メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった   作:カレーパン

14 / 16
第13話:蘇りし強欲の王(side:ナタリア)

「なんや、もう終わりかかいな……しょぼ」

「――――…………」

 

 目の前で四肢がバラバラになったアンデッドの魔物が――死んだ。

 

 奴はかすれた声を上げながら。

 体を砂のようにして消えて行く。

 殺したのは勿論ウチであり。

 少なからず、ダメージを与えていたブス共には砂粒ほどの感謝が……いや、無いな。

 

「た、す、け……ぇ」

「あぁ? 自分でなんとかせぇや。覚悟あって来たんやろ?」

 

 辛うじて息がある者が数名。

 近くにおった奴がウチの足に触れて来た。

 ウチはその手を払って、冷めた目でブスを見つめる。

 

 健闘はしていたけど、所詮は烏合の衆やった。

 期待なんかしてへんかったし。

 元より組むつもりなんて無かった。

 

 ……それに、下手に組んで何人もクリアしたら……マリアちゃんを手に入れられんしな♡

 

 マリアちゃんを手に入れる為に。

 ウチは態々、クラフト家の儀式に参加した。

 危険はあったが、金を情報屋につぎ込んだお陰で。

 本来は秘匿されている筈の儀式についてよく知る事が出来た。

 

 出て来る魔物の特性も当たっていて。

 情報さえあれば、対処のしようは幾らでもある。

 如何に、Bランクの実力のある魔物とて。

 戦い方や特性が分かっていれば対して怖くはない。

 故に、ウチは一人で此処に来た。

 

「……さて、と」

 

 残りの魔物は――二体。

 

 それで儀式は完了や。

 ウチは晴れてクラフト家の一員であり。

 望めば、マリアちゃんとの婚姻も……ふっ♡

 

 さくっと殺して終わろう。

 そう思いながら、ウチは鼻歌を歌って――

 

 

 ◇

 

 

「……どういう事や……これは」

 

 目の前に広がる光景。

 それは異常であり――魔物が死んでいた。

 

 もう一体は完全に死んではいる筈だ。

 探しても影も形も無かったからな。

 一時間も掛けて魔力探知をしても引っかからないのがその証拠で。

 唯一、魔物としての姿を留めているこいつも――死んでいる。

 

 死んではいるが。

 今までの魔物のように消えて無くならない。

 砂として広がり切ってはいるが。

 魔物としての存在は残っている。

 目に魔力を流しながら、魔物の死骸を観察し……おいおい、マジか?

 

「……時を止めた……いや、消えてなくならないように保存してんのか? 嘘やろ……そもそも、こんな事して一体何が――ッ!」

 

 

 ウチは考えを中断し――後ろを振り返る。

 

 すると、そこには――“悪魔が立っていた”。

 

 

「おいおい、悪魔って……冗談やろ?」

「……」

 

 異形の存在。隠しきれないほどの存在感を放つのは――悪魔だ。

 

 悠然とその場に立ち。

 下顎が無い髑髏の顔で、空いた眼窩には闇の塊が蠢いていた。

 頭から後ろへと無数の黒い縄のようなものが伸びている。

 両腕は刃が無理矢理に差し込まれたような歪な形状で。

 入りきらなかった刀身が、腕の関節を突き破り出ていた。

 服は赤黒い囚人が切るようなもので。

 さび付いた鎖が無数についた拘束具のようにも見える。

 

 体長は2メーテラを超えるほどで。

 理性はあるかもしれんが、言葉を掛けても意味はないやろう。

 ジッと此方を見つめながら、だらりと刃と一体化した腕を下げている。

 

 殺気は感じない。

 戦闘を行うのはウチでも危険や。

 

 此処は一旦退いて――ウチは魔法を発動する。

 

 瞬間、ウチの体は横へと一瞬で飛ぶ。

 元いた場所を見れば、悪魔が立ち――両手の得物を振り終えていた。

 

「――ッ!」

「……」

 

 本気や。本気でウチを――殺す気や。

 

 マジもんの殺気であり。

 これほどに冷たく鋭いもんは久しぶりで――魔力を解放する。

 

「ははは!! おもろいでッ!! いいわ――やったろうやないかァ!!!!」

「……」

 

 奴は此方を見て体を揺らし――ウチは奴の目の前に躍り出た。

 

 ウチはそのまま拳を放つ。

 瞬間、何十もの拳打が奴の体に突き刺さる。

 奴はガードも出来ずに諸に受けて。

 そのまま後ろへと吹き飛び――奴は身を翻して地面を滑る。

 

 奴の姿を視認し――瞬で後方へ飛ぶ。

 

 奴を見ればまた攻撃を終えた後の姿勢だった。

 見えない。影も形も――速い。

 

 圧倒的なまでの攻撃速度。

 魔法使用時のウチと並ぶほどで――やけどな!!

