すこし文字数が多くなったような気がする。
キャラの理解度を増やすための致し方ない犠牲という事でここはひとつ……。
「え? それって私の事なの? イズナちゃん?」
『多分そうです! ツクヨ殿が何やら心当たりがある様でした』
「え? ツクヨちゃんが?」
『はい! 何でも、「あ、あの時の様な事を何回もやっていたら噂にもなると思います……」って言っておりました』
「えぇ~」
時折、登校するまでの空き時間にイズナちゃんと通話するときがある。
ある日、話の中でとある噂の正体が私なのでは?と言われて頭を抱えていた。
その噂とは、【後ろから優しく諭す声が聞こえてきて振り返ろうとしたらいつの間にか気を失っている】という……
どう考えてもあの時期のだよね?百花繚乱の方々に稽古を付けてもらってた時の……
しっかし、声真似が上手いなイズナちゃん。一瞬、ツクヨちゃんに変わったのかと思ってビックリしたよ?
「それはさておき、そっちは最近どうなの?」
『え~っと、最近新しい活動を始めました!』
「新しい活動……?」
『そうです! 部長が動画チャンネルを作りまして!』
「え、ミチルっちが? あの人何で教えてくれなかったの……なんて言う名前? 登録するよ!」
『少女忍法帖ミチルっちです!』
少女忍法帖ミチルっち……私の呼び方をそのままチャンネル名に持っていったのか……
「……ねぇ? ミチルっちの呼び方変えたほうがいいのかな?」
『どうしてですか?』
「いや……チャンネルの名前と同じだったら混乱するかなぁって」
『え~っと……むしろ気に入ってるからこの名前にしたのではないでしょうか?』
「そうかな? じゃあこれからもそう呼ぶけど……時間があるとき見るね!」
『ありがとうございます! 部長も喜ぶと思います!』
「そろそろ時間だし切るね?」
『イズナもそろそろですね。また時間が合えば話しましょう!』
「うん! またね~」
通話を切った私は移動中に動画投稿サイトを確認する。少女忍法帖ミチルっち……あっ見つけた。
チャンネルを登録しつつ内容を確認する。動画は一つ、見てみると素人のファミリー動画って感じの完成度なんだけど──
「……いいなぁ」
思わずそう言葉が漏れてしまっていた。
「ミヤコ? 今日の午後って何の訓練をするんだっけ~?」
「対敵動作訓練です。 なんでメモを取らないんですか?」
「え? う~ん……。ミヤコに甘えたい──から?」
「……それを堂々と言える胆力は逆にすごいですね」
昼食後の空き時間にミヤコにダル絡みしていた私。
何故ダル絡みするかって?なんだろう……あの動画を見てて少しモヤモヤしたというか、ズルいなって感じたからかも?
私を小さいからって愛玩動物かのように接してこないし、隣の席だし、関わってて一番気が楽なんだよね。
というかミヤコ……私の能力知ってるよね?冷たい態度を取っても分かるのに……
「そういえばさ?」
「なんですか?」
「入学式の時はさ? 先輩のようになれるよう頑張るぞー! とか思ってたんだけど……」
「はい」
「でも今はちょっと憂鬱というか……。 ほらあの百発百中スパルタ射撃訓練とか」
「これでこそSRTだと思いますけどね」
「え~? まぁ、そうだけどさぁ~?」
「そんなので今後やっていけるんですか?」
うぐっ……こんなんで嘆いていられないのはそうだけど……。
「ちょっとは慰めてくれてもいいじゃんミヤコ~」
「私にそれを求めるんですか?」
「は~ん? 言ったな? 私分かってるんだからね?」
「何がですか?」
「そりゃあもう──」
私は、続きを話すことに躊躇する。
このまま話すとミヤコは嫌な気分になるかもしれない。イズナちゃんやミチルっちとは違う事を危うく忘れるところだった。
「いや、何でもないや」
「なんですか……気になりますね」
ミヤコは少しムッとした顔をした。
ごめんねミヤコ。苦い思い出は早々忘れられないというか、あの二人と違うと考えるとどうしてもね……。
──1300、天気:曇り──
午後の実技の時間、私達A教室の全員は、支給されているライフルを持って屋外訓練場に横一列に整列させられていた。
「本日は対敵動作訓練だ! 突っ立って狙って撃てば百発百中は当たり前だ。ただ、お前たちがこれから相手するやつは当たり前だが撃ってくる。お前たちが先手を取れない時だって存在する。今回は交戦時に何をするべきか……これを学んでもらう」
