メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった   作:カレーパン

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第14話:最強は分からせを成す

 赤き月の下で――“ナタリア・スーは踊る”。

 

 魔法を使い“時を飛ばして”、俺の放つ魔力弾を回避。

 無数の青き光が奴へと飛び。

 奴は瞬間移動にも匹敵する速度で地上を駆けていた。

 軌跡に残るのは奴の魔力の残滓と残像のみ。

 一秒にも満たない時間で、奴は縦横無尽に駆け抜ける。

 

 速い――が、それだけだ。

 

 俺は笑う。

 すると、ナタリアの動きが変化する。

 奴は時飛ばしによる回避から一変。

 魔力で強化した拳で俺の攻撃を弾き――迫る。

 

「――シィ!」

 

 一瞬だ。

 瞬きも無い合間で迫り――奴の拳打を全て弾いた。

 

「チッ!!」

「ははは、まだまだ――いけるだろう?」

 

 俺が笑えば、奴は攻撃を仕掛ける。

 奴の無数の蹴りを片手で弾き。

 奴はそのまま後方へと飛び――瞬間的に、地上を滑るように移動した。

 

 速度だけなら、奴は一流だ。

 アレだけの速度を維持しながら、此方の動きも見ている。

 奴へと魔力弾を放ちながら、俺は目を細める。

 

 ナタリアはじぐざぐに動く。

 俺の視線を揺さぶり、連続して時を飛ばす。

 奴が視界から消えて――俺は拳を受け止めた。

 

「な!?」

 

 背後からの裏拳だ。

 奴が驚いているのが手に取るように分かる。

 俺はそんな奴から手を離し。

 にやりと笑って――魔力波で奴を吹き飛ばした。

 

「ぐぅぅ!!」

 

 奴は後方へと吹き飛び。

 そのまま滑るように移動していく。

 破壊された扉があった場所から建物内へと入り。

 姿を隠したかと思えば、一瞬で別の建物へと移る。

 

 建物から建物への移動。

 その間に壁を破壊して散弾銃のように瓦礫を飛ばしてきた。

 俺は笑みを浮かべながら、それらを一瞬で押しつぶす。

 奴は果敢に残骸による攻撃を続けて――消えた。

 

「……ほぉ」

 

 気配が――消えた。

 

 すぐに魔力探知を行う。

 が、無数の反応がある。

 ダミーであり、奴が持参して来たものだろう。

 他の魔物相手に使う筈だった仕込みだろうか。

 

 中々にしたたか。

 流石は戦いに慣れたメスガキ。

 そう考えて――弾丸を全て掴む。

 

「……!」

「ふむ、なるほどな」

 

 死角から放たれた金属弾。

 スリングショットで使う魔物を狩る為に使う用のものだろう。

 それに魔力を流した指で撃ち出したのか。

 奴の熟達した魔力の付与と魔法のコンビベーションで。

 下手な弾丸よりも速度も速さも桁違いだろう。

 

 俺は掌でそれらを転がす。

 そうして、炎によって焼き尽くし。

 どろりと垂れるそれを地面に捨てた。

 強化した耳によって、奴が舌を鳴らしたのが聞こえた。

 

 奴は、そのまま影に潜み――“奴の肩に手を置く”。

 

「やぁ」

「は――うごぉ!?」

 

 奴の腹に右こぶしを差し込む。

 バキバキと音を立て腹が凹み。

 奴は空気を吐き出しながら、建物の壁を突き破って外へと出た。

 

 奴は体を空中で回転させながらも。

 すぐに体勢を整えて地面へと瞬で着地し。

 そのまま全力で駆けて行く。

 

 速い――当然だな。

 

 奴の動きは常人には消えたように見える。

 かくいう俺の目にも消えたように見える時があった。

 が、あの魔法を何度も見ていればその構造式もおのずと分かる。

 

 

 アレは所謂――“時飛ばし”だ。

 

