メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった 作:カレーパン
学校の鐘が鳴り響く。
教師はお決まりの言葉を吐いて出て行った。
メスガキ共は伸びをしたり、弁当箱を出したりしている。
退屈な授業がやっと終わった。
昼休みであり、俺は弁当箱を――今回は出す事無く席から立ち上がる。
見れば、ニコたちの奴も俺に合わせて立ち上がる。
が、俺はペットたちを無視して教室から出て行った。
俺は極上の獲物を探しに向かい、廊下を歩いて……はぁ。
「「「……」」」
気配がする。
距離を置きながら――馬鹿が三人ついて来ていた。
嫌でも、すれ違うメスガキ共の視線が集まる。
これでは仕事にならない。
俺はそう考えて、少し予定を変える。
廊下を曲がり、階段へとやって来て。
俺は足を止める。
すると、馬鹿が小走りで角を曲がって来て――俺は奴らを抱きしめる。
「「「――はぇ!?」」」
間抜けな声を出す馬鹿三人と一緒に――部屋へと転移した。
奴らは目を瞬かせたかと思うと。
だらだらと汗を流して言い訳をし始めた。
俺は冷めた目で馬鹿たちを見つめて――命令を与えてやった。
「そんなに俺に構って欲しいのなら――仕事をやろう」
「し、仕事って……べ、別に私たちはアンタの――ひぅ♡!?」
口答えをしたニコの頬を叩く。
奴は痛みによる声ではなく。
明らかに何かを感じとったような声を出した。
奴は頬に触れながら、熱の籠った視線を俺に向けて来る……もうほとんど落ちているな。
他二人を見れば、羨ましそうな視線をニコへと向けていた。
俺が舌を鳴らせば、奴らは肩を震わせる。
が、恐怖はまるで感じておらず。
口元が僅かに上がっていた……変態共が。
「“3年Sクラス”のナタリア・スーの交友関係を探れ。くれぐれも勘付かれるなよ」
「……3年? それもSクラスって……ほ、本気で言ってんの?」
「あぁ本気だ……何だ、不安か?」
「「「……っ」」」
ニコは片腕を摩りながら視線を逸らす。
他の二人も浮かない顔をしていた……まぁこいつらにとっては不安だろうさ。
魔法騎士養成学校には一学年ごとに七つのクラスが存在する。
本来はAからFまでのクラスのみであり、学校の説明会でもSクラスが紹介される事はない。
それは何故かといえば、Sクラスが努力どうのこうので入れるクラスではないからだ。
Sクラスは化け物たちの為の特殊クラスで。
新入生の中でも優秀である筈のニコですらも入る事を許されなかった。
彼女はいわば、常識の範疇での“優等生”であり。
Sクラスは問題がありながらも、戦闘においれは群を抜いた強さを有すると言ってもいい。
特別枠であるからこそ、代表戦にも出る事はない。
既に力を計る必要が無いからこそ故の待遇だ。
表立って公表される事はない。
入学をすれば分かる程度で。
真面に学校生活を送っていれば、奴らと関わる機会なんてあまりないだろう。
何せ、奴らは基本的な授業を免除されている代わりに。
国からの要請で騎士団と同じように――戦場へと出ている。
魔物の討伐に、敵対勢力の排除。
奴らは国家に属しており。
学生でありながら、既に兵隊として運用されていた。
ならば、何故、奴らが学生という身分を与えられているのか……残念ながらこれは詳しくは分からない。
ただ、大体の推察は出来る。
それは年齢の問題であったり。
学生という隠れ蓑があれば、本来、騎士として出来ないような汚れ仕事もさせられるからだろう。
調べた限りでは、奴らの存在は騎士団の記録には書かれていない。
つまり、Sクラスは兵として書かれていない“空白の存在”だ。
……勇者を探す目的はあるだろう。が、如何に戦闘力が高くとも勇者には至れない。
勇者とは全てにおいて完璧でなければならない。
人々の模範となり、あらゆる敵を殲滅し。
希望の象徴として存在するのが勇者で――が、それは表の奴らの顔だ。
俺が勝てなかった存在。
奴は間違いなく勇者だ。
王国を愛し、市民たちを愛し、平和を愛する存在だ。
が、奴の愛するものの中に――男は含まれていない。
奴こそが、全てのメスガキの頂点。
俺が最終的に分からせる事になる――“最終目標”だ。
