上の攻撃力を浴びせられヴォイドは吹き飛んだ。
『あっ……お前はっ』
間に割り込んで来たジェネシス。
『弱い癖に出しゃばるなよ』
そう言ってジェネシスは拳を構える。
アライヴは現れた存在に身震いした。
仮面の奥から歯軋りの音が聞こえる。
ヴォイドに対し猛攻を加えるジェネシス。
しかし相手の防御力は予想以上だった。
『チッ、孤独型のクセに硬ぇな……』
圧倒的に攻めて反撃の隙は与えないがダメージは中々与えられない。
ヴォイドもそれを察知したようで。
『くっ、あまりにも不利っ……』
吹き飛ばされた隙にヴォイドは地面を思い切り殴り付けた。
その影響で地響きが起こりジェネシス達は地面に膝をついてしまう。
『戦略的撤退っ』
その隙にヴォイドは脚力で飛び上がり逃げてしまった。
ジェネシスもこれ以上追うのはやめる。
『今のままじゃダメだな……』
そのまま去って行こうとした。
バイクに跨った所でアライヴから声を掛けられる。
『おい、追わないのかっ⁈』
『無駄だ、今の状態じゃヤツを倒し切れない。後回しだ』
しかしアライヴは納得が行かない。
ジェネシスに対し抗議する。
『それじゃあ意味がないっ、しっかり穴を塞いでやらないとまた被害が出る! ショウヘイ君、宿主も危険だ!』
『……じゃあお前がやれば良いだろ』
そのままジェネシスはバイクに乗り去ってしまった。
アライヴは慌ててヴォイドを追おうとするが特殊部隊に止められる。
「ダメですっ、まず彼らを護衛しないとっ……」
特殊部隊は怯えるイジメっ子たちを指す。
それは正しかった。
そのためアライヴは変身を解きシンジの姿へと戻る。
「くっ、何でこうなるっ……」
シンジは歯を食いしばりながら中学生たちの方へ向き直った。
その日の夜、ニュース番組では中学校での出来事が報じられていた。
ヴォイドに関する情報は伏せられていた、しかし転校生であるユイトがこれまでの失踪に関わる重要参考人として報じられ休校するとの事だ。
生徒たちが顔を伏せられインタビューに答えている。
『ショックですね、ずっと同じ教室にいたと思うとゾッとします……』
『(行方不明になった生徒とは)友達だったので何でこんな事になったのかなって……』
『返して欲しいです、せっかくの楽しい時間を』
そしてリポーターが生放送で学校の前で話をしている。
そこに例のイジメっ子が映り込んだ。
『アイツは化け物だ! 俺も殺される所だった!』
すぐに報道陣に取り押さえられていたが彼は叫び続ける。
***
その番組を拠点でリクトがパソコン画面から見ていた。
サトルはソファに座り音声だけ聞いている。
近くの椅子に座ったココロは以前のように絶句していた。
「逃しちゃったらどうなるの……?」
「前と同じだ、また機会を狙ってヤツは宿主に接触して来る」
「そんな……」
「休校か、追いづらくなっちまった」
サトルは手にヴォイドハートを持っていた。
「ストックは残り一つ、これで終わらせなきゃな……」
その言葉を受けココロは問う。
「ねぇ、ストックってどういう事?」
「コイツは変身する度に消費される、手に入れるにはヴォイドを倒すしかねぇ。アライヴがやってくれてた分のストックがあったんだが今回で無くなっちまいそうだ」
サトルはアライヴがヴォイドを仕留めた際にも現場に出向きヴォイドハートだけは回収していた。
しかし今回の件を重く受け止める。
「新しいアライヴ、弱くて不安だ」
シンジの事を見下したような発言をした。
ココロは彼らの因縁が思っている以上に深い事を悟る。
「ねぇ、次は私も手伝わせて」
「何言ってんだ、足手纏いだよ」
「これでもジャーナリストだから、探すのは得意だよ」
そう言ったココロの声を聞きサトルは溜息を吐きながらも了承した。
***
一方で夜の深まる虹架町の住宅街にある影が忍び寄っていた。
黒いロングコートを身に纏い頭には更に黒いシルクハットを被っている。
「おぉ、こんなにも同じ虚空が溢れている。ここまでの事態は久しぶりだな」
謎のシルクハットの男は手から謎のブラックホールのようなオーラを出し住宅街へと進んで行った。
TO BE CONTINUED……