メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった 作:カレーパン
真夜中の霧の森。
私たちは時間が経過した事で――移動を開始した。
枝から枝へと飛び移りながら。
周囲を警戒する。
魔物の気配は少なからず感じるけど……はぁ。
「ねぇってばぁ……本当に大丈夫なの?」
「何がぁ?」
「何がぁって……アイツ、魔物に食い殺されたんじゃねぇの?」
「まぁ普通ならそうでしょう……ですが、嫌な予感がします。貴方もそう思っているんでしょう、ニコ」
「……ふん」
サキとユリが私を見て来る。
私は鼻を鳴らすだけで何も言わない……あり得ないでしょ。
あんな冴えないクソ雑魚が。
魔物に勝てる筈がない。
十中八九が、魔物の胃袋の中で……何で胸騒ぎがするんだろう。
分からない。何も分からない。
けど、私の心に巣食う小さな疑念が――アイツが生きていると囁いている。
絶対に無い。
百パーセントであり……確認する他ない。
元々、そういう計画だった。
生死に関係なく。
時間が経てば確認に向かう。
運よく、他の代表生たちが潰し合っていれば万々歳だ。
……まぁ、鈴を奪ったら逃げてるかもしれないけど。
我ながら、穴だらけの計画だ。
あの時は自分を天才だと思っていたけど。
今になってみれば、無理にもほどがある計画だった。
まぁ? あの男にこれから悩まされなくて済むと思えば……何?
私は片手を上げてサキたちを止める。
木の上から様子を伺えば――え?
「何だよ? 何か……嘘、マジかよ」
「……生きていますね……でも、もうダメそうですけど」
「……魔物の死体……一体、どいつが?」
気配を殺しながら様子を伺う。
すると、あの男……シン・ナルミを囲う様に二クラスの代表生徒たちが立っていた。
その近くには魔物たちの死体も転がっている。
胴体に風穴が開いていて、強力な魔法によって殺されたと私は考えた。
けど、あんなにも大きな風穴を開けるほどの威力の魔法を。
代表に選ばれたとはいえ、見習いのアイツらが出来るとは到底思えない。
……私なら出来るけど……何かおかしい。
私は考える。
遠くからナルミの奴を見れば。
何かを話しているようにも見える。
距離を置きすぎているからこそ何を話しているのかは聞こえないけど……近づいてみるか。
私は手を動かす。
そうして、サキとユリに奴へと近づくと合図を送った。
二人は頷き、私たちは息を潜めながら木から木へと渡る。
「――」
「「「――」」」
「……?」
近づいて行けば、声が聞こえるようになってきた。
戦闘をする雰囲気ではない。
まるで、和やかに会話する友人のようで……どういう事?
魔物を殺した謎の存在。
そして、シン・ナルミと和やかに会話をする代表生徒たち。
考えれば考えるほどに謎で。
まさかとは思ったが……私たちを出し抜こうとしているのか?
