魔術高専   作:一般ゲーマー

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1章-7 勝負

 俺は週に3回ギルド活動をしているが、それは決まって火・木・土曜に行っている。要するに金曜の今日の放課後はフリータイムであるため、何をしようか決まり切らないまま教室を出た。

 

 

「神凪」

 

 

 そうしてテラスを横切ったときにどこからか声を掛けられ、視線の方へ顔を向けると端の方にちょこんと腰掛ける明星が居た。

 今までとは逆の構図だなんて考えつつ、彼女に近づいて今度は俺の方から声を掛ける。

 

 

「場所変えるか?」

「……じゃあ救護室で」

 

 

 その返答をするということは俺の提案(脅迫)した勝負に乗ってくれるという意味だろうか。やったぜ。

 とはいえ来週の月曜に決まると思っていたが、こうも早く決断するとは。

 

 そうして場所を変えて柊さんのいつ救護室。

 

 

「それで、あなたたちはどこか怪我をしたの?」

「いえ、少し明星と勝負をすることになりまして。第三者としての立会人と、公正な判断をしてほしくて」

「そうね……放課後になったばかりだし、怪我をした生徒たちが来るのももう少し後だろうから、30分くらいなら全然構わないわよ」

「ありがとうございます」

 

 

 訪れた救護室では都合の良いことに生徒が独りもおらず、柊さんがデスクでモニターと睨めっこをしていた。邪魔をして申し訳ないが、許可も貰えたことだし、かくかくしかじかと簡単に事情を説明する。

 

 

「なるほどね。……まぁ経緯については神凪くんに少し言いたいところもあるけれど、一旦は置いておくわ。それで、私のところに来たってことは、明星さんは勝負を受けるということね?」

「まぁ、はい。これでしつこい勧誘がなくなるならまぁ良いかなって。私は特に何もしないですし」

 

 

 ついに明星の口から勝負を受けることが確定し、内心ガッツポーズ。勝ったな、がはは。

 まだ勝負の内容も決まってない段階だが、勝負の土俵に立ってもらわないことにはどうしようもなかったのでひと段落。

 

 

「それで、勝負における私の要望はこれです」

 

 

 そう告げて明星は柊さんに端末の画面を見せる。

 俺からはその内容は見えないが、それを読んだ明星さんの表情が難色を示した。

 

 

「……これ、期限はいつまでに設定するつもり?」

「来週末」

「さすがにそれは無茶でしょう」

「来週は月末ですし、いつものアレがありますよね? なら不可能ではないはずです。私だって半ば無理矢理勝負させられてるんだし、これくらいの要望はしてもいいんじゃないですか?」

「う~ん……………」

 

 

 明星の言葉に柊さんは長く考え込む。そんな悩ましい声を上げられると怖くなってくるんですが。明星のやつ、いったいどんな要望を出すつもりだよ。

 

 

「……分かったわ。この要望は正当なものだと認めましょう。ただし、期限は最大の3週間にすること」

 

 

 柊さんは暫く悩んだ末に明星の要望を承諾した。そうしてそのまま俺に端末が手渡されたので、その画面へと視線を落とす。

 画面は学校への依頼をする内容を示しており、『在学期間中の空き部屋の所有権』と書かれている。学校からの返信もすでに記載されており、いくつか候補は示されていたが、一番安い部屋で在学予定期間(月)×3万APと書かれている。

 明星は2年なので、残り48か月だとすると……。

 

 

「150万AP!?」

 

 

 頭の中で計算した数字に思わず大声で反応する。俺の現在の所持APは初期の1万に加えて4回のギルド活動による報酬の4万APを加えて計5万AP。

 今から報酬の設定を変えてすべてをAPに変換するとしても、それで稼げるのはせいぜい1回2万AP程度。どう考えても150万APには届かない。

 

 

「いやいやいや、無理でしょ。不可能な要望はダメって話だっただろ」

「無理じゃないよ。だから先生も認めてるんだし」

「それってどういう……」

「そうね……はいこれ」

 

 

 学校用の端末は先生にも配られているのか、柊さんは自分の懐から取り出して操作すると、それを見せてきた。そこには手に持った端末の画面と似た構成ながら、若干デザインの異なる学生向けの依頼掲示板が映っている。

 柊さんによって拡大表示されたその依頼は、『挑戦者募集! いつもと同じく学年によるハンデありのシンボル戦だ!』と派手なタイトルをしていて、その報酬はなんと200万AP。

 

 

「……なんですかコレ」

 

 

 驚きのあまり一周回って大きな反応も示せない俺に、柊さんは説明してくれる。

 

 

「この依頼主は4年の獅子堂くんっていう生徒なんだけど、彼、2年生の後半からこれと同じ依頼を出し続けてるのよ」

「へぇ……」

「こんな依頼は珍しいけど無くはないから最初こそ目立たなかったのだけれど、毎月開催するのと彼の強さに、今じゃすっかり名物になっちゃってるのよね」

「まったく興味のない私でも概要を知ってるくらいには広がってる」

「それと、報酬も最初はさすがにこの額じゃなかったけれど、ハンデなしだと無敗を誇る彼相手に段々と挑戦者も少なくなっちゃって……今回でついにここまで上がったのね」

 

 

 ハンデなしで無敗って、それは実質この学校の最強なのでは? そんな人相手に勝利するなんて実質不可能では?

 そう思って柊さんに抗議するも「でも、不可能ではないでしょう? 私も神凪くんを応援してるけど、公正な判断をするなら許可せざるを得ないわ」との返答。

 まぁ、そうね。その獅子堂先輩とやらの実力が分からないけど、俺が勝てる可能性もゼロではないものね。

 ……ゼロじゃないか? 推定学校最強に俺が勝てるかもなんて買いかぶりがすぎるだろ。

 

 

「第三者である先生の承認も得たことだし、勝負に対する私からの要望は『学校内に私が在学中にいつでも使える私用の空き部屋を用意すること』。期限は先生の判断に則って3週間で。どう?」

「……分かった」

 

 

 差し出された明星の手に彼女の端末を返しながら、勝負の内容を告げる明星に対して俺は気が重くなりながらも、断る選択肢はないために承諾した。

 

 

「じゃあ、よろしく。用意が出来たら適当に私を捕まえて。無理だったら……そのまま報告しないでいいよ。ただし、約束通り私への勧誘はもう止めてね」

 

 

 明星は席を立ちながらそう零すと救護室を後にした。そして入れ違うように見知らぬ生徒が救護室に顔を出す。

 

 

「あら、早速お客さんかしら。ごめんなさい神凪くん、今日はここまでで。今の勝負の手助けは出来ないけど、応援はしてるわ」

 

 

 柊さんもその言葉を残して元々の業務へと戻っていった。俺もこれ以上ここにいても仕方がないため、「ありがとうございました」と告げてから救護室を後にした。

 

 

 

 

 

 

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