私達が整列したのを確認した教官がそう話す。
「さて、今から四人一組にする。それが何故だか分かるか? ──空井サキ!」
「はっ! 小隊が基本四人編成だから……でしょうか!」
「そうだ! ではそこから二人一組を作ってもらう訳だが……理由は分かるか?」
「交互前進する為……です!」
「よろしい! 良く教範を読んでいる様だな? これからも励むように」
「ありがとうございます!」
サキさんは褒められて頬が緩んでる。可愛い……
A教室の全員は四人一組に分けられていく。
「心目サリ、空井サキ、風倉モエ、石橋テイカはブラボーチームだ。アルファチームの次だからブラボーはよく見ておくように」
「「はい!」」
こうして私達ブラボーはアルファの動きを見学することになるが、座学で教わっている事を実際に見ているとその行動の理由が肌で理解できた。
隊列を組み行進……合図と共に指定された方向に向かって応射。その間に移動する班と撃ち続ける班に分かれてお互いをカバーするという動き……。撃たれてる中、体を晒す化け物なんてそうそういないわけで、これであれば安全に制圧できるというものだ。
あの時の先輩はもっとスムーズだったけど、やっぱり経験なのかなぁ?そう考えたらもっと頑張らないとって思うけど……。
ある程度見学したタイミング。同じ事の繰り返しであると分かった私は、ブラボーチームの仲間と少し話をしてみる事にする。
こういうのは私語厳禁かもしれないけど……せっかくなら皆と仲良くしたいじゃん?まずは……サキさんから声を掛けてみようかな?一番近いし。
「サキさん? ちょっといいですか?」
「……良いのか? 話してる所見られたら怒られるぞ?」
私の方を向くサキさんは凄く怪訝な顔をしている。しかし、その感情は怒りというより心配の方面によっている様に視える。
うん。堅物そうなサキさんの事だしそう言うと思ってたけど……でも、わざわざグループ分けて個別で動くって事はこの間に親睦を深めるなり連携について話しとけって事でしょう?
……多分。
「その時はその時だよ。これから連携を取る上でも仲良くなってた方がいいでしょう?」
「それはそうかもしれないが……」
「それに、関係ない話って訳でも無いし?」
「どういう事だ?」
よし……興味を持ってくれた。こういう人はここでふざけてはいけない。そうすると二度と話を聞いてくれないから。
「サキさんって教範をずっと読んでるでしょ?」
「あぁ、そうだな?」
「だから私より理解度が高いと思って聞くけど、この動きってわざわざチーム分けする必要はないと思うんだ? だからなんでわざわざ4人組になってやるのかって……分かる?」
「あ~」
少し悩む素振りを見せるサキさん。そうすると私達がお喋りしている事に気付いたある人物が会話に入り込む。
「くひひ、そうだよねぇ? やっぱりこういうのはもっと大人数で、もっと高火力で、ドカンと花火を打ち上げたほうが良いもんねぇ?」
そう言って恍惚とした笑みを浮かべる彼女……このクラスきっての問題児、風倉モエ。
相変わらずぶっ飛んだ発言をするなぁ……私も教範を見るまでは似た疑問を感じてたし人の事は言えないけど。
「このバカ! それじゃ訓練にならんだろうが! それに、私達は少人数で動くんだから火力に限りがあるわ!」
「サキちゃんナイスツッコミ! 相変わらず仲がええなぁ? そこのお二人は。」
「どこがだ!」
「くひひ!」
わちゃわちゃしてたところに特徴的な口調の人物、石橋テイカが会話に混ざる。
この三人、仲良さそうに話してた事は遠目で見てたけど、堅物なサキさんに問題児のモエさんが絡みテイカさんが茶々を入れつつもお互いのバランスを取ると……なるほど、こんな感じだったのね。
「さて、話を戻すけど……サリさんの言う通りこの訓練を四人でやる理由はあんま無いように感じるわ。なんでなん?」
「それは、私にもよく分からないが……。教官も言ってた事を考えると、小隊を編成した時に早く馴染ませる為の物なんじゃないか?」
「やっぱそういう理由なんかなぁ?」
う~ん、やっぱりもう何人か増やしたほうがもっと楽に任務遂行できそうな気が……サキさんなら答えられるかなぁ?