……あり得る。
恐らく、アイツらの中に魔物たちを殺した奴が潜んでいる。
シン・ナルミはその力を恐れて命乞いをした。
その結果、奴らに取り入る事に成功し――私たちを売る気なのだ。
そうだ、それしかない。
そうでなければ、あのクソ雑魚雄が生きている筈がない。
二人を見れば、私と同じ考えに至ったようで……消すしかない。
こんな事に意味はない。
やったところで、鈴が戻って来る訳でもない。
が、アイツが裏切ったのであれば……制裁を与えなけれならない。
えぇ、えぇ。そうよ。
私たちの方が先に裏切ったように見えるけど。
それは私たちが力ある者で。
アレはれっきとした作戦だった。
敵対勢力同士をぶつからせて削らせる為のちゃんとした作戦で。
奴の犠牲で成り立つだけの事だった。
だからこそ、私たちの行動はチームとしての裏切りではない。
アイツだ。
アイツこそが裏切者で……じゃ、消そうかな♡
ユリに視線を向ける。
すると、ユリは笑みを浮かべながら静かに頷く。
彼女が指先を向ければ、指先に小さな青い魔力が集中する。
そうして、彼女が開いたもう一方の手でそれを摘まみながら引っ張れば――魔力の矢が形成された。
彼女の得意とする技は、魔力を使った攻撃だ。
巧みに操る事で、刃にも矢にも変換で来てしまう。
魔力操作の中でも、具現化に特化したのがユリだ。
魔力の矢であれば、音が鳴る事はない。
そして、ユリが矢を形成した瞬間に。
青い魔力は透明となり、不可視のものに変わった。
魔力の性質変化の応用であり、これにて暗殺に必要な道具が揃う。
魔法を使わずとも、あんな奴は何時でも殺せる。
運が無いのは私たちを本気で怒らせた事だ。
ユリは笑みを浮かべながら狙いを引き絞り――放つ。
不可視の矢は一直線にナルミの元へと翔け――頭を貫く。
ぶしゅりと血が噴き出し。
ナルミの体は地面に転がる。
私たちは笑みを深めながら、これで一番の目的は達したからと――
「ほぉ――良い腕だ」
「「「……!!!」」」
私たちは驚き――瞬間、見えない力によって弾き飛ばされる。
悲鳴を上げながら、強制的に地面にぶつかる。
私たちはすぐに体勢を立て直し。
武器を構えながら周囲を警戒する。
が、すぐに驚愕で動きを止めてしまった。
何故、驚いたのか――代表生たちだ。
「「「…………♡」」」
「……何、こいつら……笑ってる?」
代表生徒たちは笑みを浮かべながら立っている。
身動き一つせず、ジッと私たちを見つめていた。
どういう事かと考えて――奴らが一斉にその場から離れた。
何事かと警戒し――怖気が走る。
「――何を驚いている? 奴隷が珍しいか?」
「「「……っ!」」」
シン・ナルミ――生きている。
確かに頭を撃ち抜いていた。
が、頭には傷は無く。
奴は薄ら笑いを浮かべて私たちを見ていた。
私たちは奴を警戒しながら、言葉を発した。
「奴隷ですって……アンタ、一体何を」
「てか、アイツ……体が?」
「……魔力による強化……いえ、それにしては魔力に揺らぎが無い……まさか!」
ナルミが私たちの前に降り立つ。
サキとユリの言葉で、私もすぐにアイツの体の変化に気づく。
もやしのような体系だったのが。
今では鍛えられた完璧な肉体になっている。
目も見えなかったような髪は後ろに流して。
奴の綺麗な青い目がハッキリと見えていた。
が、その目は細められて私たちへの嘲りになっている。
奴はポケットに手を突っ込んだまま。
愉快だと言わんばかりに笑っていた。
今までのアイツじゃない。
完全に別の何かであり……まさか。
「アンタ、まさか……魔物を殺したのは……っ」
「質問ばかりで俺が素直に答えると思うか? 知る必要は無いだろう。どうせ、お前らは――分からさられるんだ」
「「「……!!」」」
奴がポケットから手を出し広げる。
瞬間、奴の内包していた魔力が噴き出す。
とんでもない魔力量で、それは私の全力に匹敵するほどで……面白いじゃない。
私は剣を鞘に納める。
そうして、ポーチからグローブを出す。
