メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった   作:カレーパン

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第11話:クラフト家の儀式

 日常を送る。

 授業を受けて、メスガキ共を躾。

 奴らが持ってきたどうでも良い情報を聞いて。

 平和な時を過ごして――“非日常”が訪れる。

 

「……」

 

 朝霧に包まれて。

 太陽が静かに昇っていく。

 周りには雪が積もっており。

 吐息は白くなっていた。

 

 獣道のように続く道。

 ぐねぐねと曲がりくねっているが。

 要所要所で石の鳥居が置かれているので道を間違える事はない。

 

 学校は休んだ。

 馬鹿共は理由を聞いてきたが。

 電流を流して強制的に黙らせた。

 俺は一人で、王都から離れた山にやって来ていた。

 

 俺は学生服を脱ぎ、何時もと違う装いで――“参道”を歩いていく。

 

 黒尽くめであり、フードを目深く被る。

 顔には狐の仮面をつけていて。

 この姿からは、男であるという情報以外には何も分からないだろう。

 

 俺は歩く。

 険しい山道を登って行けば。

 途中途中で――“人や魔物の死体”が転がっていた。

 

 この山は、俺たちの王都から五十キラも離れた場所にある“霊山アラヤ”だ。

 遥か古の時代に、大陸を作り上げたとされる神。

 神が流したとされる血の一滴が、この山を作ったと言い伝えられていて。

 古来より、この山は多くの武人の修行の場として存在していた。

 

 この山は、上へあがれば上がるほどに魔素が濃くなっていく。

 此処に存在する魔物たちは上に行くにつれて力を増していくとされていた。

 故にこそ、上へと昇るのであればそれ相応の覚悟がいる。

 

 魔素に対する耐性が無いものであれば。

 濃い魔素を吸い込んだだけで意識を失うだろう。

 俺のような特殊な存在であれば問題はないが……さて。

 

「「「―――ッ!!!!!」」」

 

 俺が足を止めれば――虚空から魔物が姿を現す。

 

 周りの景色と完全に同化していた。

 ぎょろりとした目玉に。

 巨大な緑色のトカゲのような姿。

 二十メーテラはある魔物で、それが合計で十体。

 大きく口を開けて飛び掛かって来て――

 

「――退け」

「「「――ッ!!?」」」

 

 俺は一言声を発し――奴らを木っ端みじんに吹き飛ばす。

 

 まるで、蚊を手で潰すように。

 奴らの姿は消えて、血しぶきだけが舞っていた。

 俺は再び歩き出す。

 

 魔物たちはまだいるが……理解したか。

 

 力の差をハッキリと分かったようだ。

 力あるものはすべからく利口であり。

 奴らとて腹は減っていても、死にに行くような真似はしない。

 強き者ほどしたたかなのだろうな。

 そう思いながら、まだまだ続く道の先を俺は見つめた――

 

 

 ◇

 

 歩いて、歩いて、歩いて――辿り着いた。

 

「「「……!」」」

「……ふっ」

 

 頂上であり、今までの簡素な鳥居とは違い。

 先ほど潜ったものは、魔法式が組み込まれた特殊なものだった。

 大きな赤と黒を基調とした神社が聳え立ち。

 空には龍の姿をした魔物も飛んではいるが。

 奴らはこの空間内には入る事が出来ないようだった……結界だな。

 

 大規模な結界であり。

 恐らくは、力ある魔法使い十数人が交代で結界を維持しているのだろう。

 

 神社の敷地内に足を踏み入れれば。

 武芸者として優れた才能ある――“メスガキ共”が集まっていた。

 

 女、女……やはり、男はいないか。

 

 道すがら男の死体はあったが。

 頂上には辿り着けなかったようだ。

 メスガキの他にも、巫女服を着た女もおり。

 アレらは管理者側の人間である事は一目瞭然だった。

 

 奴らの中の一人が入って来た俺に一礼し。

 “不思議な気配のする木札”を渡すだけで説明もせずに去っていった。

 

 俺が木札を手の中で転がしながら眺めていれば……メスガキ共の声が聞こえて来た。

 

