【刀剣乱舞】落葉、未知明日【二次創作】   作:ハコぶね

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未だ出口を見ず

 ……眠れない。

 一期は寝返りを打った。どうしても「昨日」と「今日」のことが気になって仕方がない。

 

 一期が気を失って再び目覚めてみれば、そこは粟田口の大部屋であった。目に涙を浮かべて心配そうにのぞき込んでくる弟たちに応えて起きあがり、なんとか平静を装ったものの、その後に待っていた展開はほとんど「昨日」の展開と同じである。

 

 いったい、なにが起きたのか。

 なぜ「昨日」が繰り返されたのか。

 なぜそのことに、誰も気づいていないのか。

 

 ……ちがうな。

 一期は最後の疑問に修正を加える。なぜだれも気づいていないのか、ではない。

 なぜ一期だけが気づいてしまっているのか、だ。

 

 そもそも、きっかけはいったい何だったのだろう。

 顕現し、自己紹介をし、歓迎会を催してもらい、眠りについて、明日朝主への目通りがかなうはずであった。

 だというのに、ふたを開けてみれば、主に目通りする「明日」までたどり着けない。明日につく前に、巻き戻って「今日」がまた来てしまうのだ。

 ならば、今日の出来事のどこかに、それが起きた原因があるはず。

 

「……あれしか、ない、か」

 

 一期は小さな声で一人ごちた。このあと、「昨日」の一期は水を飲みに起きて、そこでこの本丸に帰ってきたばかりであろうヘし切長谷部に出会い、そのまま背後から何者かにおそわれ、昏倒させられて……そして、「今日」の朝、顕現した直後の時間まで巻き戻されるのだ。

 

 もう一度、長谷部殿にあうしかない。

 そしてできることなら、自分に当て身を食らわせた何者かにも。

 二人こそが、おそらく自分が巻き戻され、二度も「今日」を経験させられたきっかけであるはず。そうでなくとも、何か打開策を見つけるきっかけがあるはず。

 

 一期は一つ息をつくと、布団から静かに抜け出した。

 

 

 目を覚ますと、そこは薄暗い場所だった。

 炉があり、火が燃えている。恐ろしいような気もするが、それが己を生み出したものだと思えば恐怖も和らぐ。そこは、自分を生み出した鍛冶場だ。

 ……そう、自分を生み出した鍛冶場に、いま一期はいる。

 

 ……戻って、来てしまった。

 

 一期は深くため息をついた。結局「昨日」、一期は背後からの襲撃者にあっけなく昏倒させられた。とっさに振り返って一撃目を防いだまではよかったが、その正体に驚愕している内に容赦ない二撃目を見舞われた。

 

 ……いいわけなどしたくないが、あのお方が相手ならば手も足も出せない。

 最高錬度の初期刀と、顕現したての錬度1では、抵抗しようもないではないか。

 思いながら、一期はちらりと目の前の青年を見つめた。

 

「……なんだその目は。

 写しというのが気になると?」

 

 不機嫌そうに、白布をかぶった青年がうなる。

 その白布は、「昨日」一期を昏倒させた犯人のかぶっていたものと、全く同じものであった。

 

「…………」

 

 彼の皮肉を聞くのも三度目ともなると、もはや戸惑いはない。一期は姿勢を正し、折り目正しく頭を下げる。

 

「これは不作法をいたしました。

 私は一期一振。粟田口吉光が鍛えた唯一の太刀でございます。

 ……弟たちがいつもお世話になっております、山姥切国広殿」

「……俺はあんたに名乗ったことがあったか?」

 

 ええ、と一期は笑った。

 ここまで来たら、是が非でも「明日」へたどり着いてみせる、と心の底で誓いをたてながら。

 

「存じておりますよ、もちろん。前の主は刀集めに執心しておりましたゆえ。

 ――山姥切国広といえば、新刀の祖、堀川国広晩年の最高傑作ではございませんか」

「……天下に名だたる名剣名刀殿に言われても、皮肉にしか聞こえないな」

 