 

 スキップとも言うが。

 アレはその間の時が消えているのではなく。

 過程の時間を飛ばしているに過ぎない。

 

 奴の動きから見て、飛ばせる時間は五秒ほどだろう。

 つまり、奴は五秒の時間を“コンマ一秒以下ほどまでに短縮している”。

 

 それは瞬間移動では無いのかと思うが――厳密には違う。

 

 時飛ばしは、瞬間移動のように点から点へと移動するものじゃない。

 アレは線であり、その線を移動する時間を瞬間移動に思えるほどの速さで短縮しているに過ぎない。

 つまり、過程が存在し、その間に障害があれば――失敗に終わる。

 

 高速で移動する奴を見て――その間に転移する。

 

「あがぁ!?」

「ふむ」

 

 奴の顔面に俺の拳が刺さる。

 何もしていない。

 ただ間に転移し、拳を置いていただけだ。

 が、魔法を発動した状態の奴は止まれない。

 そのまま拳へと顔を吸い込ませるように移動していた。

 

 奴は鼻血を噴き出しながらも。

 即座に回し蹴りを放ってきた。

 俺は片腕でその攻撃を弾く。

 奴は、その弾かれた衝撃を利用し。

 体を跳ねさせて別の角度から蹴りを放つ。

 魔法が発動し、奴が五秒間に行える攻撃全てが迫って来る。

 

 俺はそれら全てを片腕で――受ける事無く奴の背後に転移した。

 

「――!?」

 

 奴は驚いていた。

 何せ、時を飛ばして無数の蹴りを放つのではなく。

 加速させた一撃を見舞う気だったからだ。

 それが見破られて空を蹴っている。

 俺はその光景を眺めながら――また転移した。

 

「チッ!!」

 

 奴は一瞬で此方へとパンチを繰り出すが。

 そこに俺はいない。

 奴は苛立ちながら、鼻から垂れる血を乱暴に拭く。

 そうして、汗を流しながら余裕の笑みを浮かべる俺を睨んできた。

 

「もう終わりか? 時飛ばしとて万能ではない。過程が存在するが故に、その分の体力の消耗も激しくなるだろうな。いわば、お前のそれは短期決戦向きといったところか」

「……べらべらべらべらと、男の癖に、口が達者やなぁ、えぇ? 女を殴るのがそんなに気持ちえぇんか? 最低のクズ野郎が」

「クズ野郎? 俺がそれなら、お前は――あばずれか?」

「――!」

 

 俺が顎に手を添えながら言ってやれば。

 奴は目を大きく見開き、顔に血管を浮かび上がらせた。

 魔力が殺気と共に噴き出しており。

 奴の怒りを上手く刺激できたと俺は内心でほくそ笑む。

 

 奴はゆっくりとポケットに手を入れる。

 そうして、赤い液体の入った小瓶を取り出した。

 

「……もうえぇわ。これはお前にはもったいないもんやけど……つこうたるわ。ありがたく思って――くたばれや」

 

 奴はにやりと笑みを浮かべる。

 そうして、指で瓶の蓋を弾き――中身を一気に飲む。

 

 

 俺は目を細めながらその光景を眺めて――瞬間、奴の体から凄まじい魔力が溢れ出した。

 

 

「……ッ!!」

 

 

 俺は驚愕の表情でそれを見つめる。

 奴の保有する魔力量――その限界を超えていた。

 

 溢れ出した魔力が炎のように揺らめいている。

 奴は笑みを深めて――姿が消える。

 

「どこ――あがぁ!!?」

 

 奴の姿を探し――腹に強烈な一撃が撃ち込まれた。

 

 俺は血反吐を吐きながら吹き飛び――頭が揺さぶられるほどの衝撃が撃ち込まれた。

 

 そのまま地面へと激突し。

 立ち上がろうとすれば――顔面を蹴りつけられた。

 