それを手に嵌めてから――にやりと笑う。
「上等よ。逆に私たちが――分からせてあげましょう♡」
私はそう言って、術式が刻まれたグローブで――指を鳴らす。
瞬間、召喚魔法が発動し。
鳥の姿をした炎の精霊たちが十体出現した。
私が指を奴に向ければ、精霊たちは一斉に奴へと攻撃を開始した。
無数のファイヤーボールが出現し。
奴に向かって勢いよく放たれて行く。
初級と言えども、数があれば脅威となる。
奴は中心にて結界を展開して防いでいた。
無数の爆発が発生し、空間が激しく振動。
が、奴の結界は罅一つ入らず――関係ない。
「――フッ!」
瞬間、サキが動き出す。
その手の銀のガンドレッドが光りを発し。
彼女の体に電流が駆け巡る。
彼女は笑みを浮かべながら大地を蹴り駆ける。
そうして、一瞬で結界を展開する奴へと接近し――拳を放つ。
「ライ――ボルトッ!!!!」
「……!」
技の名と同時に、凄まじい閃光が走る。
一瞬のきらめきで、次の瞬間には爆発音と共に奴の結界は砕けた。
奴の体は稲妻に貫かれたように激しく感電していた。
黒焦げになりながら、奴は後方へ吹き飛び――既に、頭上にはユリが舞っていた。
「アイス――ブラスト」
ユリが指を鳴らせば、空中に展開されていた魔力の塊たちが動き出し。
氷の槍として、一斉に黒焦げのナルミに襲い掛かった。
奴の体は一瞬で氷漬けにされて。
私は指を振るって、精霊たちに――特攻を命じる。
精霊たちは奴の元へと飛び。
そのまま氷の表面にへばりついて。
体を膨張させながら強く発光し――
「――ボン!!」
私が手を開けば――激しい爆発が起こる。
目の前にて、氷像となったナルミが爆ぜた。
氷の破片が飛び散っていて。
黒煙が天高く昇って行った。
サキたちは私の傍に降り立つ。
呆気なく爆散した奴を見ながら、私たちはくつくつと笑っていた。
呆気ない。
よわよわであり、クソ雑魚で。
取るに足らない凡夫じゃないの♡
自信があったんでしょうね。
あれだけの魔力量に、隙をついたとはいえ魔物たちを殺せたんだから……でも、やっぱり、アイツは――
「「「クソ雑魚♡」」」
くすりと笑う。
ショーは終わりだ。
私たちはくるりと背を向けて、木の上から私たちを見ている代表生徒たちを見る。
「さぁ、終わったわ。どうする? 鈴を置いていくのなら、見逃してあげるけど……何?」
「「「ふふふふふ♡」」」
私が警告してやれば、奴らはくすくすと笑っていた。
不気味であり、奇妙であり。
サキとユリも何かがおかしいと警戒し――拍手が聞こえた。
「「「……!!」」」
背筋がぞわりとする。
そんな筈はない、あり得ない。
そう思いながら振り返り――奴が、立っていた。
五体満足。
かすり傷一つしていない状態の――シン・ナルミだ。
「ははは、愉快愉快。想像以上に――お前らは“並み”だな」
「あぁ? 誰が――並みだコラァ!!!」
「「サキ!!」」
サキがぶちりと切れて駆けだす。
ナルミは澄ました顔で襲い来るサキを見つめる。
サキは自らの身体能力を限界まで強化し。
一気に距離を詰めて、死角からの攻撃を放ち――受け止められた。
「……! このぉぉぉ!!!」
サキは更にギアを上げる。
砂埃が舞い、電流の迸る音と共にサキが高速で攻撃を仕掛ける。
ナルミの死角からの攻撃で――が、奴は全て片手で弾く。
連続の拳打。蹴り技まで放っている。
その動きは私でも完全には見えない。
残像が見えるほどであり――が、奴は全てを見切っていた。
「――ッ!!」
「……ふっ」
サキの全力の攻撃。
稲妻のように駆け、高速で飛ぶ必殺級の攻撃。
奴はそれを全て片手で往なしているように見える。
何処から攻撃しようとも片手で弾き。
一歩も動く事無く――瞬間、サキの拳を奴が受け止める。
「――ッ!」
サキは蹴りを放つ。
が、それすらも止められた。
サキはそのまま頭突きをしようとし――私たちは目を丸くする。
「うむぅ!?」
「「――へ!?」」
奴はサキが頭突きをする前に――“接吻をした”。
それも舌を――っ!?