「……男? 何で……運がいいのか、悪いのか……ふふ♡」

「如何にも強いって感じの格好をして……後で泣く事になるわよ、あれ♡」

「ふふ、もしも、始まったら……アイツ、やっちゃおうかなぁ♡」

「……」

 

 立ち振る舞いから腕に相当な自信があるのだろう。

 洗練された闘気に、持っている得物も一級品だ……が、俺にとってはメスガキでしかない。

 

 俺は木札を握り、ポケットに両手を突っ込む。

 そうして、鳥居の柱に背を預けて始まるのを待とうとし――

 

「……あれぇ? なんやなんやぁ。場違いが人間がおるやないかぁ? えぇ?」

「「「……!!」」」

 

 メスガキ共の表情が一変する。

 奴らは鳥居を潜って来た存在を見て――警戒心を跳ね上げた。

 

 声で誰なのかは分かっていた。

 チラリと見れば……やはりか。

 

 特徴的なプリン頭に。

 凍えるほどの寒さだというのに。

 ファーのついた青いジャケットと下には黒いTシャツ一枚で。

 普通の長い黒ズボンと革のブーツを履いた目つきの悪いメスガキ。

 

 Sクラス所属――三年、ナタリア・スーだ。

 

 メスガキ共は警戒しているが。

 先ほどの発言は奴らに対してではなく――俺に言ったものだ。

 

 奴が入って来てすぐに、俺の気配を感じて見て来たが。

 隠された力量は計れなかったようだ。

 奴は明らかに舐め腐った態度で此方に近づいてきた。

 

 奴はへらへらと笑いながら俺を見つめる。

 身長ででいえば、俺の方が高いが。

 それでも、奴は力は自分が上だと信じて疑っていなかった。

 

「お前、どっから入って来たんや? 護衛連れのぼんぼんか? おーい、こいつの保護者は何処やぁ? さっさと家に連れて行ってくれんかぁ? イカ臭くてかなわんわぁ。あぁ、くっさくっさぁ♡」

「「「……ふふ♡」」」

 

 スーは鼻を摘まみ。

 手を振りながら、俺を嘲る。

 他のメスガキたちも警戒を解き。

 奴と同じように俺へと嘲笑を向けてきて――俺も仮面越しに鼻の部分に手をあてる。

 

「確かに、臭いな」

「……はは、自分でも分かるって相当やなぁ! いいでいいでぇ、正直なのは良い事や。ほんなら、とっとと」

「――あぁ、雌臭くて溜まらんな。くくく」

「……あぁ?」

 

 俺は仮面の下でこれでもかと笑みを浮かべた。

 奴から笑みが消えて――奴の拳を払う。

 

「――!」

 

 奴は驚く。

 そうして、距離を取って来た。

 

 自らの手を見れば、煙が出ていた。

 かなりの速度で放たれた拳。

 が、実際には速いというよりも……くく。

 

「……お前……どこのもんや」

「何処のとは……分からんな」

「……惚けるなや。ウチの一発……見えとったな?」

 

 奴は拳を構える。

 最初の舐め腐った態度は消えて。

 警戒心は最大であり……パキリと音がした。

 

 俺はもう片方の手を出して――中身を見せてやった。

 

「……身代わり石……はっ、そういう事かいな……あほらし」

「くくく、手品は種を明かす瞬間が面白いだろう?」

「……お前、次ウチをいらつかせたら……マジで殺すからな?」

 

 奴は殺気を放ち鋭い眼光を向けて来た。

 俺は笑みを浮かべながらも、足を震わせるように演技をする。

 すると、周りのメスガキやスー自身も俺がただのハッタリ野郎だと認識したようだった。

 

 奴は舌を鳴らして離れて行く。

 俺はホッと息を吐くように演技をした。

 

 俺が奴に見せたもの。

 奴が言っていたように、それは“身代わり石”だ。

 

 身代わり石とは、魔石の一種であり。

 多くの魔力を注ぎ続ける事によって。

 一度のみ、死を回避する奇跡を成す事が出来る。

 

 ……まぁ実際には、何とかなる程度の死を覆すだけだがな。

 

 今の状況でいえば。

 奴の拳が本来は当たっていたところ。

 身代わり石の効果によって。

 俺の手が勝手に動き、偶々、拳を払う事が出来た……そういう風に見えていた。

 

