メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった 作:カレーパン
――俺はクソ雑魚だった。
『ざぁこ♡ ほんとぅぅにぃぃ使えないんだからぁ……生きてる価値、なくない?』
『弱すぎますよぉお兄さん♡ クソ雑魚なめくじさんですねぇ。ふふふ』
『あ、いたんだ♡ オーラなさすぎで、気づかなかったぁ。きゃはは』
俺は弱すぎるが故に、世の女どもから虐げられてきた。
この世界は力が全てであり、男は女よりも強い存在たちばかりであった。
弱い者には生きる価値は無く。
力なき者に明日を生きる資格はない。
俺は泥水を啜り、女たちにこびへつらい。
罵倒されながらも、耐えて耐えて――生き恥を晒し続けた。
理解者はたった一人。
俺の友であるマサハルであった。
マサハルは賢く、俺の知らない世界を教えてくれた。
“萌え”なるものについての知識は深く。
女性たちには属性なるものがあるらしい。
『アレはメスガキだ。弱い俺たちを罵り、俺たちはそれに快感を覚えるんだ』
――マサハルの言葉の意味は分からなかった。
が、マサハルが誰よりも強いと俺は思っていた。
そんな彼と過ごす時間が好きで――しかし、長くは続かなかった。
マサハルは、ある一人の女に捕まった。
マサハルは醜いという理由だけで罪人となり――殺された。
『ふぎゃあああああ!!! ぎもぢぃぃぃぃぃ!!!』
『マサハルぅぅぅぅぅ!!!!』
女どもに罵倒されながら、火刑に処された友。
最後は煙の吸い過ぎで頭がおかしくなっていただろう。
それでも、アイツは最後まで笑みを絶やす事無く……立派だ。
俺もアイツのように強くなりたい。
女どもに屈する事の無い強き男になりたい。
俺は勇気を振り絞り、マサハルを捕らえた女たちに勝負を挑み――敗北した。
最期は知っていた。
女どもの前で首を吊らされて。
女どもはそんな俺を笑みを浮かべながら罵り――が、俺は生きていた。
死んだ。それは確かだ。
が、次に目を開ければ――赤子になっていた。
最初は戸惑った。
が、すぐに順応した。
これは神から与えられし奇跡であると。
そこからの俺の行動は早かった。
女どもに媚びる事を止め。
ただひたすらに己を鍛え続けた。
木刀を振り続けて、滝に打たれながら拳をつき。
野山を駆けて、魔物と生死を懸けた戦いを繰り広げて。
時が経つにつれて、俺は最初の頃の弱弱しい姿から漢らしい鋼の肉体へと至っていった。
そうして、自らの力が最も発揮できるであろう年頃に――再び奴らに挑んだ。
激しい戦い。
が、結果は――俺の負けだ。
奴らは最後まで余裕があった。
どれだけ鍛えようとも奴らには勝てない。
最期は少し違い、斬首であり――また、時が巻き戻った。
俺はようやくこの奇跡の意味を理解した――修練だ。
俺は更に自分を鍛えた。
より過酷な環境下に身を置き。
より凶暴な魔物たちと戦い。
自らを追い込み、何度も生死の境をさまよった。
時が経ち、老体となっても修練を続けて――時が戻る。
そこからは繰り返しだ。
死ぬまで己を鍛え続ける。
死んだら、また別の修練を積んでいく。
それを何度も、何度も、何度も繰り返し――至った。
『『――――!!?』』
俺が産声を上げた瞬間。
部屋にいた全ての人間たちは動きを止めた。
時が止まったようであり、誰しもが恐怖を感じていただろう。
俺は静かに泣くのを止めた。
成長し、自らの肉体が修練の記憶によって元へと戻り。
歳にして十五の時に――それは届いた。
王立魔法騎士養成学校――“メスガキ共の巣窟”への招待状だ。
才ある者たちが集う学び屋。