人類最強であり、生物の頂点に君臨する女王。
他を寄せ付ける事の無い絶対的な存在で。
奴一人によって、他国からの侵略は無いとさえ断言されていた。
現時点で俺が奴に挑んで勝てるかどうかは俺にも分からない。
それほどまでの存在であり、もしも戦闘になるのなら……俺であっても死を覚悟しよう。
負けはしない。
が、余裕をもって勝てると侮る事はしない。
侮れば最期であり、奴に対しては最初から全力だ……思考が逸れたな。
「「「……?」」」
「……危険はあるだろう……が、少なくともバレたとしてもアイツはお前たちに危害は加えない」
「……何でそう言い切れるのよ。まさか、そう言って私たちを騙そうって」
「――綺麗だからな」
「「「……え?」」」
奴らは俺の言葉に驚き固まる。
俺は奴らの顔を見ながらくすりと笑う。
「お前たちは綺麗な顔をしている。だから、アイツにとってはお前たちは保護対象だ……どうした?」
「……!!! ななななな何でもないわよ!! こ、このぉ……っ!!」
「へ、へん!! そ、そうですかぁ!! あぁはいはい!! 当たり前じゃん!! 私たちってモデルの勧誘もあったしぃ!? は、ははは!」
「……ふへ♡」
ニコは顔を真っ赤にし、腕を組んでそっぽを向く。
サキの顔も真っ赤であり、髪を弄りながら聞いてもいない情報を言ってきた。
ユリの奴は片手で口元を覆うが、変な声が漏れていた……単純な奴らだ。
「……まぁいい……これを渡す。お前たちの情報は登録済みだ」
「……“通信石”?」
奴らに渡したのは、特殊な紐で繋がれた青い石だ。
元々は一つの大きな
砕いて術式を刻み、血を染み込ませる事によって。
小さくして“
一つの石に、互いの血を染み込ませる必要があるが。
登録自体は無限に等しいほど行える。
欠点があるとすれば、距離が長いほどに魔力の消費が激しくなる事だが。
その解決策として、俺の魔力を液状化させたものを染み込ませた紐をつけてある。
アレだけでも、別の大陸から通信を繋げたとしても。
半年分は通信が出来るほどの量である。
それを説明すれば、ニコの奴はたらりと汗を流す。
「……アンタ、やっぱり……まだ、隠してるのね?」
「……話す必要は無い。お前らは俺に敗れた――負け犬だからな」
「「「……!!」」」
奴らはぎりっと歯を食いしばる。
悔しそうな表情。
だが、頬が赤い事から僅かでも喜んでいると感じた……変態共が。
俺は小さくため息を零す。
そうして、最初にサキとユリの肩に触れて――飛ばす。
「ちょ!?」
「心配するな。屋上に飛ばしただけだ。人はいない……まぁ、殺されはしないが……何かをされるかもしれないな」
「な!? 何かってな――」
奴が質問する前に。
俺は奴の頭に触れて飛ばしてやった。
俺はそうして、魔力探知を使って学校中を探知し……これだな。
運の良い事に奴は学校の敷地内にいた。
倉庫の中におり……二人か?
何かをしている様子だった。
俺は深く考える事も無く――倉庫の近くに飛ぶ。
「――! ――?」
「――っ! ――!!」
「……ふむ」
一瞬、抵抗感を感じた。
恐らくは結界を貼っていたんだろう。
気づかれないように、すぐに結界を貼り直した。
すると、倉庫の中から奴の声と別の女の声が聞こえて来る。
激しく動いている音であり……なるほどな。
どうやら“お取込み中”のようだ。
結界は展開していても、張り直しに気づかないほどに熱中している。
俺は好都合だと、眼に魔力を流し。
頭の中で透視の魔法式を構築する。
そうして、意識を集中すれば……はぁ。
「……」
合体していた――これ以上は言うまい。
奴が下で、相方が上だ。
汗だくで、奴が言葉攻めして……いや、語らんでいい。
俺は真顔でその行為を眺める。
昼休みの僅かな時間で何をとも思ったが。
Sクラスは明確な授業が無いからこそ、関係ないんだとすぐに分かった。
が、相手は恐らくはSクラスの人間ではないだろう。
面の良い、元々はおしとやかそうな娘で……終わった。
満たされたように二人は抱き合う。
獲物を探る為にやって来たのに。
なんてものを見せてくれたのかと内心で悪態をつく。
……二回戦は……しないよな?