 一期の世辞に対して、山姥切は眉をひそめて布をかぶりなおした。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「……あっちが湯殿、そっちに厠。厠は他にも数か所にある。余裕があるときに弟たちにでも聞けばいい。それからここの奥が厨だ。手前が食堂になってて、朝昼夕の食事はそこでとる。配膳は自分でやる。これも詳しくは弟たちに聞くべきだろうな。ああ、冷たい茶や水はそこに用意してある。用意は当番制だ、ここでの生活に慣れたらあんたにもやってもらうことになる。あとは……」

 

 足早に歩きながら、山姥切は一期に手早く本丸内を案内する。それに遅れないようついて歩きながら、一期はその歩き方や身のこなしを観察した。

 そう、「昨日」、一期を背後から襲ったのは、あろうことかこの主の初期刀であった。おそらくは、「一昨日」もそうだろう。

 

 なぜそんなことが起きたのか。なぜ彼が一期を狙ったのか。

 理由は全く想像もつかないが、それでも事実は事実として受け止めなければなるまい。

 

 「一昨日」と「昨日」、一期を抵抗する暇もなく殴り倒した刺客の動きは、速い上に正確だ。相手の動きを先読みして対抗しなければならない。三度目の「今日」こそ、一期はなんとか長谷部と、そして山姥切の二人と、話をしなければならないのだ。

 

「……おい、あんた何だ。さっきからじろじろと」

「あ、いえ失敬。すばらしい身のこなしをしておいでだと」

「はは、あんたさっきから世辞ばかりだな」

「事実を申し上げておりますよ」

 

 そのすばらしい身のこなしに、一度ならず二度までも殴り倒されておりますから。

 

 喉元まででかかったその言葉を何とか飲み込み、ほほえむ。もちろん一期の私怨など、「昨日」や「一昨日」の記憶がないのだろう山姥切には、何のことだかさっぱりわからないに違いないのだ。

 

「まったく……」

 

 ふと、山姥切が口をつぐむ。それをみた一期は、静かにそろえていた足を肩幅に開いた。

 ……そろそろだ。

 

「――踏ん張っておけ」

「……はい」

「は?」

「あっ、いち兄だ!」

「ほんとだ、いち兄!」

「待ちくたびれたぜいち兄、どこほっつき歩いてやがった!」

 

 え、という顔をして山姥切が一期の顔を見返す。唐突に言い放った警告に、まるで用意していたように反応した一期に驚いたのかもしれない。しかし一期はもう、山姥切を見ていなかった。

 

 さあ、三度目の正直。

 そうそう何度も私を押し倒せると思うならば大間違いだ。全身全霊を込めて、全員を受け止めてあげよう。

 

 山姥切があわてたようにその場を離れる。とたん、視界いっぱいに広がる弟たちの顔、かお、かお。

 

「いっちにぃ――!!」

「お覚悟です――!!」

「わ、わーっ!!!」

「あっはっはっはっはっは!!」

 

 ……しかし一期は忘れていた。

 今弟たちは、愛する長兄を待ちわびる間に錬度をめきめきとあげ、山姥切をして「とんでもない」といわしめるところまでの実力を備えるに至ったという事実を。

 いくら短刀、いくら少年の体躯であるとはいえ、何人も飛びついて来る弟たちの突進を、錬度1の太刀が止めきれるものではない、という事実を。

 

「ぅわっ……!」

 

 受け止め、その勢いを殺すことができたのは一瞬だった。

 一瞬後、一期は弟たちの下敷きになったまま、「今日」最初の、且つ予想外の昏倒を余儀なくされた。

 

 

 目を覚ますと、そこは薄暗い場所だった。

 炉があり、火が燃えている。恐ろしいような気もするが、それが己を生み出したものだと思えば恐怖も和らぐ。そこは、自分を生み出した鍛冶場だ。

 