サキが抵抗するが。
奴は体を密着させて更に深く長く行為を続ける。
次第にサキも力がなくなっていき……二人が離れる。
「ぅ、ぁ、ぁ、ぅぁ♡」
サキは地面に倒れて失神していた。
白目を剥きかけており、唾が口元を伝っていた。
陸に上がった魚のようにぴくぴくとしていて。
か細い呼吸には熱がこもっている。
そんなサキを一瞥し、奴は口元を指で拭い――にやりと笑う。
「……このぉ下衆がァァァ!!!」
ユリが――キレた。
完全にその顔は怒りに染まる。
手を振るえば腕が魔力の刃が出現し。
強化された脚力によって弾丸のように飛ぶ。
彼女は駆けだし、奴に向かって刃を振り下ろす。
奴はユリの攻撃を半身をずらして回避し――ユリが笑う。
瞬間、彼女の横腹から魔力の棒がつき出す。
それは奴の胴体を貫き、奴はごほりと血を吐き出す。
ユリはそのまま魔力の刃で奴の首を斬り落とそうとし――力なく倒れた。
「なっ!?」
ユリは眠るように横たわる。
何をした。何が起きた。
理解できないほどの速さの攻撃か――分からない。
奴はユリが生み出した魔力の棒を吸収し。
空いていた風穴は蒸気を発しながら塞がっていった。
服ですらも元通りだ。
口に垂れた血を拭い、奴は肩を鳴らす……人間じゃない。
奴が命令する前に。
木の上に立っていた生徒たちが動き。
行動不能になったサキとユリを抱きかかえて連れて行く。
私は何も出来ず、ただ黙っているしか出来なかった。
歯痒さを感じる中で、奴はゆっくりと私に視線を向けて来た。
「さて、お前で最後だが――何が出来る?」
「何が、出来る、ですって――アンタをッ!! ぶっ殺す事よッ!!!」
私はそう宣言し。
召喚魔法の極致を披露する事を決めた。
天高く手を掲げて、ありったけの魔力を流し込めば。
体中に魔力のスパーク音が響き――指を鳴らす。
瞬間、目の前で陣が展開されて――炎が噴き出す。
出て来たのは、紅蓮の炎を纏う巨人だった。
ただの精霊じゃない。
上位精霊であり、勇者が使役するような強力な存在だ。
姿を現した上位精霊――イフリートは炎の鎧を纏い剣を生み出す。
まるで、騎士のようないで立ちで。
炎のマントを翻し、膨大な魔力を放ちながら。
私の敵であるシン・ナルミを見つめて闘志を燃やしていた。
勝てる。上位精霊の召喚に成功した今――勝機は此方にある!
賭けだった。
この危機的状況で、上位精霊が召喚に応じてくれるかどうかは。
今の私でさえも、呼び出せる可能性は多くて60パーセントだ。
条件は不明ながらも、何とか召喚に成功した今ならば……。
「上位精霊イフリートよ。我が敵を――滅せよ!」
「――――」
イフリートは剣を掲げる。
瞬間、黙って見ていたシン・ナルミは――炎に包まれた。
大きな火柱であり。
続けてイフリートはそこに向かって斬撃を放つ。
飛ぶ斬撃であり、炎の中に吸い込まれた斬撃が。
中で暴風のように動き回っているのが分かる。
炎に焼かれて、再生しようとも斬撃によって細切れだ。
更にイフリートは炎の剣を地面に差し込み――炎の竜が出現する。
「――――ッ!!!!」
炎の龍は空間が揺れる程の叫びをあげ。
そのまま炎の中のシン・ナルミへと向かい――喰らう。
龍はそのまま天へと昇り。
イフリートは最後の仕上げだと剣を刺突の姿勢で構えて――放つ。
炎の剣が、一条の光となる。
真っすぐに飛んだ炎の線が、龍の頭を精確に捉えた。
それにより、龍の内包する炎とイフリートの炎が共鳴し。
渦を巻くように蠢き、炎の色を青へと変えて――は、はは!