「あがぁぁ!!?」

「ほらほらぁ!! ――まだまだいくでッ!!!!」

 

 奴の声が響き――視界が弾けた。

 

 無数の攻撃。

 不可視であり、重く鋭い。

 それが何百何千と打ち込まれれば。

 俺の体は痣塗れになり。

 傷からおびただしい量の血が噴き出していった。

 

「舐めるなッ!!!」

 

 俺は魔力波を放つ。

 すると、奴の姿がようやく見えた。

 俺は血を吐き出しながら、奴に片手を向けて――手が細切れになる。

 

「あ――がぁぁ!!?」

「――うっさいねん」

 

 奴が俺の側頭部に――短刀を突き刺す。

 

 俺は一瞬、意識を失いかけたが。

 短刀を抜き放ち、奴へと攻撃を――瞬間、俺の顔面に奴の拳が刺さった。

 

「うぐぅぁ!!?」

「――きったな」

 

 俺は血と共に歯を吐き出し。

 そのまま建物を突き破りながら地面をバウンドし転がる。

 

「はぁはぁはぁはぁはぁ」

 

 

 仰向けに倒れた。

 全身から血が噴き出し。

 一部の骨が露出していた。

 

 全身が痛い。

 呼吸が苦しい。

 何故、どうして――奴が空を飛んだ。

 

「おらァ!!!」

「ほごぁ!!?」

 

 倒れる俺の腹に蹴りを見舞う。

 バキバキという音と共に内臓が潰されて行った。

 俺は盛大に血を吐き出す。

 奴は返り血を浴びながら――笑みを深める。

 

「あはぁ♡」

 

 奴が足を上げて――振り下ろす。

 

 凄まじい衝撃。それによって、地面が大きく割れる。

 俺は地面に体を埋めながらぴくぴくと痙攣する。

 奴はそんな俺から退き、髪を掴んで俺の頭を持ち上げた。

 そうして、冷ややかな目で俺を見つめた。

 

「うっわ。再生してるやん……きも」

「ゆ、ゆる、して」

「あ? 何て?」

「ご、ごめん、な――ッ!!?」

 

 奴は涙を流しながら謝る俺の顔面に――拳を放つ。

 

 ぶしゅりと血が噴き出し。

 俺は意識を朦朧とさせながら奴を見た。

 奴は邪悪な笑みを浮かべて――

 

「許すか、ボケ……殺して殺して――殺し尽くしたるわ♡」

「あ、ああ、あぁぁ」

 

 俺は恐怖に染まった目で奴を見つめて――――

 

 

 ◇

 

 

「ふぅ……こんなもんかぁ? ……うぇ、くっさぁ」

「……」

 

 奴は汗を拭いながら――肉片となった俺を見つめていた。

 

 俺は完全に死んでいる。

 奴はこれで大丈夫だろうと安心していた。

 砂の魔物も消えていっている。

 

「はぁぁぁしんどぉぉぉ……全く、なんやねんホンマ……報告するべきかぁ? いや、もう殺したし……あぁ勿体な。アレ一本手に入れるのにどれだけ出費が掛かると思ってんねん……死ね、死ね、死ね!! ド腐れがッ!!」

 

 奴は転がっている俺の肉片を踏みつぶしていく。

 俺の体は再生せず。

 そのまま液体になって消えていっている。

 奴は盛大に舌を鳴らし、視線を肉片たちから外した。

 

 

 

 これで終わり、これで決着――――否、これからだ。

 

 

 

「ふぅぅぅ、あぁ! 帰ってシャワー浴びて、そんで――――ぁ?」

 

 

 奴は伸びをして帰り支度を始めて――“空間の時が止まる”。

 

 

「……は、ぁ?」

 

 

 奴は驚き固まる。

 全ての時が止まった。

 砂の魔物も、瓦礫の落下も、風すらも――止まった。

 

