メスガキを分からせる為だけに俺は最強になった   作:カレーパン

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第8話:謎の少女は何者か

 授業、授業……そして、授業。

 

 座学の時間はひどく退屈だ。

 何故ならば、一年の間は基礎的な事ばかりで。

 既に俺はその領域から遠く離れた場所にいる。

 基礎は大事であるが、眼を瞑っても分かる式を説明されるのは……はぁ。

 

「……」

 

 昼休み。

 俺は“弁当”を食べ終えて、教室から窓の外を眺める。

 クラスでは相も変わらず、メスガキ共が俺を嘲り。

 ニコたちに至っては、熱い視線をずっと向けてくる。

 

 “この前の躾”がよほど気に入ったらしい。

 終わる頃にはずぶ濡れであり、だらしのない顔を三人とも晒していたが……ふふ。

 

 思い出しただけでも笑えて来る。

 分からせの醍醐味であり……マサハル。

 

「……はぁ」

 

 彼は今、元気にしているだろうか。

 十周を超えてからは会ってもいない。

 会えば、俺の覚悟が鈍ると思ったからだ。

 

 マサハルの死をきっかけに。

 俺はこのループを分からせの為だけに捧げた。

 何十何百年と、ただひたすらに力を求めて……待っていてくれよ。

 

 すぐに会いに行く。

 俺はそう思いながら――教室の扉が開く音がした。

 

「「「……ぁ」」」

 

 クラスメイト全員が視線を向けて驚いたような声を出していた。

 俺も視線を向ければ――目が合う。

 

 雪のように白い髪を背中まで伸ばし。

 青いカチューシャを頭につけて。

 綺麗な水色の瞳に、人形のように整った顔。

 学校の制服である白いシャツと濃い青色のローブに。

 下のスカートは長く、ネクタイの色は赤であり……新入生か。

 

 身長は167と高めであり。

 胸は控えめだがスラッとしていてモデルのようだ。

 顔が整っていて、無表情であるから人形よりも人形らしい。

 そんな奴がゆっくりと俺の下まで歩み寄って来て……止まる。

 

「……シン・ナルミ?」

「……えっと、僕ですけど……な、何か?」

 

 怯えたような視線を向けながら。

 いかにも僕はひ弱ですと言わんばかりの表情を浮かべる。

 完璧な偽装であり、俺の童貞のような反応に周りのメスガキたちはくすくすと笑う。

 唯一、ニコたちだけが少しイラついたような顔をしていた……どうでもいいか。

 

 奴は暫く俺を見つめて――手を取って来た。

 

「ついて来て」

「え、え、ちょ!?」

 

 俺は奴に手を引かれて強制的に連行されて行く。

 力はかなり強い方であり。

 身体強化をした様子はない事から、素の筋力値が高いんだろうと分析した。

 

 奴は俺の手を引いて歩いていく。

 俺は何処に行くのかと質問したが。

 奴は俺の言葉を無視して歩いて行った。

 

 歩いて、歩いて、歩いて――空き教室の中に入る。

 

 中へと入れば、女は後ろ手に鍵を閉めた。

 俺が驚いたような演技をすれば――喉元に杖を向けられる。

 

 氷のような眼差しだ。

 動けば殺すと言わんばかりで……本気だな。

 

 俺は怯えたように体を震わせえる。

 そうして、どもりながら何のつもりかと聞く。

 すると、女は表情を変える事無く――

 

 

「貴方は――何者?」

「な、何者って、ぼ、僕は普通の学生で――ひぅ!?」

「嘘は要らない。正直に話して……嘘をつくなら」

 

 奴は更に杖を喉に当てる。

 俺はびくびくとしたようにしながら。

 奴の事を冷静に観察する。

 

 ニコたちの事はよく知っているが。

 この女は初めて会う存在かもしれない。

 メスガキの事なら記憶に刻んでも、それ以外なら希薄で。

 恐らく、こいつの視線からメスガキ特有の男に対する舐め腐ったものが無いからこそ。

 俺は覚えていないのかもしれない。

 

 さて、どうしようか――扉が激しくノックされる。

 

「ちょっと! いるんでしょ? 開けなさいよ!」

「出て来いよぉ。そいつにちょっかい出していいのはぁ……私たちだけなんだけどぉ?」

「開けなさい。もしも、良からぬ事を考えているなら……開けなさい」

 