 

 ウチは笑みを深めて――魔法を連続で使う。

 

 瞬間、迫って来た奴の攻撃を回避し。

 そのまま地面を滑り、一瞬で奴の背後を取る。

 そのまま、その場でしゃがめば奴の攻撃は空を切る。

 足払いで奴の体勢を崩す。

 奴は攻撃を仕掛けてきたが――そこにウチはいない。

 

「はは!!」

「……!」

 

 奴の背後を再び取り――連続の拳打を見舞う。

 

 魔力で強化した拳。

 それが合計で三十発以上だ。

 奴の体は勢いよく吹き飛び。

 砂を巻き上げて近くにあったレンガの建物に突っ込む。

 

 ウチは静かに息を吐き――魔法によって後ろへと一気に飛ぶ。

 

 瞬間、眼球スレスレに風の刃が通過していくのが分かった。

 ぞくりと悪寒が走る。

 見れば、吹き飛んでいた筈の奴が前に立っていた。

 体には傷が出来ていて、血を流してはいるが……やばいやん。

 

 ダメージは与えられている。

 が、まるで安心できない。

 その理由は単純な速さに加えて――あの得物や。

 

 明らかにアレは普通ではない。

 斬られたら最期であり、掠めてもダメな気配がする。

 魔剣や妖刀の類で……ほんま、運が無いな。

 

「マリアちゃんの為や――本気でいくで?」

「……」

 

 奴はウチの言葉に反応しない。

 が、ゆらゆらと体を動かし――ウチは上に飛ぶ。

 

 瞬間、魔力の刃が風に乗り。

 周囲一帯に広がっていった。

 それが残っていた建物を綺麗に両断する。

 それを見ながらウチは――地面に一瞬で降りる。

 

 奴は刺突を繰り出すがそこにウチはいない。

 ウチはそのままがら空きの奴の胴体に――行かない。

 

 そのまま斜めに移動し。

 手に持っていた金属球を――奴に打ち出す。

 

 魔力で強化した上に、ウチの魔法で速度は跳ね上がっている。

 弾丸以上の威力で――が、奴は全て弾いて見せた。

 

 瞬きの合間に――奴が至近距離に迫る。

 

「――ッ!!」

 

 魔法を発動し――逃れる。

 

 ざりざりと地面を滑りながら。

 奴から距離を離し、呼吸を整える。

 何とか避けられて……!

 

「……マジか」

 

 服を見れば斬られた跡が……やばい。

 

 アイツは段々とウチの動きに適応している。

 驚異的な速さであり、このままでは何れ――やるしかない。

 

 ウチは両手を広げて、腰で構える。

 掌を開いた状態で足を肩幅に開く。

 そうして、解放した魔力を魔法式と己の拳へと集中させる。

 

 勝負は一瞬や。

 長引けばそれだけ死のリスクは高まる。

 耐久性の点であれば、脅威やない。

 だったら、一気に勝負をつけるまでやろう。

 

 ウチはそう考えながら意識を集中させる。

 奴もゆらゆらと体を揺らし――来る。

 

「――ッ!!!」

 

 カッと目を見開き――魔法を連続で使用する。

 

 瞬間、無数の斬撃の隙間を――飛ぶ。

 

 が、完全には避け切れなかった。

 攻撃は体に当たり――パキリと音がした。

 

 

 あの男同じや。

 ウチも――“保険”を用意しておいた。

 

 

 体に残った魔力が。

 体に触れた斬撃からウチを救った。

 無意識の防御であり、“身代わり”の効果で――がら空きの奴の胴が見えた。

 

「死ねやッ!!!!!」

 

 ウチは両手を一気に奴へと突き出し――瞬間、破壊音が連続して響いた。

 

 ウチの全力の魔力。

 それを纏わせた突き。

 それが何十何百も放たれて――奴は遥か遠くまで吹き飛んだ。

 

「……うぐぅ!?」

 

 瞬間、ウチの体から血が噴き出した。

 魔法の使用は問題ない。

 ただ、肉体の強度以上に――“時を飛ばし過ぎた”。

 

 肉体の稼働が限界を超えた。

 大きな反動で、筋肉が痙攣しているようや。

 全身に痛みが走り、手足が震えている……ま、上出来や。

 

 悪魔の気配を探れば……来んな。

 

 かなりの距離が離れたが。

 アイツなら一瞬で戻って来れる。

 戻ってこないという事はウチの勝ちであり……妙やな。

 