 奴はゆっくりと俺の死体に目を向ける。

 肉片たちは完全に赤い液体と化していた。

 再生はしない、完全に死んでいる――奴の目にはそう映っていた。

 

 俺は霊体の状態で、血のたまりの上に立つ。

 そうして、笑みを浮かべながら両手を広げて――血が人の形を成していった。

 

「――ッ!!!」

 

 奴はすぐに状況を理解し攻撃を仕掛けて――後ろへと吹き飛ぶ。

 

「うがぁ!!?」

 

 鼻血を噴き出しながら地面を転がる。

 そうして、残骸の山へと突っ込んで目を瞬かせていた。

 俺は完全に肉体を再生させて。

 そのまま、服すらも元に戻した。

 手を開け閉めして感度を確認し――奴の拳で指で止めた。

 

「こ、のぉぉぉッ!!!」

 

 奴は限界を超えて魔法を使用。

 五秒を超えて、何十秒にもいおよぶ行動を短縮。

 俺の視界には無数の攻撃が見えていた。

 眼前を覆うほど、体全てに降りかかるほど。

 雨のようだと錯覚するほどの攻撃で――俺は全てを弾いた。

 

「――は、ぁぁ?」

「……ふは♡」

 

 奴の手足から血が噴き出す。

 奴は驚愕の眼差しで俺を見つめて――俺は笑みを深めた。

 

「……!」

 

 奴の体がぞくりとした。

 奴は戦闘を止めて逃走を計り――体の動きが止まった。

 

「あ、な、に、が……動か、へん!!」

 

 奴は動けない。

 振り返ろうとした姿勢のまま固定されていた。

 俺は触れていないのに。

 まるで、針で固定された昆虫標本のようで――俺は目を細めて笑う。

 

「楽しかったか。自分より格上の男を――いたぶるのは?」

 

 俺は問う。

 一人のメスガキに対して、その心を。

 すると、奴は汗を流しながらも――嘲笑を向けて来た。

 

「何、言っとんや……ハッ! お前こそ、女をいたぶるのが楽しいんやろ? 今まで虐げられてきて、やり返すんが楽しくて溜まらんのや。お前はクズや、最低最悪のド畜生で!! 女に相手にされへんカスみたいな」

「――あぁ、お前と同じだよ」

 

 俺は笑いながら奴の瞳を見つめる。

 すると、奴は笑みを消して殺気を俺に放つ。

 

「……あぁ? 何――うぼぉ!?」

 

 俺は奴の腹に何の強化もしていない拳を打ち込む。

 メリメリと音を立てて、奴の鳩尾に沈んでいく拳。

 奴は空気を吐き出し、口を魚のように動かしていた。

 

「同じだ。お前と同じなんだ。お前が男にするように、俺は女をいたぶるのが――楽しいんだ」

「……っ。最低、やな……クズが。死ね」

 

 奴は涎を垂らしながら、へらりと笑う。

 俺は奴の頭に手を置き、髪を握りながら笑った。

 

 

「ははは。死なないさ。俺はこの世のメスガキ共を分からせるまでは――死ねないんだよ」

「は、あぁ? 何、いっ――ごはぁ!!?」

 

 

 俺は更に奴の腹に拳を打ち込む。

 奴の鍛え上げられた腹筋が傷つき。

 俺の拳の形へと変わって。

 奴の内臓の動きも、体温も全て――感じられた。

 

 俺は奴から手を離す。

 瞬間、奴の不可視の拘束は解かれた。

 奴は腹を抑えながらもその場に膝をつく。

 

 一瞬、俺を睨んだかと思えば――走っていく。

 

 走って、走って――奴の驚愕が透けて見えた。

 

 

「――魔法が使えない、か?」

「……っ!」

 

 

 奴は歯を食いしばり。

 そのまま俺から逃げるように走る。

 奴の姿は見えなくなり――俺は地面を蹴りつけて飛ぶ。

 