 実際には、身代わり石が無くともどうにでもなったが。

 敢えて使う事によって、奴らに俺が弱いという認識を植え付けた。

 まぁそれ以外にも、奴の魔法の効果をもう一度確かめておこうという理由もあったが……くく。

 

 大体の事は分かった。

 喫茶店で最初に見た不思議な光景。

 奴が放った球が一瞬消えたように見えた。

 そして、先ほどの拳もそうであり。

 俺の目には奴の拳の動きが一瞬消えたように見えていた。

 

 加速……いや、違う。

 

 単純な加速で、消えるようには見えない。

 ならば、瞬間移動の応用か……それも違う。

 

 奴のアレは、その二つの狭間。

 何方の性質も持つ特異な魔法だ。

 ループをする中で、奴に似た魔法を習得した存在を見た事はある。

 完全に同じものではないだろうが。

 構築している式は似ていると言ってもいいだろう。

 

「……」

 

 俺は薄く笑みを浮かべる。

 後は時を待つだけで――鈴の音が聞こえた。

 

 瞬間、全員が姿勢を正す。

 見れば、神社の戸が開き。

 中から――神主が現れた。

 

 神主として正装姿のよぼよぼの婆さんで。

 その近くにはきっちりとしたスーツを着た別の婆さんもいる。

 違いがあるとすれば、そいつは実年齢よりも姿は若く。

 引退しているとはいえ、まだまだ力が感じられていた。

 

 そう、アレこそが引退した――元勇者だ。

 

「……」

 

 白髪を団子のようにし。

 黒いスーツを完璧に着こなして。

 正しさの塊のようなきりっとした顔立ちをしていた。

 奴は神主と共に現れて、集まった総勢――三十名の猛者を見渡す。

 

「……皆さま、お集り頂きありがとうございます……私はクラフト家当主であるイルネと申します。この日この時間に此処に集まられたと言う事は、皆さまが今回、儀式に参加して頂ける参加者の方々で間違いないと私は考えておりますが……どうですか?」

「「「……」」」

 

 メスガキ共は静かに頷く。

 間違いはない。

 皆が皆、儀式に参加する為だけに此処へとやって来た。

 イルネも頷き、両手を広げる。

 

「私から皆様への願い、それは――勝ちなさい。そして、生きてこの場に戻りなさい。ただそれだけです」

「「「……っ!!」」」

 

 イルネは語る。

 儀式は三年に一度行われている。

 その度に、多くの猛者が此処に集い――死んでいくと。

 

「儀式は過酷なものとなります。我々、クラフト家は代々。優秀な存在を求めては、この儀式を行ってまいりました。残念ながら、前回は儀式を終えた者は一人もいませんでしたが……今回はどうやら、違った結界になりそうだと私は思っております」

「……はは、そりゃそうや……ウチがおるんやからな」

「……」

 

 イルネは笑う。

 スーは自分がいるからだと信じて疑っていない。

 が、一瞬、イルネが俺に視線を向けて来た気がするが……まぁいい。

 

 全員が闘志は十分で。

 今すぐにでも始めろと誰もが得物を硬く握る。

 スーの奴もそうであり、戦いたくてうずうずしていた。

 

 気合十分の参加者を見て。

 イルネは静かに頷く。

 

「皆様にお渡しした木札。それは肌身離さずお持ち下さい。もし、無くされましたら……二度とこの地へ戻れない。そう心に留めておくように」

 

 ……あの木札には、やはり魔法式が組み込まれていたか。

 

 そう複雑なものではない。

 恐らくは、印となるもので。

 これが帰りの方角を教えてくれるのだろう。

 

 イルネは神主に視線を向ける。

 神主の婆さんは頷き――両手を合わせる。

 

 

 瞬間、俺たちの足元に――魔方陣が展開された。

 

 

「「「……」」」

 

 メスガキ共は慌てる事無くイルネを見る。

 イルネは俺たちを見つめながら――儀式の成功を祈った。

 

 

 

「皆さま、“常夜の街”にて――“聖血”を捧げてください」

「「「……!!」」」

 

 

 

 陣は輝きを増し。

 俺たちは光に包まれて――――…………

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