「個人的にはもう少し小隊の人数増やした方がいいのでは? って思うんだけど……」
「そりゃあれじゃない? 小隊長が管理しきれない~とかそういう理由じゃない?」
「それに関しては分かるぞ? 基本的にツーマンセルが一番負担がかからないそうだ。でも二人だと限界がある。二人に分けた時に一人余る五人に出来ないし、六人以上になると指揮と把握で手一杯になるから速さが必要な私達に合わない。だから偶数かつ管理できる限界の四人らしいな?」
私の素朴な疑問やモエさんの軽いノリで考えた予想にサキさんがまるで百科事典の様にスラスラと回答した。どうやら教本に載っていた内容のようだ。……何ページに載っているんだろう?
「へ~。案外考えられてのこの人数なんやな~」
「サキさん、それどこのページに載ってる? 後で確認したいかも」
「あ~、指揮関係の最初の方の……130ページくらいだったか?」
「よく覚えてるよね~?」
……マジで答えられてるし。寮に帰ったら確認してみよ。
ただの訓練と思っていたけどこうして考えてみると、小隊編成の為の確認を含んでいるのかもしれないなぁ。気を引き締めなくっちゃ。
「あと、面白い記述があったぞ? 本来四人組は班と呼ばれるらしいんだが……何故小隊と言ってるのか」
サキさんが思い出したようにそう口にする。
「そう言えば気になってた。なんでなの?」
「四人で三、四十人分の力があるって言うのを心に刻む為らしい」
その言葉を聞いた私を含めた三人は目を輝かせる。ナニソレすっごく熱くない……?
「へぇ~凄いカッコいい理由だねぇ?」
「あ~……」
モエさんがそう反応するとサキさんは何故だか何とも言えない顔をする。そのことに疑問に思っているとゆっくりと口を開いてこう言った。
「……あと、その方がカッコいいからと」
その瞬間、全員の動きが止まり遠くで聞こえる銃声のみが耳に入ってくる。そして──
「なんやねん! この感動を返してぇや!」
テイカさんの渾身のツッコミが入ったのだった。
──1700、天気:曇り──
「訓練終了だ! 今日の事はレポートとして翌日提出するように! では、解散!」
「「ありがとうございました!」」
教官の号令と共に全員が声を重ねて返事をする。自由解散となった後、全員は言葉を交わすまでも無くA教室に集まっていた。
訓練とHRまでの空き時間。恐らく意図して長めに設けられているこの時間。自然とA教室の人間は集まって色々と意見を交わしていた。
その時にチームになっていた者で集まってレポートを書きながら感想を言い合う。この時間は何故だかとても好きだった。
ブラボ―チームの中で最初に口を開いたのは、テイカさん。こういう時に真っ先に話すのはこの中だとモエさんかテイカさんだろうなぁって思う。
「なぁ、皆はこの訓練どう思った? ウチはめっちゃ動きやすいなぁって思ったんやけど」
「わかる~。個人的にはもっとド派手な武器を使いたかったけどね」
テイカさんの感想に相変わらずのモエさん……この際だからここに来るまで何してたのか聞いてみるか。
「……今更だけど、モエさんって前は何やってたの? だいぶ危険思想な気がするけど」
「おっ、気になっちゃう? う~んと……あっ、そう言えば商店街でありったけぶっ放した時は楽しかったなぁその時の話は?」
「「え!?」」
とんでもない爆弾発言が出てきた。マジのテロリストじゃないか……?