 一気に上空へと上がる。

 俺は両手を広げて目を閉じた。

 冷たく穢れに満ちた風を全身に浴び。

 宙を舞いながら飛んでいき――奴の前に着地する。

 

「――ッ!!」

 

 パラパラと砂埃が舞う中で、目を静かに開く。

 すると、奴は驚きながらも攻撃を放ってきた。

 魔力の強化も出来ない状態で。

 放たれた右拳は止まっているように見えた。

 俺は難なくそれを受け止めた。

 奴はもう片方の手で俺を殴りつけて――それも受け止めた。

 

「こ、のぉぉ!!!」

 

 奴は怒りのままに蹴りを放つ。

 が、俺はまるで動じる事無く――奴の拳を砕く。

 

「いああああぁぁぁ!!!?」

 

 バキバキと音を立てて拳の骨が砕けた。

 砕けた骨が肉を突き破り。

 破かれた皮膚から血が噴き出していた。

 温かな血を手で感じながら――俺は頬に熱を感じた。

 

 奴は痛みで絶叫し。

 足をがくがくと震わせる。

 俺はそんな奴から手を離す。

 

「……さぁ、どうする? ん?」

「――っ!」

 

 奴は俺を睨みつけて――背中を向けた。

 

 よろよろと体がよろめいている。

 今までの熟練の戦士の動きではない。

 

 

 か弱く、脆い――メスの動きだ。

 

 

 だらだらと血を流す拳。

 ゆらゆらと揺らしながら、奴は走っていく。

 

 俺はそんな奴の背中を見つめて――歩き出す。

 

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ!!!」

「――はは♡」

 

 俺は笑う。

 奴の顔は恐怖に染まっているだろうが。

 俺は喜び一色であり――奴がこけた。

 

「いぎぃ!?」

 

 拳を打ち付けて奴が悲鳴を上げる。

 俺はそんな奴に追いつき。

 足で奴の体を――蹴飛ばした。

 

「おごぉ!?」

 

 奴は潰れた蛙のように鳴く。

 奴は悲鳴を上げながらゴロゴロと転がっていく。

 

 呼吸は荒く、汗と血で服は汚れていて。

 奴は恐怖に染まった目で俺を見つめる。

 俺は小さく笑みを浮かべながら、奴の傍に立つ。

 

「痛いか?」

「……痛いに、決まっと、る、やろ――ボケがァ!!!」

 

 奴はがばりと起き上がる。

 そうして、砕かれた拳を振って俺に攻撃を仕掛ける。

 俺はそれを避ける事無く受けてやった。

 べしゃりと音がして、奴の拳が揺れ動き。

 奴は目に涙を浮かべながら耐えている。

 

 俺は静かに頷き、指を一本立てて――奴の腹に刺しこんだ。

 

「うぐぁぁぁ!!?」

「……温かいな」

 

 ずぶりと奴の筋肉を突き破る。

 人差し指全てが入り込み。

 奴の体の中に流れる血と、筋肉の収縮が感じられる。

 

 俺は指をぐりぐりとかき回す。

 すると、血がぶしゅりと噴き出し。

 奴は絶叫しながら暴れた。

 

「――――ッ!!!!?」

 

 奴は涙を流し叫ぶ。

 そうして、出鱈目な動きで俺を攻撃して来た。

 もはや、雌ですらない。

 ただの子供であり――ふは♡

 

 痛いだろう。

 痛くて痛くて堪らないのか。

 辛くて、悲しくて、助けて欲しくて――俺は電流を流す。

 

「あがあぁぁぁああああ!!?♡」

 

 俺の特別な電撃だ。

 指から直接体内へと流し込めば。

 奴は天を仰ぎ見て――喜色の声を発した。

 

 奴の神経が乱れている。

 本来の耐えがたい痛みと苦しみ、そこに快楽が合わさった。

 奴は泣き叫びながらも唾を垂らしていた。

 体がびくびくと痙攣している。

 俺は電流と指のかき混ぜを続けて――指を抜く。

 