 ……一期は無表情を装って内心で頭を抱えた。頭をしたたかに打った一期は「昨日」、目覚めるのにかなりの時間を要したあげく、結局山姥切に数秒の抵抗も許されず昏倒させられたのだ。

 すでにおそってくるのが山姥切だとわかっていたはずであるのに、かわすことも、防ぐこともできなかった。

 この状態で、どうやってこの循環を抜け出すというのだ。

 

「私は一期一振、粟田口吉光が鍛えた唯一の太刀。

 ……………………いつも弟たちがお世話になっております」

 

 この口上はもう何度目だ。……ああ、四度目か。いかに温厚と評される一期一振といえど、気の滅入る思いはどうしようもなかった。

 

「歓迎する、一期一振。あんたの弟たちにはいつも世話になっている」

 

 ……もういっそ、今この時点でこの目の前の男を殴り倒してしまうというのはどうだろう。どうせ何度も繰り返すのだ、いまさら歴史がどうの、改変がどうのと言っている場合ではない。

 

「……それはよろしゅうございました」

「? 顔色悪いぞ、大丈夫か」

 

 心配そうに、山姥切は一期をのぞき込んでくる。おそらくこの青年は、今日も深夜、一期を殴り倒すのだろう。今はそんなこと、考えもしていないのだろうが。

 

「……山姥切殿」

「うん? 俺は今あんたに名乗ったか?」

「……お覚悟」

 

 一期は身を屈めて自分自身を抜き放つ。……いや、抜き放とうとした。

 どすん、と鳩尾に衝撃が走る。目の前が真っ黒に染まっていく。

 

「……それで、殺そうと?」

 

 氷よりさらに凍てついた声が、崩れていく自分に投げかけられる。鞘から半分抜けた状態の自分自身をぼんやりと眺めて、一期は眉をひそめた。

 

 ……やはり……だめか。

 

 

 目を覚ますと、そこは薄暗い場所だった。

 炉があり、火が燃えている。恐ろしいような気もするが、それが己を生み出したものだと思えば恐怖も和らぐ。そこは、自分を生み出した鍛冶場だ。

 

 問答無用で初期刀に斬りかかり返り討ちになってから、さらに数度……いや、十数度、違う、数十度、いいや、もしかするとその回数は三桁を超えているかもしれない。

 何度目になるかわからない「今日」の始まりに、一期はもう表情を変えなかった。

 

「……私は一期一振、粟田口吉光が鍛えた唯一の太刀。藤四郎は私の弟たちですな」

 

 顕現直後に名前も名乗らず目の前の初期刀をおそったこともある。

 いないはずの近侍を昼間追いかけたこともある。

 深夜、部屋からでなかったこともある。

 背後から襲い来る山姥切の初撃はもう目をつぶっていてもかわせる。

 二撃目からは毎回攻撃パターンが変わる。しかし最近、三撃目まではいけるようになってきた。

 

 ……それでも、一期はまた、「今日」に巻き戻ってくる。

 山姥切の猛攻に反応するのに手一杯で、いっさい会話ができていないせいかもしれないが、そろそろそこへ至る道を模索するにも、一期の中で手詰まりの感が出始めていた。

 

 ……何度も繰り返せば、それがとてつもない苦痛だというのは実感できる。自覚しなければ全く苦でもないのだろうが、それでも一期は気づいてしまった。だから、もがくしかないのだ。

 

 一期の思いを知らぬであろう山姥切国広は、いつものように不機嫌そうな表情を浮かべたまま一期の口上に応えた。

 

「歓迎する、一期一振。あんたの弟たちにはいつも世話になっている」

「それはよろしゅうございました。ところで主は今どちらに」

「主は現在出張だ。近侍を伴って本部へ出向いている。帰りは本日深夜だ。……明日朝顔合わせになる。それまで待機していてくれ」

「かしこまりました」

 

