イナズマに幻想が走る   作:大和ゆか

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第三話 紅い悪魔 前編

 空は快晴、気温もちょうどいいくらいのまさしくサッカー日和となったこの日、幻想学園グラウンドでは、二つのチームが向かい合っていた。両方とも火花を散らしており、闘志は充分すぎるほど漲っていた。

 この試合はチーム博麗の先攻で始まる。彼女らは、FWの魔理沙、MF兼キャプテンの霊夢を中心とした、いつも通りの戦術でいくつもりであった。

 対するチーム紅月は、キャプテン兼MFのレミリアを筆頭に、MFの咲夜、DFのパチュリー、FWのフラン、GKの美鈴で構成されていた。特に、レミリアとフランの姉妹コンビは、息のあった連携を見せることから、今回の試合の注目ポイントとして注目されている。

 

 

 

 

 

 

 

ピィィィィィィィィィ!!!

 

 

 試合開始を告げる笛の音が響き渡った。その瞬間、先攻のチーム博麗のFW、霧雨魔理沙が一直線にドリブルで上がっていく。それに合わせて、試合を見に来ていたギャラリーたちの歓声が響き渡る。

 

 

「行かせないわ!」

 

 

 それに立ち塞がったのは、レミリアだった。彼女は、魔理沙の顔を見つめつつ、その動きを見極める。

 

 

「いや、抜かせてもらうぜ!」

 

 

 魔理沙はフェイントを交えつつ、レミリアを抜こうとボールを巧みに操る。だが、レミリアも魔理沙の動きについていく。

 

 

(相変わらずやりにくいッ…)

 

(思ったより動きが鋭くなっているッ)

 

 

 試合開始早々、レミリアと魔理沙の1対1は白熱していた。それぞれが去年対戦した仲であることから手の内は分かっているが、それ抜きにしても両者互角の争いを繰り広げていた。

 魔理沙が横から抜こうとするとレミリアがそこを塞ぐ。逆から抜こうとしてもそこも塞いでくる。レミリアのディフェンスは、チーム博麗の火力担当の魔理沙を完全に釘付けにしていた。

 

 

「そこよ!」

 

「うぁ!」

 

 

 レミリアは魔理沙の一瞬の隙をついてボールを奪った。魔理沙は悔しそうな表情をしながらも、すぐに立ち上がりレミリアを追いかける。

 レミリアは司令塔というだけあって、魔理沙の動きを先読みしていた。一瞬で些細な癖を読み取り、そこから生じる隙を狙う。相手の行動を予測してその先を狙う。チーム博麗は、去年の試合でレミリアのこれに苦しめられた。

 

 

「さぁ、みんな!!上がりなさい!!」

 

 

 チーム紅月のボールとなり、紅月は一挙に攻め上がる。

 

 

「咲夜、パチェは霊夢をマーク!!フランは真っ直ぐ上がりなさい!」

 

「畏まりました」

 

「分かったわ」

 

「は〜い!」

 

 

 レミリアの指示通りにチームメンバーは動く。そうしてチーム博麗の動きを制限していく。去年の試合で活躍した霊夢が徹底的にマークされるのはもちろんのこと、魔理沙はレミリアの後を追いかける形となっており、ゴールはDFのあうんとGKの華扇ぐらいしか守る者はいなかった。

 その状態で隙だらけのゴールをレミリアが見逃すはずがなかった。

 

 

「フラン!!決めなさい!」

 

「OK!!」

 

 

 レミリアはボールを高く蹴り上げた。それに続くように、フランは思いっきり飛び上がる。あうんがレミリアのディフェンスにつく前のことであった。

 飛び上がったフランは、気を纏って背中に七色の宝石みたいなものがぶら下がった羽を形成する。それはやがて、炎を纏い始めた。

 

 

「せいぜい、壊れないでね♪

 

ーーー【十六爪炎壁】!!」

 

 

 その炎を、フランはボールに向けて高速で叩きつける。何度も、何度も、ボールが紅くなるまで何度も。

 ボールが紅くなると、フランはそれを、足に纏っている炎を剣の形にして強く蹴り下ろした。

 

 

「な、なんて火力、なんだぜ…!」

 

 

 魔理沙は、その技の火力に目を見開いて驚く。額には、冷や汗が流れていた。

 

 

「華扇さん!!」

 

「ッ!」

 

 

 あうんはシュートブロックすることができない位置にいた。レミリアをブロックしようとして動いていたからだ。つまり、フランは今フリーであり、充分にシュートする余裕があった。

 

 

「チーム博麗のキーパーとして、ここは絶対に入れさせない!!」

 

 

 華扇は、魔理沙同様冷や汗を流すが、自身を鼓舞するかのように言葉を放った。迫り来るボールを真っ直ぐ見つめて、必殺技を発動する。

 

 

「鷹符…」

 

 彼女は、自身の利き腕を変化させる。利き腕に包帯が巻かれ、その腕の手のひらに青白い光が集まる。炎を纏ったボールが技の範囲内に入った時、華扇はその腕を前に出してその光を放つ。

 

 

「ーー【ホークビーコン】!!」

 

 

 放たれた光は瞬時に鷹の形へと変化し、ボールにぶつかっていく。その鷹が通った道は光の弾ーー弾幕が残り、それもボールにぶつかっていく。ボールに突っ込んだ鷹は、その鉤爪でボールを掴み、そこに弾幕がボールに当たる形となる。

 

 

「……フフッ」

 

 

 突然レミリアが笑いだした。微笑む程度の軽い笑いだが、その視線は華扇の技に向いていた。

 