「あ、ぅ、ぁああ、あ、あぁぁ♡」

 

 奴は四肢をだらりと投げ出して地面に仰向けで倒れる。

 ぴくぴくと陸に上がった魚のように痙攣していた。

 だらしのない顔で、呼吸は熱がこもり。

 股を見れば……ふっ♡

 

 俺は奴に手を翳し――傷を治す。

 

 奴は気づく事無く。

 間抜けな顔を晒して――俺は全力で奴の腹を踏みつけた。

 

「おごぉぉぉぉぉぉ♡!!?」

「……獣だな」

 

 奴は足をピンと伸ばし。

 だらだらと涎を垂らし、激しく痙攣していた。

 メスの臭いが濃さを増し。

 俺は奴を冷ややかな目で見つめながら――傷を癒してやる。

 

 奴はようやく正気を取り戻し。

 俺を見つめながら質問をしてきた。

 

「お、まえ、何、して――いぎぅぅぅぅぅ♡!!!?」

 

 俺は奴の腹を力の限り踏む。

 ギチギチと音が鳴り、地面には亀裂が走った。

 が、奴は痛みによる絶叫ではなく。

 獣が得る快楽の声を叫んでいた。

 

 俺はそんな哀れで可愛い存在を見ながら――笑みを深める。

 

 

「何をしているか、だったか……“分からせだよ”」

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ♡!!!」

 

 

 奴から足を退ける。

 そうして、再び傷を治してやり――奴が走り出す。

 

 一目散に逃げて行く。

 俺はゆっくりと足元の石を拾い――指で弾く。

 

「あぐぁ♡!!?」

 

 奴の足に命中し――貫通した。

 

 奴は倒れて、足を抑えていた。

 俺はゆっくり奴へと近づく。

 奴は“恐怖と熱”の混じった視線を俺に向けて来る。

 

 俺は静かにしゃがむ。

 そうして、奴の足に空いた傷口に手を向けて――指を指し込む。

 

「あぎぃぃぃぃぃいいい♡!!!」

「痛いか? 痛いよな? 痛いに決まっている……何故、嬉しいんだ?」

「あ、ああぁ、ぅがぁ、あぁ、嬉しい、訳――いぎぃぃぃ♡!!!」

 

 指をくちゅりと動かす。

 すると、奴は体を体液で汚す。

 顔は真っ赤であり、呼吸は荒く。

 俺に向ける視線は恐ろしいほどに熱がある。

 

 俺は奴の瞳を見つめながら、指を抜く。

 そうして、奴の血で染まった手で奴の頬を撫でた。

 奴は口を震わせながら、ただジッと俺の瞳を見つめる。

 

「お前は自分を特別だと思っているな? 強く美しく、この世の全ては己のものだと……世の女は全員が女王、そうも言っていたな……だが、俺はそうは思わない。何故なら、俺の目に映るお前は」

 

 俺は邪悪な笑みを浮かべながら――告げた。

 

 

 

「弱く、脆い、ただの変態の――メスガキだよ♡」

「……っ!! こ、のぉぉ――ぃぃぃぃ♡!!!?」

 

 

 

 

 奴の頬を思い切りぶつ。

 奴は体を横たわらせた。

 ぴくぴくと痙攣し、抵抗も出来ぬまま快楽を受け入れて……ふ、ふふ。

 

「――ハハハハハハハハハ!!!!!」

「……っ」

 

 俺は高笑いを浮かべる。

 奴は顔を真っ赤にし、口元から血を垂らしながらも――俺を睨む。

 

 屈していない、分からされていない。

 自分はまだ強く、自分はまだ正常だと――信じて疑っていない。

 

 

 そういう目であり――あぁ良い――良い良い良い良い良い――さいっっっっこうじゃないかぁ!!