もしやったら呆れる。
いや、もう此処にいる必要は無いんじゃないか。
有用な情報でも手に入るのかと思ったが……帰るか。
俺は透視を止めて帰ろうとし――
「そういえば……勇者アリス・クラフト様の妹さん……落とせそうですか?」
女が呟いた言葉。
それを聞いて、俺は帰るのをやめた。
「あぁ? マリアちゃんの事か? うーん、どうやろうなぁ……あの娘、結構お堅い感じやし?」
「あら、それって……私が軽いって事?」
「なんや嫉妬かいな? ふふ、可愛いなぁ♡ 違う違う! 君はぁ……そう、柔らかいんや! 特に――こことか?」
「きゃ♡ もぉ」
奴が女子生徒の胸に手をあてる。
俺は嫌そうな顔をしながらも。
マリアと勇者アリス・クラフトの名前によってようやく理解した。
……まさか、アイツに妹がいたとはな。
勇者アリス・クラフト。
他の勇者たちとは違い。
真っ当な部類の存在で。
俗にいう苦労人であり、大抵の厄介事は奴が解決している。
常識があり、男に対してもさして偏見や悪感情は無い。
平等で公正で、奴の部下の中には男も多い。
実力主義者であり、そういったところも部下に慕われている理由なんだろう。
マリアはそんな模範勇者様の妹で。
何故、Sクラスの百合女が執着するのかようやく理解した。
……顔もそうだが……恐らくは、血筋だな?
遥か昔の時代であれば。
考えられなかった事ではあるが。
現在の世界であれば、女同士の結婚は当たり前で。
何なら、“ある儀式”を行えば、女でありながら互いの子を産む事も出来る。
そういった事もあり。
男という存在には価値が無くなって行って。
現在では、男というだけで迫害を受ける国もあるらしい……また、思考が逸れたな。
兎に角、浮気性の奴であろうとも。
勇者の血を継いでいる存在は特別だろう。
故にこそ、この前のように偶然を装って近づいてきたのか。
マリアの反応からして一度や二度ではないだろう。
嫌われるほどには会っており。
彼女に対して粉をかけようとする存在がいれば。
奴が自らの手で釘を刺してまわっている……そういった所かな?
段々と奴という存在を理解し始めた。
元々、奴の事は知っていたが。
それはあくまでもプロフィールでの情報だったり。
成長した段階での奴の情報だ。
奴は優秀であり。
学校を卒業した後に、騎士団の正式な団員となる。
そうして、僅か数年でエースと呼ばれるほどの存在になるのだ。
奴と交戦した記憶はない。
が、マサハルの処刑にも少なからず関わっていた。
恐らく、俺が一度だけ数名の勇者も巻き込んで大規模な襲撃を行った時。
アイツは他国へと任務にて渡っていたのだろう。
俺自身も、一度に多くの敵との交戦はその時は避けていた。
……まぁ結局、その時も俺は敗れたがな。
苦い記憶だ。
が、忘れる事はしない。
敗北と失敗は、覚えてるだけで――力が湧いて来る。
俺が思考をしていれば、アイツは愛人を抱き寄せる。
「……まぁ、マリアちゃんは……近々、手に入れたるけどな♡」
「……」
奴の言葉を聞いて、俺は思考する。
奴がどうやってマリアの心を射止める気か。
それを考えれば、力に絶対的な自信がある奴の事だから。
恐らくは、自らの力をアピールする舞台装置を用意する筈だ。
近々というワードから、何か重要なイベントが発生すると考えられる。
考え、考え、考え……待てよ?
クラフト家には、アリス・クラフト以外の勇者が存在した筈だ。
既に、引退している身であるが。
生きている筈であり、お家の事はそいつが管理していると何処かで聞いた気がする。
そして、クラフト家は代々、優秀な人間を迎え入れる為に、“とある儀式”を行っていた筈だ。
テストと言っても良い。
クラフト家はその儀式を通して。
自分たちの才能の限界を伸ばしていった。
その結果、勇者という最高の存在を二人も輩出した。
名誉ある事であり、もしも、まだ行っているとすれば……なるほどな。
「……ふっ」
「――ッ!」
俺は笑みを浮かべて――自室に戻る。
危なかった。
奴の狙いが分かって、少しだけ魔力が出てしまった。
行為が終わった状態の奴は気づいて攻撃を仕掛けて来た。
が、俺は転移で戻って来た。
今頃は倉庫は大変な事になっているだろうが……ふっ。
「……アイツらに命じてあるが……まぁいいか」
奴の狙いが分かった今。
奴の交友関係を聞いたところで対して行動方針に変更はない。
が、一々奴らに与えた命令を撤回するのは手間だ。
奴ら自信も命じられる事に喜んでいる節がある。
故に、気持ちよく仕事をさせておけば、一々でしゃばる事も無いだろう。
俺はそう決めつけて……と。
微かに鐘の音が聞こえた。
授業が始まる頃であり。
俺は休むのも面倒だと考えて、早々に教室に戻ろうとする。
「……マリア・クラフト……メスガキではないが……利用価値はありそうだな」
俺は薄く笑みを浮かべる。
元より、善人を気取る気はない。
危害を加えるつもりはないが。
利用できるのなら何であれ利用する。
俺はメスガキ共を分からせる“悪”として――ナタリア・スーを分からせる計画を練っていった。