 ニコたちの声だ。

 アイツら、俺が命令していないのに勝手についてきたようだった。

 本来なら罰を与えるところだが……まぁいいか。

 

 女は背後を確認し。

 状況が不利であると悟ったのか杖を仕舞う。

 俺は恐怖で腰を抜かしたように装いながら。

 目に涙をためて震える。

 

「……ごめんなさい。でも、覚えておいて欲しい……あまり派手な行動はとらない方が身のためだと」

「ど、どういう……!」

 

 女からは敵意を感じない。

 奴は扉のロックを解除し。

 ガラガラと扉を開けて来たニコたちを押しのけて出て行く。

 アイツらは追いかけようとしたが。

 倒れている俺を見て駆け寄って来た……チッ。

 

「だ、大丈夫――きゃ♡!?」

「に、ニコ!? おまえ――ひぅ♡!?」

「わ、私は……あぅ♡」

 

 何か重要な事を言おうとしていたが。

 こいつらを警戒して去って行ってしまった。

 俺は苛立ちの腹いせに、奴らの体に触れて電流を流す。

 すると、奴らは体を掻き抱きながらその場に膝をつく。

 舌を出して呼吸を荒くしている奴らを無視して、俺はあの女を追いかけた。

 

 追って、追って、追って……追いついた。

 

「ま、待ってください!」

「……何で追って来たの?」

 

 女は足を止めて振り返る。

 心底不思議だと言わんばかりの顔だ……まぁそうだろうな。

 

 殺されそうになっていた。

 脅された人間が脅した人間を追いかけるのは奇妙だろう。

 俺は一秒にも満たない時間で思考し――

 

「話を、しませんか? 放課後に二人っきりで! きっと何か理由があったんですよね!?」

「……」

 

 俺は従僕そうな笑みを浮かべながら尋ねる。

 すると、女は何かを考えていた。

 明らかに警戒するような目だ。

 ポーカーフェイスを装おうとも大抵の人間の感情は分かるのが俺だ。

 

 ……流石に、急すぎたか?

 

 俺は不安げな表情を浮かべて。

 奴の心を揺さぶろうとし――

 

「分かった。放課後に……王都内にある喫茶店“サンシェル”で待ってる。必ず来て……待ってる」

「う、うん」

 

 女はそれだけ伝えて走り去っていった。

 周りで見ていた生徒たちは不思議そうに俺たちを見ていた。

 俺は女の背中をジッと見つめる……何処かで見た覚えはある。

 

 誰かに似ているような気はするが。

 それが誰だったのかが思い出せない。

 そこまで出かかっているのに、だ。

 

 不思議であり、奇妙であり……ニコたちの気配がした。

 

「はぁはぁはぁはぁ……ま、待ちなさいよ。こ、このぉ……うぅ♡」

「ゆ、許さねぇ。絶対に、絶対、に……ぃ♡」

「ふ、ふふ、ふふふ……はぁ♡」

「……どうかしたんですか?」

 

 俺はさも状況が飲み込めないと言った様子で奴らを見た。

 奴らは頬を赤く染めながら手を上げて――体をびくびくと震わせた。

 

「「「ああぁ!?♡」」」

「……! だ、大丈夫ですか!? だ、誰か先生を!」

 

 俺は三人を心配するように近寄る。

 すると、遠巻きに見ていた生徒たちが先生を呼びに行った。

 俺はニコの肩に触れながら――微弱な電流を流す。

 

「はうぅぅ!♡」

「声を殺せよ……社会的に死ぬか?」

「くぅぅ……ふ、うぅぅ♡」

「しっかり! すぐに先生が来ますよ!」

 

 耳元で囁くように警告する。

 奴はびくりと体を震わせながらも声を押し殺す。

 俺はニコを元気づけるように声を掛けながら。

 嫌がらせのように電流を流し続けた。

 奴は唇を噛み、眼に涙を浮かべながら耐えていた……おもしろ。

 

 先ほどの女との約束もある。

 今日は何もしてやれないからこそ。

 この瞬間に、全力で遊んでやっていた。

 

 ペットを飼うのも楽じゃない。

 そう思いながら、時折、サキやユリにも触れてやる。

 奴らは必死に声を押し殺しながら。

 足を擦り合わせて身じろぎする。

 

 俺は無害な生徒を演じながら。

 目の前のメスガキ共が。

 むんむんと雌の臭いを放っていくのを感じながら……心の中でほくそ笑んでいた。

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