 

 俺は手についた血を――舌で舐めとる。

 

 

 

「気に入ったよ。それでこそ、上等なメスガキだ……お前への分からせは、もっと時間をかけて……するとしよう♡」

「何、いっと、るんや、ボケ――ぅ!!」

 

 

 

 俺は一瞬で奴の頭に触れて――奴の意識を飛ばす。

 

 奴はくらりと体を倒し。

 俺はそんな奴を抱きとめた。

 一瞬で奴の傷を全て完治させる。

 そうして、黒い靄のようなものが広がり――ナタリア・スーを取り込む。

 

「……さて」

 

 俺は立ち上がる。

 そうして、指を鳴らせば――時が動き出す。

 

 砂の魔物の体が消えていくのが分かった。

 全ての魔物が狩られて。

 俺の服の下の木札が光る。

 

 俺は一瞬で服を元に戻し。

 仮面をつけておく。

 

 俺はそのまま――――…………

 

 

 

 

 …………――――目を開ける。

 

 そこは霊山アラヤの頂上で、あの神社の敷地内だ。

 帰って来た俺を見て、イルネたちは笑みを浮かべていた。

 

「おかえりなさいませ……さて、それでは初めに――貴方様の願いをお聞かせください」

 

 イルネは一礼し問いを投げかける。

 儀式を終えた者たちは、クラフト家の力によって一つ願いが叶えられるのだ。

 恐らく、ナタリアはそれを使ってマリアと婚姻を結ぶつもりだったのだろう。

 

 俺はポケットに手を突っ込み――踵を返す。

 

「……? 何方へ」

「――帰る。用は済んだからな」

 

 俺がそう伝えてやれば――巫女たちが現れて俺の周りを取り囲む。

 

「お待ちを。願いが無いのであればそれも結構です……が、儀式を終えたのであれば如何なる理由があろうとも――血を我らに捧げなさい」

 

 イルネは殺気を放ちながら俺に警告する。

 此処は結界内で、許可が無ければ出られないと。

 もしも、出たいのであれば血を寄越せと――くく。

 

 

「何が――ッ!!!」

 

 

 俺は地面を蹴り――飛ぶ。

 

 一瞬で結界に触れて――砕く。

 

 

 魔力で構成された強固な結界。

 魔物を寄せ付けない鉄壁の守りは――無に帰した。

 

 バラバラと光の破片となって飛び散り。

 地上にいる奴らが慌てふためいているのが分かる。

 神主の命で結界の再構築を開始していた。

 追手を送る余裕はなく。

 俺は空中で止まり、奴らを眺めた。

 

「……ふふ♡」

「……ふっ」

 

 イルネは――微笑む。

 

 ジッと俺を見上げるだけで。

 敵意も殺意も無く微笑んでいた。

 俺はそんな存在を一笑に伏し。

 頭の中で転移の魔法式をくみ上げる。

 

 メスガキで無いのなら会う事はないだろう。

 少なくとも、俺からの訪問は無い。

 俺はそのまま魔法を発動し――自室へと戻った。

 

「……ふぅ」

 

 俺は静かに息を吐く。

 カーテンが掛けられた薄暗い自室。

 大きなベッドが置かれた愛すべき寝床だ。

 指を鳴らせば、燭台の蝋燭に火が灯る。

 

 苦労はさほど無かったが……疲れた。

 

 元より、儀式の達成などどうでも良かった。

 俺の目的はあくまでもナタリア・スーであり……くくく。

 

《――!? ――!!》

 

 感じる。感じるぞ。

 奴が目覚めて、今いる空間にて戸惑っているのが。

 俺が作り出した魔法であり、“構築魔法”の応用だ。

 

 

 ……時間はたっぷりとある……楽しみだなぁ♡

 

 

「くはぁ♡」 

 

 俺は笑う。

 笑みが自然と零れてしまう。

 まるで、新しい玩具を貰った子供だ。

 俺は頭の中で、分からせの流れを考えながらベッドに倒れて……静かに目を閉じた。

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