 自分がこの本丸にいられる時間は、せいぜい15時間といったところ。そのうち少しでも深夜の対策に力を入れるためには、どうしても他の刀剣たちの不興を買うような行為を廃する必要があった。

 

 一期はここ数回で最も効率の良さそうだった行動を反芻する。

 まず顕現したら、目の前の山姥切が卑屈と皮肉を表に出す前に聞きたいことを全て聞き出す。

 案内の後、突撃してくる弟たちは経験則からどう動けば気を失わずに済むか、既に検証済みだ。

 粟田口の部屋の案内をしてもらったら、次は弟たちからできるだけ情報を収集。

 歓迎会での次郎太刀の酒の誘いには応じない。

 深夜になったらまっすぐに主の執務室へ直行。

 山姥切の攻撃で昏倒させられる前に、解決の糸口を探る。

 

(今度こそ……今度こそ)

 

 一期は頭の中で息を一つついて、きびすを返す山姥切の後に従った。

 ……そういえばこの背中も、何度か殴りかかってあっけなく返り討ちにあったのだったか。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ……とはいえ。

 一期は一人、縁側に腰を下ろしてため息をついた。もう何度も繰り返した「今日」、弟たちから聞き出せる情報はもう出尽くしているようにも感じられる。

 できるだけの対策を立て、深夜に臨んで、それでも一期はまだここにいる。結局山姥切は手を止めてはくれなかったし、長谷部も何の反応もしてくれなかった。

 

 一期は今も、突然始まる山姥切の猛攻を3回しのぐ自信はない。

 つまりその3撃までの間に、山姥切の動きを止める糸口を実行に移さねばならない。

 口で言えば簡単だ。しかし、行動に起こすとなると可能であるという気がしない。何せその糸口は、未だ一期の頭の中にかけらも存在していなかった。

 

 ……正直なところ、一期はこの循環から抜け出す方法もわからなければ、どうして抜け出さなければならないのかを正確に説明することもできない。それでもこのまま循環を続ける本丸に顕現し続けるのは耐えられそうになかった。

 長い時を生きてきて、今更変わり映えのしない毎日がつらいなどと言うつもりはない。けれどかつてのあの永遠ともいえるような長い時間は、それでも日付が、時間が、歴史が、前へ進んでいた。暦が進み、季節が巡り、人が老いていった。

 だが今の状況はどうだ。自分は錬度もあがらず顕現を繰り返し、山姥切は相変わらずほぼ同じ皮肉をこぼし、弟たちは全く同じ体勢で自分の元へ飛び込んでくる。長谷部は相変わらず一期を不思議な目で見ているし、他の刀剣たちに至っては毎回同じタイミング同じ口調同じ言葉で、一期に自己紹介をし始める。

 進んだと思えば巻き戻り繰り返す。暦は進まず、季節は巡らず、そして、自分たちは成長しない。

 

 ……こんな時の流れが存在してたまるものか。

 一期は奥歯をかみしめる。何とかしなければ。なんとか。

 

 ――さらり、と膝の上に何かがのった。

 一期ははっとして顔を上げる。これは「昨日」はなかったことだ。

 膝の上に視線を下げると、鳴狐のお供の狐がのんびりと丸まって、己の尻尾に顔をうずめていた。

 

「……これはこれは」

「一期殿を驚かせようと、この狐め、一計を案じたのでございますよう!」

 

 驚いて掌でその体をなでると、顔を上げた小さな狐は、小声ではあるが得意そうにそう自慢した。

 驚きは強いが、気を利かせてくれたのだろう。一期は愛らしいその仕草にくすりと笑い、撫でる手を再開する。……と、その手元に影が差し、すとん、と誰かが隣に座り込んだ。

 

「……わっ」

「鳴狐殿」

「驚いた?」

 

 指で狐を作って首をかしげる華奢な体躯の打刀に、一期の笑みはさらに深くなった。「ええ、とても」

 

