メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった 作:カレーパン
クラス代表戦が終わり――数日後の教室内。
授業と授業の間の休み時間。
メスガキ共のきゃぴきゃぴとした声を聞きながら。
俺はパラパラとページを捲り本を読む。
が、少しだけ聞き耳を立てて会話を聞けば……
「ねぇねぇ! タカネさん! さっきの続き! お願いだからもっと詳しく聞かせてくださらない?」
「そうですよぉ。どうやって、他の代表生徒を倒して。一番におなりになったんですか!?」
「サキさんもユリさんも、教えてくださいよぉ」
「「「は、はは、はは……っ」」
クラスでは今、ニコたちが何時にもまして大人気で。
それもその筈だが。
クラス代表戦は、俺たちAクラスの勝利で終わった。
それも二日の朝には決着がついたので、かなり早いのだろう。
メスガキ共はニコたちがどうやって勝ちぬいたのかを知りたい様子だった。
が、奴らは本当の事を語る事が出来ない。
そういう制限をつけている事もあるが。
一番の理由としは、見下していた筈の雄の力によって。
勝った事なんてプライドの高いアイツらには口が裂けても言えないだろう。
俺はクラスの端っこの席で本を読みながら。
チラリとアイツらを見る。
すると、アイツらも俺を見ていたようで。
俺と視線が合えば、慌てて視線を逸らしていた。
クラスの奴らは俺がニコたちを一瞬見た事に気づいた様子だった。
くすくすと笑いながら、俺を足手纏いと罵り。
そんな中でも勝つ事が出来たのはニコたちの実力があってこそだという。
すると、ニコたちは少しだけ気分を良くしたのか――
「ま、まぁ? 私たちなら当然って言うか? ふ、ふふ」
「そ、そうそう。私たちは他よりも優秀みたいだしさぁ。は、はは」
「え、えぇ。当然の結果ですよ……ふっ♡」
「そうだよねぇ。ふふふ、でもでもぉ。本当にあんな足手纏いのクソ雄を連れて勝つなんてぇ……やっぱり、タカネさんたちがナンバーワンって事だよね♡ アイツもナンバーワンだけど……ワーストの♡」
「「「ふふふ♡」」」
「そ、そうそう。あんな奴なんてぇ、いるだけ邪魔っていうかぁ? でもぉ、私たちは優しいからねぇ……!」
「……ふっ」
奴らが調子に乗って俺を嘲る。
俺はもう一度奴らを見た。
すると、俺の視線に気づいたタカネたちはびくりと肩を震わす。
俺は鼻で笑うだけで何も言わない。
奴らは目をぐるぐるとさせながら。
自暴自棄になり、俺の事を何時も以上に罵り始める。
それを聞いたクラスメイトのメスガキたちは盛り上がり。
俺の事を奴らは更に嘲りながら――
◇
「「「ふ、うぅ、う♡」」」
「……で? 俺が何だって?」
授業が終わり、放課後。
俺はニコたちを呼び出し。
校舎の裏にて奴らに――腕立て伏せをさせていた。
それも俺が満足するまでであり。
奴らはかれこれ一時間以上もの間、ぶっ通しで腕立て伏せをしていた。
メスの臭いがぷんぷんであり、奴らの制服は汗に塗れていた。
白いシャツは汗ばんで体に張り付き。
奴らはなまめかしい声を出しながら、ぷるぷると腕を震わせていた。
俺が質問をするが返答はない。
俺は小さくため息を吐き――ニコの背中に腰を下ろす。
「ふ、うぅぅぅ!!♡」
「ほぉら、答えろよ……あ、一番最初に脱落した奴は――お仕置きな?」
「「「……っ!!」」」
奴らは腕立て伏せを続行する。
一定のリズムで繰り返しており。
ニコの奴は歯を食いしばりながら継続する。
俺はそんなニコの首に指を這わせる。
すると、奴は奇妙な声を上げて――ぐしゃりと地面に倒れる。
「はぁい。お仕置き決定……どうするかなぁ」
「……め、なさい」
「あ?」
「やめ、なさいって……言ってん、の――うぎぃ!?♡」
俺に抵抗しようとしたニコ。
が、奴の体は電流が走ったかのようにびくびくと痙攣する。
俺はくすくすと笑いながら、そんな奴を俵のように担ぐ。
「お前ら、もう帰れ。こいつは連れて行くからな」
「あ、ま、待てよ!」
「そ、そうです! ニコは」
「――お前らが代わりになるか?」
「「……っ!!」」
俺が振り返れば、奴らは口を噤む。
ニコはそんな二人を見て笑みを浮かべていた。
けなげだなぁと思いながら去ろうとし――服を摘ままれる。
「……いいぜ。なってやるよ」
「私もです。だから、彼女を」
麗しき友情。
俺はそれに感動し――笑みを深める。