「勝った。これで、私が……私こそが、勇者に!」
私は喜ぶ。
奴を殺したところで何の評価にもならないが。
それでも、イフリートを使役している姿は教師たちも見ている筈だ。
きっと、球が手に入らずとも私は勇者の候補として――
「推薦してもらえる――かな?」
「は、ぇ?」
奴の声が響き、炎が――消えた。
突風が吹き、私はその場に膝をついた耐える。
目を開けて、手の隙間から見れば――奴だ。
月を背に、空に浮かぶシン・ナルミ。
奴は五体満足の状態で、ゆっくりと地面に降り立つ。
無傷であり、服すらも汚れ一つない。
完璧な状態であり、圧倒的なまでに――差がある。
それを心で理解した瞬間に――私は叫ぶ。
「イフリートォォォ!!!! そいつを殺しなさいッ!!!!」
「――――!!!」
イフリートが私の心に触発されて飛ぶ。
剣を構えて炎が噴き出し――
「――“
「――は、ぇ?」
奴が何かを呟いた瞬間――イフリートが粉みじんになる。
何が起きたのかを確認し――目の前に闇が広がる。
「――」
「ひぃ」
目の前にて立つ異形の存在。
顔は髑髏のように見えるが、下顎が無く。
頭から後ろへと無数の黒い縄のようなものが伸びている。
両腕は刃が無理矢理に差し込まれたような歪な形状で。
入りきらなかった刀身が、腕の関節を突き破り出ていた。
服は赤黒い囚人が切るようなさび付いた鎖が無数についた拘束具であり。
瞳は無いが、闇のようなものが蠢いており、それが至近距離でジッと私を見つめている。
目の前の存在が何か――魂が理解した。
「あ、あく、ま……アンタ、そこまで……代償を払ってまで……う、うそ、よ」
「――嘘じゃない。現実だ。いい加減……分かっただろう?」
奴は私を嘲る。
奴が指を鳴らせば、目の前にいた存在が消える。
一瞬で、奴の傍に移動し、跪いていた。
アレは悪魔だ。
それも上位の悪魔であり。
悪魔召喚なんてものは禁忌中の禁忌だ。
悪魔たちは強力な個体ばかりだけど。
誰にも従わず、従ったとしても大きな対価を求めて来る。
一国の王が強力な悪魔を召喚し。
他国への侵略を成功させたけど。
その結果、国民の半数を贄として奪われたと歴史書にも書かれている。
それほどまでに、悪魔の召喚は危険で……でも、こいつはそれをした。
そして、悪魔の様子を見れば――服従していた。
完全な支配であり、一切の抵抗が見られない。
それはつまり、あの悪魔がシン・ナルミを主として認めたということで……は、はは。
「嘘、嘘嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘……これは、悪い、夢だわ。そう! 今、私はきっとベッドの上で、それで――」
私は喋る。
立ったまま虚空を見つめながら。
壊れた蓄音機のように喋り続けた。
奴も悪魔も見る事無く、永遠と喋り続けて――パンと乾いた音が響く。
「……ふ、ぇ?」
「――目は、覚めたか?」
私はそのまま地面に手をつく。
ゆっくりと頬に触れれば……腫れていた。
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い――あ、あぁ。
じんじんと痛みを発している。
視線を声のした方向に向ければ――奴が、笑っていた。
「あ、あぁ、あああ、あああぁぁああ――ああぁぁ!!」
私の中の何かが切れる。
私はボロボロと涙を流しながら、ただただ本能のままに叫び――
「――黙れ」
「……!」
奴が殺気を放ちながら言葉を発し――呼吸が止まる。
私は口を開け閉めしながら必死に喉を触る。
奴は目を細めながら、私を見つめて――
「呼吸は……許可してやろう」
「――はぁ!! えほ、えは、ごほ……っ!」
奴は私の前に立つ。
冷たい目で私を見下ろていて。
私は視界が歪んでいくのを感じながら。
ガチガチと歯を鳴らして――額を地面にこすりつける。
「……何の真似だ?」
「……っ!」
私は何を――何をしている?