「元気、ない」

「そうですか?」

「藤四郎たち、心配していた」

 

 小さな声がぽつりと縁側に落ちる。はっとして、一期は顔を鳴狐に向けなおした。

 寡黙で、会話のほとんどをお共の狐に代行させるような変わり者の打刀だが、その打たれた年代は一期よりもさらに古い。鳴狐はその実、粟田口の誰よりも落ち着きのある性格をしているようであった。もしかしたら、一期よりもさらに大人びた性格をしているのかもしれない。

 

「……焦ってる?」

「なぜ、そのように」

「余裕、ない顔」

「鳴狐も弟御も、一期殿を大変心配しておるのでございますよ!」

 

 余裕、ない顔。

 愕然とした。何度も「今日」を繰り返す中で、どこかで弟たちのことを「情報源」として見ていた節がなかったか。それに気づかない弟たちであるはずがない。あれだけ自分を慕ってくれているのだ。あれだけ自分の顕現を心待ちにしていてくれたのだ。

 

「……弟たちにも、鳴狐殿にも、ご心配を。申し訳ありません」

「謝る顔も、焦り顔」

「……これは手厳しい」

「…………」

「ああ、鳴狐、目でものをいうのはおやめなさい! はっきりといえばいいのですよ、『キリキリ白状しろ』と!」

「……かつ丼、食うか?」

「まだ夕餉には早い時間では」

「ああ鳴狐、顕現したての一期殿に主の時代の『刑事ドラマ』のネタを披露したってわかるはずがございませんよう!」

「……むう。修行不足」

「……失礼いたしました」

 

 ……いや待て、私はどうして叱責されていたのだったか。

 一期は考える。鳴狐を見返し、それからため息をついた。

 

「……鳴狐殿は、不安に思われたことはありませんか」

「ふあん?」

「……『明日が、来ないかもしれない』……などというような」

 

 直接説明するのははばかられ、一期はそのように問いかける。鳴狐は目を瞠り、それから少し面頬に指をあてて考えた後、小さくつぶやいた。

 

「……今日はもう、誰も出陣しない。一期も同じ」

 

 ……そういうことではないのだが。

 一期が何の返事もしないことに、返答がやや的外れであったかもしれないと思いなおしたのか、鳴狐と狐は顔を見合わせ、首を傾げた。そのあと、ああ、と何かに合点がいったような表情でうなずきあい、口を開く。

 

「きゃっちぼおる」

「は」

「手合せ」

「え、ちょっと」

「隠れ鬼」

「その……」

「明日の一期は、やることがいっぱい」

「みんなみんな、弟御が一期殿がおいでになったらやってみたいと、前々から準備しておったことなのでございますよう!」

「きゃっちぼおるは秋田と俺。手合せは薬研と鯰尾と骨喰と俺。隠れ鬼は藤四郎のみんなと俺」

「なんだかんだ言って鳴狐は全部参加するつもりではありませんかぁ!」

 

 たのしみ。と小さくつぶやいた鳴狐の瞳はきらきらと輝いている。一期はあっけにとられ、それから小さくふき出した。

 ……そうだ。彼らはやはり、同じ粟田口一門の仲間だ。家族だ。何度も繰り返される「今日」に、何度も繰り返される同じ出来事に、何度も繰り返される弟たちの反応。いつの間にかそれに気を取られ、目の前にいるのが本物の家族であることを、一期は見落としていた。

 やはり、この循環を変えなければ。一期は思う。それができなければ、一期は主に目通りが叶うこともないし、弟たちや鳴狐との約束を果たすこともできないのだ。

 

 一期は息をついて顔を上げ、鳴狐に微笑みかけた。それから振り返り、いつの間にか心配そうにこちらを覗いていた弟たちに笑いかける。

 

「さきほど弟たちに力の差を見せつけられたばかりゆえ、どうぞお手柔らかに」

 

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