評価を見るに概ね好評ってことで良いんですかね?今見ると序章の書き方が若干あれだったか?って思わなくも無いですが……。
ミユちゃん草むらトレジャーハント事件からしばらく、私とミヤコとミユちゃんは一緒に行動するようになったが──
「え~っと……ミヤコちゃん? さっきから同じ場所を梳いてませんか……?」
「……」
その会話の途切れ方に既視感を覚えた私は、二人の方を見る。
うわっ、ミヤコが聖母のような眼差しで延々と髪を梳いてる……またなの?
ミユちゃんが助けを求める目で私を見てきてるし……しょうがないなぁ?
「ちょっとミヤコ? 戻ってきて……! トリップしてないの!」
「はっ……!」
私がそう声を掛けると、ミヤコの体が少し跳ねて正気を取り戻した。
「ご、ごめんなさいミユ……」
「い、いや……大丈夫だよ?」
ミヤコはアワアワと慌てて謝り、ミユちゃんはそれを申し訳なさそうな顔で応えている。
その光景を見ている私は少しばかり呆れた顔をしてしまうが、少し心の奥で引っ掛かる部分があった。
ミヤコってミユの事を妹か娘か何かと思っているんじゃ?
ミユもそれでいいと思ってそうだし……大丈夫なのかな?
そんなことをやってるとまた──
「うい~、そこの三姉妹は相変わらず仲がいいねぇ?」
「ほんまやで~ちょっとうらやましいわ~」
ほ~ら、お調子者二人組がダル絡みしてきたぁ……。
「なに? テイカにモエ……混ざりたいの? ──良いよ?」
私は少し目を細めながら首を傾げつつ両腕を広げてみせる。
「え、ええわぁ……なんか戻れんくなりそうっていうか、変にハマったら怖いというか……」
「くひひ! それはそれでとても惹かれちゃうねぇ?」
どうやら何かを危惧してるようで近付いてこない。興味はあるようだけど……。
「何やってるんだお前ら……」
後ろから声が聞こえてくる。
姿勢はそのままに声の主の方を見ると、10人中10人が教科書通りのジト目と答えるだろう顔で見てくるサキさんが居た。
「あ、サキさん。 いやね? どうやらこの二人が私に甘えたいそうなので飛び込んで来るのを待ってるんだけど──」
「いや、そんな事一度も言っとらんで?」
「うっそだぁ~」
笑い合いながら漫才を繰り広げていた所で、少し遠くの方から視線を感じる。
うん?と思い振り向いてみると遠くの方で笑いをこらえながらこちらを見ている二人組が目に付いた。
あれは……確かシオンさんとミントさんだったっけ?そんな遠くでも聞こえる位うるさかった?なんかそれは恥ずかしいなぁ……。
恥ずかしさから顔が熱くなるのを感じながら二人の方を見ていたら、私が見ている事に気付いたのか二人は直ぐに目を逸らされた。
騒いでいた自分達が悪いんだしそんなに急いで顔を背ける必要もないのにと思ったものの、一瞬見えたミントさんの感情が少し引っ掛かった。
何あの感情……?ダブって見えるし、関心とも警戒とも違う疑問……いや、興味?
インクが滲むような……じわじわと変色して目まぐるしく変化してるような……一瞬しか視えなかったけど、あの感情……少し気になる。怖いけど。
今までに見たことのない感情の持ち主。少しの恐怖心を抱きながらも、その正体について私は考えてしまう。
だけど、考えがまとまる事は無かった。
本日の授業が終わり、机に出していたレポート用紙や教範などをしまおうと立ち上がる。
訓練の疲れからか?それともあの時の疑問が頭の中をめぐっていたからだろうか?集中を欠いていた私は机に置いてあった飲みかけのペットボトルのキャップを閉め忘れており、思いっきりレポート用紙や教範に飲み物をぶちまけてしまった。
「あぁぁぁぁ!!!」
そんな情けない私の声が教室をこだまするが……それに反応したものは誰も居ない事から、周りを見る余裕のない私でも、教室に誰も残っていないのだろうと察せられる。
最悪……教範はどうにかなると思うけど、レポート用紙は……うえ~、こりゃ書き直しだぁ。
うぅ……泣きそう。今すぐ布団に入ってふて寝したい。
機密情報扱いであるが故だろうか?レポートの提出は紙媒体オンリーであり、そんなレポート用紙は、まるで海苔の佃煮か何かかと思う状態になってしまっている。
……触らなければ乾かすだけで済んだはずなのに、なんで動かしちゃったかなぁ?