「……アイツの仕業じゃなかったら、誰が……?」

 

 ゆっくりと砂の魔物を見つめる。

 悪魔を始末しても、砂の悪魔が消える事はない。

 ずっとそのままで……いや、待てや。

 

 

 もしも、もし……あの悪魔が、誰かによって召喚された存在なら……ありえへん。

 

 

「クラフト家の儀式いうても、そこまで命を張るなんて存在が、おる筈が…………ぁ?」

 

 

 ウチが否定しようとすれば――“何かが肩に触れた”。

 

 何かと思って視線を向ければ――“狐の面が此方を見ていた”。

 

 

「――ッ!!」

 

 

 ウチは考える間もなく拳を振るい――“奴は消えた”。

 

 

 呼吸を乱しながら周囲を警戒する。

 すると、奴の声が聞こえて――上!?

 

 視線を向ければ――ウチが殺した筈の男が宙に浮いていた。

 

「お前、どうして……そうか。お前が、あの悪魔を……どういうつもりや!」

「どういうつもり……ふふ、そんなの決まっている……お前の為だよ。ナタリア・スー」

「あぁ? 何言って…………お前!!!」

 

 ふざけた事を抜かすな、そう言ってやろうとし――奴の仮面が消えた。

 

 奴の素顔が露になれば。

 嫌でも誰かなのかが分かった。

 あの男だ。マリアちゃんと喫茶店にいた陰キャであり。

 奴はフードを取り、髪をかき上げて――笑みを深めた。

 

「再会を祝おう。そして、今宵お前は――俺のものとなる」

「……ハッ、ウチが? お前の? 冗談は顔だけにしてくれや……お前、限界なんやろ?」

 

 ウチは笑う。

 ウチが限界のように、奴自身も悪魔の召喚によって大きな代償を支払った筈だ。

 寿命か。それとも、自らの魂か。

 何方にせよ、悪魔が死んだ今。

 奴に残された時間は無い。

 悪魔が死ねば払うべきものも即座に支払われて――奴が噴き出す。

 

「ふ、はははははは!!」

「……何がおもろいんや、ボケが」

「あぁ……すまんな。いや、そう思うのが普通だったな……これだろ?」

「――ッ!!」

 

 奴が指を鳴らせば――奴の隣のあの悪魔が立つ。

 

 傷だらけであるが生きている。

 その事実を認識して、ウチは――

 

 

「――“戻れ”」

「……は、ぁ?」

 

 

 奴が戻れと言えば……悪魔が消える。

 

 

 それはつまり、つまり……え?

 

 

 おかしい、何もかもが変だ。

 悪魔を召喚し、ウチを殺す気だったんじゃないのか。

 殺す事はせずとも、いたぶるなり……でも、消した。

 

 消したのなら代償はどうなる。

 奴を見れば余裕そうで。

 何かを支払ったようには見えない。

 

 

 どういう、どういう、何が、どうして……でも、分かる事はある。

 

 自らの意志で消したのなら……そうか。

 

 

「……舐められたもんやな……手負いの内なら、簡単か? ふざけ」

「――“癒しよ”」

「………………あ、ぁ?」

 

 奴が片手を此方に向けて魔法を発動する。

 ウチは一瞬身構えた。

 しかし、体が温かな光に包まれて――怪我や失った体力と魔力も全快していた。

 

 ウチは驚き固まる。

 分からん、何も分からん。

 こいつの目的も、こいつのやる事も――理解不能。

 

「お前――何がしたいんや?」

 

 ウチは笑う事も出来ず。

 たらりと汗を流した。

 奴を警戒しながら何とか言葉を吐き出す。

 すると、奴は笑って――

 

 

 

「お前を手に入れたい。そして――“分からせたい”」

「ウチを、分からせる……ッ!!!」

 

 

 

 奴の言葉を聞いて――背筋が凍り付く。

 

 奴は両手を広げながら笑った。

 ゆっくりと宙から舞い降りてくる。

 瞬間、隠された魔力が噴き出し。

 純粋な魔力だけでウチの体は――震えた。

 

 デカい。勇者ほどでなくとも――それに届きうるほどに。

 

 悪魔を殺せば終わる筈だった。

 が、それ以上の存在が控えていた。

 ラスボスであり、ご丁寧に体力を全快にさせて……上等や。

 

 奴は油断している。

 力があるからこその余裕で。

 その余裕をついて、今度こそ――殺したるわ。

 

 ウチが拳を構えれば。

 奴はケラケラと笑い――

 

 

 

「さぁ、ナタリア・スー。存分に――踊れ」

「――!」

 

 

 

 ウチは魔法を使用。

 奴との距離を一気に――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。