 

「無駄よ。それは去年見たもの」

 

 

 必死に止めようとする華扇。だが、フランのシュートの火力はそれ以上だった。

 ボールに纏っている炎が鷹を少しずつ焼いていく。回転するボールが弾幕を弾いていく。華扇は少しずつ前屈みになりつつなんとか止めようとするが、徐々に押し込まれ、地面には押し込まれた際にできた跡がついていた。

 

 

「ぐぅぅぅぅ!」

 

「華扇!!」

 

 

 霊夢は、咲夜とパチュリーにマークされながらも華扇の名を叫ぶ。それに続くように魔理沙もあうんも叫ぶ。

 それに応えたのだろうか。呻き声をあげながらも、彼女は一瞬だけ拮抗状態にまでもっていった。だが、レミリアはそれに驚く様子はなく、むしろ想定内だというような表情をしていた。

 

 

「それじゃ、止められないわ。そういう()()だもの」

 

「ぐっ、あぁ!!」

 

 

 その言葉と同時に、一瞬の拮抗状態は崩れ去った。そして、ついには止められずにそのままゴールに入ろうとしていた。

 

 

「まだです!!」

 

「なっ!?」

 

「間に合えぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 しかし、そこにあうんが割り込んだ。シュートブロックができないとすぐに察した彼女は、華扇のフォローにすぐに入れる位置に移動していた。レミリアのディフェンスに向かおうとしていた最中での移動だったが、なんとか間に合った形だ。この状況には、流石のレミリアも驚愕する。

 あうんは、未だに炎を纏っているボールに蹴り入れた。だが、華扇の必殺技でもそんなに勢いを失っていないボール故に、彼女の足は少しずつ押し込まれる。炎がボールにより一層まとまりついて空気が陽炎で揺らぐほど、シュートの重さが増していく。

 

 

「たぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

 あうんは、声を上げながら必死に止めようとしていた。絶対に点を入れさせない。その一心だった。

 しかし、無常にもフランのシュートは止められそうになかった。むしろ、急いでボールの射線に割り込んで止めているためか体勢が悪く、それでよく止められているのか不思議なくらいであった。

 

 

「……やるわね」

 

 

 レミリアは必死に止めようとするあうんの様子を見て、そう呟いた。その理由は、あうんが取ろうとしていたある行動だった。

 

 

(フランさんのシュートは強力。止められないのはわかっている。だけど、受け流すのは別!)

 

 

 そのあうんの思考通り、彼女は、足の向きを少しずつ受け流せる方向に動かしていた。その間、一瞬のことある。

 すると、ほんの僅かにボールの軌道がずれたような気がした。気のせいかそうじゃないかというレベルの違いなのだが、それでもレミリアはそれを見逃さなかった。

 

 

(これは、逸らされる!)

 

 

 レミリアがそう判断して動こうとするのと、ボールがゴールポストに当たるのはほぼ同時だった。あうんは、シュートを完全に防げず弾かれる形でゴールの中に尻餅をついたが、ゴールを守ることに成功した。

 

 

「華扇!あうん!」

 

 

 しかし、その成功も刹那のことでしかなかった。ボールのこぼれ先にレミリアが走り込んでいたのだ。

 

 

「フランのシュートを逸らされたのは想定外だったけど、今の状態だと防げないはずよ!!」

 

 

 レミリアはそのままの体勢で力強くボールを蹴り出す。が、何者かに阻まれた。その正体は、目の前にあった。

 黄髪の髪でチーム博麗のユニフォームを着た人、霧雨魔理沙だった。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

「くっ!」

 

 

 魔理沙はレミリアに抜かれてから、ここまで戻ってきていた。それも、レミリアの意表をつく形でだ。

 魔理沙とレミリアは、それぞれボールを蹴り入れていた。勝負は完全な力勝負。レミリアが押し出してシュートするのか、魔理沙が守り切るのか。観客も、フィールドの選手も、固唾を飲んで見守っていた。

 

 

「あい、かわらず、意表をつくのは上手いわねッ!」

 

「そっちこそ、不意打ちだったのに、なんて強さしてんだよ!」

 

 

 どちらも互角の勝負。互いに譲りはしなかった。

 

 

(……今!)

 

「「!?」」

 

 

 その隙に、霊夢は魔理沙のフォローしようと2人のマークから抜け出した。魔理沙とレミリアの1対1に意識を奪われている最中での出来事だったため、咲夜とパチュリーは反応が遅れた。そして、その反応の遅れは、霊夢相手には致命的だった。

 

 その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!」

 

「キャッ!」

 

 

 2人の拮抗は、ボールが上に弾かれることで決着がついた。だが、それに向かって走り出した者がいた。

 

 

「もう一度!」

 

「やらせないわ!!」

 

 

 ボールに飛び込んだ2人、霊夢とフランは、それぞれ力強く蹴り入れた。

 

ーーーその瞬間、白い閃光が衝突音とともに弾けた。




・十六爪炎壁 
跳び上がったフランが、空中でボールに高速で叩き込む炎シュート。炎を纏った七色の羽でボールが紅くなるまで連打し、最後に踵落としで撃ち抜く。元ネタみたいに炎の剣とともに叩きつけても良かったが、ハンドになりかねないので今の形になった。え?原作でこれより怪しいのがある?し、知らない子ですね(メソラシ)。

・鷹符 ホークビーコン
華扇のキーパー技。光の鷹を突撃させて鉤爪でボールを封じ込め、追撃の弾幕で完全に無力化する防御技。去年の試合では、数多くのシュートを封殺したらしい。


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