次世代の騎士となる者たちで。
その中から稀に勇者となる者もいる。
俺には魔力の才があった。
魔法を扱えるだけの力があった。
だからこそ、学校からも男でありながら招待状が届いた。
――が、そんな事はどうでもいい。
俺がやりたい事は一つだけ――メスガキ共を分からせる事。
ただそれだけ、それだけが我が望みだ。
マサハルに会いたい気持ちもある。
が、やらなければならない事が俺にはある。
「……」
俺は学び舎の門前にて白い校舎を見つめる。
道行く女どもは棒立ちの俺をくすくすと嘲笑う。
少なくともいる男子たちは、そんなメスガキ共に従っていた。
今の俺の装いは目まで隠れるほどに伸ばしたぼさぼさの黒髪に。
学校の制服となる濃い青を基調とした制服の下は細身で。
いかにも弱い男そのもので、周りの視線から偽装は完璧であると感じた。
俺は何も言わない。
抵抗も反撃もしない。
今はまだ、その時ではないからだ。
そんな時に、誰かが俺の背中を蹴る。
俺は敢えて、体を前に動かし。
無様に転がったかのように見せた。
背後を振り返れば……“獲物がいた”。
「んー? あぁ、大きな虫かと思って蹴っちゃったぁ♡ でもでもぉ、馬鹿みたいに立っていたアンタの方が悪いよねぇ? ねぇ?」
「そうですよ。悪いのはお前。ただでさえ男なんている価値ないのに……本当に目障り」
「ねぇ、もういいでしょう? こんな奴なんかどうでもいいしぃ……ふふ、ばぁか♡」
「……」
メスガキが三人。
中心に立つリーダー的存在のこいつはニコ・タカネ。
金髪のツインテールに、女としての魅力をアピールするが如く。
豊満な胸を見せびらかすように、制服のシャツのボタンを外していた。
スカートは三人とも短く、周りを通る男子は彼女たちをチラリと見ては。
さっと顔を赤らめて走り去っていく。
こいつらはそんな視線に悦に浸っていた。
ニコは身長は153と小柄。
だが、類まれなる魔法の才を持つ女だ。
俺と同じ新入生でありながら、“特別枠”として招かれている。
その両隣に立つのはこいつの側近で。
青い短髪に男を軽蔑するような視線を向けるのがユリ。
反対側に立つ赤髪を片側で結い小馬鹿にしてくる女がサキだ。
こいつらの事はよく知っている。
未来では、王国魔法騎士団の所属であり。
マサハルが捕らえられた際に、尋問を担当していた奴らだ。
マサハルとの面会でよく聞かされていた。
どれほど惨く、どれほど耐えがたい責め苦をアイツが受けさせられたか。
『あ、あぁ、あぁぁ……ま、まだ、余韻がぁ。ん、ああぁ!』
『……っ。マサハル……ごめん。ごめんな。俺が、弱い、せいで!』
「……っ」
思い出すだけで拳が硬くなる。
すると、俺の表情の変化を察知したニコはくすりと笑う。
そうして、こつこつと靴の音を響かせて――俺の前に足を出す。
「舐めなさい。さぁ、早く……綺麗に出来たら、ご褒美があるかもねぇ♡」
「「ふふ」」
「……」
奴は俺を見下ろしながら笑う……舐めている。
何処までも男を低く見ている。
俺が知っているメスガキそのもので。
俺はゆっくりと手を伸ばして――足を払いのけた。
「……は?」
「……すみませんでした」
俺はそれだけ伝えて去っていく。
後ろではニコたちが俺を呼んでいる。
が、俺はそれらの声を無視して歩いていく……そうだ、それでいい。
「……何、アイツ……うざ」
「……ふっ」
計画通りだ。
怒れ、もっともっと――メスガキとなれ。
お前が最高の獲物になるまで俺は待つ。
果実は熟してこそ美味しい。
それまでは、俺はお前たちの想像通りの男……いや、違うな。
お前たちを怒らせる為ように――振舞ってやるよ。