頭を、地面に……この私がだ。
分からない、自分で自分の行動が……でも、体が勝手にそうしていた。
口だけは言葉を発する事が無く。
ただただ、悔しさで歯を噛み締めて――奴が私の頭を踏む。
「う、うぅ!!」
「これはいい。お前の頭はとても――踏み心地が良いなぁ! ははは!」
「ふ、うぅ、ぐぅぅ!!」
私は耐える。
耐えて、耐えて、耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて――瞬間、強い電流が体を駆け巡る。
「あがぁぁ!!?」
私は天を仰ぎ見た。
体を震わせて、痛みと――快楽に襲われる。
激しく体を振動させて。
私は地面に体を横たわらせた。
呼吸が出来ない、息が苦しい――奴が私の髪を乱暴に掴む。
「あ、ぐぁ」
「痛いか? 苦しいか? やめてほしいか? ならば……どうする?」
「う、うぅ、ぅぁ――ぺっ!」
私は奴に向かって――唾を吐く。
奴の頬から私の唾液が垂れていた。
私は笑みを浮かべて――電流が走る。
「うあ、ああああぁぁぁ!!!♡」
「良いな、お前……気に入ったぞ」
奴は笑う。
私は体から煙を発しながら。
股が湿っていくのを感じる。
奴は私の髪から手を離し、私は地面に倒れて――奴の手が私の頭を貫く。
「いぎぃ!?」
「案ずるな。頭を貫通したんじゃない。脳を直接――弄るだけだ」
奴が手を動かせば、頭の中でぐじゅぐじゅと音が鳴る。
奴が指を動かすたびに、強烈な刺激が駆け巡る。
私は白目を剥きそうんになりながら、体を激しく動かした。
奴は邪悪な笑みを浮かべて――
「さぁ、たっぷりと――分からせてやろう」
「――――!!!??」
◇
アレからどれほどの時間が経ったのか。
既に周囲は明るくなっている。
私は生きていて、無事であり――“服を脱いでいた”。
両隣には同じ格好でサキとユリがいる。
二人の顔は苦しげであるが――頬が赤らんでいた。
私もであり、屈辱的で腹立たしくて――ムカついている♡
私たちは地面に手をつき、頭を下げる。
そうして、呼吸を乱しながら奴が望む言葉を吐き出す。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……今まで、散々……うぅ♡ ご迷惑とご苦労を、お掛けしてぇ♡ うぁ、も、申し訳……ありませんでしたぁ♡ 私たちは、無能で、クズで、ゴミでぇ♡ はぁ、はぁ! 貴方様の役にも立てない、ですが……雌、として、貴方様に、絶対の、ちゅ、ちゅ、忠誠を、ちゅうせ……んあぁ!?♡」
「「も、もう、だ、だめぇ♡ ゆ、ゆる、じでぇ♡」」
私たちの体の中には――何かが入っている。
他の人間のように完全に服従していない私たちに対して。
奴は私たちの体に何かを入れる事によって――支配した。
もしも、奴に対して危害を加えたり。
よからぬ事を企めば、強い刺激が走り。
私たちは奴の事を勝手に想像して……体が疼くようにされた。
最悪だ。
最低で、死ぬほどの屈辱で――殺して、やる♡
「うぁぁぁ!!?♡」
「「あ、ああぁ、ぅあ♡ も、もうじわげ、ありまぜん♡ もう、ざからいまぜんんん!!♡」
私たちは体を震わせて地面を濡らしながら。
額を地面にこすり付けながら――目の前で足を組む奴を見つめる。
奴の椅子となっている代表生徒たち。
その頬は赤らんでいて、快楽で呼吸が荒い。
喜んでおり、完全に屈服していた。
奴はそんな哀れな人間椅子に座りながら。
くつくつと笑いながら、私たちを嘲っていた……く、うぅ♡
「はぁ、良いぞぉ。お前たちの、惨めで! 哀れで!! 最低な姿は――最高に気分が良い!」
「「「くぅ♡」」」
奴は笑う。
手を叩いて笑っていた。
私たちは――分からされた。
世界で最も強く。
世界で最も非道な男の力の前に――屈してしまった。