「とりあえず拭くもの持ってこないと……」
泣きそうな声でそう私が呟くと、私の背後からスッっと綺麗な白いタオルが差し出された。
「……ぇ?」
「えっと……とりあえずこちらをお使いください」
上品な喋り方をする声の主の方を向くとそこに居たのはミントさんだった。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください」
差し出されたタオルを使って机を拭いていく。
というか、ミントさん居たの全然気づかなかったなぁ……どれだけぼけ~っとしてたんだ私?
「あの時は申し訳ございませんでした……」
「……あの時?」
「えぇ、仲睦まじそうにお話していた時に不躾な視線を……」
「よく憶えてたね? 私は憶えてなかったよ」
嘘である。何なら気になって全然集中出来てなかったけど、言う必要は無いよね?彼女のせいにしたくは無いし……。
私はそう思い誤魔化したけど、ミントさんは少し苦い顔をした。
「嘘ですよね?」
「へ……?」
私はミントさんの目を視る。相変わらず変な感情……でも、悲しんでる?
「「……」」
お互いに口を閉じ目を合わせる……。一瞬の静寂にまるで時が止まったかのような感覚に陥る。
この時間、私はただひたすらにミントさんの感情を把握しようとしていた。
少し集中して視てみると、比較的素直な感情の変化だと感じる部分と、目まぐるしく変わる部分で分かれてる?
でも、この目まぐるしい感情……どこか引っかかる。
「サリさん……あなたは何を見ておられるのですか?」
私の目を見つめながら放つその言葉に思わず、血の気が引いた。
視ていることに気付かれてる?
いや、確かに人の感情が分かるというのは皆の前で言ったけど、目を視る事で感情が分かるとは一言も言っていないはず……。
だって、ミヤコにすら言っていないもん。
その瞬間、彼女の目まぐるしく動いていた感情の部分が驚きと恐怖の色に染まり、動きを止めた。
ミントさんのあの感情、まるで鏡を見てるみたい。もしかして……?
「ミントさん……あなたって何か特別な力みたいなものが?」
「サリさんこそ、その反応はもしや……」
「……長くなりそうですね? レポートを書き直しながらでいいですか?」
「えぇ……よろしいですよ?」
「隣、ミヤコの席だけど……今は居ないし、ちょっと借りようか?」
そう言って私は隣の席の椅子を引いてミントさんを手招きする。
優雅さを感じさせる動作で椅子に座った彼女は、私の動きを待っているのか静かに耳を傾けている。
一拍置き、相手の言葉を待ってると分かった私は、ゆっくりと口を開いた。
「え~っと……何から話そうか……?」
「そうですね。では、サリさんの事について……一体何を見ておられるのか」
いきなり踏み込んできた。恐怖や不安は無い──いや、あるっぽいけど……それ以上に気になるのかな?
なら、私も覚悟を決めなきゃね。
「え~っと、なんて言えばいいかな……。実は、目を合わせるとその人の感情の……色? が視れるの」
「色……?」
「そう、色。 例えるなら、赤や青、黄色と言った感じで……もっとも、その色がホントにその感情なのかは分からないけどね」
「……」
「あと、なんだろうな……いわゆる色の濃さと光の強さ……かな? でその人の感情の強さみたいなのが分かるの」
すると、ミントはどこか納得したような素振りを見せた。
信じてくれたようだけど、そんな簡単に信じられる物なのかなぁ?普通は疑う所だけど……。
私もミントさんの得体の知れなさが気になるけど……自分も同じようにミントさんの言う事を信じられるのかな?