「だったら――纏めて相手してやるよ」
「「「……!?」」」
俺はガバリと奴らの体を片手で抱きしめる。
そうして、奴らが抵抗する前に――自分の部屋へ飛んだ。
「きゃ!?♡」
担いでいたニコをベッドに投げ捨てる。
二人は驚き周りを見ていた。
俺が指を振るえば、窓のカーテンが掛かり。
結界が展開されて、逃げる事も音が漏れる事も無い。
蝋燭に火が勝手に灯り。
近くにあったロープが独りでに動き。
ニコたちの手足に巻き付いて拘束する。
「な!?」
「う、動け――きゃ!?♡」
芋虫のように動く馬鹿二人をベッドに押し倒す。
そうして、俺は躾用のグローブを嵌める……さて。
「お前ら……今日は寝れないぜ?」
「「「……っ♡」」」
奴らは俺を睨む。
が、その頬は赤く染まっている。
恐怖や怒りに混じって……ふふ。
俺はゆっくりと奴らに近寄り――
〇
「「「……」」」
静まり返った会議室内。
見ているのは、先日行われた魔法騎士養成学校でのクラス代表戦の映像だった。
注目すべき事は、Aクラスの人間たちで。
中でも、軍部の出身者が多いタカネ家の娘であるニコ・タカネは。
何と十五という若さで、上位精霊であるイフリートの召喚に成功していた。
その様子を見ていた軍部高官たちは歓声を上げていた。
期待の新星であり、勇者に至れる可能性が新入生の中では最も高いだろう。
誰しもがそう考えていて……私だけが違和感を抱いていた。
確かに、ニコ・タカネの才能は素晴らしい。
魔力量もずば抜けている上に。
得意とする召喚魔法も、イフリートを呼び出せたのなら文句はない。
が、そこではなく……アレだな。
『ひぃ、ご、ごめんなさい』
『本当に使えないわねぇ……ちゃんとしてくれないかしら?』
「「「……ふっ」」」
映像に映る同じAクラスの代表生徒……シン・ナルミ。
彼は少なくとも魔力を有していた事から。
学校側から招待状を送っていたと聞く。
男であるが、学校側の意向としては魔力のある人間は誰であれ勧誘したい。
一応、試験も受けて合格しているのだから。
それなりの実力はあったように思える。
が、先ほどから流れる映像からは、彼がお荷物として存在している事しか分からない。
ニコ・タカネを始めとする三人の騎士見習い。
その陰に隠れるように立っているだけで。
これといった活躍もしない取るに足らない雑魚……が、私の心がざわついていた。
「……」
私は映像をジッと見つめる。
が、映像は終わり……集まった人間たちは採点を下した。
各々の意見を聞きながら。
総合点を弾き出し。
ニコ・タカネたちAクラスはたった一人を除いて高得点をたたき出した。
私はそれを聞き、小さくため息を零す。
すると、化粧の濃い高官の一人が私に視線を向けて来る。
「勇者アリス・クラフト……不服があるのですか?」
「……いえ、何も……ただ」
「「「ただ?」」」
彼女たちは私の意見に注目する。
ただでさえ、成り手が少ない勇者だ。
意見は貴重であり……まぁ、言わない方が良いだろう。
「……いえ、すみません。何でもありません……では、私はこれで……失礼します」
「「「……」」」
彼女たちは私の退室に何も言わない。
元々、採点員として呼ばれた訳ではなく。
形だけの出席で、それだけの事だ。
私は扉を閉める。
そうして、またため息を零し歩き出す。
不可解な事は無かった。
映像は本物であり、教師たちには何かされたような痕跡は見られなかった――“そう、綺麗すぎるほど”に。
「……」
私は足を止める。
そうして、口に手を添えて考える……そう言えば。
妹が何かを言っていたような気がする。
あの子も魔法騎士養成学校の生徒で。
Dクラスの代表生徒に選ばれていた。
あの子の得意とする魔法の分野は主に“索敵”の類で。
それによって、テスト中に奇妙な存在を見つけたと言っていたような気がする。
忙しかったから深くは聞かなかったけど……聞いてみようかな。
私は仕事終わりにでも妹に連絡してみようと考えた。
「……って言っても、仕事は山積みなんだけどね……はぁ」
再び歩き出す……勇者は楽じゃない。
国家の危機を救い。
世界を滅ぼすような存在たちを殲滅し。
アイドルのような事までさせられて。
休み何てほとんどない。
なりたくてなった訳じゃない。
けど、なってしまったからには務める他ない。
他の誰にも出来ない仕事であり。
この仕事はきっと……神様が私に与えた役目だと思うから、ね?