「聞いたことあるで? 数か月前、商店街が半壊したって事件……アンタやったんか!」
「お前、よくSRTに入れたよな……」
「褒めても何も出ないよ?」
「「褒めてない!」」
モエさんはケラケラと笑いながら答えた所にサキさんとテイカさんがツッコミを入れた。
しかし、モエさんは何でそんなことしたんだろう?捕まらなかったのが奇跡だし、何故そんなことをやったのか……それ次第でモエさんに対する印象を大きく変えなくてはならない。
「ねぇ……モエさん?」
「ん~? なぁに?」
「何でそんなことやったの?」
「え? え~っとねぇ……。私ってほら、『花火』が好きじゃん?」
「花火……」
すっごい含みがある気がするんだけど……
「その『花火』が『湿気ってた』んだよね~」
「え~っと……そして?」
「だから火を付けて返してやったって訳!」
話を聞いてた全員が凍り付く……裏がある単語を各々想像して、モエさんの性格を考えると……
「という事はあれか? 何かしらの兵器を買おうとして? それがちょろまかされてると知ったから? 怒って店員に使った……と?」
「サキちゃん大正解!」
「「うわぁ……」」
サキさんがモエさんの性格を基に要約してくれたが……そりゃ皆ドン引きするよ。
「ほなら、逃げれた理由は?」
「使った爆薬は向こうのだし、裏がある商売だから付近にカメラも無い。あの辺りの客層も知れてる上にヴァルキューレが来たら向こうの不都合が多いし、泣き寝入りするしかないよねぇ~?」
淡々と、目元は変わらず、口角のみを少し上げながら彼女は語る。その姿はまるで裏社会を生きる人間のようで、私は少しの冷や汗を流した。
なるほど……聞いた事件の規模にしてはあまり話を聞かなかった理由は、ヴァルキューレにしょっ引かれないように店が証拠隠滅を図ったからで周りの人間も非協力的である可能性が高いと……そっかぁ。
「……この人に才能を与えちゃいけなかったと思うよ?」
「いやぁ~照れるなぁ~」
「「だから褒めてない!」」
う~ん、能天気なのか何なのか……
この後、サキさんの尽力により話の流れを戻した私達は、多少の脱線をしつつも何とかレポートを書き終えた。
帰り道の自販機で缶コーヒーを買い、一息つく。行きつけの喫茶店に行けなくなった最近の至福の時間だ。
ボタンを押して大きな音と共に落ちてきた缶を拾い、プルタブを開けて一口啜る。
……そして顔を少し顰める。
「やっぱり缶コーヒーは美味しくないなぁ……でも、自分で淹れる元気も時間も無いしなぁ……」
少し文句を呟きながらもコーヒーを飲む手は止めずに今日の事を振り返る。
モエさん、相当頭が切れる人だったなぁ……巻き込む人間の層も自分の不利益もしっかり計算してるようだし。
仲間になると心強いかもしれない。あの暴走癖をどうにかすればだけど。
サキさんはしっかり者だし知識も豊富だしチームに居て欲しい人材ではあると思う。規律に対して普通以上の意識を向けてるのが少し引っ掛かるけど……。
問題は……テイカさんだ。あの人に関してはあまり掴めなかった。
今まで見てきたけど、明るくノリも良い。感情の変化単純だし、裏表は無いとは思うんだけど……モエさんとサキさんとの絡みのあのバランスの良さ……狙っていないなら天性のムードメーカーってやつだ。
けど、もし狙ってやってるなら……私よりも空気を読むのが上手い気がする。見えてないんだよね?人の感情を……。
そうだったら少し自信を無くすなぁ……。
そうやって物思いにふけっていると、口に苦くも香ばしい液体が入ってこない事に気付いた。
「……あれ? いつの間に飲み切ったんだろ?」
そう言いながら私は缶を眺めて少し揺らすが、音は聞こえない。
一つため息をつきながら、空になった缶を近くのごみ箱に投げ捨て、寮へと歩み始める。
言葉に出来ない感情を胸に抱えながら、あの時の先輩の姿を目指して──
あとがき
「黄昏るのは思春期あるあるかなって……」
実際、自分もやってましたし今でも時々する時あるし……イタいなんて思いませんよね?
モエとサキはキャラ説明回にセットで出したかったのがあります。そしてオリキャラの存在がそれに納得感を持たせると……うまいこといってると良いんだけど。