「じゃあ私も聞きますけど、ミントさんの……その感情は何なんですか?」
「……恐らくサリさん。貴女ではないでしょうか?」
「へ?」
私の質問にしばらくの沈黙の後、ミントさんは答えた──が、思いもよらない回答に思わず素っ頓狂な声が出た。
私……?ミントさんの中に私?どういうこと?
「え~っと、私の特技……実のところ人の行動を把握する事なのです」
「把握?」
「その人の口調、瞬き、視線や癖など……観察してると私の中にその人の像のような物が出来上がります」
「像……?」
「えぇ、像です。それによって人がどう動くのか、なぜ動くのか……それが分かります」
とんでもない事を言い出したんだけど?見れば見るほどその人を理解できるって事?
でも、その力が本当なら私の力もすぐわかるだろうし?私の事を聞く必要は無いような?
「うん? じゃあ、私に質問してきたのは何で?」
「実は、サリさんの行動の一部がどうやっても理解できなくてですね? 行動理由が分からず、今までは私の予想で補っていたんです……なので聞きました」
「あ~なるほど……」
つまり……ミントさんの「像」とやらの感情……つまり、私の感情を見ていたって事?
二つに分かれているように感じた感情の境界が滲み、混ざっている様に感じた理由はミントさんの思考が介在していたから……?
いや、なんか微妙に違う気がするけど……これ以上は考えても仕方ないかな。
「にしても、ミントさんの能力って何でも分かりそうですね?」
「それはこちらも言いたいですよ? 感情の把握だなんて……」
「「……」」
少しの沈黙。ミントさんと話すとこうなりやすい気がする。
私は人と話すときにその人の感情に沿うように話すよう心掛けてるけど、ミントさんも同じなのかな?
だったらこれって、ぶつかりそうになってお互いに同じ方向に避けるみたいな……あれなんじゃ?
何よりミントさんの二つの感情が、同じ色になっている。そのことが何故だか可笑しくて……
「あははっ、その感情!」
「うふふっ……そちらもなんですね?」
「うんうん! そんなに似てるなら……辛いこととか多かったでしょ?」
「えぇ……今思えばサリさんも特技の話をした時、かなり勇気が必要だったでしょう?」
そこから先はもう止まらなかった。能力は確かに違う。けど同じような方法でお互いを理解していく様子に、嬉しさと今までの苦労が伝わってきて少し涙が出そうになっていた。
「でも、改めて思うと私って傍から見ると不気味だね……ようやく理解できた気がする」
「サリさんは、その人がなぜ距離を取ろうとするのかは分からないんですよね?」
「そうそう……不信感と嫌悪感だけが見える感じ」
「それは苦しいですね?」
「まぁ、辛かったけど……底なしに明るい子が隣に居てくれたから大丈夫だったかな?」
「底なしに明るい子……?」
「そうそう、百鬼夜行にね」
「一度お会いしてみたいですね」
「機会があれば会わせてあげる!」
そうこうしている間に、外の景色は暗くなっているのに気付く。
少し話し込んじゃったや。レポートは……うん!帰ってからやろ!
「ミントさん? これからサリって呼んでよ!私はミントって呼ぶからさ?」
「う~ん……やっぱりさん付けで呼ばせてください? 私の事は呼び捨てで良いので」
「え? 何で?」
「慣れです」
「……そっかぁ。 いいよ!」
「よろしくお願いしますね?」
「うん! よろしくね!」
慣れ……嘘なのは分かるし、向こうも気付いてると分かってるはず……まぁ、それについてはこれから聞ければいいかな?何より、あの感情の理由が判明してすごいスッキリしてるんだ?
今なら何でも許せる気さえする。
「お前ら! いつまでここに居るんだ! さっさと寮に帰れ!」
「「すみませんっ!」」
教官の怒号に思わず声が重なった……。時刻を見ると納得出来る時間……。
あぁ……今日は徹夜かな?
あとがき
「自分が考えてるオリキャラに頭を悩ませまくってる……」
はい。作者です。今回はミント回。彼女についてかなり分かったかと思いますが、忘れてはいけません。この作品はサリ視点の話ですので、サリが間違って認識すると同じく間違える可能性がありますよ。